奇才紳士名鑑〜⑫”ア・ラ・ポテト”愛を語っていたら公式大使になった俳優

世の中には、一つのものごとに「過剰な情熱」を注ぐ人が存在します。
一見は市井の人に見えながらも、よくよく話を聞いてみるととんでもないマニアだったり、途方も無い熱量の持ち主だったりする。そんな「奇才紳士&淑女」をご紹介していく連載です。

奇才な「俳優」登場

この連載を続けていて思うのですが、何か一つのものに対して熱烈な「愛情」を注ぐことができるのも、立派な才能の1つだと思うのです。
今回は、そんな奇才紳士の登場です。そのマンガのキャラクターのような抜群のスタイルとキレッキレの動き、個性的な声で小劇場界ではよく知られた存在の俳優・森下亮さん。彼が愛してやまないのは「ポテトチップス」、しかもカルビーの「ア・ラ・ポテト」です。

「ひたすらポテトチップスへの愛を語っていた人に何が起こったか」という、一本のドキュメンタリーとしてお楽しみください。


森下亮
1977年7月5日生まれ。大阪府出身。
1997年1月、劇団クロムモリブデン入団。以後、同劇団公演のほか客演、TVやラジオ、映画にも多数出演。主な出演作品は、ドラマ「あなたの番です」「真犯人フラグ」、舞台では演劇集団キャラメルボックス「さよならノーチラス号」、NAPPOS PRODUCE「トリツカレ男」など。2021年7月より、カルビー公式「ア・ラ・ポテト大使」に就任。
【出演予定】11月20日(日)21:00〜 TBS 日曜劇場「アトムの童」木内健司役で出演
アニメ「おしゃべり唐あげ あげ太くん」ポテ介役 広島テレビ 毎週月曜21:54〜
ラジオ 調布FM ラジオボンバー内「森下亮・久保貫太郎の死ぬまでにしゃべりたい7万のこと」毎週土曜10:00〜Twitter https://twitter.com/RyomoRishitan

カルビー公認、「ア・ラ・ポテト大使」現る

――さっそくお話をお伺いしたいのですが……。

その前に、こちらをどうぞ。

――これは!?

北海道・東北エリア限定販売の「ア・ラ・ポテト 羅臼昆布しょうゆ味」です。あまりのおいしさに昨年はオンラインショップでは3日で完売したという伝説の商品です。

使われている羅臼昆布がとても希少なもので……という説明とともに差し出される「ア・ラ・ポテト 羅臼昆布しょうゆ味」。袖の下ならぬ「袖ア・ラ・ポテト」。

――さすがカルビー公認の「ア・ラ・ポテト大使」!

そうです。ア・ラ・ポテト大使の森下亮と申します。(名刺を差し出す)

こちら、燦然と輝く!?ア・ラ・ポテト大使の名刺。貴重です

――こんな名刺があるんですね!?一体、どういう経緯で大使に就任されることになったんでしょう……?

長くなりますが(笑)。ア・ラ・ポテトを好きになったきっかけからお話しましょうか。
もともとじゃがいもは好きだったのですが、なかでも大好きだったのがおばあちゃんが作ってくれた「じゃがいもの天ぷら」。他のものには目もくれず、そればっかり食べてたくらいの大好物だったんですよ。でもおばあちゃんが歳をとり、母親が同じように作ってみたらどうにも味が違う。あの味がもう一度食べられないか……そう思ってあらゆるポテトチップスを食べてみて、ついにたどり着いたのがア・ラ・ポテトだったんです。

――森下さんにとって「思い出の“理想の味”」に一番近いものだった。

そうなんですよ。だから他の人にとって「一番おいしいポテトチップス」はまた違うと思うんですよね。でも僕にとっての一番はア・ラ・ポテトだったんです。ちなみにア・ラ・ポテトは1989年に発売開始されているんですが、僕が所属している劇団「クロムモリブデン」も1989年旗揚げ。僕の好きなものはすべて1989年に産まれているんです!(力説)

――……それは愛が深まるわけですね。

だから演劇界の仲間を含め、周囲の人たちにもア・ラ・ポテトのおいしさをひたすらPRしていたんですね。
ただこのア・ラ・ポテトという商品、以前は秋冬、現在は秋にしか販売されていない、期間限定の商品なんです。だから会えない時期があるわけで、発売日は僕にとってさながら「ボジョレーヌーボー解禁」。毎年「今年は何月何日に出るんだろう」と考え始めたらもう気が気じゃない。

――そんなに差があるものなんですか?

