須田慎一郎 たばこと社会 ”愛煙家”はどこへ向かうのか!?|直撃取材「#たばこのことば」

愛煙家の方々がけむりを通して見えたもの・考えたことを伺う直撃取材です。今回の愛煙家は、須田慎一郎氏(ジャーナリスト)です。

”オジキ”の取材に欠かせないアイテム

政治経済や社会問題に興味を持つ人なら、”須田慎一郎”というジャーナリストの名前を知らない人のほうが少ないだろう。
数々の汚職事件や刑事事件をスクープし、テレビ・ラジオではニュース番組のコメンテーターとしてメディアで顔を見ない日はない。近年は「取材するYoutuber」を自称し「別冊!ニューソク通信」や「闇鍋ジャーナル(仮)」などの硬派な報道系Youtubeチャンネルを数十万人規模の登録者数に押し上げた。
豊富すぎる取材経験に加え、歳を重ねるごとに増していくかのような瞬発力は、最近では「colabo問題」「ガーシー逮捕」などでの緊急ライブ配信にも現れている。話題のニュースに隠された、一般人にはわかりにくい法的な課題やウラの人脈・金脈なども含め、ときにユーモアを交えて解説し、事件の本質を見抜く目は視聴者の信頼を集める。
そんな凄腕ジャーナリストがなんでケムールに登場?? 社会問題を扱った連載といえば「たいへんよくもえました~今月の炎上ニュース~」みたいなアホ企画しかないだろ! と驚いている読者に答えを教えよう。
須田さんはYoutubeで「喫煙者応援企画」という動画シリーズを続けているほどの愛煙家の味方なのだ。もちろん本人も喫煙者。取材の前後には愛用の赤ラークの一服が欠かせないという。超多忙な取材の合間を縫って参加してくれた。
そこで今回はジャーナリストだけではなく愛煙家としての須田慎一郎さんの一面をインタビューしていく。ファンからは「オジキ」と呼ばれるイカつい風貌にビビりながら話を聞いたところ、「煙草」と「社会」をめぐる意外なエピソードが飛び出してきた。

煙草とジャーナリズム

ーー「別冊! ニューソク通信」の「喫煙者応援企画」はどのような経緯ではじめたのですか。
全席喫煙可のレストラン「LIGHTERS」や、無料喫煙所を展開するスキマデパート、投票型喫煙所を設置するコソドなどのユニークなスタートアップに取材していますね。

もちろん私自身が喫煙者で、たばこに愛着を持っているということがあります。
しかしもう少し視点を広げてみると、さまざまな社会問題を取材していくなかで「喫煙」という行為に対する環境の変化が気になっていたんです。
私の事務所は、台東区と千代田区のちょうど境目の台東区側にあります。台東区はもちろんポイ捨ては禁止ですが、路上喫煙ができます。しかし道を一本渡って千代田区に入れば、路上全面禁煙になる。片や過料が課されるわけです。千代田区は地価が高いこともあって屋外喫煙所もとても少ない。
だから、わざわざ台東区に入って来てタバコに火を点ける人がいたりね(笑)。これって何が起こっているんだろう?という思いがきっかけでした。

ーー 千代田区の路上禁煙は2002年開始ですから、もう20年以上も経ちます。たしかに、昔はどこでも喫えました。それこそ駅のホームでも…。

私が煙草を喫いはじめた頃は、在来線の特急車両のシートにも灰皿があった。路上だろうが飲食店の店内だろうが喫えるのが常識、という時代がありました。
しかし今振り返ると、それはそれで行き過ぎた環境だったと思いませんか? 煙草が嫌いな人の権利を害していると言われても仕方がない。喫煙者のマナーも、今よりもずっと悪かったでしょう。
だから変化することは当然です。そこで、本来あるべきマナーのラインはどこだろうか? と考えたとき、今度は非常に喫煙者に風当たりの強い社会になっているように見える。
特に都市部では、少ない喫煙所に喫煙者の行列ができている光景はおなじみになりました。人口の約2割の喫煙者が利用するには、明らかに公共サービスとしてキャパオーバーです。急速に肩身が狭くなったと感じている喫煙者の方は多いでしょう。

