【男の小道具から秘密兵器まで】名作映画に見る”ライター&マッチ”のスゴい使い方!!シガレット・バーン/映画的喫煙術

二台の映写機を交互に使って映画を上映していた時代。切り替えのタイミングの合図は、フィルムの端に出る黒丸印。
この印のことをアメリカ映画業界では“シガレット・バーン/煙草の焼け焦げ”と呼んでいました。
そう、昔から煙草と映画は切っても切れない関係にあったのです。

どこもやらない・追いつけない「最強のスモーキング・ムービー・ガイド」。今回のテーマは「映画の中のライターとマッチ」です。
人類史上最大のイノベーション、それは「着火!!!」この”火をつける”感動を現代に受け継ぐ日常的な道具は、いまやライターとマッチくらいしか残っていません。もちろんスクリーンにもたびたび登場。この愛すべき着火具は、どのように描かれ、どんなふうに使われてきたのか?
歴代の名シーンから秘密兵器まで! 細かすぎる・知らなすぎるライター&マッチの世界へようこそ。

文・小玉大輔
レンタルビデオ業界を退いた後、『キネマ旬報』等雑誌、WEBでの執筆やTwitter (@eigaoh2)で自分の好きな映画を広めるべく日夜活動している70年代型映画少年。Twitterスペースで映画討論「#コダマ会」を月1開催。第2代WOWOW映画王・フジTV「映画の達人」優勝・映画検定1級・著書『刑事映画クロニクル』(発行:マクラウド Macleod)

 

シン・可燃ライター

==ケムール編集部にて==

「先日、70年代型映画少年たちと『シン・仮面ライダー』(2023)観てきましてん」
担当編集「おー! 小玉さん世代には胸が熱い作品ですよね。いかがでした?」
「観終わって言ったこと100くらいあったんですが、今は一つも思い出せまへんわ。それより観ながらずっと気になってたことがありましてな」
「というと?」
ライターのことですねん」
「ライダー……ライター……?」
「喫煙者が減ってるし、電子タバコも普及してるし、最近はライター、特にZIPPOなんかのオイルを使うライターが売れてへんのちゃうかなぁって。担当はん、そのへんのことご存知ですか?」
「伊達にケムール編集部をやってませんよ。実は世界的なライターの売上は2021年から堅実に伸びているんです」
「へぇ!でもZIPPOを買ってるのはコレクターやないですか?」
担当「たしかにZIPPOには熱狂的なコレクターは多いですよ! でもたしかに、日常的に見かける機会は減ったかも。個人的にはオイル・ライターを日常的に使うとなると、失くしたらどうしようとか考えちゃいますし」
「すると担当はんは…」
担当使い切りライター・ユーザーですよ。かつて「100円ライター」と呼ばれてたものですね。ZIPPOやデュポンやカルティエ・ライターのコレクターさんには憧れる部分もありますが、タバコにサッと火をつけるだけなんだから、コンビニでいつでも買える使い切りが一番!」
「もしやライターを煙草に火を点けるだけの道具と思ってまへんか?」
担当「それ以外に何があるんです?」
「そんな考えの人が多いから、オイル・ライターが売れんようになったんやな。……ならば、ここで私が映画から学んだオイル・ライターの真のスペックをお話しせねばなりますまい」
担当「いきなりどうしたんですか!?」

 【Ⅰ:ライターの使い方】窮地を救うオイル・ライターの灯に命を託せ!

 使い切りライターは、強い風の中で火を点けるにはなかなかの苦行。よしんば火を点けられてもガスを出すボタンからうっかり指を放そうものならまたまた火が消えて、振り出しに戻る・・・。
一方、ZIPPOに代表されるオイル・ライターは少々の風なら何の問題もなく火は点きますし、一度点けたら指を離しても相当のことがない限り消えることはありません。
これだけで使い切りライターをお払い箱にするのに十分。「たかが煙草に火を点けるのに大袈裟な」と思われるでしょうが、人生何があるか分かりません。

 例えば、12人のテロリストに占拠された高層ビルに居合わせて、通風孔に逃げ込むような事態になったらどうします?ここは『ダイ・ハード』(‘88)で同じ事態に陥った先人のブルース・ウィリスに倣ってZIPPOオイル・ライターが絶対に必要です。使い切りライターなら通風口に流れる風で火はすぐに消えてしまい、真っ暗な中、フォーリーブスの歌じゃありませんが、「にっちもさっちもどうにもブルドッグ」状態ではありますまいか? 

