【名画でシガー入門】あなたは如何にして心配するのを止めて葉巻を嗜めるようになるのか?【シガレット・バーン/映画的喫煙術】

愛煙家ならもちろん、煙草を吸わない映画ファンにも、心に火を点けた魅力的な煙草の名場面があるはず。銀幕を彩った紫煙の名シーン・名優・名監督を紹介する「最強のスモーキング・ムービー・ガイド」です。

名作映画で「葉巻」入門!葉巻シーンを見てシガーバーに行こう

タバコの葉を筒型に巻き、時間をかけてじっくり味わう「葉巻」。その歴史は深く、マヤ・アステカ文明の時代から中米ではすでに葉巻の原型が嗜まれていたといいます。その後、大航海時代、中南米に進出したスペインに持ち込まれ、ナポレオンのスペイン侵攻がきっかけでヨーロッパ全土に広まり、以後、多くの人々に親しまれてきました。日本では1873年(明治6年)には熊本県の「阿蘇商社」で葉巻の国産化がスタートしたとか。
しかしいつの頃からか、葉巻は喫い方に様々な決まりが生まれていったのです…。

文・小玉大輔
レンタルビデオ業界を退いた後、『キネマ旬報』等雑誌、WEBでの執筆やTwitter (@eigaoh2)で自分の好きな映画を広めるべく日夜活動している70年代型映画少年。Twitterスペースで映画討論「#コダマ会」を月1開催。第2代WOWOW映画王・フジTV「映画の達人」優勝・映画検定1級・著書『刑事映画クロニクル』(発行:マクラウド Macleod)

ケムール編集部にて

担当編集「小玉さん…『葉巻』って喫ったことあります?」
「若い時に少し。タバコみたいに吸い込んでえらい目にあいましたわ」
「あるあるですね(笑)。実は、葉巻に手を伸ばそうかと考えているんですよ」
「それはそれは」
「最近流行ってますし、何よりカッコいいですから。それでシガーバーに行こうと考えたんですけど…」
「けど?」
「ちょっと勇気がいるんですよね。葉巻って色々覚えなくちゃいけない決まりごとが多いじゃないですか」
「火をつけるのはガスライターじゃなければダメとか、灰は指でトントンせず、灰皿の縁で葉巻を転がして落とすとか。火種が燃えすぎないように一定のテンポで喫煙するとかでんな」
「そうそう! 昔の高級寿司屋みたいな。ケムール読者にも敷居が高いと感じてる方々は多いんじゃないかと思うんです」
「へぇ~」
「ってことで、今回は映画の葉巻シーン特集をお願いできませんか? 洋画から本場の喫い方を学べば、シガーバーも怖くない!」
「分かりました。他ならぬ担当はんの葉巻デビューのためにひと肌脱がせてもらいますわ。まずは葉巻愛好者のアイコンになっている二大ヒーローから見ていきましょか」

Ⅰ.『コロンボ』と『マカロニウエスタン』に学べ!

刑事コロンボの作法

コロンボのトレードマークと言えば葉巻です。

シリーズの初期に彼が喫っているのは“カンデラ”と呼ばれる緑色の葉巻。今ではお値段が上がっていますが、『刑事コロンボ』初期シリーズが製作されていた1978年当時では日本円に換算して1本100円でした。
そんな正真正銘の安葉巻をほぼ口から離さないコロンボに親近感を覚えてしまいます。しかもいくつかのエピソードで禁煙を促されても、本人曰く、「喫ってるとよく話せる」と断固拒否。喫煙家の鑑のようですが、嫌煙が強く言われている現代にコロンボがいれば、その推理力も落ちてしまうんだろうなと思ってしまいます。

興味深いのは、コロンボはよく葉巻に火をつける道具を忘れること。その度毎に彼は周りに火種を借りるのですが、ジッポーのライターだろうとブックマッチだろうと火がつけばOK。コロンボは刑事ですが、「オイルライターや普通のマッチで葉巻に火をつけたらダメ」なんて“葉巻警察”みたいなことは言いません。

© 1971-1977 Universal City Studios LLLP. All Rights Reserved.