ーー 喫煙者に「優しすぎた」社会から、「厳しすぎる」社会に変わっている…。

根拠を持って説明され、世間の人が納得しているなら、私も受け入れます。しかし一般的に見てもおかしい状況であれば、しかも誰も合理的に説明してくれないなら、声を上げなくては。
「禁煙ファシズム」という言葉も聞かれるようになって久しい。では喫煙者と非喫煙者はどう共存していくべきなのかというのもテーマのひとつです。喫煙者応援企画では「反喫煙派」の論客の方と対談もしています。

ーー 特に都市部での喫煙環境が変わったのは、2013年に東京オリンピックが決まって以降ではないでしょうか。「原則屋内禁煙」にして、海外にクリーンな東京をアピールする必要もあったのでは。

どうでしょうか。2019年12月の新国立競技場のこけら落としはラグビーワールドカップでしたが、屋内も屋外も禁煙にした結果、競技場の周囲はまるで灰皿のように吸い殻だらけになってしまいました。なぜか? 海外からやって来た観客にとっては、屋外は喫煙可という認識が強いからです。
つまり、日本が設定した喫煙ルールはグローバルスタンダードにすらなっていないわけです。「ガラパゴス化」している。喫煙行為には日本特有の歪みが凝縮されています。
私はその状況に不満を訴えたいというよりも、「喫煙」ほど価値観と環境が激変した行為は、ほかにないんじゃないか。その点が興味深いんですよ。

ーー では、タバコを喫う環境はまだまだ変化の途中なんですね。

そう、いまは揺り戻しの時期なのだと思いますよ。現在のような歪みは、企業にとってはビジネスチャンスでもある。スキマデパートやコソドなどの喫煙者によりそった事業を展開するスタートアップに取材していると時代が見えます。

禁煙運動に隠された”本質”

ーー 特に印象に残っている取材はありますか。

「喫煙者応援企画」を通して、重要な事件報道につながったことがあります。「横浜副流煙裁判」です。

ーー「横浜副流煙裁判」。同じマンションに住んでいた方どうしが、煙草の煙で体調を害したという健康被害をめぐって2017年に起こした民事裁判ですね。原告の方のご家族は受動喫煙症(広義の化学物質過敏症)で、煙草のけむりが原因だったという。

そうです。現在は被告側から反訴が行われている最中ですが、この件は非常に根深い。
大きな争点は原告の方への受動喫煙症の「診断書」です。これは日本禁煙学会会長の作田学医師が交付したものですが、これが「虚偽記載」だったとして、民事から刑事裁判に発展しています。つまり告訴されているのは、作田医師なのです。
というのも、副流煙を生じさせたとして訴えられた被告(喫煙者側)のご家族は本職がミュージシャンで、録音スタジオとして改装されたかなり気密性の高い室内で煙草を喫っていた。けむりが外に漏れそうな環境ではなかったんですね。それなのに、原告側は自宅の壁が変色したり、室内の観葉植物が枯れたり…という被害を訴えていました。どうもおかしな主張だったわけです。
そして化学物質過敏症の診断書を交付した作田医師は、原告のご家族を直接診療してもいませんでした。

なぜこんな無責任がまかりとおってしまうのか?
調べていくと、この「化学物質過敏症」の診断は医師の裁量ひとつで決まっていることがわかったんです。確定した基準はなく、症状の原因がハウスダストなのか煙草のけむりなのかは医師の一存で判断している。「えいや」で出してしまえる診断書なんです。
そして、認定されると障がい者年金がもらえる。つまり公金が動くわけです。横浜副流煙裁判の原告ご一家も、障がい者年金を受けとって生活を成り立たせるという構図ができあがってしまっていました。

そして、日本禁煙学会と「化学物質過敏症」を診断する医師はグループ化していました。「副流煙」を盾に好き勝手に診断書を交付して、定期的に診療を受ける患者を囲い込むビジネスになっている。
ああ、本質はここにあったんだ、と思いましたよ。
つまりこの裁判は、医療現場の無責任と、公金の適切な使用という制度的な問題を表面化させました。きわめて闇が深い。現在、医師会は戦々恐々としています。