 © 20TH CENTURY FOX

また旅客機に乗って逃亡を図るテロリストを阻止するのも使い切りライターでは役不足です。『ダイ・ハード2』(‘90)でブルース・ウィリスが悪の旅客機を爆破するためにタンクから漏れた燃料に火を点けたのもZIPPOライター。旅客機の出す風は強烈ですからね。

 © 20TH CENTURY FOX

それだけではありません。『[リミット]』(2010)のライアン・レイノルズのように地中に埋められた棺桶の中で目覚めるなんてことが起こるかもしれません。ライアンはZIPPOライターを持っていたから自分の置かれている危機に対処出来ました。もし彼のライターが火を点け続けるために火傷を覚悟しなければならない使い切りライターだったら・・・。天下のデップー(『デッドプール』(2016))でも絶対に心が折れていたでしょう。

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テロリストと言えば『ブラック・サンデー』(‘77)という映画があります。スーパーボウルの8万人の観客を狙った飛行艇による自爆テロを描いた物語です。実行しようとする側と、阻止せんとする側、双方の死力を尽くした戦いは飛行艇とヘリコプターの空中戦でクライマックスを迎えます。
致命的な銃傷を受けたテロリストは最後の力を振り絞って、スタジアム上空で爆弾の導火線に火を点けようとします。その時、彼が手にしていたのは1973年に発売されたBiC社製使い切りライター。しかし瀕死の状態では発火石がうまく回せず、自爆テロはあと一歩のところで防がれてしまいます。もし彼が使い切りライターではなく、火を点けるのが簡単なデュポンなどの電子着火式オイル・ライターのユーザーだったら、計画は成功していたでしょう。

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読者の方々はテロリストにならない、なる気もないと仰るかもしれません。しかしこの不安定な世界状況の中、導火線に火を点ける役を任されることがないとは誰にも言えません。
もしそんな時が来たら、『ミッション・インポッシブル』(’96~)のオープニングのようにマッチで着火する? ダメです!マッチで100%着火出来るのは映画やテレビなどのフィクションの世界の中だけ。だって現実は風次第です。

 

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 担当「映画の中のタバコの名シーンは大人のカッコよさを感じるものが多いけど、ライターが見せ場のシーンに注目すると、一気にアクション性とスペクタクル度が増すんですね。これは面白いなぁ」
「どうですか?頼れるオイル・ライターを使うしかないなって思いましたでしょ?」
「んなわけないでしょう。例に挙げられてるシチュエーションが特殊すぎますよ。使い切りライターで十分です」
「分かりました。ならば・・・」


 【Ⅱ:ライターの使い方】炎を味方につけ、男の度胸を魅せろ!!

とんでもなく緊張したり恐怖に苛まれたりしたら、指が震えますよね。こんな時にお薦めしたいのはオイル・ライターの着火です。最初の内、震える指ではうまく発火石が扱えないかもしれません。けれども何度かやっている内に徐々に心が落ち着いてきて、火が点く頃には平常心になっているはず。

「どうしてオイル・ライターじゃなきゃ駄目なの?使い切りライターでもいいでしょ!」

と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかしここはオイル・ライターでなければならないのです。
なぜなら『ゴッドファーザー』(‘72)でアル・パチーノが使ったのがZIPPOのオイル・ライターだったから。パチーノのように一度でZIPPOの火を点けられたら、アメリカ最大のマフィア、コルレオーネ・ファミリーの二代目ドンと同じく冷静沈着で度胸の据わった男の勇気の証になります。使い切りライターでは様になりません。

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ちなみに使い切りライター(電子ライターですが)で勇気を証明する方法がないではありません。
それはメル・ギブソン主演の『リーサル・ウェポン』(‘87)で麻薬組織の連中がやったことです。彼らは取引相手と会うのですが、その相手がとても生意気で偉そう。早いうちに身の程を思い知らせておかないと今後の商売に響きます。そこで組織のボスはそいつにライターを出させると腕をがっちり押さえつけ、着火させます。そして部下の腕を炙ります。これぞ昭和のヤンキーの十八番、煙草の根性焼き