あります!なぜならア・ラ・ポテトは、「その年に収穫したばかりの北海道産の“新じゃが”を使ったポテトチップス」だから。その年の新じゃがの収穫状況で発売日が前後するんです。今は大体9月が多いんですが、昔は8月に出ることもありましたし、ときには10月になることも。次第に北海道の気候に一喜一憂するまでになりまして、「今年も無事にいいじゃがいもができました」というニュースを見てホッとするという。

――森下さんが解禁日?にいち早くア・ラ・ポテトを手に入れようと駆け回っているツイートを見かけたことがあります。

Twitterを始めたころ、俳優とはまた別の顔を見せたいなという意味合いも込めてよくア・ラ・ポテトのことを呟いていたんですが、発売日にとにかく一秒でも早くア・ラ・ポテトを手に入れたい!と思い、日付が変わる瞬間にコンビニを巡ったりしてたんですよね。すると走り回っている僕のツイートをまとめてくださる方が現れまして。それが少し話題になり、見てくださる方の反応もあったので、毎年の恒例行事のようになっていったという経緯です(笑)。

参考▶2014年。森下亮さん。カルビー ア・ラ・ポテトへの道のり。

ただ、前々から「将来の夢はア・ラ・ポテト大使になることです」とか言ってはいたんですけれど、まさか本当になることができるなんて夢にも思っていませんでした。もちろん、俳優として有名になって、いつかア・ラ・ポテトのCMに出られたら……というまっとうなストーリーでの夢は持っていましたよ?でも世間的な知名度もないのに出られるわけがないよな……と思っていたんですが。僕があまりにもア・ラ・ポテトへの愛をTwitterで呟きすぎまして、とうとうカルビーの公式Twitterアカウントが僕に声をかけてくれるようになりまして。

――まさかの公式からのアクセスが!

長年発売日予想をしていたら、公式からとうとう発売日を教えてくれるようになったんですよ……! もう、それだけで天にも昇る気持ちだったんですけど、「森下さんの愛情に感服しました」とのことで、ある日通常サイズのア・ラ・ポテトが10袋くらい入ったビッグサイズのア・ラ・ポテトをわざわざ作って送ってくださったんです。

――これはめちゃくちゃ嬉しいですね!

しかもこのBIGア・ラ・ポテト、担当の方の手作りなんですよ! これには感動しましたね。

クイズ番組出演が公式大使就任のきっかけに

――クイズ番組「99人の壁」(フジテレビ系)出演の経緯は?

ちょうどこの年に、「99人の壁」で、「ポテトチップス」ジャンルの募集があったんです。こんなの「僕が行かずに誰が行くの?!」と。事務所の力も何も使わず(笑)オーディションを通過しまして、しかも本番では出演者の中で唯一、ファイナルステージにまで進出することができたという。

――森下さんの勇姿、リアルタイムで拝見しました。素朴な疑問なんですが、ア・ラ・ポテト以外のポテトチップスの知識がなぜそんなにあったんでしょう?

いいですか?ア・ラ・ポテトは“期間限定”販売なんですよ?

――はい。

1年のうち、ア・ラ・ポテトが売られていない、ア・ラ・ポテトに会えない季節があるわけです。となると僕も、その間に「もしかしたらもっと理想のポテトチップスに出会えるかもしれない」といろいろと試してみるわけです。恋人が海外留学に行っている間に他の女性にちょっと心が揺らいでしまう……というパターン、よくあるじゃないですか。

――たとえ話が突然生々しいな!

