Twitterが、燃えています
皆さんこんにちは、炎上ウォッチャーのせこむです。いやあ、大変なことになってますねTwitter。正直、炎上を三度の飯より好物としている自分としてはまったくもっていろいろな意味で他人事ではなく。というわけで今回はスペシャル版、題して「イーロン・マスクによるTwitter買収とそれにまつわる騒動……いや炎上を振り返ろう」の巻です。
まずは基本のき。イーロン・マスクって誰ですか? という人に説明すると
・電気自動車企業の「テスラ」を創設、電気自動車分野ではあのトヨタに追随する存在に
・世界有数のお金持ち(株式の時価総額は一時ビル・ゲイツを抜いた「世界一」に)
・インターネット決済でみんながよくお世話になってるPayPalも前身はこのイーロン・マスクが作ったもの
・2035年までに人類を火星に移住させると言っている
……こうやって書くとマンガか、もしくはラノベの主人公かっていう感じですよね。実在人物なんですけどね。
どんな人かがわかったところで、経緯を時系列でおさらいしましょう。
4月4日 イーロン・マスク氏が米Twitter社の株式の9.2%を取得、筆頭株主となる
4月5日 Twitter社、マスク氏の取締役就任を発表
4月11日 マスク氏、Twitter社の取締役を辞退と発表される
4月14日 マスク氏、Twitter社の買収を持ちかけていることが判明4月〜10月 マスク氏が要求したスパムや偽のアカウントに関する情報提供が不十分だったりとさまざまな要因で買収がすんなり進まず、報道も二転三転。マスク氏の買収契約を解除しようとしてTwitter社が裁判所に提訴するなど泥沼のやり取りが繰り広げられる10月27日 マスク氏によるTwitter買収が完了する
正直、最初に買収の話が流れてきた4月からあれこれあった10月までは、日本のTwitterユーザーたちは「マジかよw」くらいな半笑いの感想だったと思うんですよ。多分殆どのユーザーにとってイーロン・マスク自体がピンとこないというか、ぶっちゃけて言うと
「この自分たちが使ってる掃き溜めみたいな世界、そんなに欲しいの!?」
という実感だった人が大半なのではないでしょうか。だってTwitterだよ?
ところがそんな冗談めいた空気が突然一転する事態が勃発します。
米Twitter社では全従業員7500人のうち約半数を解雇したと報じられていますが、解雇に関しては日本よりも「自由度が高い」、要はシビアなアメリカ社会とはいえこの規模は前代未聞。世界中を揺るがすニュースとなりました。解雇の通知と同時に突然社用PCが起動しなくなり、社内ツールにアクセスできず、社用メールのパスワードも変更されていて連絡不能になったとか。壮絶すぎます。
Twitter、日本法人も当然ございます。このTwitterJPももちろんこの解雇劇から逃れることはできず、日本法人の場合は広報部門全員が人員削減の対象になったとか。大量解雇の第一報を聞いてTwitter民は「イーロン・マスク容赦ねえな……」と自分たちが掃き溜めのように思っていた遊び場が、思ったよりシビアなビジネス社会だと気づいたわけですが、
そのつかの間…。
「解雇されたTwitter日本法人社員」たちのつぶやきがTwitter上に観測され始めたあたりから、様子がちょっとおかしくなってきます。
早々に便乗勢がハッシュタグを荒らしてしまったために今では実際どういうものだったか確認するのもちょっと困難にはなっていますが(これがまた日本のTwitterらしいところです)主にこんな感じです。
このパリピ感というか、キラキラ感。
ものの見事にポジティブな発言がほとんどで、解雇されたことへの恨み節はほとんど見られませんでした。いやいきなり解雇されてるんですよ? 日本の労働基準法全く無視のひどい話なんですよ?(これに関してはどういう経緯でこのレイオフが可能になったかも諸説ありますが長くなるので置いときます)もちろん血の涙を飲みこんでのツイートかもしれませんが、このさい&こうな世界観に日本のTwitterユーザーたちはドン引きです。
”SNSの腐海”の民たちが…。
これまでも、機能に関してなにか足したかと思ったらたいてい改悪(これは米Twitter本社の意向でしょうけど)、誹謗中傷などに対する対策も納得がいくものが少なく、プロモーション活動についても疑問や批判がつきまとうことが多かったTwitterジャパン。
ユーザーが抱いてきた不満や不信感が、解雇でいっとき同情へ向かうかと思いきや、一気に「そら解雇されるわ」というアンチへと反転してしまった瞬間でした。いやまあ、解雇された人たちが呟いてる内容も別にヘンではない。でもですよ、FacebookやInstagramならわかるんですけど、ここは“SNSの腐海”Twitterですからね……。ナウシカではないですが「キラキラした世界へお帰り、この先はお前の世界ではないのよ」と囁いてあげたくなります。
ちなみにこのTwitterジャパン社の内部、以前NHKの番組で取材されていました。つい先日までNHKオンデマンドで観られたようですがどうやら配信中止になってしまったようでもったいない。当時のツイートまとめからその内容を伺うことができますが、今見ると非常に趣深いです。
参考▶NHK『のぞき見ドキュメント #100カメ』がTwitter社に潜入→警察からの削除要請、2週に一度の新入社員入社、飲みニケーション重視などの実態が明らかに
そもそも、なんでイーロン・マスクがこんな大量解雇をやったかというと、「Twitterが大赤字だったから」なんですよね。大赤字なのに大量採用をやっていた、そりゃ解雇の対象になるのも致し方ない。実際、今回のレイオフの対象になった人たちはエンジニア畑の人はほとんどいない模様。
さらに今までのTwitterの特質が、レイオフで明るみに出てきました。おすすめ投稿などのニュースフィードを操作する「キュレーションチーム」が解雇されたことで、メディアは自社記事の「モーメント」がニュースフィードに反映されなくなったという事態が発生。
キュレーションチームの存在はいままでも秘密でもなんでもなかったようです。しかし改めて「Twitter社の選ぶ情報キュレーションに恣意性があったのでは」という論議も再燃しています。特定のメディアや言論をとりあげ、トレンドをつくっていたのではないか?と。
もちろん、これを言論統制とまでは言えません。
しかし、炎上界隈にとっては、見逃せない動きではあります。前々から「ボヤ程度のものがTwitterで拡散されたことで“炎上”になってしまう」ケースは多数観測していましたが、Twitterの今後により炎上界隈もちょっと変化が起きるかもしれません。
自由の市場価値は
イーロン・マスク氏がTwitterを買収した理由は、Twitter社がドナルド・トランプ氏のアカウントを凍結したことへの批判があると見られています。トランプ氏がTwitterを再開するかは不明ですが、マスク氏の買収は「発信の自由」を守りたかったという意図があるようです。
アカウント凍結は、私たちのまわりでも起きています。いわゆる「垢BAN」などの検閲。今回の買収騒動で、多くの人(特に言論クラスタ)が発言を口ごもってしまう理由だと思うのですよね……。
しかし自由度が広がれば「差別や悪意の発言を取り締まることが難しくなる」可能性もある。
この先のTwitterがどうなっていくのか、まだまだ起こるであろうTwitter社の炎上とともに注意深く見守っていきたいと思います。