【ゴダール没後1年】タバコを愛したヌーヴェルヴァーグ【シガレット・バーン/映画的喫煙術】

愛煙家ならもちろん、煙草を吸わない映画ファンにも、心に火を点けた魅力的な煙草の名場面があるはず。銀幕を彩った紫煙の名シーン・名優・名監督を紹介する「最強のスモーキング・ムービー・ガイド」です。

今回で連載まる1年! 愛煙家の皆様&映画ファンの読者様のおかげです。

12回目となる今回のテーマは、映画の歴史を変えたフランスのムーブメント「ヌーヴェルヴァーグ」。ゴダール、トリュフォー、ルイ・マル……コレで映画沼にハマった方は数知れません! 監督術から女優論まで全方位に批評されまくりのヌーヴェルヴァーグを、「シガレット・バーン」では、どんなマニアも批評家も語らない「タバコしばり」で解説します。
海が嫌いなら、山が嫌いなら、都会が嫌いなら…とりあえず一服しやがれ!

文・小玉大輔
レンタルビデオ業界を退いた後、『キネマ旬報』等雑誌、WEBでの執筆やTwitter (@eigaoh2)で自分の好きな映画を広めるべく日夜活動している70年代型映画少年。Twitterスペースで映画討論「#コダマ会」を月1開催。第2代WOWOW映画王・フジTV「映画の達人」優勝・映画検定1級・著書『刑事映画クロニクル』(発行:マクラウド Macleod)

ケムール編集部にて


担当「ジャン=リュック・ゴダールが亡くなって一年が過ぎましたね」
「そうですなあ」
「突然の訃報は2022年9月13日でした。なんだか早い気がします…小玉さん、ゴダールはいかがです?」
「真面目に言うと映画というものの根本を変えた革命的な映画作家。下世話に言うたら、世界中の映画青年に夢を見させた罪深い人ですな」
「罪深い…とは?」
「主演女優は監督に惚れるもんやと思わせたことですがな。一体、何人の映画青年が気になる女の子を主演にして自主映画を作ったことか!」
「たしかにゴダールは当時の妻だったアンナ・カリーナを何度も主演女優に起用してますね」
「しかし、ゴダールを真似た映画青年の多くは夢に破れました。彼女が俳優とかスタッフとかと恋仲になったなんてこともありましたよ。そんな日にゃ、映画青年は生ける屍のようになって泣きながら映画を完成させなあかん。悲劇も悲劇、大悲劇ですわ。まさに映画は屍を越えて…。嗚呼、恨めしい」
「話が具体的すぎる・・・もしかして実体験ですか?」
「・・・・・・いや・・・・・・聞いた話です・・・・」

ジャン・リュック・ゴダール( 1930年12月3日 – 2022年9月13日)
引用元 : Telegraph India

「恨みつらみがあるところ申し訳ないんですが、今回の『シガレット・バーン』はゴダールに代表される映画運動「ヌーヴェルヴァーグ」でお願いします」
「なんでぇ?」
「実は学生の頃よく観てたんですよ! 東映やくざ映画と『007』が大好きな小玉さんが難解なアート映画をどう語るのか興味あったんです」
「なんやねん、それ!」
「それに、小玉さんとゴダールには深い因縁があるんですよ」
「なによ?」
「なんと…小玉さんはゴダールと誕生日が同じなんです! 12月3日!」
「なんだって!!!! 長州力と同じなのは知ってたけど・・・」
「小玉さんが「ヌーヴェルヴァーグ」について書くのは宿命なんです! タバコしばりでお願いしますよ!」
「ぐぬぬ・・・」

「ヌーヴェルヴァーグ」という“自由”

 1950年代のフランス、セーヌ川の右岸にあった映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』の編集部には30歳前後の映画批評家がたむろし、左岸にあるモンパルナスのカフェには記録映画の若きスタッフが集っていました。

