みなさんこんにちは、炎上ウォッチャーのせこむです。
COLABOの炎上が止まりませんね。前回でも少し触れましたが、もう泥仕合がずっと続いてる感じなのでここではあえて取り上げないことにします。
ただ、渦中の暇空茜氏だけでなくいわゆる「ネット論客」が多数参加してその中でも内ゲバ状態が勃発しており、「最悪のスマブラ状態」がますます加速してるのでいったいどこが落とし所なのか全く見えなくなってきているのが懸念されるところです。
じゃあ今月の炎上がそれだけだったかというとけしてそんなことはなく、2023年のスタートダッシュからなかなかのラインナップ。
1月後半のSNS炎上ニュース
あ、たびたびお話していますが痴漢問題とか「犯罪が絡んだもの」は基本的には取り上げないことにしていますのでご了承くださいませ。
いつもの通り、独断と偏見の炎上度は★5つが満点です。
①数々の問題ツイートを連発していた電通マン、妻のジュエリーブランドも転売疑惑が浮上でバイヤー謝罪騒動に
【★★★★・】
②成田祐輔氏、「高齢者は集団自決を」発言で炎上
【★★★★・】
③「帝王切開に抵抗ない、楽だし」男性発言が出産経験者中心にフルボッコに
【★★★・・】
久しぶりに炎上らしい炎上というか、ここまで下品な炎上って最近少なかった気がするな……と微笑ましい気分にすらなった①。
ちなみに奥様のジュエリーブランド、インスタグラムでの広告画像が本当に雑でちょっと笑っちゃいました。
興味ある方はぜひ探してみてください。
続いて多分この先何度も同じようなことを繰り返しそうで「ひろゆきと彼の言うことはもう燃やさなくていいんじゃない?」と若干思いかけてる②、既婚女性を中心に燃え盛っていて面白かった(失礼)③。
④はひどい料理を出されたツイ主が他の肉寿司の店に接待を受けたけれどもその店もかつて行ったことがある客から「いや出されたものと若干違う気がする」とツッコミがなくはない「なんだかなぁ……」状態になっていた④。
年明け早々お腹いっぱいです、だいじょうぶか2023年。
というわけで今回は⑤を取り上げることにします。
今回の「たいへんよくもえました」
1月17日。とある漫画編集者の方の発言が、ツイッター上で話題となりました。
集英社の女性向けマンガ雑誌『マーガレット』の編集者であるというアカウントが発したこの発言。
連投で上記は抜粋なので、よろしければ全体は元ツイートか、下記のまとめから御覧ください。
月刊マーガレット副編集長 治部(担当J)氏の発言「編集者が言った通りに直しただけのネームを漫画家から貰うとガッカリする」に寄せられたプロ作家の反応
わかりやすく内容をまとめると「ネームを直してねと言っても、自分が言った通りに直された“だけ”だとがっかりする」ということ。
その後に「なぜそうなのか」という理由も連投しているのですが……このツイート、炎上します。
特に、マンガ家や小説家など、「クリエイターとして編集とのやりとりを経験した事がある人」が多く言及していたのが印象的でした。
この件への反応で最も多く見られた言葉は「パワハラ」。
炎上が広がるにつれ、マンガ家経験者でない一般の方たちからも、身近に経験したパワハラと重ね合わせたツイートなどがどんどん増えていきます。
実際の彼を知っているマンガ家さんたちからは擁護の声も。
しかしそういう声が出てなお「だからといってこの発言がOKなわけではない」というツイートも出る、最近にしては言及する人たちの熱量が平均的に高めな炎上に。
①とは対照的です(笑)。
炎上分析START
今回の炎上、ある意味編集者の方が「編集論」を正直に語っただけとも言えます。
2023年1月24日現在、元のこの発言は消されてもいませんし、会社的・職業倫理的にそこまでまずい発言でもないと思っているのでしょう。
では、なぜここまで炎上したのか?ポイントは3つあると思っています。
「編集者」という職業はさまざまなジャンルに存在しますが、マンガにおける「編集者」は雑誌とは違い作品に踏み込む領域が多いのが特徴です。
そのため、昔からマンガ家を描いた作品では編集者の描写も多いのですが、作家と二人三脚のまっとうな編集者もいればヒール的な描き方をされる人も。
また「コンプライアンス」という言葉が欠片もなかった時代には、編集者もまた一癖も二癖もある人がいたのは事実だった模様で……。
ご興味ある方は1980年代の「少年ジャンプ」連載マンガ家を脚色たっぷりに描いた平松伸二作『そしてボクは外道マンになる』をお読みください。
あくまでも平松氏の体験をもとにしたフィクションではありますが、おそらく事実が多少は入っているんだろうなと思うと「うわぁ……」となることうけあい。
さすがに平成、令和と時代が移り変わるにつれて昔のような武闘派編集者は減っているものの、やはり編集者と作家のパワーバランスの不均衡からくる不幸な状態というのは未だになくはなく(これはまた後述)。
そして大事なのは、近年はこういう問題がSNSで数多く可視化されるようになってきたということ。
例えばこちら、少し前のまとめですが喫茶店でのマンガ家と編集者のお腹が痛くなるような会話の記録。