ーー もう煙草の健康被害というテーマを超えていますね。環境問題ビジネスとかで良く聞く利権構造と同じ話だ…

この取材のきっかけは、被告(喫煙者側)のご夫婦からのメールでした。孤立無援だった被告を応援してあげるくらいのつもりで関わり始めたのですが、こんなに大きな問題に発展するとは当初は思いませんでした。まさに「喫煙者応援企画」を続けていたから追えた事件です。

オジキの愛煙道

ーー いきなり話題が柔らかくなりますが、須田さんの喫煙スタイルについて伺ってもいいですか(笑)。愛用のタバコは?

長いこと赤ラーク、12ミリですね。
たしか大学生の時に最初に喫ったのはショートホープかなあ。当時は、10本入りで110円でした。学生でお金がないからショートホープをひと箱ずつ買ってね。
社会人になってからはずっと赤ラーク。昔はパッケージに活性炭入りのフィルターの断面図が描いてあって、なんとなく体に良いような打ち出しをしていましたね。ぜんぜん関係ないのに(笑)。今は見かけなくなりましたが、ラークはテレビのコマーシャルや宣伝ポスターもかっこよかった。
でも、アメリカの東海岸に行ったとき、現地の人はほとんど赤ラークを喫っていなかったのが印象的でした。人気なのは圧倒的にマルボロ、せいぜいウィンストン。ラークはマンハッタンのコリアンタウンにあるデリでやっと見つけたのを覚えています。ブルーワーカーのタバコみたいですね。

ーー 加熱式タバコは喫いますか。

加熱式のデバイスも使っています。紙巻きタバコより喫える場所が多いのは便利ですね。
でも、私はやっぱりラークだなあ。美味しいと思うから。加熱式が普及してきて気づかされたのは、タバコってニコチンを摂取したいから喫っているだけじゃなかったんだなと。タバコが与えてくれる満足ってなんなのかと考えるようになりました。
こんな社会になってきて、面倒だと思って卒煙していく人もいる。それでも良いと思います。でも私は面倒な部分もちょっと好きになってきているんですよ(笑)。愛着がわいてきてね。どこでも使えるわけでない、場所とマナーを必要とする、不器用な嗜好品というのも良いじゃないですか。
私は感じの良いバーや喫茶店でコーヒーを飲みながら煙草を喫うのが大好きなんです。そういうタバコを楽しめる場所をもっと大事にするのも良いと思いますよ。

ーー でも、もうちょっと喫える場所が増えてほしいけど…。

たしかにね。喫煙所は明らかに足りない。
大阪が2025年1月から路上全面禁煙(編集部注:1000円の過料)になりますが、当時、大阪市長だった松井一郎さんと話す機会があったんですよ。
松井さんも愛煙家だし、路上に喫煙所を設置しようと計画していたんですが、聞けば「区に3つずつくらい設置しようと思う」と。いやいや、とんでもないと思ってね。「松井さんと違って、市民は公用車の中で好きにタバコを喫えるわけじゃないんですよ!!」と訴えましてね(笑)。それでずいぶん増やしてくれました。

最高の喫煙所はエクセルシオール?

ーー 取材で全国各地を飛び回っていると思いますが、取材中のタバコを喫う場所で困ったりしませんか。

取材のあとの一服はもうマストだから、終わったらどこで喫うかを考えてから取材します(笑)。
昔は取材中にもタバコが喫えた。経営者にインタビューに行けば、応接室のテーブルの真ん中に大きなクリスタルの灰皿と卓上ライターが置かれているのが当たり前でした。話を聞きはじめる前に「まあ一服…」という感じ。
いまはそんなこと滅多にありません。昔は議員会館の執務室にも灰皿があったけど、いまは官邸も公邸も含めて、決められた喫煙所じゃないと喫えない。
逆に、面白いものでお気に入りの喫煙所ができました。