 50年代後半を迎えると彼らの中から一人、また一人と劇映画を作る者が現れます。ジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォー、クロード・シャブロル、アラン・レネ、そして系統は違いますが、ルイ・マルといった若者たちです。彼らの作品は演出、脚本、撮影、編集、音楽など映画製作において作り手と観客の間にあった暗黙の了解やセオリーを無視しても映画が作れるということを知らしめました。彼らは様々な規則に囚われていた映画に自由を与えたのです。人はそんな映画群を「ヌーヴェルヴァーグ新しい波」と呼んだのでした。

「ヌーヴェルヴァーグ」については詳しい解説本を読んでもらうとして、若い映画監督が“映画に与えた自由”とは、どういうものであったのかを私の個人的経験でお話しましょう。
引用元 : Stardust MasterClass

 

「意味わからへんやないか」!!…ゴダール初体験

 時は1980年代初頭に遡ります。

 高校生の私にとって、映画には「見たい映画」「見なくちゃならない映画」の二種類がありました。「見たい映画」は説明の要はないでしょう。問題は「見なくちゃならない映画」。簡単に言ってしまうと、文系や芸術系の大学生が教授に見せられたり、こじらせた映画ファンが義務として見に行ったりする映画です。

 「ヌーヴェルヴァーグ」は、当時、いっちょ前の映画マニアを自任していた私が義務として「見なくちゃならない映画」でした。またジャン=ポール・ベルモンドが好きだったこともあり、ジャン=リュック・ゴダール監督の「勝手にしやがれ」(’60)は「見たい映画」でもありました。

引用元:moviecollectionjp

 道頓堀の名画座で「勝手にしやがれ」が二本立てで上映されると知った時、勇んで劇場に向かいました。映画が始まると、多くの人がそうであるように度肝を抜かれたことは言うまでもありません。

 冒頭、いきなりベルモンド演じる主人公は警官を殺すのですが、そのシーンの編集がそれまで見ていた映画の編集とは似て非なるものだったのです。カットとカットが繋がっていませんし、物語もどこか変でした。ベルモンドが警官殺しの罪から逃れる展開になるのかと思っていたら、何事もなかったかの如く、彼と恋人ジーン・セバーグの中身のない会話が延々と続くのです。「俺は何を見せられてるんだ!」と正直、思いました。

 それはどうやら私だけではなかったらしく、前の席にいた男性二人連れが「意味わからへんやないか」と大声で話し始めました。あまりにうるさいので、私は一瞬、「さらば映画の友よ/インディアンサマー」(’79)の川谷拓三を真似て、「人に愛されるように映画を観たくないですか?」と注意しに行こうかと思ったのですが、画面から目を離したくなかったので我慢しました。

©1979 KittyFilm Inc.

 やがて、映画はクライマックスに。ところが通常の映画のように盛り上がる訳でもなく、唐突にベルモンドが警官に撃たれて死んでしまいます。松田優作は「太陽にほえろ!」で、この時のベルモンドの死にざまを真似したのかぁ!と驚いていると、騒いでいた男性ふたりが席を立ちました。そして「全然、面白ないやんけ」と文句を言いながら、私の横を通り過ぎていきました。最後の最後までうるさい人やなぁと思っていた私は、ふと男性の左手が目に入ったのです。この時、「さっき注意しに行かんで良かったぁ!」と安堵のため息をつきました。その男性の左の小指は短く、包帯が巻かれていたのです。

© 1960 STUDIOCANAL – Société Nouvelle de Cinématographie – ALL RIGHTS RESERVED.

 この時、「勝手にしやがれ」を観たやくざと私が知った“「ヌーヴェルヴァーグ」が映画に与えた自由”

それは

「映画は万人が理解出来るように作る必要はない。わかる人だけに向けて作ってもいいんだ」

ということでした。

 それから私は他のヌーヴェルヴァーグ系の映画を見るようになっていきました。もっとも「見たい」からではなく、「見なくちゃならない」から見ていたのですが・・・。

とにかく喫いまくる!…『コブラ』『探偵物語』に影響を与えたタバコの名シーン

 とにかく「ヌーヴェルヴァーグ」の登場人物は無茶苦茶タバコを喫います。その代表格は以前本連載の「キング・オブ・ヘビースモーカー決定戦」で取り上げた「勝手にしやがれ」のベルモンド。彼は他の映画でも煙まみれです「女は女である」( 61)での葉巻をくわえた顔は漫画家、寺沢武一がベルモンドをイメージして描いた『コブラ』のようですし、「気狂いピエロ」(65)の冒頭での風呂につかりながらのくわえタバコも一度は真似したいタバコ仕草でした。