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痛みを我慢するのが「男の勲章」ですから部下は平然としています。その姿に生意気野郎は当然、ビビりあがり、さっきの威勢のよさは鳴りを潜めてしまうのです。
もしリアルで商談に行き詰ったら、相手のライターで根性焼きをやってください。少々無理な要求を相手に飲ますことが出来ますよ。
不安な方は『タクシードライバー』(‘76)のロバート・デ・ニーロのように腕を燃やして鍛えるトレーニングをしてから挑戦してみてください。

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担当「できるか!!
「なんと!」
担当「たしかに画になるし、火をつける姿もカッコいいけど、マフィアのシーン見てZIPPOに替えるヤツなんかいるわけないでしょ。Y-ウイルス(※前回参照かっつーの」
「自分の勇気を証明出来るのに」
担当「さっきから言ってますけど、例が極端すぎますよ…」
「オイルライターはあなたを日常から非日常に誘う夢の道具なのですがね」
担当「何かないんですか?普通の生活の中での利点は」
「勿論、あります」

 

 【Ⅲ:ライターの使い方】日本人なら誰でも知ってる”高級ライター”の名シーンで世代を超えろ!

 喫煙人口が減った昨今、喫煙室に行く同僚がいると、後ろ暗いものを少々感じつつも妙な仲間意識を感じるもの。それは主に同世代の人間の間に生まれがちですが、会社勤めしていると上役なんかとも親しくなっておいて損なことはありません。特に新入社員の方は百利あって一害なし。
しかし、ただ煙草を喫うだけでは四十代以上の役職の諸先輩に注目されません。「こいつ、面白いな」と思わせるツールが必要です。
五十路以上の上司なら喫煙のきっかけは『探偵物語』(‘79~’80)の松田優作に憧れてという人が多くいます。そんな上司と親しくなり、目にかけてもらうために必要なツールが『探偵物語』で松田優作が愛用したカルティエのオイル・ライターです。

会社や飲み屋の喫煙室に上司と行った時、あなたがカルティエを使っていると気づかれただけで「今どきの若者には珍しい」と強く印象付けることが出来ます。しかしこれだけでは不十分です。もう一押しが必要です。『探偵物語』の優作のようにライターの火力を最大にしましょう。そして上司に気づかれるように、その炎で煙草に火を点けるのです。これで優作世代の上司の注目を集めること間違いなし。なぜならその世代の大半は若い頃に同じようなことをして前髪や眉毛を焦がした経験があるからです。
最後にこちらを見ている上司に「父の影響で、松田優作が好きになりまして」なんて言おうものなら、二人の距離がグッと近づくに違いありません。

 ©東映

担当「優作かあー! たしかにこれが、日本でいちばん有名なライターの使い方かもしれませんね。ーーでも小玉さん。まことに残念ですが「カルティエ」はいろいろ細工して魔改造しないと優作みたいな炎にできないみたいですよ。探偵物語のファンがあのデカい炎を出す場合、使い切りライターのレバーを最大にしていた人のほうが多かったんです
私「な・・・なんだってーー!
(※もちろん、絶対にマネしないでください)
担「やっぱりボクは使い切りライターのままでいいです
私「こうなれば仕方がない…オイル・ライターの無限の可能性を話すしかない
担当「今度は何ですかっていうか毎回思うけど、どこからそんなニッチなシーンを大量に集めてくるんですか?

 【Ⅳ:ライターの使い方】火をつけるだけじゃもったいない!”秘密兵器”としてのライター

 話していた相手がいきなりZIPPOに火を点けてテーブルの上に置く。どうしても燃える炎に目が行ってしまいます。すると声が聞こえてきます。

「あんたの話を聞かせてくれ」

これは黒沢清監督の名前を一躍世界に轟かせた『CURE/キュア』(’97)でサイコ・キラーが行った催眠法です。催眠にかかった人は後日、動機なき殺人を犯し、自ら命を絶ってしまいます。一度点けたら蓋をしない限り、火を消せないZIPPOの機能を生かした、ステルス洗脳装置と呼べる秘密兵器でしょう。

