近年、加熱式タバコであるアイコスの発がん性についての情報がネットで出回っています。
「アイコス発がん性250倍」とインパクトのある情報が話題になっています。
しかし、発がん性について適切な情報なのかわからず、本当に健康への影響があるのか悩んでいる方も多いでしょう。
本記事では、アイコスの発がん性が250倍といわれている情報の真偽や、加熱式タバコを取り巻く状況、特徴、身体への健康影響について紹介します。
加熱式タバコを使用している人で、健康リスクに対する不安がある場合は、ぜひ参考にしてください。
「アイコス発がん性250倍」は根拠がない
結論として「アイコス発がん性250倍」の情報については、明確な根拠はありません。
そのほかにも紙巻きタバコの2倍、10倍、256倍と具体的な数値が提示された噂が多く存在します。
しかし、これらの数値はあくまで噂に過ぎないといえるでしょう。
実際に加熱式タバコであるアイコスを販売するPMI(フィリップモリス)が、「アイコス発がん性250倍」の情報について、測定方法がハイブリッドで正確な数値が算出されていないと否定しています。
また、公的な情報では、先述したような具体的な数値を記載した報告はありません。
あるアメリカの研究機関が行った研究結果で、アイコスには紙巻きタバコと同じような化学物質が含まれている、アイコスにはニコチンが84%含まれている、一部の有害物質が紙巻きタバコよりも高い濃度で含まれているなどの報告がされました。
一方で、同じ研究機関は、アイコスの有害物質は紙巻きタバコよりも90%以上減少しているとの見解も示しています。
そのため、アイコスの発がん性については、はっきりした数値が示されていないとわかるでしょう。
しかし、加熱式タバコであっても、ニコチンやタールなどが含まれている以上、リスクはゼロではありません。
加熱式タバコを取り巻く現状
こちらでは、アイコスを含めた加熱式タバコを取り巻く現状を紹介します。
紙巻きタバコの代替品としても多くの人が利用している加熱式タバコは、現在どのくらい普及しているのか気になる人も多いでしょう。
世界のシェアと日本でのシェアの状況を確認し、日本でどのくらい親しまれているのかをチェックしていきます。
アイコスの世界販売シェアは日本が上位
タバコ葉を加熱して発生した煙を吸う加熱式タバコは、日本でのシェア率が高いといわれています。
とくに、アイコスの販売シェア率は、日本が圧倒的に高い傾向です。
実際に、アイコス専門の販売店舗だけではなく、コンビニエンスストアでも販売されているのを見かけたことがある人も多いでしょう。
また、紙巻きタバコからアイコスに移行している人も多く見かけます。
煙のにおいが服につきにくい、周りに煙臭さが充満しないなどの特徴から、紙巻きタバコよりも加熱式タバコであるアイコスの方が、周囲を気にせず吸いやすいと感じる方も多いでしょう。
使用者は日本の成人の10%以上とも言われている
大阪国際がんセンターが発表している文書によると、現在日本では加熱式タバコの普及が急速に進んでおり、成人の10%以上が吸っているともいわれています。
しかし、その有害性については正しい情報を知らない人も多いでしょう。
加熱式タバコの国内での広がりを受け、喫煙者だけではなく周囲の人も適切な知識を身に付けていきたいところです。
紙巻きタバコと加熱式タバコの特徴
こちらでは、紙巻きタバコと加熱式タバコの特徴を紹介します。
紙巻きタバコから加熱式タバコに移行する人も増える中、見た目以外の違いについて詳しく知らない方も多いでしょう。
健康への影響を考えるうえで、それぞれどのような特徴をもち、どのような違いがあるかを知る必要があります。
紙巻きタバコの特徴
紙巻きタバコは、刻んで細かくしたタバコ葉を紙で巻き、細長い棒状に仕上げた製品です。
一般的に、刻んだタバコを乾燥させて包み、吸い口の部分に煙をろ過してニコチンやタール量を減らすためのフィルダーを装着させます。
構成しているパーツの名前は、それぞれ「刻(きざみ)」「巻紙(まきし)」「フィルター」「チップペーパー」と呼ばれています。
また、タバコ葉は主に3種類のブレンドがあり、それぞれの特徴は以下のとおりです。
・アメリカンブレンド:日本で主流のブランドであり、バランスの取れた軽やかな香りが特徴
・バージニアブレンド:香料の使用を最小限に抑え、タバコ葉本来の香りを活かしたブレンド
・ドメスティックブレンド:国産のタバコ葉を使用したブレンドで、日本独特のブレンド
なお、紙巻きタバコに含まれるニコチンやタールの量は、商品によって異なります。
加熱式タバコの特徴
加熱式タバコは、タバコの葉を火で燃やさず、加熱して発生した蒸気を吸って楽しむタバコ製品です。
一般的に、バッテリーと呼ばれる本体に内蔵されたヒーター部分にタバコスティックを差し込み、加熱して蒸気を吸う仕組みです。
電子タバコと混同されるケースの多い製品ですが、明確な違いがあります。
加熱式タバコは、タバコ葉を加熱して楽しみますが、電子タバコではタバコ葉を使用しません。
そのため、日本で販売されている電子タバコには、ニコチンやタールが含まれていない特徴があります。
加熱式タバコでは、タバコ葉を使用しているためニコチンやタールが含まれている点に注意しましょう。
アイコスで考えられる健康被害は大きく5つ