(C) 1962 STUDIOCANAL / SOCIETE NOUVELLE DE CINEMATOGRAPHIE / DINO DE LAURENTIS CINEMATOGRAPHICA, S.P.A. (ROME). ALL RIGHTS RESERVED.

 ゴダール映画では、他にも「小さな兵隊」(60)のミシェル・シュボール、「軽蔑」(63)のミシェル・ピコリもなかなかのヘビースモーカー。彼らの場合、かかるストレスから一瞬でも逃れるための精神安定剤としての喫煙でしょうが、片時もタバコを離しません。

 彼らと違うのは「アルファヴィル」(65)のエディ・コンスタンティーヌ。近未来の秘密情報員である彼はハードボイルド・ヒーローのようにクールにタバコを口にします。ライターの少し大きめの炎は「探偵物語」(’79~’80)の松田優作に影響を与えたんじゃないかなと思ったりします。

 © 1962 STUDIOCANAL / SOCIETE NOUVELLE DE CINEMATOGRAPHIE / DINO DE LAURENTIS CINEMATOGRAPHICA, S.P.A. (ROME). ALL RIGHTS RESERVED.

 ルイ・マルの「死刑台のエレベーター」(58)ではエレベーターに一晩閉じ込められたモーリス・ロネが焦燥の中、タバコひと箱を喫いつくし、「鬼火」(63)では同じロネがジタンの空箱を積木が出来るほどコレクションしています。

© 1958 Nouvelles Editions de Films NEF

 しかし何と言っても驚くのはトリュフォーの「大人は判ってくれない」(59)。主人公はジャン=ピエール・レオが演じたアントワーヌ・ドワネル。まだ12歳なのに、悪びれることなく当たり前のようにタバコどころか葉巻まで喫っているのです。その喫いっぷりはいたって自然。でも一応、大人に見つかるとヤバいと思っているのか、匂いの強い葉巻を味わった時は煙をワインの瓶に吹きこんで証拠隠滅を図っていました。

©1959 LES FILMS DU CARROSSE/SEDIF

 ドワネル少年のタバコ仕草で最も驚かされるのは、少年鑑別所に送られた時です。送致された夜、独房に入れられた彼は床に落ちていた新聞紙を細かく破り、その上に上着のポケットの中にたまっていたタバコの葉を落とし、手巻きタバコにするのです。その仕草は子どもながらにとてもクールでした。

©1959 LES FILMS DU CARROSSE/SEDIF

 男や少年がひとりでもこれだけのタバコを喫うのですから、多くの人が集まるパーティではどんなことになるのでしょう。それがわかるのがクロード・シャブロルの「いとこ同志」(59)。主人公の部屋でパーティが行われるシーンでは、画面のそこら中に紫煙が上がっていました。現代なら、非喫煙者は長くその場にいられないでしょうね。

© 1959 GAUMONT

 