ーー お気に入りの喫煙所ですか。

そう。私は喫煙所にはうるさいよ(笑)。
ドアを開けて入った瞬間、「この喫煙所は、タバコを喫っている人が設計したんだ」とわかる喫煙ルームがある。嫌々設置している喫煙所と雰囲気が違うからね。無機質な喫煙所はきらいです。
最近好きなのは、品川駅のコンコースにある本屋の前の、あるお店。その奥に、ちょっとした写真なんかが飾ってある広めの喫煙所があってね。手前の店でスタンディングでビールを飲んでから、奥で一服する。あわただしい乗換駅の喧噪の中でほっと一息つける、砂漠の中のオアシス。取材中の自分の精神状態にシンクロするんだろうね。
もうひとつ、東京駅八重洲口のエクセルシオールカフェの喫煙ルーム。あそこは席のつくりも良いし、遅くまで営業しているし、洗面所のハンドソープまで好み。総合点が高い!

ーー 最高は八重洲口のエクセルシオール… なんとなく高級ホテルの喫煙所とかのほうが居心地が良いのかと思っていました。

私にとって大事なのは、タバコを喫う人の気持ちがわかっている人が作ったかどうかなんだよね。
もちろん豪華な喫煙所もいいと思いますし、喫煙者それぞれに好きなポイントを見つければいいと思いますよ。

ーー ちなみに議員会館の喫煙所はいかがですか?

うーん、イマイチ(笑)。いかにも事務的な感じで、あれは喫煙者が作った喫煙所じゃないね。

ーー 移動中のタバコ事情はどうですか。

だんぜん、近鉄電車の特急車内の喫煙ルームが好きですね。
バーに腰掛けられるようになっていて、景色もよく見える。関西に行ったら遠回りしてでも近鉄に乗りたい。しかも、昔ながらの喫煙ルームを残しているわけじゃないんですよ。新型車両が出るたびにどんどん設備がよくなっていく。
煙草を楽しみながら旅の時間を過ごしてほしいという、鉄道会社の思想を感じるんですよ。どういう人が設計したのかなあ。
近鉄に比べたら、JRの車内喫煙所なんてニコチンを補充しているだけですよ(笑)。

ーー 須田さんもしばらく禁煙しそうにないですね。

いえ、もちろんタバコは好きですが、実はそこまでこだわっていません。やめるかもしれないし、喫い続けるかもしれない。
絶対にやめない!! という人もいます。その気持ちも理解できますが、私はあまりかたくなに主張したくはない。それでは、「禁煙ファシズム」と同じ地平になってしまうと思いませんか。
私はタバコって、あくまで気楽に、愛着を持って付き合うものだと思うんですよ。


須田慎一郎(すだ・しんいちろう)

経済ジャーナリスト。1961年、東京生まれ。日本大学経済学部卒。経済紙の記者を経て、フリー・ジャーナリストに。「夕刊フジ」「週刊ポスト」「週刊新潮」などで執筆活動を続けるかたわら、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」、読売テレビ「そこまで言って委員会NP」、文化放送「須田慎一郎のこんなことだった!!誰にもわかる経済学」、YouTubeチャンネル・ニコニコチャンネル「闇鍋ジャーナル(仮)」他、多方面で活躍中。
また、平成19年から24年まで、内閣府、多重債務者対策本部有識者会議委員を務める。政界、官界、財界での豊富な人脈を基に、数々のスクープを連発している。

Kemur PICK UP:いままで出会った印象的な愛煙家は?

 

印象に残っている愛煙家といえば、三井住友銀行頭取会長の巽外夫(たつみ・そとお)さんかな。イトマンやマツダをはじめ、数々の企業再建を手掛けた実業家です。
あるとき、本人からきいたんですが、経営会議のテーマが「喫っているタバコを替えようと思うが、どの銘柄を喫うべきか」だったときがあるんだから。みんなあっけにとられたらしいですよ(笑)。人柄が出ていたんですね。
(談)

「喫煙」ほど価値観と環境が激変した行為は、ほかにないんじゃないか。ーー須田慎一郎


次回の#たばこのことば

▶つぎの愛煙家は、ひろゆき 氏です。

ひろゆき
1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学に進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設、管理人に。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。著書に「1%の努力」(ダイヤモンド社)「僕が親ならこう育てるね」(扶桑社)等。

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