たいへんよくもえました【2022年4月前半のSNS炎上ニュース】

炎上にも「例外」はある

ああ 空はこんなに青いのに。風はこんなにあたたかいのに。

おもわず『キテレツ大百科』のオープニングテーマを口ずさみたくなようなそんな春の陽気なのに、なぜに世間では炎上の火種がつきないのでしょうか。こんにちは、ネット炎上ウォッチャーのせこむです。
『キテレツ』で年齢がバレるような気もしますが、そこはそっとしておいてください。

さて、今回もSNSを彩る炎上現場を紹介していきますよー。
の前に。
触れざるをえないいくつかの大きな「炎上事件」と、この連載のスタンスをちょっとだけお伝えしておこうと思います。

俳優・映画監督の榊英雄氏による性加害が発覚
参考:文春オンライン▶「性被害」映画監督による性加害を女優が告発 脚本家からも疑問の声

俳優・木下ほうか氏の「性加害」を女優らが告発

参考:文春オンライン▶榊英雄監督の盟友、木下ほうかの「性加害」を2人の女優が告発する

映画監督・園子温氏に性加害報道
参考:日刊ゲンダイ▶今度は映画監督・園子温に性加害報道…制作プロ謝罪も、テレビ業界が静観するナゼ(参考リンク切れ)

こちら、ご存じでしょうか。3月9日に出された榊英雄氏の記事を発端に、日本映画界・エンターテインメント界における性加害の実態が次々と報道されてきています。
おそらく、まだまだ同様の報道が相次ぐでしょう。筆者・せこむの友人の映画関係者(女性)は「これらがアウトだったら今撮ってる映画の7割はアウト。この機会に膿を出し切ってしまえばいい!」と強く語っていました。

そしてこれらの「大炎上」を「たいへんよくもえました」ではどう扱うかという話ですが、あえて扱いません。
なぜなら性加害である場合は被害者がいます。実際に訴訟に動いている当事者達がも。面白半分に言及するのはそれ自体が加害へと繋がります。
ですから、今後もこの連載で「ネタ」として扱うことは控えたいと思います。こうした「重大な犯罪」だけでなく「戦争」も炎上としては扱いません。炎上があるのは平和の証拠なのですから。
もちろん、ウォッチはしますけどね。ケムール読者のみなさまも、ぜひご自身の目で。

では気を取り直して、いってみましょう。
🔥の数は独断と偏見の炎上度合いバロメーター、5つ炎が満点です。

 

2022年3月後半〜4月前半の主な炎上

①姫路市長、参加した卒業式でウケを狙い「三流大学」と発言してしまう 🔥🔥🔥
参考:読売新聞▶卒業式で「三流大学」と発言、姫路市長「エール送るつもりだった」

②朝倉未来氏 餅まきで現金100万円を撒く 🔥🔥

参考:ライブドアニュース▶朝倉未来が100万円バラまき炎上 動画で釈明「認識の差が出た」

③ウィル・スミス、アカデミー賞授賞式でコメディアンのクリス・ロックをビンタ 🔥🔥🔥🔥🔥

参考:テレ朝ニュース▶ウィル・スミスさん“ビンタ騒動”ロス市警が逮捕寸前もクリス・ロックさんが…(参考リンク切れ)

④乃木坂46メンバー、エイプリルフールに「同性との挙式」を投稿 🔥🔥🔥

参考:ハフポスト▶乃木坂46メンバー、「同性との挙式」をエイプリルフールに投稿し物議。「性的マイノリティをネタとして消費」と専門家(参考リンク切れ)

 

この時期は卒業式や入学式での挨拶が話題になりがち。なかには「やっちまったなぁ……」案件もちらほら見られますが、今年はこの①卒業式「三流大学」発言の姫路市長でしょうか。ただ、全文読むとこれは市長自身の経歴をネタにしているわけでして、呼ばれた大学を揶揄しているわけではない。まあ十分に誤解される可能性はあるという意味で、迂闊だったのではと。
②餅まき100万円はそこまで燃えているわけではないですが、こう、なんだかほっこりする、暖炉のような炎上だと思って入れてみました。有名人って大変ですね。ていうか餅まきってそういうイベントでは……とも思うのですが、これも世の中の流れを感じます。いや楽しいんですよ、餅まき。人間の本性が垣間見えて。
③アカデミー賞でビンタは、正直「異国の授賞式での出来事に、なんで日本人がこんなに熱く議論を戦わせることがあるんだろう」という気持ちがなくもない。ただこれ、アメリカのスタンダップコメディの立ち位置とか、そもそも妻が侮辱されたことを夫が制裁に行くことの是非とか、いろいろなレイヤーがあるのでややこしい話になっており、噛めば噛むほど味が出る炙りスルメみたいな燃えネタなんだろうなぁ。ワイドショー的にもネット民的にも……という印象です。

