ゆったりと煙をくゆらせて楽しむ葉巻は、芳醇な香りが魅力のタバコです。紙巻きタバコとは見た目からして大きく異なりますが、実はその他にもいろいろな違いがあります。
普段紙巻きタバコを吸っている方が葉巻を試してみる時は、違いを理解しておくとより楽しめるでしょう。
ここでは、葉巻と紙巻きタバコの違いをいろいろな面から比較・解説します。
葉巻と紙巻きタバコの違い①:構造・大きさ
葉巻と紙巻きタバコをパッと見てわかる違いは、やはりその大きさです。
一般的な紙巻きタバコは太さ7mm程度で、長さはロングサイズでも100mm~110mmほど。これに対し葉巻は、直径が15mm~20mm程度とかなり太く、長さも150mm~200mm程度です。もちろん重さもそれなりにあります。
そして、より重要なのは構造の違いです。
紙巻きタバコは、細かく刻んだタバコ葉を巻紙で包んで作り、ほとんどの場合はフィルターを付けます。
一方葉巻は、味や香りの決め手となる「フィラー(中心葉)」を核とし、味や香りを引き立てる「バインダー(中巻葉)」、外観を整える「ラッパー(上巻葉)」で包むという三層構造+フィルターなしが基本です。
なお、葉巻タバコにもいくつかの種類があり、1本1本ハンドメイドで作られる高級品の「プレミアムシガー」、主に機械で作られ常温保管が可能な「ドライシガー」、紙巻きタバコとほぼ同じ構造・サイズ・吸い方の「リトルシガー」に分けられます。単に「葉巻」と言った場合は、プレミアムシガーのことを指すと考えていいでしょう。
葉巻と紙巻きタバコの違い②:法律上の扱い
葉巻タバコと紙巻きタバコは、法律上の扱いもいろいろ異なります。根本的な定義の違い、そして値段にも関わる税金の違いを知っておきましょう。
定義
法律上の定義における葉巻タバコと紙巻きタバコの違いは、「1番外側がタバコ葉(を含むもの)で巻かれているか、タバコ葉を含まない紙などで巻かれているか」という点だけです。
内部の細かい構造やサイズなどに関係なく、「タバコ葉をタバコ葉で巻いたもの」を葉巻タバコ、「タバコ葉を紙で巻いたもの」を紙巻きタバコと呼んでいます。
なお、リトルシガーの構造やサイズは紙巻きタバコとほぼ同じですが、タバコ葉を紙状に成型した「シートタバコ」を巻紙として使っています。
そのため、法律上は紙巻きタバコではなく葉巻として扱われるのです。
税金
紙巻きタバコにかかるたばこ税は、タバコの本数当たりで決められています。2021年10月の増税時点では、1,000本当たり15,244円です。中に入っているタバコ葉の重量や消費者への販売金額などは、実は関係ありません。
これに対し葉巻タバコは、重量1gを紙巻きタバコ1本に換算してたばこ税がかけられます。
つまり、大きくて重い葉巻であればたばこ税も高く、小さければ安くなるのです。
かつてのリトルシガーはこの仕組みを利用し、タバコ葉の重量を1g未満にすることでたばこ税を抑え、安く販売できていました。
しかし、2020年から2段階に分けてメスが入り、2021年10月の増税で紙巻きタバコと同じ税金が課されるようになったため、以前ほど安いタバコではなくなっています。
葉巻と紙巻きタバコの違い③:道具
紙巻きタバコを吸うための道具は、ライターやマッチなどの着火器具と、灰皿があれば事足ります。
一方、葉巻を楽しむためには、もう少し多くの道具が必要です。主な道具をチェックしておきましょう。
シガーカッター
葉巻には吸い口がないため、「シガーカッター」で先端を切断して吸い口を作ります。
シガーカッターにはギロチン式、シザー(ハサミ)式、パンチ式といった種類があり、それぞれ使い勝手や口当たりへの影響が異なるため、好みで選ぶといいでしょう。
ライター、マッチ
葉巻は炙るようにしてゆっくり着火する必要があるため、ライターは火力の強いものがおすすめです。オイルライターはニオイが移ってしまうので、ガスライターが適しています。
マッチを使うなら、長くて硫黄のニオイが少ない葉巻用マッチがベストです。
灰皿
灰皿は葉巻を置けるよう、深くて幅広の溝が付いた葉巻用のものを使いましょう。一般的な灰皿だと、安定して置くことができません。
シガーケース
葉巻を携帯するなら、湿気や衝撃から守るためのシガーケースも必要です。アルミ製や革製のケースがよく使われます。
葉巻と紙巻きタバコの違い④:吸い方
葉巻は紙巻きタバコに比べ、吸い方も大きく異なります。初心者が戸惑いがちなポイントを押さえつつ、基本的な手順を見ていきましょう。
基本的な手順
道具の項目でもご紹介しましたが、まずは葉巻の先端をシガーカッターで切断して吸い口(ヘッド)を作り、反対側(フット)をライターやマッチで炙って着火します。
葉巻を回転させ、フットを全体的に炭化させるといいでしょう。