 ©1997 KADOKAWA 

オイル・ライターを秘密兵器として使うのはサイコ・キラーだけではありません。スパイだって使います。

“火打石/FLINT”の名を持つアメリカ一有能で、世界一自由なスパイ、デレク・フリントです。『電撃フリント/GO!GO作戦』(‘65)『電撃フリント/アタック作戦』(‘67)で、彼が携帯するのは83種類の秘密機能を備えた万能ライター。鉄を焼き切るバーナー機能、無線機能、脱出用のワイヤー射出機能、ガイガーカウンター機能、煙幕噴射機能などあらゆる状況に対応出来るのです。どうやったらこれだけの機能を仕込めたのか具体的な説明はありませんが、ライターの中は四次元ポケットになっているのかも知れません。

© 20TH CENTURY FOX

ライターを使った秘密兵器の決定版はやはり『007/黄金銃を持つ男』(‘74)に登場する黄金銃でしょう。万年筆、ライター、シガレット・ケース、カフスボタンがそれぞれ銃身、チェンバー、グリップ、トリガーになるという、秘密兵器感MAXで、変型合体が大好きな男の子心を刺激してくれる優れもの。

 

でも、黄金銃はギミックで、ばらした時に万年筆、ライター、シガレット・ケースとして使えないだろうと思われる方がいらっしゃるかもしれません。実際、007ファンの多くもフィクションとして黄金銃を愛してきました。しかしこの動画を見れば、そんな思い込みが間違いだったと気づくはず。

担当「…ここまでくると確かにすごいな…映画の想像力ですね」
「オイル・ライターの無限の可能性は判ってもらえましたかな」
担当「でも最初のふたつはそれこそフィクションだし、黄金銃にいたっては実用性ゼロじゃないですか。正直子どもの頃に観てたテレビアニメの『ゴールドライタン』思い出しちゃったけど」
「ふふふ、そんな担当さんのニーズにぴったりのライターがあるのですよ!」
担当「な・・・なんだって!」
私「どうやらお互い先月のKMRの癖が抜けていないようですが…まぁ、よろし。ご覧ください!

担当「こ、これは!このライター、ほぼモデルガンじゃないですか!

私「次はこれだぁ!

担「すごい!これどこで売ってるんですか?
私「私も欲しいんやけど。どうやらどちらも日本では販売されていないようですわ
担当「買えたら使い切りライターから乗り換えたんですがね。残念でした
私「無念…ならばマッチはどうだ?
担当「マッチ?

 【Ⅴ:マッチの使い方】ライターとは一味違う!深みあるマッチのセクシーな魅力

その昔、各家庭には徳用大箱があり、煙草を買うとオマケに付いて、喫茶店では自由に持って帰れたマッチ。今や生産量は激減。マッチで煙草に火を点ける人は勿論、そもそもマッチを見ること自体が少なくなってしまいました。
そんな状況でなぜマッチなのか?
理由はひとつ。ライターで火を点けるよりカッコ良いから。
でも普通のマッチではいけません。使うのはザラザラしたところで擦れば発火するロウマッチでなければ。
例えば、当コラムで行った『キング・オブ・ヘビースモーカー選手権』で堂々の3位に輝いた『ロング・グッドバイ』(‘74)の喫煙シーンをご覧ください。

 LONG GOODBYE, THE © 1973 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.. All Rights Reserved

壁やテーブル、果ては指の爪でマッチを擦って発火させ、煙草に火を点ける仕草はなんとカッコいいことでしょう。着火してから少しして燃え上がる炎にもしびれます。どうです、真似したくなりませんか?
ロウマッチの魅力が満喫出来るのは何と言っても西部劇です。中でもロウマッチ使いとして最高にイカすのは『夕陽のガンマン』(’65)のクリント・イーストウッド。実はイーストウッドはプライベートでは非喫煙者なのですが、ロウマッチの使い方が堂に入っています。

FOR A FEW DOLLARS MORE © 1965 ALBERTO GRIMALDI PRODUCTIONS S.A.. All Rights Reserved 

びっくりするのはジーンズで火を点けるところ。イーストウッドの真似をしてみたい方がいらっしゃるでしょうが、これは足の筋肉が鍛えられてカチカチじゃないと出来ませんからね。
簡単に誰でも出来るのは、同じ『夕陽のガンマン』でリー・ヴァン・クリーフが行った着火法。サスペンダーをしている人が傍にいればOKです。但し、火を点けた瞬間、相手と喧嘩になる可能性が高いのでご注意のほどを。