“名無しの男”の作法

クリント・イーストウッドがイタリア製西部劇(通称マカロニ・ウェスタン)三部作、『荒野の用心棒』(‘64)、『夕陽のガンマン』(‘65)、『続 夕陽のガンマン』(‘66)で演じた通称“名無しの男”のトレードマークになっているのが葉巻です。

この三本が公開されるまで、西部劇に登場するタバコは手巻きタバコかパイプでした。それもそのはず、舞台になった19世紀のアメリカでは葉巻は非常に高価で、東部の資本家か、西部の大牧場主ぐらいしか嗜めないものだったのです。
イーストウッドが演じた賞金稼ぎや流れ者のガンマンが愛用するなんてありえません。しかも劇中でイーストウッドが喫っているのは19世紀のアメリカにはなかったイタリア特有のドライシガー。時代考証を考えるとありえないのですが、そこはそれ、何でもありのマカロニ・ウエスタン。カッコ良ければオールOKなんです。

実際、イーストウッドはシビレる葉巻仕草を随所に披露します。

まずくわえ方です。日本の“葉巻愛好家”は、葉巻を唇にそえるようにくわえて燻らすそうです。しかし我らがイーストウッドは葉巻を歯で噛みしめています。これは“葉巻愛好家”によると、「喫い口が汚くなって葉巻が可哀想だ」とご法度にしている喫い方。でもイーストウッドがやるとクールなのですよ。特に、一部で“イーストウッドのシガー・ミュージカル”と呼ばれている葉巻の噛み直しと言ったら、葉巻を喫う時に絶対真似したい仕草なのです。

©Constantin Film Produktion, Jolly Film, and Ocean Films

次に葉巻の火のつけ方。葉巻を回しながら炙るようにして先端が均等に燃えるようにするのが正しい所作だそうですが、ガンマンのイーストウッドはそんな悠長なことはやりません。普通のタバコと同じようにくわえて火をつけます。おまけに火種はどこでも火がつくロー式マッチ。マッチの硫黄成分で葉巻の味が変わるなんてことは気にしません。KC & サンシャイン・バンドのヒット曲のタイトルじゃありませんが、“That’s the way”なのです。そんなイーストウッドの葉巻仕草に思わず“I like it”と合いの手を入れたくなるのは私だけではありますまいて。

そして、忘れられないのは『続 夕陽のガンマン』でイーストウッドが瀕死の兵士に葉巻を喫わせる場面です。エンニオ・モリコーネのメロディの効果もあって、情感溢れる名シーンとなっています。

©1966 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

面白いのは、これほどカッコいい葉巻仕草を見せたイーストウッドが実生活では非喫煙者だってこと。イーストウッドは葉巻を喫うのがほんとに辛くて、第二部『夕陽のガンマン』に出演する時、監督のセルジオ・レオーネに「葉巻は勘弁してくれ」と頼んだとか。当然、その願いは却下され、イーストウッドは眉間に皺を寄せて葉巻をくわえることになりました。葉巻に火がついていない時もありますが、その葉巻をくわえた時の苦虫を噛みつぶしたような表情がイーストウッドの特徴のひとつになったのですから、苦労が報われたわけです。
そんなイーストウッドの姿を見て、ふと思ったのは葉巻はアウトドアで味わうのが一番じゃないのかってこと。キャンプとか周りに人がいない場所なら、匂いを嫌がられることはないですからね。


「いきなりルール無視じゃないですか!! コロンボもイーストウッドも完全に自己流で、作法も何もないですよ」
「そういうこと。担当はんも好きにしたらよろしいねん」
「そんなこと言っても……」
「そんな担当はんにお薦めしたいのが、“クールスモーキング”ならぬ“シネマスモーキング”ですねん」
「シネマ?」
「こういう時に葉巻を口にすれば、映画の登場人物の気分が味わえるっちゅうやつですわ」
「いつもの“心のコスプレ”でしょ?」
「まあ、平たく言えばそういうことになりますな」

Ⅱ.シネマスモーキング 葉巻の名シーン

その一、葉巻は力と成功の証

葉巻は喫煙者誰もが気軽に手を出せる代物ではありません。
まず値段がお高い。日本国内では安くて1本数百円、高級品となると1本数万円なんてものがあります。
次に味わうのに時間がかかる。葉巻1本を喫い終わる時間は一般的なサイズでだいたい40分から1時間。太く長いサイズのものだと1時間半から2時間。おおよそ4分で喫い終わる紙巻タバコのように気楽にちょいと一服なんて出来ません。
おまけに葉巻独特の匂いです。シガーバーみたいな場所じゃないと周りから嫌がられてしまいます。

つまり葉巻はお金と時間を持っていて、周囲から苦情を言われない者のみに許された至高の品なのです。

それでは実際にどんな人物が葉巻を味わっていたのでしょう。
第二次大戦中のイギリスの首相チャーチルであり、第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディ、キューバ革命の立役者カストロゲバラです。日本に目を向けると、5度総理大臣を努めた吉田茂と孫の麻生太郎、そして日本プロレス界伝説の巨人・ジャイアント馬場。最近では松本人志も愛好家らしいです。