超難解映画『去年マリエンバートで』をタバコで考察

(C)1960 STUDIOCANAL – Argos Films – Cineriz

 バロック調の装飾が豪華なホテルを舞台にした「去年マリエンバートで」(61)では誰もタバコを喫いません。泊っているのがタキシードやイヴニングドレスに身を包んだ上流階級の人々。しかも彼らは、殆どの時間、お酒を飲みながらホテルのラウンジに集まっているのにも関わらずです。
 実はこの作品、世界映画史においても難解映画の五指に数えられる問題作なのです。監督のアラン・レネは本作を「観客が参加する映画」だと言っています。つまり普通の映画のように描かれた物語を受け取るのではなく、画面に提示されたものを見て、自らの想像力を働かせ、意味を見出して物語を完結させる映画だというのです。
 正直言って、これが難しい。画面から絶え間なく聞こえてくるパイプオルガンの音色と繰り返されるフランス語の独白、そして幽玄的なモノクロ映像が意味を見出し、物語を完結させる前に観客を眠りの世界に誘ってしまうのです。何とか最後まで起きて見ても一度の鑑賞で意味を見出すことは困難。結果、何度も睡魔との戦いを繰り返すことになってしまいます。
 しかしホテルの宿泊者がフランス人にも関わらずタバコを全く喫わないことに注目すると物語を完結させることが可能なのです。
 タバコを喫う時に必要なのは呼吸です。息を吸い込むことでタバコに火をつけ、ニコチンを接取します。そして生者と死者の違いは呼吸の有無です。つまり死者にはタバコを味わうことは出来ないのです。
 これを「去年マリエンバートで」に当てはめると、ホテルの宿泊者がタバコを喫っていない理由がわかってきます。彼らは喫わないのではなく、喫えないのです。テーブルに灰皿があっても誰もタバコを口にしないのは彼らが死者だからです。あのホテルはキリスト教でいう天国と地獄の間にある煉獄や辺獄のようなところです。日本的に言うなら彼らはホテルに巣食う地縛霊と呼べるでしょう

 この解釈で見ると、本作は「女の地縛霊が自分の死を受け入れて成仏する」過程をアーティスティックに描いた変型怪談として楽しめると思います。

(C)1960 STUDIOCANAL – Argos Films – Cineriz


「『去年マリエンバートで』が心霊映画だなんて……聞いたことない説ですよ」
「そりゃ、そうですわ。この世でそう解釈してるのは私だけですもの」
「でしょうね……(だけどつじつまが合ってるのが怖い…)しかし改めて観ると「ヌーヴェルヴァーグ」の登場人物たちは喫いまくりですね」
「監督のゴダールやトリュフォー自身が結構なヘビースモーカーやったみたいですから、さもありなんですな」
195060年代という時代だからかなあ」
「私も気になってフランスのタバコ事情を調べてみたんですけどね。日本の常識では考えられない事実が次々と判明して、びっくりしてますねん」
 

「ヨーロッパの煙突」フランスのタバコ事情

引用元:The Local France

 世界保険機構(WHO)の2020年調べによるとフランスは国民の33.5がタバコを喫っています。人口が同レベルのイギリスが15.4%、タイが22.1%ですから、その数の多さが分かろうというもの。ちなみに同じ調べで日本は17.8%、アメリカが14.8%です。
 この数字を見るとフランスはさぞタバコが安いんだろうと思ってしまいますが、度重なる税制改正で1990年に200円程だったタバコ1箱の値段が2020年には1350円になっているのです。コロナ禍で喫煙者数が減ったと言われていますが、この価格にも関わらず、タバコを手放せない人は多く、フランスの喫煙率は先進七ヶ国でダントツのトップ。世界に冠たるタバコ大国なのです。
 一応は他の国同様に個人宅を除く室内は全面禁煙にされ、外で喫煙出来るもののポイ捨てすれば10,000円強の罰金が課せられていますが、これが有名無実らしく、取り締まりがザルなので、多くの人は誰憚ることなく歩きタバコをしているようです。
 
これだけでもびっくりなのですが、さらに驚かされるのはタバコ購入が許される年齢です。日本は酒もタバコも20歳から。その決まりはコンビニでの年齢確認やらタスポなんかでかなり厳密に守られています。一方、フランスは18でタバコ購入可。2009年に法律改正される以前は16からOKだったのです。しかもフランスには喫煙行為自体の年齢を規制する法律がないのです。つまり小学生が喫煙しても無問題。喫煙率が高いのも納得です。

「ヨーロッパの煙突」の異名を取るフランス。当然、ヌーヴェルヴァーグが誕生した頃の1950年代後半の喫煙率は当然高いものでした。1957年のフランスでは男性の75%、女性の15%は喫煙していたとする資料が残されています。

