【つぶやきシロー】タバコ喫う人ってこんな人いるよね 直撃取材#たばこのことば

愛煙家の方々がけむりを通して見えたもの・考えたことを伺う愛煙家連載です。
今回のゲストはお笑い芸人・つぶやきシローさん。Twitterでは毎日ネタを投稿し続け、フォロワー99万人という『つぶやき』の帝王です。
10年以上前にタバコをやめたつぶやきさんに、喫っていたころの思い出と「喫煙者あるある」を聞きに、ホリプロまで行ってきました。

■『つぶやき』の帝王、ケムールに降臨

 ケムール? ライテックさん? ああホントだね、ライターの裏のシールに書いてる。ライテックさん。へぇー。こんな裏っかわのシール見ないからね、へぇー。
 で、もう禁煙してるんだけど、いいの? あ、いいんですか。思い出を話せばいいの。
 で、落合陽一さんが出てる? ひろゆきさん? 関暁夫さん? 僕でいいの? 僕が一番弱いよ。タールでいうと0.1mgの弱小タレントだからね。軽いよー。

■はじめてのタバコは?

©JT

 タバコねぇ。
 生まれたのは栃木の田舎のほう。近所のタバコ屋におつかいで親が喫ってたハイライト買いに行ってたね。120円だった。エコーが70円。まだコンビニでタバコが売ってなかったんじゃないかな?
 親は僕が高校生の時に禁煙して、もらってきたタバコを「お前喫うか?」って渡されたことあったね。「え、高校生に…」あれ、どういうつもりだったんだろう。あのとき普通に喫ってたらどうなってたんだろうね。
 喫いはじめたのは20歳。みんなカッコつけて未成年で喫うけど、僕はハタチから喫ったタイプですね。最初はキャスターマイルド、友達が喫ってたのと同じやつ。220円だったかな? 最初はなかなかひと箱なくならなくて。でも、だんだんクセになって。
 キャスターは当時ソフトパックしかなかったんですよ。喫い終わってグシャッて潰したら中に一本残ってた時、悔しいね。あと雨に降られたとき。茶色くなったタバコを伸ばして乾かしてた。焼き鳥屋さんみたいにコロコロ転がして。

■タバコにこだわりはあった?

©JT

 どうですかね。キャスターの次はマイルドセブンにいって、それのライト、その次がスーパーライトかな。ずっとマイルドセブン。一番ポピュラーだから。当時はそんなに洋モクもなかったしね。いま、アメリカンスピリッツだっけ? なんか10色くらいあるね。あれ喫ってる人、なんかこだわりあるよね。「俺は、この色なんだ」っていう。
 メンソールも喫わなかったね。当時はちょっとバカにされる感じあったんですよ。男なのにメンソールなの? って。男なのにオートマ免許なの? 男なのに短大卒なの? みたいな。メンソールはインポになるとか言われたしね。え、あれデマなの?
 細~いバージニアスリムとか。あれ、膝の上にネコいないと成立しないね。セブンスターも箱がかっこいいから憧れたけど、パチンコ打ちながらガンガンセブンスター喫うみたいな、そういう感じもなんかねぇ。
 ライターも普通の100円ライター。お金ないし。でも紙のマッチはかっこいいから憧れたね。zippoの足でシャシャってやる技、練習したり。シャシャって、ただ火を点けたいだけ。まわりの友達もそんな感じですよ。
 あ、ライターっていえば、タバコ買ったらムリヤリ3本喫って、そのスキマにライターを入れたい、みたいなのありません? コンパクトにしたいがために。

■カッコいいと思う愛煙家は?

 うーん、まわりは松田優作さんとかね。『探偵物語』みたいにライター改造して火力最大にしてたね。僕はあまり通ってないけど。僕の場合? ベタだけど……高校の時に見てた『とんぼ』かなあ。長渕剛さんね。あ、ベタですか? ベタでいいんでしょ? 『とんぼ』の最終回ね。バンバン背中刺されてるのにタバコ喫ってるシーン。「え?それで喫える?」っていうね。
 え!? 鳥居みゆきさんも言ってた?