 

今回の「たいへんよくもえました」


というわけで、今回取り上げるのは④エイプリルフールで同性結婚です。
経緯を簡単に説明しますと、乃木坂46の秋元真夏さんが4月1日、自身のInstagramに「この度、友人の生田絵梨花と式を挙げました」と投稿。

ハッシュタグ「#エイプリルフール」が添えられているものの、2人が白い服を来ており生田さんがドレス姿であること、腕を組んでいることから、パッと見は同性愛者による結婚報告の投稿と見えなくもありません……というか見えますね。
この投稿に対し、SNS上ではこれは「クィアベイディング」ではないか、と批判が殺到。このクィアベイディングとは、実際には同性愛者ではないのにあたかも同性愛者であるかのように匂わせたり、“性的指向の曖昧さ”をほのめかしたりする行動を取ることで、LGBTQ+の視聴者や消費者、世間の注目を集めようとする手法を指す用語です。
一種のマイノリティへの「搾取」ともいえるこの行動は世界各所で問題になりつつある昨今、エイプリルフールのネタとはいえ一番デリケートな部分を踏んでしまったなという気持ちです。

ジョークのネタにされたことで火力が増大か

しかし、もともとこの2人が友人関係だとよく知っている乃木坂ファンからは「単なるジョークなのに過剰反応しすぎ」という意見も数多く出ており、さながら社会の縮図を見ているようで興味深い事象となっています。

炎上に疑問を呈する声も

 

 

4月1日は炎上の日

「クィアベイディング」については多分この先も問題視されていくでしょうからちょっと置いておいて、ここからは「エイプリルフール炎上」にフォーカスを当てたいなと思います。

インターネットそしてSNSの隆盛で、日本の有名人や企業にはどこか「エイプリルフールにはネタを投稿しなくてはいけない」という強迫観念があるのではないかしらと思う昨今です。そしてその強迫観念ゆえか、考えすぎて(もしくは単なる配慮が足りない迂闊さで)炎上案件も多々起こる、そんな罪作りな日だったりしますエイプリルフール。

例えば昨年、2021年。元東方神起のキム・ジェジュン「コロナウイルスに感染しました」とInstagramに投稿し、不謹慎だと世界規模の大炎上。いやまあ、そうなりますよね。

©主婦と生活社

参考:ロイター▶韓国歌手、「新型コロナ感染」とエープリルフールの嘘

2017年には俳優の野村周平さんが「引退宣言」を行ったことも。これはギリギリといえばギリギリといえなくもないですが、お騒がせではありました。

もともと、ネット文化が定着した2000年代後半ごろは、エイプリルフールは企業が渾身のネタを投下するのがお楽しみとなっていました。ものすごい予算と手間をかけてエイプリルフール用の特設サイトを作るのが流行りでしたよね。ただ、東日本大震災で一度下火になり、また復活しかけたところに新型コロナウィルスの流行でまた下火に……という歴史を(たびたび燃えながら)辿ってきました。

というか企業のネタは、宣伝効果はありつつもリスクも高すぎるんですよね。印象的なのはフォルクスワーゲン。「ネタで社名変更を発表したら5%も株価が上がってしまい投資家に激怒された」という例。昨年の話です。ヤッチマッタナー。

参考:秒間SUNDAY▶フォルクスワーゲン、ヤバすぎる嘘をついた結果大炎上の事態に

 

 

教訓:「祭り」の流儀を知れ

 そもそも、フェイクニュースが飛び交い、それが人の生死に繋がるような昨今、「エイプリルフール」と言うもの自体がもう難しくなってきているような気がします。新型コロナウィルスの流行がまだ収まらないうちはとくに。

エイプリルフール。一年で一度、ウソをついても良い日。それこそが火種になってしまう。そんな状況でもどうしてもエイプリルフールをやりたいなら、よほど慎重になって時流を読む感覚が必要になるんですよ。例えば今回取り上げた乃木坂のお2人のネタも、5年前なら笑って見過ごされていたかもしれません。でも、2022年では、ダメです。
この「時代の感覚」がわからない人は、エイプリルフールという「祭り」に参加する資格はないのです。

企業はそのへん、リスクヘッジとして「エイプリルフールに参加しない」という結論に至っているところも多いですよね。致し方ないかなと思いつつ、ちょっと寂しい気もします。
一方、今回の例でお察しいただけるのは「芸能人の炎上」が増えていること。ふだん芸能界という閉じた世界で生きている分、「今はなにがセーフでなにがアウトか」という感覚を得るのが難しいのでしょうか? 今後はみなさん気をつけていただきたいなあと思いつつ、来年のエイプリルフールにも、まだまだ炎上が観測できそうだなと古参ウォッチャーとしては思うのでした。

文・せこむ

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