奇才紳士名鑑~①地下アイドルライブを網羅する紳士~

 

世の中には、一つのものごとに「過剰な情熱」を注ぐ人が存在します。
一見は市井の人に見えながらも、よく話すととんでもないマニアだったり、情熱の持ち主だったりする……いわば「ちょっとどうかしている」人々が、世の中には多数存在するのです。
本人が気づいていなくても、その偏愛の形というのは往々にして美しかったり、他者から見ると面白k……いや興味深かったりするもの。
ケムールでは、そうした方々を「奇才紳士」と呼び、紹介する連載をスタートいたします。

第一回の「奇才紳士」は

記念すべき第一回に登場していただくのは、あとまくぶろぐ(@atmkblog)氏。ご自身のブログ「あとまくぶろぐ」にて「無銭カレンダー」 「ライブアイドルカレンダー」を掲載。わかりやすく言ってしまうと「地下アイドルのライブ情報を独自に集め延々と発信し続けている人」です。

■今回の「奇才紳士」

あとまくぶろぐ 氏
ブログ『あとまくぶろぐ』管理人。バンドマン時代、自分が観たライブ等の記録のために2008年頃にブログを開設、のちにアイドルにハマったことから、いつしか地下アイドルのライブ情報更新が中心に。現在の推しはPOMERO、Lion net girl、CUBΣLICなど。

地下アイドルのライブ現場を集め10年

――「地下アイドルのライブのスケジュールってどこかにまとまってないかな……?」と探していたら、偶然「あとまくぶろぐ」さんにたどり着いたんですが。いつから活動されてるんですか?

最近気づいたんですけど、「無銭アイドルカレンダー」を始めたのは2011年の11月だったんですね。というわけでつい先日10周年を迎えました。「ライブアイドルカレンダー」は2013年位からですかね。

▲こちらがサイト。世の中にはこんなに地下アイドル現場ってあるものなんですね。平均すると平日は5〜10本有料公演、1〜2本が無銭公演。週末は3〜40本 有料公演、5本前後が無銭という感じだとか。

活動の原点は「無職でニート」だった自分

――10年……! これって特にスポンサーや運営会社がいるわけでもなく、個人としてやられてるんですよね?

そうです。

――すごいですね……いや褒め言葉です。

「無銭アイドルカレンダー」を始めた当時、たまたま無職でニート状態だったんですよ。お金はないけどアイドルのライブは観たい、じゃあ無料で見られる公演はどれだけあるだろう? と調べてGoogleカレンダーに並べてみたのがきっかけです。当時のアイドル現場の状況というのも相まって、意外とお金を使わずに観られるということに気づきまして。
面白かったのでブログの1記事として公開するとアクセスがめちゃくちゃ伸び、今に至ります。

――無職じゃなかったら生まれなかったと。

だと思いますよ。
アイドルオタクのスラングで、無料で見られるイベントを「無銭イベ」と言ったりするので「無銭カレンダー」と題したんですけど、のちに「無銭」でなくても掲載したいものとか線引が微妙なものも出てきたので「ライブアイドルカレンダー」も作りました。そもそもは自分のためのカレンダーですしね(笑)。

――「無銭」の定義ってあるんですか?

例えばショッピングセンターのイベントお祭りのイベントステージなど、お金を払わず誰でも観られるものはもちろんなんですけど、最近多いのは「ライブハウスで開催、チケット代はいらないけど1or2ドリンクの代金はお客が負担」というパターンですね。一応これも広義では「無銭」かなと思い、「無銭カレンダー」に入れてます。

――「無銭」ならではの面白い現場ってありましたか?

たくさんありますよ、例えばこれとか。2012年に行ったイベントで購入したCDなんですけど、浦安発のガールズユニット「浦安マリンエンジェルス」


浦安マリンエンジェルス、略して「UMA」と。いいんでしょうかその略称。メンバーは小6~中2の女子とのことで今となってはちょっとコンプライアンス的に微妙な気もします。

――……結構なローティーンアイドルですね。というかなんですかこの「自転車の放置プレイは絶対NG!」ってキャッチフレーズ。

「自転車の安全利用と放置自転車追放を歌ったCD」ですね。多分、地元のダンススタジオとかに所属する子たちで作られたユニットじゃないかなと。

――こんなのまでチェックしてたんですか。

当時無職だったんで、大田区から新浦安まで自転車で行ったのもいい思い出です。100分くらいかかりましたけど。

――どうかしてますね!……繰り返しますが褒め言葉です。

これもおススメです。クリアクララっていう宅配ボトルウォーターサービスやダスキンの代理店をやっていた「NAC」という会社がありまして。そこの会長 が立ち上げた「くのいち」モチーフのアイドルグループ「桜組」。これも2012年ですね。当時、秋葉原の外神田3丁目の空き地にあったプレハブ内に専用劇場があったんですよ。


「くのいち」モチーフといい独特のフォントといい、なんとも味わい深いCDの数々。

――秋葉原にAKB劇場以外の専用劇場があったなんて。

解散公演を観に行ったんですけど、メンバーもお客さんも涙涙で終わった解散ライブなのに、会長があまりにも感動して最後の挨拶で「これは映像に残したいからもう一回やろう!」と言いだして解散を引き延ばされたという。あのぽかーんとした空気はたまらなかったですね。


地下アイドルの醍醐味とは

――……地下アイドルとか「無銭現場」ってそんな面白エピソードばっかりなんですか?

