喫煙業界人が集結する「タバコFES」に潜入!【スモーキング・コレクション2023】直撃取材#たばこのことば

各界を代表する著名人の方々が「けむり」を通して見えたもの・感じたことを語る連載です。今回は特別編、喫煙具イベント【スモーキング・コレクション2023】を特集します。

ーー あなたが喫っているタバコはどこで手に入れたものだろうか? コンビニ? 町のタバコ店? もらいタバコなんて人は珍しいと思うが…いずれにしろ私たちのタバコはさまざまな場所に流通している。
なかでもこだわりのライター・葉巻・パイプなどは探さないとなかなか見つからなかったりするから、愛煙家の中には行きつけのタバコ屋やネットショップを使っている人もいるだろう。
今回の「たばこのことば」は、そんな「タバコ屋さん」の話。

喫煙業界・年イチの「祭」

パイプメーカー日本代表登場!【#たばこのことば】柘製作所社長・三井弘司

 

23年10月、「たばこのことば」ではパイプメーカー「柘製作所」の三井弘司社長に登場いただいた。
その破天荒な愛煙家人生と超絶美麗なTSUGEパイプの数々はぜひ記事で読んでほしいが、その取材の中でこんな一言があった。

やっと復活できることが嬉しいね。「スモコレ」は日本で唯一の、喫煙具業界のお祭りだから。

そう、「スモーキング・コレクション2023」

実はこのイベントは全国の「タバコ屋さん」が主体となって開催しているらしい。だから喫煙具メーカーはここに自慢の商品を集めて展示する。買い付けられたタバコや喫煙具は全国の店舗に並び、愛煙家の手に届くというわけだ。
入場は喫煙業界関係者のみで、一般人は入れない……展示されるのはタバコと喫煙具だけの「タバコFES」といったところ。いったいどんなイベントなのか?

というわけで、ケムール編集部が取材に行ってきました。

最新&王道&激レア喫煙具を紹介、出展したメーカーだけでなく運営の人の話も聞きながら、どこもやらない・追いつけない超密着タバコ業界取材に出かけよう。

スモコレ実行委員会登場!

10/17.18。

会場は浅草ビューホテル。つくばエクスプレス線浅草駅のド真ん前であり、ロビーには外国人の姿が目立つ。パンデミックによる旅行制限が明けて数か月、復活したのはインバウンド需要だけではない。「スモコレ」も4年ぶりの開催となった。

その会場がココだ!!

ブース:秋山産業株式会社

え? こんなに人いるの??

正直、ここまでごった返しているとは思わなかった。今回は「スモコレ」実行委員の方々にご案内いただくという取材ツアーだ。

スモコレ実行委員会

【左から】天野さん・杉島さん・叢さん

「コロナ前よりはすこし少ないですが。これだけの方が集まっていただいて嬉しいですね」

と語るのは実行委員会の叢(くさむら)さん。
もっと混んでいた時期もあるのか…三井社長が「お祭り」と言っていただけのことはある。
さあ、いよいよ中を見ていこう。

※朝イチの受付の列。来場者の方の顔を隠すため写真をセレクトしているが、実際は20人くらい並んでいた

紙巻き『じゃないほう』のタバコの世界

会場内には各社タバコメーカー、喫煙具メーカーや商社のブースが合計28社

まず目に飛び込んでくるのは日本たばこ産業・JT!!

他を圧倒するデカいブースだ。「ploomX」を前面に押し出しながら、開発者のセミナーを行ったり、特設のカウンターでコーヒーまで淹れてくれる。会場内では訪れたタバコ屋さんとメーカーの情報交換と商談が進む。

「『スモコレ』はただの展示会ではありません。ふだんメーカーと触れ合う機会が少ない販売店が全国の現状を話し合い、一歩先を読むやりとりができる。日本で唯一の『タバコ屋のためのイベント』なのです」(叢さん)

JTに隣接したスペースでは、いまや加熱式たばこの代表格となったフィリップモリスが出展。もちろん「IQOS」押しだ!
ということは「glo」シリーズのBAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)も出展しているはず。ブースに行ってみると、なんとメインで紹介されていたのは新作の「glo hyper air」……ではなく、「VELO」!