喫茶店で聞こえた『漫画家と編集者の会話』があまりにも強烈すぎて、震えあがる人続出
また、「出版社が、編集者が原因で連載がなくなった」「編集者とトラブルを起こした」という「これまではどこにも発することができず泣き寝入りだった」事案を、SNSの普及により「声を挙げることができるようになってきた」。
そのため、マンガ業界に関わらない一般の人達にも「こんなことが今でもあるんだ」という問題意識を共有するという結果に。
クリエイターの方たちからもこういう編集者の存在が言及されることで、「問題がある編集者はいる」ということが業界外の人達にも広まってきている……という土壌ができているのは事実でしょう。
今回、SNSを見ていると「ネームを直させるだけ直させて連載会議に出していなかった」「預けた原稿が机の中にしまわれたままだったのが後からわかった」というような経験談も多数見られ、背筋が寒くなりました。
今回の炎上でとても印象的だったのがこれ。
「自分の上司にもいた」「取引先にいる」という発言がどれだけ多かったことか……。
この編集氏はおそらく違うと思うのですが、「『思い通りにしろ』と言うものの、思い通りにしなくても怒るし思い通りにしても怒る」という相手に振り回された、そんな経験がある人が世の中にはとても多いようです。
これ、典型的な「パワハラ」そして「モラハラ」の行動なんですよね。
こういうタイプに職場や家庭でひどい目にあった、メンタルを壊された、仕事をめちゃくちゃにされた……。
マンガ業界にいなくても一般化されて共感しやすい題材だった、それが炎上に拍車をかけた理由かと思います。
それぞれの「嫌な思い出」が言及ツイートの熱量につながったのかと。
それこそ①のように昭和の時代だったら、編集者が描かれていても「へぇ〜」で済んでいたんですよね。
古くは鳥山明氏の『Dr.スランプ』に出てきたDr.マシリトが当時の担当編集がモデルだったというのは有名な話ですが、そういうのを笑いながら読んでいたのが昭和だった。
しかし今、マンガ編集者の立ち位置というのが少し変化してきています。
これもSNSの普及が大きな要因ではありますが、作家や編集者と読者が直でつながることができるようになり、読者が「舞台裏」や作品の背景、創作にまつわる「ストーリー」を知ることができる状況になったことで、編集者の存在がよりクローズアップされるようになった。
大手出版社から独立してエージェント化する人もいれば、コアなマンガファンの中には編集者で手に取る作品を選ぶ……という人も。
そうやって「マンガ編集者」という職業、立ち位置がよりクローズアップされた分、これまで気づかなかった「非対称性」が気になる人も多くなったのではないでしょうか。
デビューを目指すマンガ家はどれだけネームを練り、持ち込みを繰り返しても、掲載を勝ち取らなければ報酬はゼロ。
しかしそのマンガ家のネームを評価する編集者に関しては「会社員」ですから、身分は保証されています。
そもそもの立場が違いすぎるんですよね。
しかも大手出版社に関しては年収もかなりのもの、一般の会社員の方と比べても「高年収」に属します。
ヒットを飛ばさないといけないという命題はあるものの、正直実績が出せなくてもクビになるわけではなく収入が保証されている編集者と、掲載や連載を勝ち取れるかが目の前の生活に関わる新人マンガ家とでは立場が違いすぎる。
そりゃあ直せと言われたら言われたとおりに直す、たとえそれが自分にとって不本意な方針であろうとチャンスを掴むためには涙を飲んで言うとおりにする……そういう人も多いと思うんですよ。
担当編集は雑誌への窓口、そしてこれもマンガの特性ですが一度担当になるとまず他の人に変わることはないですから、その人になんとかして気に入られないとその雑誌に載るチャンスすら失ってしまう。そこで言い返せる人がいるのか?という話です。
そんな非対称性がある状態で、力が強いほうが「がっかり」と発言することの是非。
今回の炎上で、一番言及された本質はここだったかと思います。
まとめ
今回炎上した「担当J」氏のツイートは、「従来のマンガ業界の中での発言だったら」おそらく問題ないものだったことでしょう。
実際、編集者がクリエイターに何を求めているかという点では納得行く部分も多い内容です。
しかし、より多くの人が目にするSNSではこれが「パワハラ」と取られてしまった。
また先程言及したようにマンガ家と編集者の関係性自体も変わりつつある昨今、大会社に属する編集者がこういうことを発信するということへの言ってしまえば「鈍感さ」が気になった、そういう人が多かったのではないでしょうか。
これがフリーランスのエージェント編集者の発言なら、またちょっと違っていた気がします。
そういう人は、手掛けた作品がヒットしないと収入補償がないですからね。
SNSで発信が容易になった分、それまで業界内では普通に許されていた発言が思わぬ評価を受けることもある。
時代の流れとSNSの潮流には敏感でないと思わぬ火災を招くなと、そんなごくごく当たり前のことを改めて実感させられた今回の炎上でした。