出典:quora

この顔ぶれを見ると葉巻は権力を持つ者の成功の証と言っても過言ではありますまい。だからこそ権力への欲望に忠実なやくざ者/ギャングの手には葉巻があるのかもしれません。

 

CASE1:「ボルサリーノ」葉巻と帽子はギャングの美学

例えば『ボルサリーノ』(‘70)でアラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンドが演じたシフレディとカペラ。マルセイユのチンピラだった時に彼らが喫っていたのは細い葉巻。それが暗黒街の若き顔役に成りあがると“ボルサリーノ”の高級紳士帽を被り、太くて長い葉巻をくわえるという完璧なギャングスター・スタイルになります。特にカペラです。大物たちとの会合の時に葉巻をくわえて参加し、とことんまで突っ張ります。


© 1970 Marianne Productions-Adel Productions-Mars Produzione

CASE2:「スカーフェイス」麻薬組織のドンの葉巻はこう喫え!

もうひとりは『スカーフェイス』(‘83)でアル・パチーノが演じたトニー・モンタナ。キューバ移民からマイアミの麻薬組織の首領(ドン)の座についた彼は葉巻を手から離しません。成金ならではの悪趣味全開の邸宅で、リビングに作った大風呂に浸かりながら葉巻を燻らすモンタナの姿は、忘れられない名シーンです。


© 1983 Universal studios All Rights Reserved

その二、誰でも出来る“ご褒美葉巻”

成功を成し遂げた時のご褒美とも言える葉巻。頂点を極めた者にしか味わえないのでしょうか? だったらほとんどの人は葉巻を手にすることが出来なくなります。

そこでお薦めしたいのが、“ご褒美葉巻”です。これならだれでも葉巻を楽しめます。

CASE3: 「ミラーズ・クロッシング」敵を返り討ちにしたご褒美に!

その参考になるのがコーエン兄弟監督のギャング映画『ミラーズ・クロッシング』(‘90)。この中でアルバート・フィニー演じるアイルランド・ギャングのボス・レオは、寝室で葉巻を口にしながらアイルランド民謡『ダニー・ボーイ』のレコードを聴きます。ここまでは成功者ならではの夜の過ごし方。

ところがそこに彼の命を狙う者たちが襲撃を仕掛けてきます。レオは葉巻を消し、マシンガンを手にすると『ダニー・ボーイ』をBGMにして見事、撃退に成功。トドメの掃射を行い、敵の車が燃え上がると、彼は服のポケットから喫いさしの葉巻を取り出し、余裕たっぷりに火をつけます。
大きな成功でなくとも、ほんのちょっとしたことをやり遂げた時に葉巻に火をつける。これが、“ご褒美葉巻”です。

(C) 1990 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

CASE4: 「デリンジャー」悪者をひとり殺ったら葉巻一本!

“ご褒美葉巻”は犯罪者だけのものではありません。彼らを追う側も行います。1930年代、アメリカ中西部を荒らしまわったジョン・デリンジャーに率いられた実在のギャング団を描いた『デリンジャー』(‘73)では、ベン・ジョンソン演じるFBI捜査官メルヴィン・パーヴィスが、一味を一人倒すたびに懐から“ご褒美葉巻”を取り出します。自分に貫禄が無くても、気分はベン・ジョンソン!

(C)2020 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

CASE5: 「インデペンデンス・デイ」地球を救って最高の一服を!

“ご褒美葉巻”はギャング映画の専売特許ではありません。SF映画でも行われます。それは『インデペンデンス・デイ』(‘96)。ウィル・スミス演じる米軍戦闘機パイロット、ヒラー大尉は宇宙から来襲した未知の飛行機と空中でドッグファイトを繰り広げ、相討ちの形で撃墜します。そしてパラシュートで脱出したヒラーは頭に来て、エイリアン機に近づき、中から出てきたおぞましい姿をしたエイリアンにパンチ一発!見事、エイリアンを失神させるのです。胸ポケットから取り出すのは、もちろん葉巻。それもシガーケースに入った高級品です。これぞ、彼が任務を達成した時に味わう“勝利の葉巻”です。