「VELO」は「かぎタバコ」に分類される、口の中に小さなパックを入れてタバコフレーバーを楽しむ新しいタイプのオーラルたばこだ。
タバコメディアの編集部から見ると、こうした風景に少々驚かされる。大手3社が紙巻き(シガレット)ではないジャンルのタバコを紹介し、BATはgloですらない開拓中の新商品を目玉にしている。
「一歩先を読む」…たしかに。時代の変化が見える。スモコレは一般開放されていない販売店向けイベントだからこそ、たばこ業界の今後を占う商品に出会うことができるのだ。

「現在は日本のタバコ消費のほぼ全ては、紙巻きたばこです。ですが、ここではもっと深く広いタバコの展開が見られるでしょう。特に『スモコレ2023』では、最近のトレンドであるシーシャの出展も増えました」(天野さん)

株式会社フカシロ(上)と株式会社ライテック(下)のブース。他のブースでもシーシャはちらほら見られた。

大手3社以外のブースも実に多様かつ個性的だ。手巻きタバコ(シャグ)、葉巻、パイプなどを扱うメーカーのブースが並ぶ。喫煙具もスター企業が揃い踏み状態だ。

おお! 手巻きタバコ・ユーザーにはおなじみの「アーク・ロイヤル」のブースがある!!

ブース:日辰貿易株式会社

輸入元の日辰貿易は、世界の愛煙家に超人気の最高級タバコ『トレジャラー』も扱っているスゴい会社だ。

ブースを移動すると……あ!!
このTシャツは「RAW」だ!!

RAWもシャグユーザーなら知らない人のほうが少ないほどの有名ブランドだ。輸入元は有限会社モリソン商会。ブース内装もRAWらしいアメリカン・クラシック。

スタッフのお姉さんと話していたのは、(RAWの営業マンではなく…)シャグの名店「Von kraren」のジェネラルマネージャー・松本貴之さん(写真左)だ。こうして会場内ではメーカーとタバコ屋さんが垣根なく会話し交流している状態。4年ぶりのスモコレだからこそ、積もる話もある。

「特に国内ではタバコ消費が落ち込むなかで、暗くなりがちな業界を活気づける場にしたい」(叢さん)

今年のテーマは『一服の底力』だ。

根強いファンを持つ「BLACK DEVIL」や「che」を扱う秋山産業株式会社のブース。会場には若い世代の来場者も多く訪れていることが印象的だった。

「名品喫煙具」と「レジェンド業界人」が集結

タバコには欠かせないライターの顔ぶれもすごいことになっている。

磨きが美しい東京パイプの縦型ライターシリーズ。
長年の愛用者も多い「プリンス」の横型ライター!

ブース:株式会社元林

ブース:株式会社ペンギンライター

ペンギンライターのブースでは「ハーレーダビッドソン」モデルのzippoが並び、壮観だ。メーカー側もタバコ店からの意見を直接聞ける貴重な場になっている。
「ケムール」を運営している株式会社ライテックもライターメーカー。料理やキャンプで使える超小型バーナー「あぶり師」をご紹介。

ライター以外にはこんなものも。シガレットケースなどを手掛ける坪田パール株式会社のブースでは、シャグ用具のブランド「GIZEH」「MASCOTTE」もラインナップされていた。

記事内で全出展者を紹介しきれないのが残念だが、喫煙時間を豊かにする名品を作り続けるメーカーが揃う。

そのなかで……あった、TSUGEパイプ! 

ブース:株式会社柘製作所

いつ見ても美しい(欲しい)…。と思っていたところ、凄い二人が通りかかった。柘製作所会長の柘恭三郎氏! 「日本のパイプ」として世界にファンを持つTSUGEのボスだ。

その右隣にいたのは「シャグの聖地」と呼ばれる埼玉の店「Von kraren」店主の松本健一氏! 先ほどのRAWのブースで会った松本貴之氏と家族で来ていたのか!
タバコを喫わない人にはほとんど伝わらないだろうが、日本のタバコ文化を根底から支えるレジェンド級の業界人が集結している。

▼「Von kraren」のスゴさはこの記事を読んでください▼

【シャグ入門】”手巻きたばこのドン”が語る「極上の煙草」の世界

パンンデミック明け、まさに「一服の底力」と言える熱気があった。

タバコを売るということ

ブース:株式会社春山商事

「今回も、ますます葉巻が面白いですよ。葉巻といえばキューバ産だったのが、産地も商品も幅が広がっている状況が出展商品からわかります」(杉島さん)

