こんにちは。炎上ウォッチャーのせこむです。
2022年もまもなく終わり。師走の空気になんだか焦ったりしてますか?それとも近づくクリスマスに少し浮足立っていますか?
インターネット界は……Twitter社の動向が(相変わらず先行きは読めないものの)少し沈静化して来たように見える一方で、いつものような火の手がガンガン上がりだしました。はい、今回から通常モードに戻りますよー。
……の割には、なかなか盛大に燃えてる物が多すぎてちょっと動揺しているのも事実ですが。さあ行ってみましょう、独断と偏見で付けた炎上度合いはいつものように★5つが最大です。
①JR大阪の対戦型麻雀ゲーム「雀魂(じゃんたま)」とテレビアニメ「咲-Saki-全国編」とのコラボ・ポスターが炎上【★★★★・】
②テレビ番組「ジョブチューン」でロイヤルホストのパンケーキが酷評、しかし擁護勢が店に詰めかけるなど予想外の事態に【★★★★・】
③劇場版アニメ『スラムダンク』製作スタッフの原作を「あまり知らない」発言が炎上【★★★★・】
……バラエティに富んでいますが「こんなにあちこちで燃えなくていいよ」というのが本音のところ。
①はこれまでも取り上げた「月曜日のたわわ」や「温泉むすめ」等の「萌え絵表現と広告」という問題でして、ちょっといろいろと議論の観点があるので今回は置いておきます。火力も高いし……。
あと④に関しては炎上と言うより「リアル消費者庁案件」でもあるので、被害にあった方々は本当に大変だなと……。
実はちょうど同時期に「wellnote」という家族SNSがサービス終了して子育て界隈が阿鼻叫喚になっていたのですが、ベネッセほどの大手でもこんなことがあるんだなあ……と背筋が寒くなったものです。
参考:サービス終了の家族SNS「wellnote」、1カ月後にデータ全削除も一括DL機能なく批判殺到
今回の「たいへんよくもえました」
はーい、そんなわけで今回は②。映画『THE FIRST SLAM DUNK』をめぐる騒動を一度、ここで総括しておきたいと思います。
『SLAM DUNK』については、ほとんどの人には説明不要ではないでしょうか?
1990年から約6年間にわたって『週刊少年ジャンプ』に連載された井上雄彦氏による人気漫画で、1993年にはアニメ化。
シリーズ累計部数は1億2千万部超えという超超大ヒット作です。
この『SLAM DUNK』が実に27年ぶりにアニメ映画化、しかも原作者の井上雄彦氏が自ら監督・脚本を務めるということで公開前から大きな話題を呼びました。
しかしながら、この『THE FIRST SLAM DUNK』、大きな炎上事件を2つ起こしてしまいます。1つ目は「声優交代」について。時系列を見ましょう。
キャラクターを描いた「ムビチケ」、要は前売り券が発売開始される
『THE FIRST SLAM DUNK』の声優発表。テレビ版から声優が一新されることが判明。同時に公開された予告映像でフルCG製作であることが判明、こちらも物議を醸す
声優交代に関しては正直、テレビ版放映、そしてその後作られた劇場版からの時間もありますし仕方ないかなとは思いますが、この時系列が悪かった。
当然新作“アニメ”ということで過去のアニメシリーズファンも期待が大きかっただけに「前売りチケット販売後に声優交代発表はないのでは?」とまずここで炎上が起こります。
かつ、公開された予告編映像がフルCG製作とはいえかつてのアニメシリーズとのイメージからかなりかけ離れたテイストだったのもさらに炎上に拍車をかけることに。
なんだかなぁ……
ここにさらに火に油を注いでしまったのが、『COURT SIDE』というサイトの存在。
これは公式が運営している製作スタッフインタビューを掲載したサイトなのですが、この中にあった「そもそも『SLAM DUNK』をあまり知らなかった」という発言等がピックアップされ「原作を軽視しているのでは」と批判のもとに。
参考:『COURT SIDE』
前述の予告編映像のこともあり「このクオリティで!?」と公開前から一部でバッシングが起こるという「なんだかなぁ……」な事態となっていたのでした。
普通に映画良かったけど!?
さて、なんでこんな炎上騒動をわざわざこのタイミングで総括しようと思ったか?