着火が完了したら吸うことができます。持ち方は基本的に自由です。
また、葉巻は灰をなるべく多く残しておいた方が、過燃焼を防げるので美味しくなります。紙巻きタバコのように頻繁に灰を落とすのではなく、2cmくらい灰を溜めてからポキッと折るように落としましょう。
吸い終わりの目安は、全体の2/3~3/4辺りまで吸った時です。もみ消す必要はなく、灰皿の上にしばらく置いておくと自然に火が消えます。
肺喫煙と口腔喫煙
紙巻きタバコの吸い方は、煙を肺まで入れる「肺喫煙」が一般的です。一方、葉巻は煙を肺まで入れず、口の中にとどめる「口腔喫煙」で味わいます。
葉巻は芳醇な香りを楽しむのが最大の目的ですし、フィルターが付いていないので肺に入れるにはきつく、口腔喫煙でも十分なニコチンを摂取できるからです。
口腔喫煙の基本的な方法としては、頬の力を使ってゆっくりと煙を吸い込み、口の中で転がすようにして味わいます。
吐き出す時は、自分の前にフワ~ッと煙を出しましょう。煙を吸い込むペースは、1分~2分に1回程度で十分です。長いものだと1本で1時間半~2時間程度も楽しめるので、じっくりと味わってください。
葉巻と紙巻きタバコの違い⑤:保管方法
紙巻きタバコは基本的に常温保管できます。
また、葉巻のうちドライシガーやリトルシガーは、紙巻きと同じように常温保管が可能です。
一方、最も高級なプレミアムシガーは、品質を保つために一定の湿度・温度で保管しなければなりません。一般的には湿度70%前後、温度20℃前後が最適とされています。
そのために使用されるのが、専用の保存箱である「ヒュミドール」です。多くは木製で、湿度計が付いたものもあります。
ヒュミドールに葉巻とヒュミディパック(調湿剤)を入れ、直射日光や高温を避けて保管すると、最適な湿度・温度を保てるのです。
一応、ジップロックなどでも最低限の機能は果たせますが、あまりおすすめはできません。
葉巻と紙巻きタバコの違い⑥:買える場所
紙巻きタバコは、タバコ屋さん以外にもコンビニ、スーパー、自販機など多くの場所で購入できます。一方、葉巻を買える場所は紙巻きに比べて大幅に限られます。前述したように、葉巻はしっかり環境を整えて保管しなければならないため、販売するにしてもそれなりの設備と知識が必要だからです。タバコ屋でも扱っているとは限りません。 最も確実に購入できるのは葉巻専門店です。もし近くに専門店があるなら、そこで購入するのが1番でしょう。もちろん、ネット通販でも購入可能です。試しに吸ってみたいのであれば、シガーバーに行くという方法もあります。お店の人に直接吸い方を教えてもらうことができ、葉巻に合うお酒やおつまみも注文できるのがメリットです。 ちなみに、リトルシガーは大抵のコンビニやタバコ屋で扱っています。吸い方は紙巻きタバコと同じですが、喫味は葉巻に近いものもあるので、「とりあえず葉巻がどんな味か知りたい」という時はリトルシガーを試してみてもいいでしょう。
葉巻と紙巻きタバコの違い⑦:値段
葉巻と紙巻きタバコは、値段も大きく異なります。
相次ぐ増税で値上がりしているとはいえ、一般的な紙巻きタバコの値段は、1箱20本入りで500円~600円程度です。
一方、葉巻は最低でも1本数百円、プレミアムシガーは安くても2000円程度で、高いものだと1本5000円以上するものもあります。
そのため、葉巻はあまり気軽にスパスパ吸えるものではありません。1本を吸い終わるのに最低数十分はかかるのですから、仕事の後や休日などに時間を確保して、ゆったりと楽しむのがおすすめです。
なお、リトルシガーの値段は紙巻きタバコとほぼ変わらず、1箱500円程度で購入できます。
葉巻と紙巻きタバコの違い⑧:生産国
最後に、生産国の違いについて簡単に触れておきましょう。紙巻きタバコは世界各地で生産されており、もちろん日本でも数多く作られています。
一方、葉巻の生産国として最も有名なのは、中米のカリブ海に浮かぶ島国であるキューバです。また、同じくカリブ海の国であるドミニカも、キューバに次ぐ生産地としてよく知られています。
ブランドとしては、コイーバ、モンテクリスト、ロメオYジュリエッタ、パルタガス、ホヨ・ド・モントレーが、キューバ産葉巻(ハバナシガー)の5大ブランドとして有名。ドミニカのダビドフも、キューバ産に引けを取らない評価を得ています。
いずれも、愛好家なら一度は味わっておきたい素晴らしい葉巻です。
まとめ
葉巻と紙巻きタバコは、材料がタバコ葉であるという点は共通していますが、実際には別の嗜好品に近いかもしれません。
それぞれ別々の魅力がありますから、機会があれば吸い比べてみるのがおすすめです。
現在はネット通販の存在もあり、葉巻を購入して吸うこと自体は簡単にできるので、ぜひ気軽に試してみてください。