こちらでは、アイコスの使用により考えられる健康被害を5つ紹介します。
アイコスがタバコ葉を使用している以上、有害物質は少なからず含まれています。
アイコスに含まれる成分によってどのような健康被害のリスクがあるかを確認し、今後の使用について自分で判断できるようにしましょう。
発がん性物質による肺がん
加熱式タバコには、発がん物質であるタールが含まれているため、肺がんをはじめとしたさまざまながんのリスクは高まると考えられています。
加熱式タバコであるアイコスも、可能性はゼロではありません。
しかし、加熱式タバコ自体が比較的新しい製品であるため、研究がまだ進んでいない現状があります。
そのため、具体的なリスクはまだ明確になっていません。
呼吸器疾患
アイコスの健康被害の一つとして、呼吸器疾患の悪化が懸念されています。
ある研究によると、加熱式タバコの喫煙により肺にダメージが与えられるとの報告があります。
そのため、新型コロナウイルスが流行した時期には、重症化リスクを高めるとして注意喚起が行われていました。
コロナウイルスだけではなく、風邪による症状も悪化させるリスクがあると考えられているため、呼吸器系に不調を抱えている場合の喫煙は、避けた方が良いでしょう。
アレルギー性鼻炎
アイコスの喫煙は、鼻水やくしゃみなどアレルギー性鼻炎のリスクが高まるともいわれています。
しかし、アレルギーへの影響に関するデータはまだ少なく、情報が不明瞭な点に注意が必要です。
しかし、少量とはいえニコチンやタールが含まれていたり、影響のあるそのほかの物質も含んでいたりするため、懸念事項ではあるといえるでしょう。
ニコチン依存症
加熱式タバコには、多少なりともニコチンが含まれています。
そのため、ニコチン依存症になる可能性は、ゼロではありません。
ニコチン依存症は、タバコの煙に含まれるニコチンの血中濃度が一定量を下回ると禁断症状が発生し、その不快感を抑えるためにまたタバコを吸ってしまうという悪循環を招いてしまいます。
加熱式タバコにもニコチンが含まれているため、自分でコントロールして適切な量を意識できるようにしましょう。
急性好酸球性肺炎
アイコスには、呼吸困難のリスクがある急性好酸球性肺炎につながる可能性も、ゼロではないと考えられています。
急性好酸球性肺炎とは、乾性咳嗽、呼吸困難、倦怠感、筋肉痛、盗汗、胸膜性胸痛などを伴う疾患です。
場合によっては、急性呼吸不全を引き起こすリスクがあります。
若年層の男性に発症例が多いといわれており、多くのケースは短期間で喫煙本数が増加したことによるものでした。
タバコは受動喫煙にも注意!考えられるリスク
こちらでは、タバコ製品の受動喫煙によるリスクを紹介します。
タバコ製品の使用は、喫煙者だけではなく、周囲の人々の健康を害するリスクがあると考えられています。
自分の健康だけではなく、周りの人たちの健康も考えられるよう、予想されているリスクについて把握しましょう。
肺がん
タバコ製品の受動喫煙は、肺がんのリスクを高めるとされています。
厚生労働省の資料によると、2014年の受動喫煙による肺がんの年間死亡数推計値は、男性で627人、女性で1857人とされています。
また、受動喫煙では肺がんのリスクが1.3倍に高まるといわれているため、注意が必要です。
虚血性心疾患
タバコ製品の受動喫煙は、虚血性心疾患のリスクも高めるとされています。
厚生労働省の資料によると、2014年の受動喫煙による虚血性心疾患の年間死亡数推計値は、男性で1571人、女性で2888人とされています。
また、受動喫煙では虚血性心疾患のリスクが1.2倍に高まるといわれているため、注意が必要です。
脳卒中
タバコ製品の受動喫煙は、脳卒中のリスクも高めるとされています。
厚生労働省の資料によると、2014年の受動喫煙による脳卒中の年間死亡数推計値は、男性で2325人、女性で5689人とされています。
また、受動喫煙では脳卒中のリスクが1.3倍に高まるといわれているため、家族に高齢者がいる場合や虚弱者がいる場合は注意が必要です。
乳幼児突然死症候群
タバコ製品の受動喫煙は、乳幼児突然死症候群のリスクも高めるとされています。
厚生労働省の資料によると、2014年の受動喫煙による乳幼児突然死症候群の年間死亡数推計値は、73人とされています。
また、受動喫煙では乳幼児突然死症候群のリスクが4.7倍にも高まるといわれているため、自宅に乳児がいる場合は室内での禁煙や服の扱いに注意が必要です。
まとめ|アイコスの健康被害はゼロではない
今回、アイコスの健康への影響について巷で出回っている「アイコス発がん性250倍」について紹介しました。
結論、「アイコス発がん性250倍」は、具体的な数値を表す公的情報がないため、噂に過ぎないといえるでしょう。
しかし、アイコスが健康への影響が一切ないというわけではありません。
アイコスは、タバコ葉を加熱して煙を楽しむ製品のため、ニコチンやタールなどの有害成分が含まれています。
そのため、がんや呼吸器疾患などのリスクを高めると考えられています。
加熱式タバコ全般、比較的新しい製品のため、まだ明確な研究報告が少ないのが現状です。
今後の研究報告により、さまざまな健康への影響が発表されるかもしれません。
アイコスを楽しむ際は、健康への影響がゼロではないと頭の隅に入れておく必要があるでしょう。