ようやく2022年12月3日に公開されたこの映画『THE FIRST SLAM DUNK』が、ひっじょーに、ものすごーく、“良かった”からなのです。
ええ、個人の感想ですよ?感想ですがなにか!?
……これ、ワタクシ1人の反応ではなく、ちょっとSNSやインターネットを観てもらえば間違いではないことが分かっていただけると思います。
というか各地の映画館、この『THE FIRST SLAM DUNK』の上映回数凄いことになってるんじゃないですかね?
少なくとも新宿・渋谷・池袋あたりの映画館はとんでもないことになってますし、自分が行ったのは平日夕方の回でしたが9割方埋まってました。とんでもない大ヒットです。
懸念されたフルCGも実際に見ると全く違和感なく、過去の劇場版やテレビアニメ版に比べると試合演出の進化はもうひと目でわかるレベルでして。
かつ、おそらく「『SLAM DUNK』を知らない若い世代にもどう伝えられるか」という意図で意識的に行われた“この映画における主人公”の設定がとても効いています。
白状しますと、個人的にツボに入ってしまい開始からずっと泣いてましてね……いや宮城リョータ推しとかではなくどっちかというと連載当時は三井が……。
……おっと個人的な感想がダダ漏れになりましたね。
このままずっと「『THE FIRST SLAM DUNK』のどこが素晴らしかったか」を語っていてもいいのですが本題に戻ります。
つまり、なまじっか映画が良かったがために「公開前に炎上してたのってなんだったの?」「あれ、単に面倒くさいファンがいちゃもんつけてただけでしょ?」的な「歴史(記憶)改ざん」がSNS上で若干起こりつつあるのを観測したからなんですね。
というわけで時系列と「なぜ炎上したか」という原因を一度まとめておこうかと。
炎上分析START🔥
個人的には、この『THE FIRST SLAM DUNK』の炎上は起こるべくして起こったと思うのです。それは「SNSをやる『SLAM DUNK』ファンというのがどういう人たちか」が大きな理由なのですが……。
【理由①】原作&アニメファンとともに当時女性向け二次創作ジャンルで一大勢力となっていたため、一部世代の腐女子たちには熱狂的なファンが多く、そういう人たちも火力となった
【理由②】アニメ=深夜というイメージが強い現在では考えられないほど、ゴールデン帯のアニメ放送。原作&アニメが“バスケブーム”を巻き起こしたまさに「社会現象」ともなったアニメのため、ヲタだけでなく幅広いファン層を持っていた
【理由③】アニメ化された1993年当時、主人公・桜木花道役をつとめた草尾毅氏、流川楓役をつとめた緑川光氏をはじめ「声優の熱狂的なファン」が存在していたこと。特に草尾毅氏はいわば「アイドル声優」的な存在の草分けでもあったため、声優交代に感情的になってしまった旧版アニメファンが多かった
【理由④】「週刊少年ジャンプ」の人気作品には珍しく、原作の連載終了後から正式な「続編」となる作品が発売されていない。しかし人気は衰えないという稀有な作品なため、ファンが公式からの“供給”に飢えていた状態
【理由⑤】どんな内容なのか、原作における“どこ”をアニメ化するのかなどの情報が映画公開日までほぼ明かされないという、公開規模の割には前例のないプロモーションが取られたことで、憶測が独り歩きして広まってしまった
……なんというか、公式側が取りたかったプロモーション戦略とうまい具合に噛み合ってなかったんだなあ、と思ってしまいますね。
繰り返しますが。前売り券販売後の声優発表に関しては「……なんとかならなかったの?」と思います。
当時のアニメ『SLAM DUNK』人気を知っている身としては(歳がバレる)これはもう、燃えて然るべき出来事だったかと。
あなたの草尾毅はどこから?私は『鎧伝サムライトルーパー』の烈火のリョ……ゴホッゴホッ。
しかしそれ以外に関してはまあ、「作品の出来が事前の炎上を吹き飛ばした」というある意味「正しい」形に収まったとは言えますが……作品のヒットにちょっとだけノイズが残る感じで、後味が悪いなあと思ったのでした。
だから皆さん、『THE FIRST SLAM DUNK』観に行ったほうがいいですよ!という一方的な宣伝文句で今回の「たいへんよくもえました」を締めたいと思います。