この“勝利の葉巻”はエイリアンの母船に潜入する特攻作戦に再登場し、抜群の効果を挙げ、観客をにんまりさせるのです。

(C) 1996 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

CASE6:「サンダーボルト」死んだ相棒と、涙の一服…

時には“ご褒美葉巻”が味わえない時があります。それがマイケル・チミノ監督の『サンダーボルト』(‘74)です。クリント・イーストウッド演じる伝説の泥棒サンダーボルトはジェフ・ブリッジス演じる若い相棒ライトフットと銀行強盗に成功したら、高級葉巻を共に喫おうと約束します。しかしいざ、その時になると、ライトフットは葉巻を味わえないまま死んでしまうのです。友を失ったサンダーボルトは自分の葉巻を二つに折ると、助手席に親友を乗せたままいずこともなく車を走らせます。男の友情に涙する名シーンです。

(C) Malpaso Productions. All Rights Reserved

「こんなにさまざまな“ご褒美葉巻”があるとは…しかし何も参考にならん…」
「担当はんは新しい記事を公開する度に一本、味わったらよろしいやおまへんか」
「そうしますか…(笑)。そういえば90年代の映画って『ミラーズ・クロッシング』とか『インデペンデンス・デイ』の他に、『スモーク』(‘95)にもキューバ葉巻の輸入のエピソードがあったり、葉巻を扱ったのが多い気がしますね」
「なんでも90年代半ばにアメリカで葉巻ブームってのが起きたんですって。多分、その影響や思いますわ」
「へぇ~」
「その流れで00年代に入ると葉巻を喫うコミックヒーローが登場しましたなぁ」

その三、スーパーヒーローも葉巻がお好き

喫煙。それは、子供たちが憧れるスーパーヒーローがやってはいけないこと。それを破ったのが日本の『8マン』(’63)です。彼は定期的にタバコを口にしていました。体内に埋め込まれた電子頭脳と超小型原子炉のオーバーヒートを抑える冷却剤だからと説明されていましたが、傍から見たらタバコ以外の何物でもありませんでした。

© 平井和正・桑田次郎・講談社

スーパーヒーローの本場アメリカではどうでしょう。DCコミックのスーパーマンは徹底した禁煙者。彼はクリプトナイトの影響でおかしくなった『スーパーマンⅢ/電子の要塞』(’83)の時すら、酒は飲んでもタバコには手を出しませんでした。まさに品行方正。

しかしDCコミックのライバル、マーベル・コミックやダークホース・コミックに目を転じると…いるんですねぇ、葉巻をくわえたスーパーヒーローが!

CASE7:【ウルヴァリン】火事場で葉巻!

まず、マーベル・コミックの代表は『X-MEN』に登場する鋼鉄の爪を持つ不死身の男ウルヴァリン。2000年に公開された映画シリーズ第一作での初登場シーンから危機的状況でない限り、口に葉巻をくわえています。それも太くてでかいヤツを!そんな葉巻の火の消し方は掌での揉み消しです。これには、“葉巻愛好家”も言葉が出ないでしょう。

ウルヴァリンの葉巻姿に惚れ惚れさせられるのがシリーズ第三作『X-MEN/ファイナル ディシジョン』(’06)。戦闘訓練にわたわたする新人X-MENたち。教官であるウルヴァリンは落ち着き払って、燃える廃墟の中で余裕たっぷりに葉巻を燻らせるのです。その立ち姿は男の中の男!


(C)2006 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

聞くところによるとウルヴァリンを演じたヒュー・ジャックマンは非喫煙者だそうです。感心するのは役柄のために仕方なく好きでもない葉巻を喫っているのに、同じ非喫煙者のイーストウッドみたいに顔をしかめないところ。ちなみにウルヴァリンはジッポーで葉巻に火をつけます。

CASE8:【 ヘルボーイ】葉巻を喫いながら魔物狩り!

ダークホース・コミックの葉巻ヒーローはアメリカの「デビルマン」ことヘルボーイ。彼は人類に仇なす魔物狩りを生業としているのですが、雑魚は葉巻をくわえたままで退治します。その余裕っぷりは何とも豪快で、ヘルボーイというキャラを特徴づけています。演じたロン・パールマンは実生活でも“葉巻愛好家”なので、その喫い方も堂に入ったもの。

ヘルボーイもウルヴァリン同様、ジッポー愛用者。しかしある時、“葉巻愛好家”の上司に専用のマッチを薦められます。半信半疑で試してみたら、味の変化に納得してしまうのです。悪魔の子も“葉巻愛好家”の前では無力だったようです。

© 2004 Revolution Studios Distribution Company, LLC. All Rights Reserved.

CASE9: 『ウォッチメン』火炎放射器で喫うのが一番美味い!

