限定品「ピース・アロマ・ヴィンテージ」を実喫レビュー【ピース全種類比較】5年ぶりに帰還した超・実験的なフレーバー設計【たばこトリビア】

毎年のように繰り返される値上がりと喫煙スポットの激減。タバコは「大衆の愉しみ」としてのポジションを徐々に失ってきた。
それを残念に思う人もいる。けれど健康増進の視点から見れば良いことには違いない。タバコの煙にアレルギーを持つ人もいる。
電車の中でもオフィスでもタバコ喫い放題だった時代の方がおかしいと。だから喫える場所を区切り、どちらかといえば喫煙する姿は隠したほうがいいと。
しかし、考えてほしい。
それはつまりタバコが「日用品」から「趣味」へと変化しているということではないだろうか。礼儀と節度と知性が必要な、知っている人だけが知っている、すこし面倒で、愛おしい存在。

だからこそいま--「全種類」喫ってみた。

今回は、ピース
1946年発売、現存最古にあたる国産タバコブランドである。
多くのファンを持ち、ほかでは得られない喫味に「ピース党」を自認する人もいる。まさに趣味のタバコ
売上から見ると2004年以降はTOP20位圏外(出典:一般社団法人日本たばこ協会)と、誰もが喫っている銘柄とは言えない(不動の一位は言わずと知れたセブンスター)。
だが、断言しよう。

ピースは国産タバコのなかで、もっとも正統であり、上質であり、かつ実験的なブランドであると。

2024年5月27日。日本。
岸田首相は、4年半ぶりの日中韓首脳会談に臨んだ。
立憲民主党の蓮舫参院議員は、ついに東京都知事選への出馬を表明した。
『ドラゴンクエスト』は38回目の誕生日(発売記念日)を迎えた。
そして、
日本全国の愛煙家は「ピース・アロマ・ヴィンテージ」を買うためにタバコ屋に走った!!

出典:CLUB JT

本記事ではこの限定タバコの味わいを実際に喫煙し、レビューする。
ただ喫うだけでなく、他の「ピース」各種との味の比較も行っている。購入前にぜひ参考にしてほしい。
1パック20本入り1000円。決して安くはないのだから……。
と言いながら、最初に書いておきたい。
可能であれば、今すぐに自宅近所か職場周辺のタバコ屋に取り置きの電話を入れることをおすすめする。「CLUB JT」でオンライン購入してもいい。
とりあえず買ってください。それからこの記事をじっくり読んでも遅くはない。

ピース・アロマ・ヴィンテージとは何か? いま喫うべき5年ぶりの実験作

まずはプロフィールから。

ピース・アロマ・ヴィンテージ

発売:2024年5月27日
タール:13mg ニコチン:1.2mg
価格:1,000円(20本)
一本当たり単価:50円

2019年の限定発売で多くの方々にご好評をいただいた「ピース・アロマ・ヴィンテージ」を、今再び皆様のもとへ。
5年以上熟成させた希少な厳選バージニア葉を使用したピース専任ブレンダーによる限定ブレンド。
芳醇かつ濃厚な香りと、凝縮されたなめらかで深みのある味わいを、ゆったりとお愉しみいただけます。(引用:CLUB JT)

「5年熟成」「厳選バージニア葉」「ピース専用ブレンダー」と、知らない人にはまったく意味不明なフレーズが並ぶ。しかしタバコオタクならこのハイスペックに心躍るはずだ。

なかでも「とりあえず買ってください」と言い切った理由は「2019年」というワードだ。

このタバコは2019年3月に限定発売された商品の再販。タバコの旨味を引き出す熟成工程ではウイスキーのように樽のなかで寝かせることもあるが、その熟成期間である5年ぴったり経って帰還した。
「5年間、仕込んでましたよ」
このストーリーがアツい。

そして数量限定発売であり、売り切れたら終わり。同じペースでいけば、次の再販は2029年となる。
そう、シンギュラリティ到来後だ(きっとそうに違いない)。いまケムールを読んでいる読者のほとんどは人工知能の奴隷となっているか、サイボーグ化しているだろう。火星にいるかもしれない。
地球上で喫える最後の「ピース・アロマ・ヴィンテージ」なのである。

ケムールは2021年スタートのメディアなので、初発の「アロマ・ヴィンテージ」をレビューできていない。そうした意味では編集部的にもテンションMAXだ。
さっそく開封していこう。

といっても、もちろんすぐには喫わない。そんなもったいないことはしない。趣味のタバコには、火をつける前にいくつも楽しみがある。
まずは見かけ。味覚は視覚の影響を受ける。デザインから見ていく。

【1】唯一無二の「赤いピース」 箱・包み紙・タバコのデザインを観察

「缶入り」である。トレードマークの「鳩」はレリーフになっており立体的に輝くゴールドカラーだ。フラットなスクエア缶は、愛煙家ならよく知っているであろう「ザ・ピース」と同じサイズ。しかし色はネイビーでなくワインレッド。
そしてよく見るとベタ塗りでなく、上部がぼんやりと色が明るくなっている。

光が射し込んだようなデザインには、ピースブランドの誇り高き伝統と新しい未来の扉を開く意味が込められています。(引用:CLUB JT)

