たいへんよくもえました【2022年2月後半のSNS炎上ニュース】

五輪をよそに燃え上がる日本

北京オリンピックも終わりましたね。こんにちはネット炎上ウォッチャーのせこむです。

オリンピック絡みの炎上を期待はしていたのですが、今回はそもそも開催国の中国自体がウイグル族弾圧に関する世界的な批判を華麗にスルーしたまま力技で開幕した挙げ句、聖火リレーの最終ランナーにウイグル族を起用するという世界中が思わず沈黙してしまうような国家戦略からスタートしましたので。なんだかこれに比べれば多少の選手の発言とかトラブルとかは小物に感じてしまうというか、コロナもあるし、みんないまいち乗り切れない中で終わっちゃって「なんだかなあ」だったんじゃないですかね。

そこでオリンピックネタは省いて2月後半の主な炎上をピックアップ。国内も遺憾なく燃えました。いつものように★の数は独断と偏見の炎上度合いバロメーターで、5つ星が満点です。

2022年1月前半〜2月前半の主な炎上

① 「サイゼリヤで喜ぶ彼女」イラストが炎上 ★★★
参考:週刊女性PRIME▶《サイゼで喜ぶ彼女》SNS投稿イラストが「女性蔑視」と炎上も、実写化ブームで“いいね稼ぎ”続出

② 「ピンクリボン」大賞受賞ポスターが炎上 ★★★
参考:リアルライブ▶「ピンクリボン」大賞受賞ポスターが炎上? ガン確率をくじで表し「泣けてきた」乳がん患者から悲痛な反応

③ プロゲーマー・たぬかな、「170cm以下の男性は人権なし」発言で大炎上 ★★★★★
参考:MAG2NEWS▶たぬかな「170cm以下の男性は人権なし」発言で大炎上。“骨延長手術して”人気女性プロゲーマーによる侮辱にネット大荒れ

④ たぬかなと同チーム所属のマネージャーがSNS発言で解雇に ★★★
参考:まいじつ▶“170cm以下は人権ない”発言が波及! マネージャーも差別発言で解雇に…

⑤ 長身男性モデル、たぬかな騒動に苦言呈し炎上 ★★★
参考:東スポweb▶トラウデン都仁 170センチ人権騒動「燃やしているのは170以下の方なんでは」発言で波紋

① サイゼリヤは、おそらく参照元の記事を読んでも「え、これで何で燃えるの?」と意味不明な人が大半だと思います。これはそもそも「初デートにサイゼリヤはありかなしか」→「サイゼリヤでも喜んでくれるのがいい女!と言い出す人多数現る」→「サイゼリヤで喜ばない女は金遣いが荒いor金目当てだと言い出す男性陣が現れ論争に、『サイゼテスト』なる言葉も生まれる」という経緯がありまして、これがまた驚くことに最初に観測されたのは10年前なので、定期的にネット上に現れては燃える山火事みたいなもんだと覚えておいてください。そして実は今回の炎上は1月から続くとあるマンガに端を発したバトルでもあるので、暇な人はこのまとめを参照のこと。「なんのこっちゃ」でしょうけど。

参考:Togetter▶サイゼ騒動に関して時系列でまとめ

②ピンクリボン「なんでこういうのって『選ぶ側』は気づかないんですかね」とだけ。これまでにもあった「広告代理店の雑な仕事による燃えがちなプロモーション」と同じ臭いがします。

今回の「たいへんよくもえました」

というわけで、今回これを無視するわけにはいきませんよね。プロゲーマー「たぬかな」氏の発言を発端とする③170cm人権騒動です。ご覧の通り④も⑤も③がらみの炎上で、火元は同一。ほぼ世間的には知られていなかった「いちプロゲーマー」の炎上としては火力も延焼度合いも尋常じゃないことになっています。ナパーム弾か。

経緯としては、eスポーツチーム「CYCLOPS athlete gaming」に所属していたプロゲーマー「たぬかな」氏が配信で、ウーバーイーツの配達員に連絡先を聞かれたというエピソードを話していたときのこと。配達員の身長が低かったことから「165は小さいね。ダメです。170ないと正直、人権はないんで」「170cmない方は、俺って人権ないんだと思いながら生きていってください」「骨延長の手術を検討してください」などの言葉を発し、Twitter上を中心に拡散され、「低身長は人権がない」という言葉の強さから大炎上。
この配信が2月15日、騒ぎになりだしたのが16日。一度謝罪コメントを出したものの、そのコメントの内容が「いつもの配信の身内ノリで言葉が悪くなっちゃいました、ごめんなさい~」と非常に軽かったため、火に油を注ぐ結果となり、ますます炎上。