「スモコレ実行委員会」はタバコ屋のグループであり、運営メンバーもほぼ全員が「販売店の人」だ。その視点から見ると多くの発見がある。
紙巻きたばこは、品切れを決して起こさない。コンビニでも100銘柄以上も置いてある店舗は珍しくないほど、安定的に供給されている。

春山商事のブースにあったニカラグア産の「JOYA」。

ところが、葉巻は逆だ。ほぼハンドメイドで、ある1年しか手に入らないものもある。「定番」ができにくい商品ジャンルであり、お店からすればすべての銘柄を揃えることは不可能。つまり……葉巻を扱う限り、店は「セレクトショップ」にならざるを得ない。

株式会社フカシロのブースで注目を集めていた葉巻は「REGIUS」。こちらもニカラグア産。

だからこそ品ぞろえに店主の考えが反映される。必然的に「どれだけ商品の魅力を知っているか」という情報力が重要になる。
葉巻だけでなく喫煙具も同じ。「スモコレ」にニッチな分野のタバコカルチャーが集結するのも納得だ。

『タバコ屋』はどこへ行く?

ただ作るだけ・売るだけではなく、議論と交流を。そうした意欲のもとに「スモコレ」は業界内の勉強会のような形で発足した。20数年前のことだ。

「初回の会場は秋葉原の東京都食品会館というビルの一室でした。現物のタバコを集めて長机に並べてね。全部、手弁当の運営。文化祭の延長ですよ(笑)」(杉島さん)

それでも初回から300人以上の来場があったという。どうやって集めたのか不思議なくらいだ、と振り返る。いまよりもっとタバコが身近だった時代。販売店の数も多かった。タバコの情報交換の場だから、会場内でもタバコが喫えた(夢のようなイベントだ)。
……しかし。80年代から強まってくるタバコバッシングのなかで、社会環境とマーケットが大きく変化していく。解放された空間でタバコのイベントなど開催できない空気になっていった。
そのなかで「スモコレ」は、タバコメーカー主体ではなく「タバコ屋が主催する」クローズドなイベントとして例外的に継続することができたのだ。

「ここ数年間のコロナの社会不安のなかで『早く開催してほしい』という声も、『まだ早い』という声もありました。来場者の方に配慮しながら、ついに出展者の足並みが揃ったのが2023年です」(叢さん)

しかし問題は「会場」だ。

コロナ前まで長らく開催してきたビルがコロナ後に「室内全面禁煙」になっていた。その場で商品を買い付けることができるスモコレにとって、喫煙所問題は生命線……どうする?
そこでスモコレが考え出した手が「特設喫煙所」だ。

浅草ビューホテルと交渉し、会場近くのテラス部分を一時的に来場者の喫煙所とする特別仕様に。都内最大級の広さの喫煙スペースが誕生。

体験ブースもしっかりある!
こうして「喫煙業界のお祭り」はパンデミックを乗り越え復活となった。
最後に「タバコ屋はこれからどうなっていくと思いますか」と聞いてみた。

「わかっているのは、変わらざるを得ない、ということですね。紙巻きタバコが圧倒的な消費の中心であるなかで、『スモコレ』来場者のなかには紙巻きの売上が7割しかない、なかにはわずか5割というタバコ屋さんがいらっしゃいます」(天野さん)

品ぞろえを厳選し、商品を多様化させながら変わり始めているタバコ店。いまの時代にタバコを売っていく意義と楽しみとは何なのか。
実行委員会の杉島さんは笑いながら言う。

「実は『おススメのタバコは?』という質問がいちばん難しい(笑)。好みは人それぞれですから。例えば葉巻なら、クセのない葉巻が欲しい人もいれば、そもそもクセを楽しむのが葉巻でしょ、という考えもある。そのなかで話を聞きながら、本当に欲しいものに繋げていくのがお店の醍醐味です」

ケムール読者のみなさんがタバコを買うとき、カウンターの向こうの人に話しかけることはあるだろうか? コンビニならほとんどゼロだろう。でも、もし町のタバコ店で、ちょっと気になる銘柄や喫煙具を並べているのを見かけたら、声をかけてみても良いのではないか。もしかしたら「スモコレ」に来場していたタバコ屋さんかもしれないぞ。

どう声をかけていいかわからないなら……一言目は『おススメのタバコは?』だ。

取材協力

一般社団法人スモーキングコレクション実行委員会

『スモコレ』はただの展示会ではありません。日本で唯一の『タバコ屋のためのイベント』なのです。ーー スモーキング・コレクション実行委員会

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