と公式の発信がある。芸が細かい。
この商品がかなり実験的と言えるのは「色」だ。(おそらく別記事で特集するが)ピースのパッケージのカラーリングは超・厳格に統一されており全モデルの配色に規則性と意味合いが見て取れる。そして「赤」は定番品には存在しない色なので、これが一目で特別なピースだとわかるのだ。
※かつてはほかにも「赤いピース」は存在した。それはまた別の記事で紹介しよう
世の中には色が変わっただけで「これはえらいことになったぞ」と思わせるモノがある。赤ザク、色違いポケモン、Macbookなどだ。ピースも間違いなくそのうちのひとつ。

「Vintage」が強調されたロゴは側面にも印刷。
蓋を開ける。

美しい……。
シール状のパックに「Peace」の箔押し。これも「ザ・ピース」と同じ仕様でワインレッドに色変更されたものだ。本家の缶ピースもそうだが、湿度からタバコを守るためのシールをペリペリめくるときはテンションが上がる。いよいよタバコと対面だ。


と思ったら中にも紙パックが。これは「ザ・ピース」とまったく同じゴールドの「鳩」だ。ああ、何かが嬉しい。このタバコを隠す長ーい紙。「たいせつに喫ってほしいのです。」といわんばかりの過剰な包み方! パッケージだけで500円くらいかかってるんじゃないかという手間ヒマ感!!
めくると……。

おいおい、マジか。
おわかりだろうか。驚かされるのはこのフィルター部分の帯のデザイン。2本線でロゴを挟んでいる!
せっかくなので「ザ・ピース」を用意して比較すると一目瞭然。完全に新しい意匠だ。チャレンジしすぎじゃないか。もうこれは「ピース」とは言えないのでは?(※ピースです)

※この二本線が気になって仕方ない

上質の極みである「ザ・ピース」の帯デザインが骨太にすら見える。
では、その味は……の前に、香りはどうなっている?
まだ火をつけるには早い。着火前の香りを嗅いでいこう。たいていのタバコは、着火前と着火後では香りがかなり違う。
だからこそ火がついていない状態で嗅いでみるのも愉しみなのだ。

 

【2】着火前の香り 洋酒とフルーツの甘さが前面に

ピースといえばバニラフレーバーだが、まず漂うのは洋酒。ブランデーのようなふくよかな香りだ。樽っぽい熟成香と、「ザ・ピース」よりかなり強い甘さ。シュガーっぽいというよりフルーツ・ベリーのような優しい甘さで、その奥に植物質の葉の香りが控えている。ただ土っぽさまでは感じない。
とにかくものすごい奥行き。「うわっ」と声が出るくらい、深い。
深いというより、酔う。着火前の香りだけでナッツなんかをつまみに酔えそうだ。


初発の「アロマ・ヴィンテージ」の缶と比較した投稿を発見したため引用させていただく。フィルターの「二本線」は2019年版の缶で使われたディテールだったのか?(引用:X @chikei_n様)

そして、すべての用意は整った。実喫の時だ。

【3】煙にも宿るアロマ 「ザ・ピース」のフレーバーも確かに感じる

ピース全種類(リトルシガー除く)をタール/ニコチン別に並べる(この画像で銘柄を当てられたらあなたは変態です。)アロマ・ヴィンテージは左から3番目。「重い」部類だ。しかし…

タールは13mgだが、思いのほか煙は軽かった。口の中に入った一瞬だけ、舌先に感じる刺激……そのあとは芳醇そのもの。後味にもブランデーのような香りが残る。2服目以降もその香りはまったく弱まらない。着火前の香りが、そのまま煙に宿っている。
あえて言えば、「ピース」のタバコとしてはやや回りくどいほどの複雑なフレーバー設計となっているように思う。特有のバニラフレーバーはちょっと注意して探さないと見つからないほどであり、ピース党の人は戸惑うかもしれない。
バニラよりはるかにくっきりと感じる洋酒香。喫った感覚では、洋酒をバニラがあくまで目立たないように下支えしている。そして香りを邪魔せず苦味を極限まで抑えたヴァージニアタバコ葉がベースにあるというイメージだ。このベースの上品さに間違いなく「ザ・ピース」を感じる。完成されきったとも言える「ザ・ピース」の上に、巧妙に香りを積み上げたような匠の技。

もっとも実験的で華やか 1000円の価値は十二分にある

迷いなく「高級」と言える……1本単価50円では安すぎると思うほどに。もちろん日常使いには向かず、軽快にパッと喫えるシガレットの良さは薄い。できるだけ良い椅子に身体を沈めて喫いたい。
タバコのガサっとした雑味が好きな人にはとてもおすすめできない。そんな人はぜひ缶ピースを……いや「スモーキンジョー」を喫ってくれ(これも美味い)。
現行品のピースを含めて、もっとも華やかで、強い主張だ。
あえて「実験的」と呼びたいピースの最前線を、売り切れる前に体験してほしい。


「ピース・アロマ・ヴィンテージ」オンライン購入サイト▼
https://www.clubjt.jp/members/brand-site/peace/topics/aroma-vintage/
※CLUB JTへの会員登録が必要

 

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