 FOR A FEW DOLLARS MORE © 1965 ALBERTO GRIMALDI PRODUCTIONS S.A.. All Rights Reserved

かつてホテルの部屋の灰皿に乗っていたブックマッチ。利点はふたつあります。まずすべてのマッチに一度に火を点ければ、もしもの時の簡易松明になること。もうひとつはメモ用紙として使えることです。ケヴィン・コスナー主演の『アンタッチャブル』(‘87)でそんな使い方をしていましたね。

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メモとして使った時に気をつけて欲しいのは、用が済んだらとっとと捨てること。でないと『アンタッチャブル』のように後で大変なめに会うかもしれませんよ。
実は日本のブックマッチの生産は終了しています。使いたいなら輸入品を買うほかありません。そんなマッチで煙草を味わうのは粋だと思いませんか?

ライターと同じようにマッチでも勇気を証明することが出来ます。マッチの火を息や風ではなく、自らの指で消すのです。これは『アラビアのロレンス』(’63)でピーター・オトゥールがやっていました。やり方は簡単。親指と人差し指で炎を押さえればOK。熱さを感じないで火を消せれば、あなたも“アラビアのロレンス”になれます。間違っても指の先を唾で濡らすなんてインチキはしないでくださいよ。

 © 1962, renewed 1990, © 1988 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

火を点けなくてもマッチは男を演出してくれます。『コブラ』(‘86)のシルヴェスター・スタローンのように漢度は確実にアップします。職場で同僚たちが仕事に行き詰った時、おもむろにマッチを口に咥え、「困っているな。俺が治療薬だ」と言ってください。あなたの信頼度は爆上がり確実です。

© Warner Bros. Entertainment Inc. 

 最後にマッチ棒で出来るゲームをご紹介しましょう。『去年マリエンバートで』(’61)で登場人物たちが劇中で何度もやってきた「ニム」というゲームです。ルールは動画を見て頂ければすぐに分かる簡単なものです。このゲームには必勝法があるそうですが、私は未だに分かりません。 

 ©1960 STUDIOCANAL – Argos Films – Cineriz

 

 【Ⅵ:ライターの使い方】実は最強?? 使い切りライターの美学

担当「マッチのほうがライターより繊細で、扱われ方もちょっと知的でセクシーさを感じますね。いまでもマッチ派がいるのがわかるなあ
私「いろんなことが出来るマッチ。どうです、使い切りライターから乗り換える気になりましたか?
担「でもねえ…。ロウマッチは30本入り2ケースで418円、ブックマッチは100個で4980円もするんですって。ブックマッチ1個にマッチ10本だから、煙草1本喫うのに約5円も掛かる計算です。これなら使い切りライターのままでいいですよ
私「担当はん。なんでそこまで使い切りライターにこだわりますねん?
担「仕方ない…使い切りライターこそ最強の着火具だという理由を教えますよ!僕の憧れの男を見てください
私「誰?
担「彼です!

私「…「ファイト・クラブ」(’99)のタイラー・ダーデン…」

担「そうです。キング・オブ・ヘビースモーカー選手権で第6位に入ったタバコ映画界のカリスマです。タイラーが使っているのはオイル・ライターじゃない、飾り気の一切ない、使い切りライター! この道具に頼らないところが、いかにも物質主義を否定するファイト・クラブらしくて最高にかっこいいじゃないですか!
私「その顔の腫れは…もしや…担当はんは…
担「…口にしてはならないのですよ
私「分かりました。そういうことなら賭けしよやおまへんか
担「賭け?
私「担当はんの自慢の使い切りライターで火を10回連続点けてください。それが出来たら、二度とオイル・ライターにせいとかマッチを使えとか言いまへん
担「出来なかったら?
私「決まってますやん、フフフ
担「それ、ロアルド・ダールの短編小説『南から来た男』だ!失敗したらボクの小指が…

私「使い切りライターで担当はんの男の価値を見せたら、タイラー・ダーデンも喜びまっせ。へへへ


▶いままでの「シガレット・バーン/映画的喫煙術」

著:小玉大輔(https://twitter.com/eigaoh2
扉絵:Tony Stella(https://twitter.com/studiotstella

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