男なら一度は憧れる 葉巻の魅力

「かっこよさ」「ダンディさ」の象徴でもある葉巻。一方で「高そう」「難しそう」というイメージもあるのではないでしょうか? 確かに葉巻の道具は高価なものが多いのも事実。しかし、いきなり全ての道具が必要なわけではありません。まずは気軽に葉巻を愉しんでみましょう。

 

葉巻とは

新大陸発見で広まった?葉巻の歴史

葉巻はたばこの葉をたばこの葉で筒状に巻いたもので、長さや太さなどさまざまな種類があります。 もっとも歴史のあるたばこのひとつで、中米で古代より親しまれていたとされています。当時は儀式などの際に葉を燃やし、煙をまとうといった宗教的な意味合いが強く、嗜好品としての使用ではなかったようです。 コロンブスによる新大陸発見の際に、葉巻を吸う先住民がいたことから欧州に持ち込まれたとされています。19世紀初頭まではスペインを中心に普及していましたが、ナポレオンのスペイン侵攻をきっかけに欧州全体に広まりました。以降、貴族階級や商人たちの間で嗜まれるようになりました。 日本に伝わった時期は定かではありませんが、16世紀から17世紀初頭の南蛮貿易で伝来した説が有力です。

味わいは一期一会 葉巻の魅力

たばこは煙を肺まで吸い込みますが、葉巻は肺には入れずに口の中で転がし、味わいや香りを愉しむのが一般的。 葉巻は短いもので15分程度、長いものでは数時間かけて吸うものもありますので、たばこのように「仕事の合間に一服」という嗜み方ではなく、ゆったりと時間をかけて愉しむものだといえます。さらに一度消して、再び吸い直せるのもたばことの違いです。 葉巻の大きな魅力といえるのが味覚や香りの変化。葉巻はとても繊細で、温度や湿度などの環境、作られてからの期間(熟成度)、食事や飲み物、自身の体調などによって風味が変わります。その時々によって表情を変えるのが葉巻の醍醐味といえるでしょう。

大きく分けて2つ 葉巻の種類

葉巻は原材料や製造方法などにより、プレミアムシガーとドライシガーの大きく2種類に分けられます。 プレミアムシガーはたばこ葉を100%使用した職人の手作りによる高級品。葉をブレンドし、発酵・熟成させることで、芳醇な味わいが楽しめます。温度や湿度などで劣化しやすいのでヒュミドールと呼ばれる保湿器での管理が理想です。 一方、ドライシガーは機械製造の葉巻で常温保管ができるので容易に管理できます。比較的安価なので入門用にも適しています。ドライシガーの中にはフィルターが付くなど、紙巻きたばこに似たリトルシガーもあります。

葉巻のたしなみ

ディテールにこだわりたい 葉巻に必要なツール

葉巻を吸うには専用のツールがあると便利です。以下を参考にしてみてください。 ◇シザーカッター 葉巻はそのままだと吸い口がありませんので先端部をカットするカッターが必要になります。 ◇着火器具 味や香りが変わらないように、マッチやオイル式ではなくガス式ライターが無難です。火力の強いターボライターは火が付きやすく初級者に適しています。クラシカルな雰囲気を愉しみたいなら、燃焼時間が長く、硫黄のにおいを抑えた葉巻専用マッチがおすすめです。 ◇シガーケース 携帯するケースです。葉巻を傷や湿気から守るのに適しています。 ◇灰皿 消火しないように、溝が深く長い、葉巻専用灰皿が便利です。 ◇ヒュミドール 葉巻の湿度を保ち、味や香りが変わらないようにする保管器です。

風味や口当たりが変化 葉巻のカット方法

葉巻は内側から順にフィラー、バインダー(中巻葉)、ラッパー(上巻葉)と呼ばれるたばこ葉で構成されています。フィラーの葉の種類やブレンドで基本となる味や香りが決まります。 丸みを帯びて閉じられている部分をヘッドといい、断面が見える部分をフットといいます。ヘッドの切り方によって口当たりが変化するのも葉巻の特徴です。基本的に使用するシザーカッターによって区別されますが、カット方法には「フラットカット」「パンチカット」「Vカット」があります。 フラットカット 最も一般的なカット方法。専用のシザーやギロチンカッターで吸い口を水平に切り落とします。ヘッドの丸い箇所を残してカットすると、葉巻がほどけず口当たりが良くなります。 パンチカット 刃が円筒状のパンチカッターを使います。パンチ径には大小あり、大きく開ければマイルド、小さく開ければ濃厚、と風味が変化します。丸みの後端が残るので口当たりが良くなり、葉クズが出ないというメリットもあります。 Vカット V字型に切り込みを入れるカット方法で見た目が洒落ています。専用のVカッターで切り落としますが、丸みの後端が残るので口当たりが良くなります。切り取り面はパンチカットよりも広くなります。