©TBS
鳥居みゆき タバコは利き手で持て!”生きている狼煙”としてのタバコ論|直撃取材「#たばこのことば」

 じゃああれは? 『英二』だったっけ。石倉三郎さんが刑務所に面会に行ってタバコを一本、アクリル板の丸い穴から渡すんだよね。長渕さんは他にもカッコいいシーンあるよ。でもあとで禁煙するんだっけ? あんな筋肉質になるとはねぇー。

 そういえば、赤ラーク喫ってる友達で、変なカッコつけかたしてるヤツいたね。昔、赤ラークは箱とビニールのソフトパックがあって、箱のほうが20円くらい高いの。箱だから。で、合コン行くときビニールのラーク買って、中身を箱に移すの。「すごい地道な努力してんなあ」って思ってた。

©Philip Morris International Inc.

 両切りのタバコもあったよね。ゴールデンバットとか。なんとなくカッコよかったね。あれ喫ってる人、カッコつけだけで喫ってるんでしょうね。それ以外ないでしょ! だって美味くないもん、すぐ火が近くなって熱いし。口に葉っぱが入るし。
 まあ、僕もカッコつけから入ったんだけどね。
 でも両切りは狙いすぎだよね。今の時代、もうハイライトも狙ってる気がするね。「ハイライト、親父が喫ってたタバコです」みたいな。

■お笑いとタバコの関係は?

画像:自由国民社

 そう、ネタを書くときもタバコを喫ってたね。だいたい家で書いてます。公園で練習とかもしないし。ファミレスで書く、みたいなのもできないんですよね。周りが気になっちゃって。「ずっと居ていいのだろうか? もう一回くらいメシ頼んだほうがいいのかな? でもバイトの人はそんなこと気にしねえかな」って。だから家。インドアで完結。
 喫ってた頃は、ネタ書いてて徹夜すると、一晩でひと箱は喫ってる。灰皿にタバコを置いて集中してると、喫いかけがあるのを忘れて新しいタバコを喫っちゃう。朝がきて、ふと顔を上げると部屋中モクモクで部屋に入ってきた人に「バルサン炊いたの?」って言われたね。今考えるとあれは良くなかったね。あ、良くないって言っちゃいけないのか。え、いいの? いや、そのまま書かなくていいから!
 ……だからタバコ止めるとき、ちょっと心配になったね。「ネタ、書けるんだろうか?」って。それは思った。ネタとタバコはセットだったから。喫わないとイライラするんじゃないかって。でも大丈夫だったね。いっぺんに止めたからかもしれない。

■禁煙した夜のこと

※禁煙した頃のつぶやきさん ©グリコ
画像:お笑いナタリー

 2010年の末、40歳のとき。番組の企画で人間ドックを受けたんですよ。全部Aランク。でも肺だけが引っかかった。お医者さんが「はい、結核」禁煙は当然です、って言って。「いや、本当?」ってちょっと笑っちゃって。
 ……でもその収録の合間も僕はタバコ喫ってるんですよ。収録の時にはすでに人間ドックの結果は出てるはずでしょ。番組のスタッフもホリプロも知ってる、僕だけ知らないで、泳がされてタバコ喫ってんの。その数日間で命取りになる可能性もあるかもしれないのに。周りも賭けだったんだろうね。人の人生で(笑)。
 まあ症状が進んでなかったらしいから放っといたんでしょうけど。人にうつす心配もなくて、隔離されることもない。半年クスリ飲んでください。なあんだ、って。もちろんその日から禁煙。
 でもその次の日が大きいライブで新ネタやらなくちゃいけない日で。練習もしなくちゃいけなくて、その夜が一番心配だったね。タバコなしでネタできるのか。でも喫いたくならなかったんだよね。
 ちょうど結核の宣告を受けたとき「グリコワゴン」ってグリコさんの赤いバンで全国を回る仕事の最中だったんですよ。毎晩スタッフさんと飲んで。お酒飲んだらタバコ喫いたくなるっていうでしょ? でもそれもなかったね。ヘビースモーカーの友達が「やめちゃうのー?」ってそそのかしてきてもぜんぜん喫いたくない。
 それから一本も喫ってないです。それまでも禁煙のこと考えたり、風邪ひいたときに「いまはノドが…」って喫うのを止めたことはあるけど、3、4日止めたらまた再開しちゃうじゃないですか。徐々に減らしていこうと思ってもつい喫っちゃう。やっぱショックを与えるのが一番だね。
 思えば僕の人生でそういう変化って、あんまりなかったね。のほほんと生きてるから。結婚したり子供が生まれたらどうせ考えも変わるだろうとか思ってたけど、結婚もしないし。
 だから、20歳から40歳まで20年間喫って、区切りが良かったんだと思う。ラッキーだね。だって止められない人は大変でしょ。もう国が「50歳以上は全員禁煙」みたいな法律を作らないと禁煙できないと思うよ。禁煙なんか勢いと環境。言い訳できないようにしないと。