忘れられない着火法のこだわりを持っているのが、DCコミックの異色作『ウォッチメン』(’09)に登場した【コメディアン】です。彼は火炎放射器で着火します。火炎放射器の燃料は油。ジッポーなどのオイルライターでさえ、葉巻の風味が変わるからダメと言う“葉巻愛好家”にしてみたら、コメディアンは喧嘩を売ってるとしか思えないでしょう。


© 2009 Warner Bros. Entertainment Inc., Paramount Pictures Corporation and Legendary Pictures. All Rights Reserved. Watchmen and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics. Smiley Logo: The Smiley Company


「スーパーヒーローの葉巻って基本的には強さの象徴として扱われてるんですね。それにしてもムチャクチャだ……」
「葉巻=強さはコミックのスーパーヒーローだけやありませんで。生身のヒーローもそんな扱い方してます」
「誰?」
「そりゃあ、魂まで筋肉の“あの二人”ですがな」

その四、男なら太くて長い葉巻を誇れ〜スタローンとシュワルツェネッガー〜

隆々たる筋肉でアクション映画の覇王の座を競ったシルベスター・スタローンアーノルド・シュワルツェネッガー。二人は共にプライベートでも“葉巻愛好家”。だから当然、出演作でも葉巻を口にします。

まずはスタローン。俳優デビューから『ロッキー』(’76)を経て、80年代が終わるまで、劇中では主にタバコを喫っていました。しかし『ロックアップ』(’89)で“ご褒美葉巻”を体験してからは徐々に葉巻比率を高めていきます。そして1970年代から2020年代まで「6つの時代で主演作が週末の興収ランキング1位を達成」という映画史に残る記録を打ち立てた我らがスタローン。『エクスペンダブルズ』(’10)では5つ目の偉業を達成した“ご褒美”かのように堂々と葉巻を味わいます。その時に使うのは特製ジッポーです。

引用元:Snooper/YOUTUBE

一方、シュワルツェネッガーは初期の頃から豪快に葉巻を燻らせました。現代アクション初主演作となった『ゴリラ』(’86)では初登場シーンから盛大に葉巻をふかし、『プレデター』(’87)、『ラスト・アクション・ヒーロー』(’93)ではジッポーで着火。シュワルツェネッガーの肉体は太くて長い葉巻がスタローン以上にフィットしていました。
注目は『ターミネーター2』(’91)。中年暴走族がアンドロイドT-800を演じるシュワルツェネッガーの厚い胸板で葉巻を押し消すのです。シュワルツェネッガーの”葉巻愛好家”ぶりを知っていると何だかおかしくなる名シーンです。

引用元:Snooper/YOUTUBE

スタローンとシュワルツェネッガーが喫う葉巻はどちらも太くて長いキングサイズ。それは彼らの強さの象徴のようです。

ルールなんか気にするな

「カッコよすぎます。男の喫う葉巻は自らの男性性、マチョリズムの誇示ですね」
「そういう解釈が出来るから、『007/ゴールデン・アイ』(’95)でファムケ・ヤンセンが演じた悪女が多くの男性に強烈な印象を与えたんでしょうな」
「どういうことです?」
「彼女、カジノでジェームズ・ボンドと初めて口を利く時、細くて長い葉巻を喫ってますねん。フロイト的解釈をするなら、葉巻を悠々と味わう彼女を見て、このひと、男を弄ぶのが大好きなんやろなと思えてね、なんちゅうても名前がオナトップですし」


©1995 Seventeen Leasing Corporation and Danjaq, LLC.

「妄想の翼を広げないでください!」
「す、すんません……」
「小玉さんが最も好きな映画の中の“葉巻愛好家”と言ったら誰です?」
「そりゃ、『史上最大の作戦』(’62)でロバート・ミッチャムが演じたアメリカ軍のコータ准将ですよ。ノルマンディ上陸作戦最大の激戦地オマハ・ビーチで指揮をしている間、ずっと葉巻をくわえてるんです。彼は、葉巻が象徴するものと、“ご褒美葉巻”の価値を教えてくれます。葉巻を始める前には絶対にコータ准将の雄姿を観て欲しいですわ」


(C) 1962 Darryl F. Zanuck Productions, Inc. and Twentieth Century Fox Film Corporation. Renewed 1990 Twentieth Century Fox Film Corporation and Darryl F. Zanuck Productions, Inc. All rights reserved.

「たくさん葉巻シーンを見ていたら、作法とかどうでもよくなっちゃいました。この記事を公開して、サクッと一本喫ってきます(笑)」


▶いままでの「シガレット・バーン/映画的喫煙術」

著:小玉大輔(https://twitter.com/eigaoh2
扉絵:Tony Stella(https://twitter.com/studiotstella

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