ファンダメンタルジャーニーVol4〜銀行員は見た!『団体信用生命保険』悲喜こもごも〜

元銀行マンの赤裸々白書〜確定申告経験ゼロのラッパー編〜地方銀行に8年勤務し、住宅ローン・カードローン・フリーローンなど個人ローンの他、事業性融資・創業融資など幅広い業務を行い、現在は、飲食店のオーナーを務める傍ら、金融ライターとして大手メディアでの寄稿や監修を数多く担当。プロフィールはこちらページ内リンク

団体信用生命保険とは、住宅ローンを借りている人が返済期間中に死亡や高度障害で働けなくなったりした場合に、保険金で住宅ローンの残高が返済される保険です。住宅ローンを借りる際は、この団体信用生命保険(略して「団信」)に加入するのが必須で、借主にもしものことがあったとしても、残された家族が返済をする必要がなく、居住する家を失う心配もありません。今回は、私が銀行員時代に体験した住宅ローンの団体信用生命保険にまつわるエピソードをいくつかご紹介していきます。

借り換えなければ住宅ローンが返済できていた少し悲しい話

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  • 融資案件:借り換え
  • 家族状況:母親(70代)、子供夫婦と孫の世帯
  • 備考:母親名義の住宅ローンを息子名義で借り換え

母親から借り換えの相談が

他行で住宅ローンを借りている母親から「今、私名義で住宅ローンを借りている。返済しているのは息子だし、自宅も息子名義にしたいので、息子名義でローンを借り換えたい」と相談が。借り換えのシミュレーションをしたところ、現在借りている住宅ローンの金利が高く、借り換えを行うと毎月の返済額が15,000円程度軽減されることが判明。

突き当たった贈与という問題

十分に借り換えメリットが出る上、母親や息子としても「借り換えをしたい」という希望があった。しかし、母親名義のローンを息子に変える場合 、息子から母親への贈与になる可能性が高い。(母親の借金を息子が払うため、母親に贈与していることになるからだ。)万が一、税務署に贈与だと指摘されると贈与税の支払いで借り換えのメリットが吹っ飛んでしまうため、借り換えと同時に母親名義の土地と建物を息子名義に移すことへ。

母親から息子への贈与(不動産の名義変更)と息子から母親への贈与(ローンの借り換え)を同時に行うので、双方の贈与が相殺でき、贈与税は発生しないことになります。それでも「後から税務署に突っ込まれたら怖い」という思いがあったので、知り合いの会計士に相談し「問題ない」とアドバイスをもらい、融資案件を進めることにしました。

晴れて融資実行|返済額は軽減し、贈与も問題なくクリア

借り換えの融資実行と同時に不動産の名義変更も行い、母親・息子どちらにも喜んでもらえました。不動産の名義の変更は息子にとって「自分の家を持てた」という誇りになり、非常に喜んでもらうことができました。母親は「これで自分が死んだ時に相続の手続きをしなくていい」と安心されていました。

さらに、返済額も毎月15,000円以上軽減されたので、合わせて積立預金も契約してもらえることになり、預金のノルマを抱えていた私も「ラッキー」と思ったのが実情です。翌年、母親が税務署から「不動産の名義が変わっていることを説明してほしい」と呼び出されました。

これはある意味予想通りで、税務署は不動産登記で名義が変わっているものを全てチェックしていると言われているので、母親に「税務署から照会があるかもしれない」と事前に伝えておきました。税務署で「以前から返済は息子が行っていたので、不動産の名義もローン名義も息子に変えた」と伝えたところ、「わかりました。特に問題なさそうですね」と税務署からお墨付きをもらい、贈与の問題もクリア。贈与については会計士から問題ないと言われていたものの、やはり税務署から呼び出されたと聞くとハラハラしたのを覚えています。母親から「問題なかったよ」と聞いて、内心、胸を撫で下ろしたことは確かです。
これで、晴れて全ての手続きが終了しました。

借り換えの翌年にまさかの訃報

銀行員は毎朝新聞のお悔やみ欄を見るのが日課です。大口取引先が亡くなると預金口座を封鎖しなければなりませんし、取引内容によって弔電や葬式の対応があるためです。このお悔やみ欄で、昨年住宅ローンの借り換えを行なった母親が死亡したということを知りました。借り換え手続きなどを通じて、人間関係も密に築いていたため相当ショックでした。しかし、その後あることに気づきます。

「借り換えをしなければ、住宅ローンは完済できていた。。」
母親の死因はガンでした。今思えば、当時から自分がガンだと気づいていて「死亡した時に手続きが煩雑にならないように」と息子名義での借り換えを希望したのかもしれません。「私がもう少し詳しく、話を聞き『団体信用生命保険に加入しているから、死亡した場合には住宅ローンがチャラになる』と説明ができていたら」と自分を責めました。上司や同僚にも話を聞いてもらいましたが、「当時は母親がガンであることを知ることはできなかったのだから仕方がない」というのが全員の回答でした。息子夫婦には説明できないまま転勤となってしまいました。それからは団体信用生命保険の説明は、必要以上に丁寧にするようになりました。

