オイルライター「ZIPPO(ジッポー)」の歴史と愛される理由

オイルライターの代名詞として知られる「ZIPPO(以下ジッポー)」。日本を含め世界中にジッポー愛好家やコレクターが存在します。魅力的なデザインは然ることながら、その丈夫さや着火しやすさなど、機能面でも支持を集めるオイルライターです。

この記事では、1930年代初頭から始まったジッポーの歴史を振り返りながら、なぜ今なお多くの人々に愛されているのか、その理由に迫っていきます。

ジッポーの歴史は1932年に始まった

画像引用:https://www.zippo-japan.com/pages/our-history

現代において「オイルライターといえばジッポー」と答える人は少なくないでしょう。愛煙家であれば誰もが知り、オイルライターの代名詞的存在といっても過言ではないジッポーは、今から約90年前の1932年にその歴史をスタートさせました。

ジッポー社の創始者ジョージ・G・ブレイズデルは、当時ペンシルベニア州ブラッドフォードにある「ブラッドフォード・カントリークラブ」で、ライターの火が付かず困っている友人を目にしました。

その友人が使っているライターは、オーストリア製の風防がついた風に強いライターでした。しかし着火しづらく耐久性にも問題があり、非効率的なデザインだったのです。彼は、そんな友人の姿を見てライター事業へと乗り出します。

オーストリア製オイルライターを改良しジッポーが生まれる

ブレイズデルは、友人が使っていたライターを製造していたオーストリアの会社からアメリカ独占販売権を獲得。そして当初のチープなデザインから、高級感のあるクロムメッキボディモデルに変更し、さらに25セントから1ドルに値上げして販売しました。

しかし売れ行きは悪く、その原因が機能面にあると判断したブレイズデルはついに自身でライター開発に挑むことになります。当時のオーストリア製オイルライターは、機能面にさまざまな問題があったのです。

ブレイズデルの努力が生み出した新たなオイルライター

オーストリア製オイルライターは、キャップが付いており着火するにはキャップと本体を両手に持たなければなりません。そこでブレイズデルは、本体とヒンジを一体化したモデルを作り、片手でも着火できる利便性に優れたオイルライターを開発しました。

またオーストリア製オイルライターは、風が吹いても火がつくように風防がついていました。しかし取り付け位置が悪く、風防としての意味を全く成していませんでした。ブレイズデルは何度も実験を重ね、風の中でも一発で着火できるオイルライターを生み出します。

こうしたブレイズデルの努力が、現在オイルライターの代名詞と呼ばれるまでになったジッポーを誕生させました。ライター利用者の悩みの種を火種に変え、より良いライターを生み出したことが今なお愛される大きな理由といえるでしょう。

ちなみに「Zippo」という名前は、当時使われ始めた「Zipper(ジッパー)」という言葉から名付けられています。彼は、ジッパーという言葉の響きを気に入っていたようです。

第二次世界大戦を乗り越え世界中に広がっていく

1940年代に入り、アメリカは第二次世界大戦に参戦することになります。これに合わせてジッポー社は、一般用のライター生産を中止し、軍用のライター生産を開始しました。

その特徴は、ブラッククラックル仕上げのスチール製であること。戦争により材料不足に陥ったジッポー社は、ブラス(真鍮)から低品質な鉄を使わざるを得なくなったのです。

そしてその低品質な鉄を隠すためにマットブラックで塗装されたことから、ブラッククラックルと呼ばれるようになりました。

しかしその無骨な見た目と歴史的価値から、ブラッククラックルの根強いファンも多いです。戦時中、一瞬の油断も許されない中で、束の間の一服をこのライターを使ってしていたと考えると、非常に感慨深いものがあります。

1950年代半ばから製造年月の刻印がされる

画像引用:https://www.zippo-japan.com/pages/data-codes

戦争が終わりを迎えると、ジッポー社は再び一般用ライターの生産を再開。そして1950年代に入ると、デザインが見直され現代のものとほぼ同じジッポーライターのデザインに改善されました。

さらに1950年代半ばには、ライターのボトム部分に製造年月が刻印されるようになりました。元々は品質管理を目的とした刻印でしたが、後にコレクターの間でその刻印が非常に貴重な存在となります。

また女性をターゲットとしたスリムモデルの販売を開始し、このスリムライターは女性に限らず男性からも高い人気を集めました。1960年代には、ライター以外の商品製造にも着手しはじめ、ジッポー社は大きく進展していきます。

またこの頃「ジッポーモーメント」といって、コンサートで演奏者への称賛の意を込めジッポーの炎を掲げるという行為が流行しました。現代でも、時折野外ライブなどではこうした光景が見られます。

オイルライターならではの深い味わいを楽しめる

たばこに火をつける方法には、さまざまな方法があります。オイルライターのほかにも、ガスライターやマッチ、使いすてライターなどいろんなものがあげられます。どの火でつけたたばこがおいしく感じるかという点は、人それぞれ好みがあるため個人差があるでしょう。

しかし、そのなかで「オイルライターで火をつけたたばこが一番おいしい」という方がいます。特にオイルの香りが好きな方にとっては、ジッポーライターでつけたたばこは、一層おいしく感じられるでしょう。

オイルが燃えたときの香りが混ざって、たばこの味わいもより深いものに変わります。ほかのガスライターやマッチと吸い比べてみて、オイルライター独特の香りや味を楽しんでみるのもおすすめです。

ブレイズデルの意志と誇りは人々の手で語り継がれていく

ジッポー社の創始者ジョージ・G・ブレイズデルは、1978年10月3日にこの世を去りました。その後もブレイズデルの娘、さらには孫が彼の意志を継ぎ、現在まで運営されています。

ジッポーライターが販売されてから今もずっと行なっている「無料生涯保証」。ジッポーライターの利用者にとっては、万が一ライターが使えなくなっても無償で修理してもらえるありがたいサービスです。

しかしその真意は、ブレイズデル自身が生み出したジッポーライターのタフさに対する自信の現れではないでしょうか。ジッポーの長い歴史を感じながらたばこに火をつければ、また違った味わいが楽しめるかもしれません。