いや、それは特殊な事例かと(笑)。というか2010年代の初頭は、地方アイドルはじめいろんな個性的なアイドルが多くて、無銭現場も凄く多かったんですよ。今となってはそういう“面白い”現場がなくなっちゃったのがちょっと残念だなと思ってます。ショッピングモールでの無銭現場も少なくなりましたよね。サンシャインシティの噴水広場やラゾーナ川崎プラザの広場なんかではまだまだありますけど。

――「ライブハウスにわざわざ足を運ばないといけない」状況だと、“偶然の出会い”みたいなのは少なくなりますもんね。

以前は東京ラーメンショーとかでアイドルステージが必ずありましたしね。代々木公園でやってたアジア系小規模イベント内のステージで、合間にフライヤーを頑張って配ろうとしていた小池美由を見かけたりとか……テレビで見かけると、あのときの姿をつい思い出します。

――そういう「あのとき観てた子がこんなに立派になって……!」パターンの楽しみもあるわけですね。

そもそも無銭公演って、有料公演に比べて公演時間は短かいし、音響は良くないし、照明がしょぼいとかそういうパターンが大半なんですよね。でも気軽に生で見られるし、「かわいい!すてき!」と思ったら お金を払って2ショット撮影したり、無料でない公演に行くことにしたり。そういう興味を広げるきっかけになるところも魅力かなと思います。

――当然、無銭でない現場にも魅力はあると。

もちろんですよ! 「ポンコツなんだけどすごく頑張ってる子」とか「ちゃんと生歌で勝負してるんだけどすごくヘタクソ」とか、メジャーアイドルの現場ではなかなか観られない光景もたくさんあって。そういうのがたまらないんですよね。


持参してくれたチェキ帳。現在はお仕事の忙しさもあり「だいぶアイドル現場に行くことは少なくなりました」と言いますが、ごく一部でもこの厚さ。

――素直にうなずくのは少し躊躇しますけど、気持ちはわかる気がします。

あとこういう人たちもいましたよ、「セクシーオールシスターズ」。ユニットがいくつかあって、手島優さん率いる「爆乳ヤンキー」が有名ですけど。

「爆乳ヤンキー」、「爆乳三国志」、「セクシー甲子園」、「胸の谷間にうもれ隊」……読み上げるだけでIQがみるみる下がっていきそうな絶妙なユニット名の数々。

――手島優さんは大手事務所所属だったと思うんですけど、「爆乳ヤンキー」は地下アイドルカテゴリでいいんですか。

でも会場は六本木のライブハウスだったりしたんですよね。だから僕の中では地下アイドルカテゴリです。

――なるほど。そういえば、日々登録する情報ってどうやって探してるんですか?

ひたすらツイッターで検索して、手動で追加です。一時期はブログに書いてる人もいましたけど、今の地下アイドルってブログやってないですしね……それしか調べようがないんですよ。


商用化を断り続ける理由

――それはまた……。PVも多い時は月間2〜4万アクセスほどあったとお伺いしましたが、どこかの会社から商用運営にという話とかありませんでした?

ありましたね。何社か声かけていただいてお話したこともあります。
ですが、「やっぱりこれは仕事にしたくないな」と思ってお断りしました。
ただ同じようなことをやっていた他のサイトはなくなったり、頑張って続けていてもコロナ禍を機に消滅していたりしたので、商業ベースだとなかなか難しいんだと思います。
僕自身、そもそも、何かを「記録する」のが好きなんですよね。ブログもそれで始めたんですけど、その延長みたいなところは今でもあります(笑)。

実は、ここに載せきれない量の膨大な話を聞いたのですが、聞けば聞くほど奥深い無銭現場、そして地下アイドルの現状。
「サイトを仕事にはしたくない、あくまでも自分はファンで楽しみたい」
という、あとまくぶろぐ氏のスタンスはなんだか理解できる気がしませんか。
この記事を読んで、地下アイドルって面白そうだなと思った方は、ぜひ氏のブログやツイッターをチェックしてみてください。
ただし、ご本人も言うように「記録マニア」なので、膨大なRTが流れてくることだけはご覚悟を。

次回も、あなたの隣にいるかもしれない「奇才紳士」をご紹介します。

取材・文 ケムール編集部

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