いつでも借り換えることができそうな人が借り換えを迷っていた本当の理由

銀行員は住宅ローンのノルマを抱えています。新築物件の案件などはあまりなく、ほとんどがメガバンクなどに取られてしまうので、基本的には知り合いのツテをたどって借り換え案件を探し、ノルマをこなします。

そんな時に、地元の超大手の一部上場企業勤務の会社員が住宅金融支援機構から、金利3%以上の住宅ローンを借りていることを知ります。住宅ローンは通常0.5〜1.0%程度が目安のため、私はすぐに訪問し借り換えを提案。
本人からは「借り換えたいんだけど。。」という少し弱めな回答だけをもらうことができました。その後、何回か訪問し、実際に借り換えシミュレーションを提示しながら「どうですか?」「借り換えませんか?」と話をしましたが「うーん」「少しだけ考えさせてほしい」など、非常に煮え切らない回答。

私もノルマを抱えているので焦りがあり、「借り換えを行わない理由はないと思うのですが、何か問題があれば教えてください。解決できるかもしれません」と思い切って聞いてみました。すると、少し俯きながら「レクサプロを飲んでいる」と返答が。私はレクサプロについてどんな薬か知りませんでしたが、「分かりました。お話いただきありがとうございます。では症状が改善したらぜひ借り換えを進めましょう」と伝え、少し気まずい思いでその場を離れました。

レクサプロは団信に通らない

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後からレクサプロについて調べたところ、抗うつ剤でした。深刻な鬱の人は自殺をする可能性があるため、団体信用生命保険の審査に通りません。今は加入条件の緩いワイド団信などがあり、レクサプロを飲んでいる人でも住宅ローン審査に通過できる可能性がありますが、私が勤務していた当時はワイド団信などありませんでした。団信に通らなければ住宅ローンを借りることができないので、この案件はここで諦めることにしました。

男性が住宅金融支援機構から借りていた理由

男性が住宅金融支援機構(借入当時は住宅金融公庫)から住宅ローンを借りていた理由はおそらく健康上の理由です。住宅金融支援機構の住宅ローンは、団体信用生命保険への加入が必須ではありません。そのため、男性がレクサプロを服用していても問題なく住宅ローンを組むことができたのです。私は無理に住宅ローンを進めようとしたことを反省し、今後はもう少し慎重に提案をしていこうと自分の営業スタイルを見直すきっかけになりました。

夫が自殺して住宅ローンの返済に困り相談が|自殺でも団信はおりる場合がある

ある日、新聞のお悔やみ欄を見ていると、自分の担当エリアで住宅ローンを借りている顧客が死亡していました。男性は50代前半で死亡理由が特に記載されていなかったため「自殺かな」と思いました。私は他の顧客が死亡した時と同様の預金口座の一時停止等の手続きを行いました。

遺族が相談に来店

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新聞で死亡を知った翌日、死亡した男性の奥さんが来店しました。「夫が自殺してしまった」とかなり沈痛な面持ち。原因はいろんな所に借金があったとのこと。ご主人が亡くなったショックと、夫の作った借金を返済していかなければならず、精神的に参っている様子でした。

自殺では団信は出ないと思っていた

妻は「これから住宅ローンはどうなりますか?今までと同じ額の返済は厳しくて」と、今後の返済にかなり不安を抱いていました。私は「おそらく団体信用生命保険が下りると思うので、保険で返済される可能性が高いです」と説明。すると、妻の顔はみるみる変わり「本当ですか!?自殺でも下りるんですか?」と、不謹慎ですがかなり雰囲気が明るくなりました。

団信は自殺でも下りる

団体信用生命保険は自殺でも保険金が下ります。告知の際に虚偽がなく、加入から1年以上経っていれば例え死因が自殺だったとしても保険適用になります。
私は奥さんに夫が死亡した診断書を依頼し、保険を申請しました。診断書を提出し、1ヶ月後くらいに団体信用生命保険が下り、無事に住宅ローンは完済できました。

亡くなった夫は銀行からフリーローンも借りていたため、フリーローンだけは相続によって妻へ名義変更。消費者金融からの借入も複数あり、ちゃんと返済していくことができるか心配でしたが、私が在任中は問題なく返済されていました。発端は借主自殺でしたが、改めて団体信用生命保険の重要さに気付かされました。

今回は団体信用生命保険で私が直面したエピソードを紹介しました。みなさんが今後住宅ローンを組む際の少しでも参考になればと思います。

元銀行マンの赤裸々白書〜確定申告経験ゼロのラッパー編〜手塚大輔(てづかだいすけ)
ファイナンシャルプランナー。簿記2級。証券外務員資格。
地方銀行に8年勤務し、住宅ローン・カードローン・フリーローンなど個人ローンの他、事業性融資・創業融資など幅広い業務を担当。ファイナンシャルプランナーの資格を有する。100件あまりのフリーローン、住宅ローン数十件、その他に投資信託・個人年金・国債販売も取り扱う。現在は、飲食店のオーナーを務める傍ら、金融ライターとして大手メディアでの寄稿や監修を数多く担当。