たいへんよくもえました【12月後半のSNS炎上ニュース】

 

年の暮れ、SNSでは炎上が続いている模様です

こんにちは。ネット炎上ウォッチャーせこむです。

師走ですね。新型コロナウィルスの流行も小康状態を見せているような気がするし、心穏やかに今年を総括して新年に備えたい……と思うも、そうは問屋が卸さないのがネット界。乾燥した気候のせいでしょうか、駆け込みのようにあちらこちらで火の手が上がっている12月です。

とりあえず、12月上旬から観測できた主な炎上はこちら。

2021年12月上旬~中旬の主な炎上

① 櫻井翔さん、元日本兵インタビューの際、質問内容が「失礼では」と炎上 ★★★★
参考:smart FLASH【櫻井翔 元日本兵インタビュー炎上も、大物ジャーナリストは「キャスターとして普通の質問」と擁護】

② 書評家・豊崎由美が本の紹介をしているTikTokerに対し「書評書けるんですか?」と発言、人気TikTokerが活動休止へ ★★★★
参考:Togetter豊崎由美氏「TikTokみたいな、そんな杜撰な紹介で本が売れたからってだからどうした」「書評書けるんですか?」~それへの反響

③ 『バチェラー4』に「制度が変わらない限り結婚NG」というフェミニストが参加、SNSの発言等で炎上続出 ★★★
参考:ビジネスインサイダージャパン 「バチェラー4」の「ジェンダー観に異議あり」、結婚NGなフェミニストの私がそれでも参加した理由

④ 江戸東京博物館が吉原遊郭を「煌びやかな世界」と紹介、批判殺到 ★★★ 
参考:J-CASTニュース
吉原遊郭を「煌びやかな世界」と紹介 江戸東京博物館に批判、「不適切だった」と謝罪

⑤ イスラエル人デザイナーが手掛けたミス・ユニバース日本代表の服装が「着物モチーフなのに左前」などの理由で批判され、「文化の盗用」論争にも ★★★
参考:AERAdot. ミス・ユニバース日本代表の服装巡り炎上「日本への侮辱」に賛否両論の声


今回の「たいへんよくもえました」

さて、今年最後の炎上にふさわしいのはどれでしょうか。
世間一般的には、やはり①櫻井翔さんから出火した一件ですね。テレビ番組が発端となったこともわかりやすく火力を増しており、多くの方が興味を持たれたでしょう。
しかし、生粋の炎上ウォッチャーとしては、あえて②豊崎由美さんの炎上を選びたい。というのもこの炎上、関係者の知名度以上に燃えていたからです。


▲出火元となったツイート

ちょっと説明しますと、炎上の「舞台」にはいくつかパターンがあります。

【炎上が起きる場所】
・Twitter

・yahooコメント(いわゆる「ヤフコメ民」中心)
・はてなブックマーク(いわゆる「はてブ民」中心)
・5chなどの匿名掲示板
・Twitterが発端になりTogetterなどのまとめサイトへ

②豊崎さんのケースは、最後の「Twitterで炎上→Togetterまとめに延焼」パターンが近いです。Togetterはまとめサイトですが、勢いのある炎上はそのコメント欄でも「場外乱闘」が起こるのが常で、この「Togetterでのコメント数」もまた、炎上をはかる重要なバロメーターと言えるわけです。(そして私をはじめTogetterのコメント欄に生息している民は、この炎上の連鎖が大好きです)
②の炎上は一見地味なようですが、実はこの「場外乱闘」がすごかった。
togetterの上位まとめでも、コメント数はせいぜい100〜200というところ。一方でこの豊崎氏のまとめのコメント数は現在700を超えています。
なぜこんなにも燃え盛ったのか? 経緯から紹介したいと思います。

発端は12月9日の豊崎由美氏の「TikTokで本を紹介してそれで本が売れたからって、だからどうしたとしか思わない。あの人、書評書けるんですか?」という大意のツイート(詳細は上記のTogetterまとめを参照のこと)。この発言をうけて、本を紹介する動画を投稿しているTikTokerの代表格・んご氏がTikTokでの投稿を休止する、と発表したという流れです。

▲やり玉にあげられた小説紹介TikTokerが活動休止を発表。火蓋が切って落とされた

もともと、近年「TikTokでの本紹介動画によりヒット作が産まれる」というムーブメントがあったんですね。そして最近一番話題になったのは、上記のけんご氏が筒井康隆氏の『残像に口紅を』を紹介したらこの動画がバズり、1989年の小説にも関わらず3万5千部の緊急重版がかかったという出来事で。豊崎氏のつぶやきは、この流れを受けてのものだったと思われます。

で。当然、燃えるわけです。これに関しては一般の人、要は“読者”はもちろん、小説家や編集者、そして豊崎氏と同じく書評を手掛けている人たちもはっきりと反論しており、観測しているこちらがちょっと心配になるくらいの四面楚歌状態になっていまして。

▲同業者・書評家からも反論があがる


単なるTogetterでの炎上継続ではなく、仕事としてのコラム等でこの件に触れているパターンも多数という「大人が本気で反論する」様子が観測できたのも特徴です。
ごく一部擁護する人もいましたが、それも「ああいう口調はあの世代の芸風みたいなもんだから」という感じのものが多く。

▲擁護派というより、何とかなだめる感じの意見が多かった

特に書店や出版社の中の人たちにとっては、今や若者への貴重な露出媒体である本紹介TikToker、しかも人気の人を「潰された」という意味で怒り心頭の発言も見られましたね。

▲新しい本の紹介の場=TikTokを認めない「老害」叩きがはじまり、いよいよ大火災に

 

炎上ウォッチャーの意見

大半の批判意見が言及しているように「ただの老害の嫉妬」とは思いません。というか、冷静に考えてこの元ツイート自体がある意味「的外れ」なのですよ。

だって「本紹介TikToker」の目的は「本を紹介して広めて本が売れたら嬉しい」という“宣伝”のようなものであり、かたや書評は宣伝的性質があるものもあるとはいえ、「評論」なのです。そこには「本を売る」のとはまた別の、文学を解析して文学史の中で位置づけるという役目もあるわけで。彼女が栗原裕一郎氏と出した共著『石原慎太郎を読んでみた』とか、「読んだ人に本を買ってもらう」目的で書いたとはとても思えないですよ? 要は、「本紹介TikToker」と彼女の活動は、本質的な部分ではかぶらないわけです。

この炎上が特徴的だった点は、反論している人たちの一定数が「悲しんでる」とこだったんですよね……ええ、自分もそうです。なぜなら、今回こんな少しズレた発言で炎上してしまった豊崎氏自身が、かつては「旧世代から批判される新しい風」だったのですよ。だからこそ、著書を古くから読んでいる読者ほど今回の事象は、きつい。

いやわかる、わかりますよ。憶測ではありますが、彼女が本来憂いたかったのは「本紹介TikToker」という存在ではなく、「書評」が成立しづらくなってきている今の出版界や、読者たちのことだったということは。けんご氏、完全にとばっちりです。まあ、有名書評家にあんな事言われたら心が折れるのもわかりますけどね……。
だからこそ「書評」に悪印象がつきかねないこの炎上が余計悲しく、そして後味の悪いものに感じたのでした。

2022年はこんな悲しい炎上が少なくなるよう、切に願いたいものです。

来年もお楽しみに。月二回更新です。
文・せこむ

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