たいへんよくもえました【10月前半のSNS炎上ニュース】

炎上の秋

冬のように寒くなったり、と思えば残暑がぶり返したり。体もアタマもおかしくなりそうな気候が続きますね(語弊)。こんにちは、炎上ウォッチャーせこむです。

季節の変わり目で、いろいろと調子を崩す人が多いのでしょうか。ここ2週間の炎上をおさらいしているだけで、ちょっと具合が悪くなってきました。

つべこべ言わずに見てください。炎上度はいつものように独断と偏見で、★5つが最大です。

 

①『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』、原作設定にはない黒人エルフ登場で炎上 ★★★★

http://blog.esuteru.com/archives/9932987.html

②舞鶴における「艦これ」同人イベントが急遽中止。その原因がなにか憶測が飛ぶも地元のややこしそうな事情が垣間見える状況に

https://togetter.com/li/1943776 ★★★

③くずもちの船橋屋社長、ベントレーで事故り罵声を浴びせたことが拡散され大炎上、辞任へ

https://toyokeizai.net/articles/-/622998 ★★★★

④首浮き輪のスイマーバ、公式アカウントが事故の注意喚起をする小児科医に批判的なツイートをして大炎上中

https://togetter.com/li/1949168 ★★★

⑤「ごぼうの党」奥野卓志代表、メイウェザー戦で花束投げ捨てして大炎上。謝罪するも非難止まらず ★★★★★

https://www.sanspo.com/article/20220930-TJMYL7ZE3ZE63LNRWY3YZFUKLM/

⑥山上容疑者を題材にした映画『REVOLUTION+1』一部映画館で上映中止に ★★★

https://www.sanspo.com/article/20220926-O3KHVXR2E5J2BPECX7ZE5BRQZA/

⑦鳥獣戯画展でデッサンを行っていたら禁止と言われた件、「ルールは守れ」「著作権は切れてるのでは?」と賛否両論
★★★

https://togetter.com/li/1949995

⑧ひろゆき、辺野古の座り込み現場に行き「座り込んでない」「0日にしては?」などと発言、物議を醸す★★★★★

https://www.j-cast.com/2022/10/05447338.html?p=all

 

今回の「たいへんよくもえました」

もうやだ、何この状況。

個人的には③の船橋屋は以前から筆者もくず餅をたまに購入していて、割と下町のカジュアルな老舗という印象が強かっただけに「社長、ベントレー乗ってんのか!」と衝撃を受けました。いや別にいいんですがね。⑧はまだ現在進行系で燃え盛っていますが、議論が「社会運動の是非」や「沖縄問題について再度検証する」的なところに広がってきていてややこしさをさらに加速させている印象があります。

 

というわけで、今回は①ロードオブザリングです。ややこしさでは引けを取らない気もしますが。

 

知らない方に向けて経緯を説明しますと、今Amazon Prime Video限定で『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』というコンテンツが配信開始されています。J・R・R・トールキンの『指輪物語』をもとにした映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作、同じく『ホビットの冒険』を基にした映画同名映画三部作に関してはご存じの方も多いでしょうが、このシリーズとおなじ同じ世界観を描き出すドラマになっており。

この『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』に、黒人のキャストが演じるエルフのキャラクターが登場したことから、ネット界では大論争が巻き起こりました。

『指輪物語』に隠された人種問題?

ざっくりと分けると

 

◯『指輪物語』世界には黒人エルフはいなかったはず、原作やこれまでの映画版への冒涜だ! 派

VS

◯なんで黒人のエルフがいたらダメなのか? トールキンはエルフの肌の色に言及していないしそもそもが二次創作なんだから黒人キャストを非難するのは人種差別だ! 派

 

こういう意見の対立が起こっているという状況。

 

この炎上、これまでこの連載で扱ってきたネタとはわけが違います。なにせテーマが『指輪物語』シリーズ、原作も映画版も世界中に強火担が死ぬほどいる一大ジャンルです。炎上の桁がまあワールドワイド。狭い日本のネット社会なんか比べ物にならない火力でして。