着火から消化まで 葉巻の楽しみ方

着火の際はライターやマッチで、フットを炙るようにしてゆっくりと火をつけます。この時たばこのように吸い込みはしません。葉巻を回転させながら均等に炭化させると着火しやすくなります。 着火したらゆっくりと吸い込んでみましょう。煙は肺には入れず、口の中で煙を転がすようにして味わいます。フットの灰はある程度残して、過燃焼を防ぐのがおいしさの秘訣といわれます。頻繁に灰を落とすのではなく、2~3センチで落とすようにしましょう。 葉巻は無くなるまで吸えますが、やけどしない程度で消すようにしましょう。そのまま放置しておけば自然と消えます。注意点としては破れると臭いがでますので、もみ消すのはやめましょう。 消した葉巻を再び吸う際は、灰をしっかり落としておくと火がつきやすくなります。また、中の煙を吹きだすと本来の風味が守られます。

頑なに守り続ける伝統  葉巻の世界

生産国もさまざま 葉巻のブランド

葉巻はさまざまな国々で作られており、生産国やブランドによって特徴があります。その特徴はリングやシガーラベルに反映されていることも。 リングとは葉巻1つ1つに巻かれている帯で、ブランドを表しています。本来は手がヤニで黄ばむことを避けるためのものでした。シガーラベルは葉巻を封入した箱につけた紙。もともと自社のブランディングや模造品対策として使用されていました。 キューバ産 世界最大の葉巻生産国。フィラー、バインダー、ラッパー全てがハバナ産の葉で作られており「ハバナ産」「ハバナ」と呼ばれています。コイーバをはじめ30を超えるブランドが存在しており、各ブランドに熱狂的な愛好家がいます。 ドミニカ産 1960年代のキューバ危機により米国でハバナ産が流通しなくなったため、代わりに消費されるようになりました。ダビドフをはじめとした多くのブランドはキューバから亡命してきた葉巻職人たちにより立ち上げられました。 ニカラグア産 キューバ危機でニカラグアへ亡命した、キューバの葉巻職人たちにより立ち上げられました。ハバナ産とは一味違う特有の旨味と香りが人気。ドミニカ産などの葉巻でもニカラグア産の葉を使用するブランドもあります。

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葉巻を愛した著名人

チェ・ゲバラ キューバ革命の立役者。キューバ三大ブランドの一つモンテクリストを愛好していました。 フィデル・カストロ キューバ革命によって最高指導者となりました。今や葉巻の代名詞となったコイーバを愛好していました。 大正天皇 大変なヘビースモーカーとして知られ、さまざまなたばこのほか葉巻はハバナ産を愛用していたようです。 吉田茂 敗戦後、日本を荒廃から立ち直らせた政治家。マッカーサーに葉巻をすすめられて「私はハバナしか吸わない」と断わったのは有名です。 “男なら一度は憧れる

葉巻を燻らせ、伊達男を気取ってみた

喫煙歴約30年の筆者だが、これまで葉巻を吸ったのは5回程度。若いころにノリで購入したのと、海外旅行の土産としてもらった時だったかと思う。当然、作法などは心得ておらず「肺には入れないんだよな」程度の知識。吸ってはみたものの「やっぱり苦い」といった印象しかなかった。今回、ちょっとだけ作法が分かったし、せっかくなので葉巻を吸ってみることに。 まずは葉巻選びだが、よく分からないのでカタチから入る。葉巻といったらフィデル・カストロ愛用のコイーバだろう。思い入れがあった方が旨くなるにきまっているので、少々バックグラウンドについて調べてみた。カストロはボディーガードの葉巻の風味に感動、それをブレンドした職人を葉巻工場に迎え入れ、生産したのがコイーバの始まりだそうだ。時は1960年代後半。100年以上の歴史を誇る葉巻メーカーが多い中、比較的新しいブランドだったというのには驚いた。 ちなみにコロンブスが新大陸を発見した時、「タイノ族」という先住民族がたばこのことをコイーバと呼んでいたのが名の由来。実際にロゴは、タイノ族の横顔を模しているという。そして、特有の香りは、火を付けなくとも認識できるほどというが、もちろん筆者には分かるはずもなく…。 ということで、さっそく葉巻に精通するツレにコイーバをおねだり。2,000~3,000円のものを勧められ、オーソドックスにフラットカットしてもらった。いつもは芋焼酎のところ、「やっぱりブランデーだろう」という勝手なイメージで、これまた、貰い物のヘネシーを用意。いざ、吸ってみる! 映画の主人公を気取って着火にはマッチを使いたいところだったが、面倒なので全幅の信頼をおく100均ターボライターでシュボボボーッと点火。「均一」を心がけ、葉巻をクルクル回転させていると、思ったよりも早く火が付いた。と、いきなり紙巻たばこのクセからか、煙を吸い込んでしまいむせてしまう…。 口の中で煙を転がしてみると、苦いことは苦いが昔よりも苦くない。というよりも香りがすごい。表現するならば、たばこ葉をダイレクトに感じる、といったところ。後味はかなり辛いが美味い。ここにヘネシーを絡めるとさらに美味い。若い頃と違って「葉巻は味わうもの」というのがよくわかった。俺も成長したんだなとちょっと感動。30分ほど愉しんだが、自分に酔える時間を過ごせるというのはなんとも贅沢。またちょっと人生が豊かになりそうだ。