■タバコをやめて気付いた「喫煙者あるある」

 禁煙で別に体調が良くなったわけでもないけど。今も喫ってたらどうなってたかわかんないけどね。タバコ喫って100歳まで生きる人もいるし。人それぞれでしょ。
 あ、家出る時に持ち物が減るのは地味にいいよね。タバコとライター家に忘れたら「あぁ!」ってなるでしょ。夜中にタバコが切れても「あぁ!」って。そういう手間が省けるのはいいよね。
 テレビ局の喫煙所でタバコ喫うどうしで話したり、そういうコミュニケーションはなくなったね。「あ、そっちのグループ行っときたい」っていう。仕事の合間にスタッフと離れて本音を話すみたいなことはなくなったかな。景色が変わんないっていうね。そういう意味では切り替えのアイテムだろうなとは思うよね。でも考えてみたら演者だけの喫煙所があるわけじゃないから。むしろ「誰だろ?」って人がいるね。局の喫煙所は。
 禁煙するとタバコが嫌いになるとかいうけど、それは特にないね。気持ちはわかるし、別にどうぞって感じ。
 ただ待たせるのがイヤだよね、喫煙者は。ロケ中、偉い人とかディレクターが「タバコ休憩入れましょう」って、いきなり休憩になる。
「タバコ休憩」ってなにそれ? あの当たり前のように許されてる休憩。その間、こっちは何休憩なの? ってなるじゃない。しかもタバコで5分休憩です、って言ったのに2本くらい喫って10分とか帰ってこなかったりするね。で、戻ってきたら息も臭いし。別の車で行け! と思うよね。副流煙とかそういうのじゃないの。「このオジサンの口に入って出てきた余韻を俺も吸うんだ」っていうのがイヤなの。もうケムリ出ないタバコができないのかね? まあ、ケムリがいいんでしょうけど。
 タバコやめて、かわりに家でお酒を飲むようになったかな。それまでは外で飲むだけだったけど。でも別に飲みながらネタ書くわけでもないし、食べる量も変わらないし、ただタバコがなくなっただけ。「あ、別になくてもよかったんだ」と思った。本当の愛煙家じゃなかったのかもね。「タバコを喫む」ってほどじゃなかったのかもしれない。
 でも、そうだな。あと1ヶ月って余命宣告受けたらタバコ喫うかもね。タバコ買って、一本喫って、それで「さあ、どうしようかな」って考えるかもしれない。久々すぎてもう美味しくないかもしれないけど。

■Kerur PickUp:取材を終えて

つぶやきシローさんは、「あるある」のプロ中のプロだ。報道カメラのように人間の無自覚なくだらなさをスッパ抜いてくる。
そこで今回はあえて喫煙者へのボヤキとツッコミもきいてみた。特に読者にとっては耳が痛かったのでは? けれど決して説教くさくならない。常に目線はちょっと下からだ。喫煙者自身も気にしていたことを当てられた感じではないか。タバコの箱のスキマに無理矢理ライターを入れちゃうし、両切りタバコはカッコいいけど……やはり狙いすぎか? 「タバコ休憩」のときは喫わない人の時間も考えよう。そして決して「2本」喫ってはいけない! 覚えておきましょう。
これからも「たばこのことば」では喫うのをやめた人・喫わない人も登場するのでお楽しみに。(編集部)

■つぶやきシロー

1971年栃木県生まれ。ホリプロ所属。お笑いタレントとして『ボキャブラ天国』で人気を獲得し、現在は俳優・小説家としても活動。著書に『私はいったい、何と闘っているのか』(小学館・2021年映画化)『イカと醤油』(宝島社)『こんな人いるよねぇ~──本を読んでつぶやいた』(自由国民社)ほか。2009年から毎日『つぶやき』を投稿する公式Twitter(X)のフォロワー数は99万人を超える。
栃木放送 ラジオ『ミキシング!』(毎週木曜13:00-19:00)に出演中。

公式Twitter:@shiro_tsubuyaki

喫い終わってグシャッて潰したら中に一本残ってた時、悔しいね。ーー つぶやきシロー


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