しかも、昨今のエンタメ作品における「ポリコレ配慮」にいろいろ思う所がある人が多かったせいか「ポリコレのせいで『指輪物語』がめちゃくちゃにされた!」と発言する人も多数見られました。かつ、その批判は明らかに「人種差別」に相当するのでは? というものまで。

 

あまりの状況に、公式からは「キャストへの人種差別に抗議します」という声明が出ました。


参照:ロードオブザリング公式、出演者への人種差別に抗議「無視も容認もしない」 ⇒ スターウォーズも連帯
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_63196e62e4b027aa4057c5e1

炎上分析START🔥

この状況を取り巻く言説を、箇条書きで整理してみましょう。

 

◯この『力の指輪』、『ロード〜』や『ホビットの冒険』とは異なり、明確な原作小説はない。『指輪物語』などにでてきた過去の設定を膨らませたオリジナルストーリーである。

 

◯トールキンはエルフの肌の色については明確に「白い」とは言及していない(諸説あり、ツイート参照)、しかし「多様な肌の色をしている」とも言及していない

 

◯しかしトールキンの生きてきた時代や原作発表時のことを考えると「エルフは白人の比喩であることは明白なのではないか」という説も

 

◯これまで発表された映画『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビットの冒険』と整合性が取れなくなる→しかしそもそもが「二次創作」であり、かつ原作がない今回は別物では? 論議

 

ああもう。やーやーこーしーいー。

 

一つ言及しますと。この議論のと中で、「ポリコレ配慮問題」で例としてよく取り上げられていたのがディズニーが製作する実写版『リトル・マーメイド』。9月9日に公開された予告編をめぐり、こちらもファンの間で紛糾しました。なぜなら、アリエル役のハリー・ベイリーが黒人女性だったから。

参考:「実写版リトル・マーメイド」日本人が批判のなぜ

https://toyokeizai.net/articles/-/619134

 

こちらも「童話『人魚姫』ではなくディズニーアニメ『リトル・マーメイド』を原作にするならそっちに寄せろよ」派VS「原作童話には人種言及してないんだからいいじゃないか」派が対立している状況です。

エンターテインメントって何?

ただ、個人的にはこれは単なる「ポリコレで原作がダメにされた」というよりは、ディズニーの「戦略」なのではと思っています。会社としてこういうスタンスを取りますよ、そういう作品にしますので嫌なら観なくていいよ……という表明ですね。そう考えると、「せめて前の作品との世界観を統一してくれよ」という『力の指輪』の批判とは若干違うのではないか……という気もしています。

まあ、かといってディズニーがポリコレ的に「正しい」かというとまた別で、傘下のピクサーに対し「LGBTQ+描写の削除要請を行っていた」ことが2022年3月に判明、大バッシングが巻き起こりましたが。

 

参考:LGBTQコミュニティーへの姿勢問われるディズニー。作品で社会の「多様性」をどう映してきたのか

https://www.cinra.net/article/202203-briefing-disney_gtmnm

 

多分今後、似たようなことはたくさん起こってくるでしょう。「ポリコレがエンタメをつまらなくする」という人もいるかもしれません。しかし、ここで大事なのはそれが「差別の解消」なのか、「創作上の正当な配慮なのか」をきちんと考えたい、そして時代に合わせてアップデートしていきたい……ということ。例えば上記の『リトル・マーメイド』では、黒人アリエルの登場に大喜びする黒人の女の子の様子が多数SNSで報告されています。差別問題に関しては「足を踏まれたものだけがその痛さがわかる」とよく言われますが、もしも自分が海外でアジア人として差別を受けた経験がたくさんある場合、新しいアリエルに喜ぶ子どもたちを否定できるのか? という話です。

 

さて『力の指輪』は……それが「正当かどうか」は、人それぞれ感想が違うことでしょう。作品世界を自分の中でどう定義するかは信仰のようなものですから。ただ少なくとも、エンタメ作品で血で血を洗うような炎上はあんまり観たくないな、批判するなとはいわないけど「配慮」は必要じゃないかな……そんなことを思ったりする昨今です。

文・せこむ

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