でも結局、本命のア・ラ・ポテトを超える女性、いやポテトチップスは今のところ現れていないわけなんですが。結果、いろんなポテトチップスに詳しくなっていったという。ア・ラ・ポテトが通年商品だったらこうなってはいないと思います。

――なるほど、愛した人、いやポテチがア・ラ・ポテトだったがゆえの知識量が「99人の壁」で花開いたと。

だとしても、対策はやっぱり大変でしたね。そもそもカルビーが出している「ご当地ポテトチップス」だけでも47都道府県分あるし、ポテトチップスは世界中に売られていますから、どこから手を付けていいかわからない。ところが、2020年はコロナ禍で出演予定の舞台が中止になったこともあり、ぽっかりと空いた時間で「じゃあ世界は今どうなっているか調べてみよう→せっかくだったら1日1国の歴史を調べてみよう」……というのをやっていたんですね。すると「あれ、意外とじゃがいもが主食の国、多いぞ?」ということに気がついたわけですよ。それで今度はじゃがいもの歴史も調べたりしていたんですよ。結局、それもクイズ攻略に役立ったという。

――どんなことが役立つかわからないものですね。

実はあの収録日が、出演していた舞台の千秋楽が終わった直後という超ハードスケジュールでして。本番中の合間に「99人の壁」の対策をしているという毎日でした(笑)。ただ、この「99人の壁」出演で爪痕を残したことが、「ア・ラ・ポテト」大使就任につながったんですよ。これまではSNSなどでひたすら愛を語り続けていただけでしたが、「実力」も本物だと認めていただいた。それでカルビーさんの方から声をかけていただいた……という経緯なんです。

――夢が本当に叶った!いやすごい話ですね……。大使に就任してからなにか変わったことはありますか?

基本的には、僕はア・ラ・ポテトへの愛を語っているだけなのでこれまでと大して変わりはないです(笑)。でも先日は「できたてのア・ラ・ポテトを食べるためだけに北海道に行く」ということを叶えていただいて、こんなことができるのか……! と。しかもそのとき、ア・ラ・ポテトに使われるじゃがいもを作られている農家さんにも伺うことができたという。これはもう、僕にとっては恋人のご両親に会いに行くようなものですよ!!

――例えがまた…。

でもそのときに、日本の農業の現状をいろいろと聞きまして。僕はその年の気候やじゃがいもの出来に関しては想像してましたけど、そういった農家さんの苦労については思い至らなかったなと。そういった話を聞くことができて、よりア・ラ・ポテトとポテトチップスへの愛が深まっていますね。

――大使になり、より愛が深まっていったと。

あと、コロナ禍で時間ができたときに近所の子ども食堂のボランティアを始めたんですが、その子ども食堂にポテトチップスをカルビーさんから提供していただいたり、僕が審査員を務めた高校演劇の大会でも参加者にア・ラ・ポテトをプレゼントできたりと、そういったことにもなっています。

――ふと思ったのですが。「大使」になると、今後は発売日も公式に降りてくるのでは?

いやこれがですね、カルビーの担当者さんがよく分かっていらっしゃいまして。ア・ラ・ポテトの発売情報などはもちろん送ってくれるのですが、僕にだけはア・ラ・ポテトの発売日が伏せられた黒塗りの文章がやってきましたね。大使になったのに。

――大使になったのに!

そこは教えてもらわれないのかと(笑)。あと実は、ポテトチップスに関する情報ってカルビーさんの公式HPにかなり詳しく書いてあるんですよ!面白いので、ぜひ皆さんもチェックしてみてください。

「ポテトチップスの近年の変遷」とか「劇場イベントで目隠しして“利きポテトチップス”を行い全部当てた話」とか「『99人の壁』裏話」とかここには書ききれなかった話がまだまだありますが、とりあえず言えるのは「愛情と情熱は、伝わる」ということでしょうか。なんだかすごく希望の持てる話だなあ……と、森下さんのお話を聞いていて思ったのでした。俳優としてのご活躍はもちろんですが(舞台上の森下さん、本当にセクシーでトリッキーで最高なのです)ア・ラ・ポテト大使としての今後のご活躍も期待しています。
あ、「ア・ラ・ポテト羅臼昆布しょうゆ味」めちゃくちゃ美味しかったです!!

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