Twitterから別掲示板「なんJ」に延焼、大火災に

ちなみに今回の炎上の主戦場は5chの芸スポ+となんでも実況板、通称「なんJ」。なんJには本人が降臨した疑惑もあり、これが5ch住人の悪ノリに火を注いでしまいます。猛烈なスピードでスレが消費&乱立。その翌日正式に謝罪文を出したものの、17日には「CYCLOPS athlete gaming」が選手契約解除を発表、同日スポンサーであるレッドブルが公式サイトから選手情報を削除という異例の早さで物事が動いた点も話題となりました。

公式の謝罪を出すも、時すでに遅し。わずか1日の対応遅れも許されない

軽い笑い話のつもりの発言が炎上し笑えなくなり、最期に笑われてしまう地獄

⑤ 長身モデルの苦言に関してはテレビ番組でのコメント発言が燃えたという、ある意味部外者の延焼なので置いておくとして、④マネージャー解雇は同チームの関係者が発言したところネット民に目をつけられ過去発言が掘り起こされ、あっという間にこちらも契約解除という怒涛の展開です。

教訓:チームとスポンサーは爆速で見捨てる

いやー、ネットって怖いですね。生配信の発言には気をつけましょうね。

以上。

……というわけにはいきませんよね。いや正直、彼女がどうやったら燃えなかったかを考えるとこれだけの話ではあるのですが、それで終わると炎上ウォッチャーの名がすたる。

まず、正直一般的には知名度が低い人にも関わらず、炎上した原因としてはいくつか要因が考えられます。

・最初の謝罪の仕方が悪かった、ほかの炎上でもよく言われる「初動対応の問題」
・真偽はさておき、燃え盛っている5chに本人降臨というさらなる燃料が透過されてしまった
過去の発言で燃料となるものが多く、中にはスポンサーに凸したかったらしろという攻撃的なものもありそれが掘り起こされた
・ゲーム業界で言う「人権キャラ」の意味だったという擁護もあったが、そのあとの「骨延長手術」という言葉を考えるとそれだけではなく使ったのは明白なのでその論争で余計スレが伸びてしまった
・「eスポーツ」というまさに過渡期の業界で、まだ「スポーツとして認めるか否か」という認識が個々人の中でも差があるなかでの炎上だったため、eスポーツへ懐疑的な思いを持つ人はそれも燃料になったのでは

実は今回の炎上。言及する際に荒れ気味になる言葉があります。それは「キャンセルカルチャー」。2021年の東京オリンピック開会式、演出に関わっていた小林賢太郎や小山田圭吾といった有名人の過去発言や作品が問題になり急遽演出が変更になったのは記憶に新しいところですが、著名人をはじめとした特定の対象の発言や行動をSNSなどで糾弾し、不買や社会的な排斥につなげる運動のこと。

参考:文春オンライン▶小林賢太郎、小山田圭吾…東京五輪で露わになった「日本風キャンセルカルチャー」の危うさ(参考リンク切れ)

では、たぬかながスポンサーから切られ、チームを解雇されたのは「キャンセルカルチャー」なのか、というところです。実はこれも「キャンセルカルチャーなのでは?」と言及する人は多く、「いや彼女の差別発言は許せるものではない」という人との間で論争となっています。

ここで思うのが、「スポンサーが彼女とのスポンサー契約を解除した」というのと、「チームが契約を解除した」ということは果たして同義なのか? ということ。今回、スポンサーへの直接の凸は正直少なかったと思います。なぜなら、騒動とスポンサー解除までの期間があまりにも短いから。スポンサー側は火の手が上がったのを観測したくらいで即撤退を決めていたことでしょう。さすが最大手レッドブル、危機管理もばっちりだなと実感しました。

スポンサーはあくまでも「広告」としてギャランティーを払っているわけですから、広告としての価値が下がれば契約を切るのはリスク管理としては当たり前。ではチームの「解雇」はどうか? ここは正直、今後のeスポーツ界のことを考えると少しふんばってもらいたかったなと思うのが正直な気持ちです。契約状況がどうだったかはわかりませんが、これが「雇用関係」と考えると「一発アウト」はあまりにも労働者にとって厳しい条件すぎる。日常的な状況で言うと、「飲み会での不適切発言を理由に職場を解雇できるかどうか」という状況で考えてみてください。これで「できる」と思う人は労働基準法を一度読み返すことをおすすめします。まあ彼女の場合は正式な労使契約ではなかったと思いますが。
これまで何度も警告していたとか、彼女の実力が現状のデメリットと天秤にかけて契約するほどのメリットがなかったと言われればそれまでですけどね。

「eスポーツ」をオリンピック正式競技へ! という未来を見据え、業界内のマナーに関してはいろいろと動きがあるのだろうなというのも察するところ。でも本気でeスポーツの人材を「育成」したいなら、今回それで良かったの……? と少し懐疑的になってしまう、そんな後味の悪い炎上だったのでした。

文・せこむ

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