引用元:Daily Mail


「な、75%が喫煙者だった時代がある? しかも小学生でもタバコが喫えるなんて」
「タバコが不良の証みたいな日本とは大違いですな。15歳のフランス人の半分はタバコを喫ったことがあるなんて統計もあるみたいですわ」
※日本で
はダメですよ!!
だから「ヌーヴェルヴァーグ」の登場人物は息するようにタバコを喫ってるんでしょうか」
「そういうことでんな」
「女性の喫煙率15%もめっちゃ高いですよね」
「せやから、「ヌーヴェルヴァーグ」の女たちのタバコ仕草は堂に入っててイカしてますねん」 

タバコを喫う女たち…ジャンヌ・モロー、アンナ・カリーナ

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引用元:WiffleGif

 アメリカ映画や日本映画の多くは女性の喫煙に何かしらの意味づけをします。悪女やダメ女といったキャラクターに強調をつけるためや、男性社会に立ち向かう姿勢や消費文明に毒されている暮らしの象徴として扱われたりします。「女性の喫煙は特殊なこと」という考えが根底にあるのかもしれません。

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(C) 1962 LES FILMS DU CARROSSE
引用元:Artcurial

 一方、フランス映画、特に今回のネタにしている「ヌーヴェルヴァーグ」はそんなことはありません。シャブロルの「気のいい女たち」(60)に登場する電気店の従業員という、ごくごく普通の女性もタバコに火をつけます。彼女たちにとって喫煙は唇にリップを塗るのと同じぐらい自然なことなのです。

 そんな「ヌーヴェルヴァーグ」の喫煙女性の代表格はジャンヌ・モローとゴダール夫人だったアンナ・カリーナです。

 モローの喫煙姿で印象的なのは「突然炎のごとく」(’62)。チャップリンの「キッド」の扮装をし、鼻の下に髭を描き、葉巻を燻らせ、鉄橋を駆け抜ける。その姿は“「ヌーヴェルヴァーグ」が映画に与えた自由”を体現していました。

(C) 1962 LES FILMS DU CARROSSE 引用元:criterioncollection

 また、カリーナは作品によって異なる喫煙仕草を披露します。「小さな兵隊」、「女と男のいる舗道」(’62)では日常的に、「女は女である」ではキュートでコケティッシュに、「アルファヴィル」、「メイド・イン・USA(’66)ではクールにと、まさに「あらゆるニーズに応える」引き出しの多さ。魅力的な喫煙姿の数々をフィルムに残せた背景には夫だったゴダールが観客に「ぼくの奥さん、どんな時も素敵でしょ!」とアピールする嫁自慢があったのではないかと思います。

引用元:Salman Zaki

 モローとカリーナを初めとするヌーヴェルヴァーグ・ヒロインたちの喫煙仕草には共通点があります。ベルモンドらヌーヴェルヴァーグ野郎たちの大半はタバコをくわえて吹かすのですが、彼女たちがタバコを味わうのは火をつける時。その後は人差し指と中指にタバコを挟み、顔の横に持っていくのが基本の仕草です。野郎たちのようにスパスパすることは殆どなく、多くの場合はふた口喫ったら消してしまいます。この贅沢な喫い方がお洒落なんです。

2 STUDIOCANAL. Tous droits réservés.

 それとは違った豪快な喫い方をするのが、「突然炎のごとく」の脇役マリー・デュボアです。彼女は両切りタバコの火のついている方をくわえて、プカプカ吹かせて吸い口から煙突のように煙を出します。自ら「機関車」と名付けた芸を自慢げにやる時のデュボアの表情はどうしようもなく可愛くて、「惚れてまう」こと確実!

(C) 1962 LES FILMS DU CARROSSE


「かっこいいタバコ仕草!!
真似たくなりますやろ
「しかし、こんなにタバコだらけだとは…! もはや「ヌーヴェルヴァーグ」は「喫煙映画運動」だと言っても……過言ではない……!
「その通り!」

★連載1年ありがとうございます!これからも「シガレット・バーン」をよろしくお願いします。


▶いままでの「シガレット・バーン/映画的喫煙術」

著:小玉大輔(https://twitter.com/eigaoh2
扉絵:Tony Stella(https://twitter.com/studiotstella

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