高島雄哉×AI連載小説『失われた青を求めて』第7話【新訳】

小説家+SF考証・高島雄哉氏が、日本語最大規模の自然言語処理AI「AIのべりすと」の自動物語生成機能を使って綴る、文芸ミステリ。人間とAIのふたつの知の共作による人類初の小説実験。

【第7話】 小説家のほうへ(七)

 塾の前で約束した文化祭の手伝いを、わたしはけっこう楽しみにしていて、実は──恥ずかしくて特に後輩なんかには絶対言わないけど──色々なアイデアを考えていた。
【案1】短編小説をみんなで書いてみるワークショップ
【案2】短編映画を見て分析をするトークイベント、質疑応答つき
【案3】お化け屋敷(わたしとあの子をモデルにした幽霊が出てくるホラー)
 どれになるにしてもきっと楽しかったに違いない。
 文化祭は一週間後。
 それまでにあの子──寮のあの子ではない高校生のほうのあの子──を見つけ出せば、きっと文化祭は無事に開催されるはず。
 なんて思っていたのだけれど、いつのまにか街は大変なことになっていた。
 わたしは一番近くにいた警察官に話しかけた。
「何かあったんですか? ヘリコプターまで」
「あれですよ。この先は通行禁止です」
 六本木駅の近くだろうか。ビルの一室が明るいと思ったら、ここから見えるほどの爆発を起こした。音が遅れて聞こえる。
「テロ?」
「不明です! 危険なので近づかないで!」
 悪徳弁護士の後輩があそこにいる確率はそんなに高くないだろうけど、今夜はそういう夜かもしれない。
 どうやって封鎖線を突破しようと考えて、思い出した。
「あ、ハイヤー」
 音声入力でメガネにハイヤーの位置が表示された。
「このビルの弁護士事務所から来たんですけど──」
「はい、お待ちしておりました。ご利用ありがとうございます」
「ハイヤーって貸し切りですか?」
「まったくそのとおりです。今から3時間以内でしたらどちらにでもお連れいたします」
 車内にはフードもドリンクもある。
 AIがおおよそ5万円のサービスコースだろうと推定する。
「あの爆発してるビルに行きたいんです」
「了解いたしました。ルート検索しますので少々お待ちください」
 わたしが一息ついていると、車内に音楽が流れて、ハイヤーのAIが語り出した。
『あの日もいたるところで通行止めが起きていました』
「あの日?」
『あの大震災のとき、六本木ヒルズ森タワーは倒壊しませんでしたが、停電になり、高層階でエレベーターに閉じ込められ、森美術館にも多くの人が長時間待機することになりました』
 そのときガンと衝撃があって、車が揺れた。
「げ」
 合気道四段だというあの秘書だ。
 無言でドアを開けようとしていて怖過ぎる。
「運転手さん、出して!」
 このあとの展開は早かった。
 合気道マスターはまず助手席の窓ガラスを拳で割ったかと思うと、ドアを強引に開けた。
 その瞬間にハイヤーは走り出した。荒事に慣れた運転手さんなのか?
 しかしマスターは掴んだドアを離さず、そのまま車内に飛び乗ってきた。
「タブレットを返してもらいます」
 マスターは今度は運転席と助手席のあいだから身を乗り出し、わたしに手を伸ばす。その手はガラスを割ったせいで血まみれだ。
 その恐ろしくもこっけいな風景に、かえって冷静になった。
「こんなの要らないから!」
 わたしは叫びながらマスターをかわし、割れた助手席の窓からタブレットを外に放り投げた。
 ちょっと惜しいが仕方ない。
 マスターは舌打ちをした次の瞬間、道路に飛び出した。
 わたしは必死に目で追う。
 マスターはくるっと受け身をとり、鳥が舞い降りるかのように着地して、何事もなかったかのようにタブレットを拾い上げた。
 次の瞬間、わたしとマスターの視線が重なる。
 マスターはすぐに察して、わたしを改めてにらんでから、タブレットを道路に叩きつけた。
 ハイヤーAIは言った。
『わたしにもよくわからないのですが、今のあなたの決断はとても賢明なものだったと思われます』
 乗客を楽しませるためなのか、ハイヤーのAIはなんだか積極的に話しかけてくる。
 そしてハイヤーAIの発言は正しい。
 あの子のタブレットはバッグの中にある。投げたのは先日買ったばかりのわたしのものだ。AIとの小説を書くため、塾講師の給料三ヶ月と引き換えに手に入れたから少々──というか結構──惜しかったのだけれど、あのままではわたしは合気道の技でどうにかされて、あの子のタブレットを奪われてしまっていただろう。
 マスターはあの一瞬ですり替えに気づいていたかもしれないけれど、とはいえ放置するわけにはいかず、ハイヤーから飛び降りたのだろう。
「目的地に変更はありませんか」
「あ、はい」
 さすがハイヤーというべきか、この運転手さんが変わった性格なのか、割れた窓のこともマスターのことも一切不問のまま、ハイヤーはぐるぐる裏道をめぐり、爆発ビルに隣接の駐車場までたどりついた。
「ここで待っててください!」
 振り返りもせず、わたしはそのままビルに向かって駆け出す。
 頭上からは爆発の破片がぱらぱらと落ちてきた。

〔第7話:全1,892字=高島執筆946字+AI執筆946字/第8話に続く〕

▶これまでの『失われた青を求めて』

高島雄哉(たかしま・ゆうや)

小説家+SF考証。1977年山口県宇部市生まれ。東京都杉並区在住。東京大学理学部物理学科卒、東京藝術大学美術学部芸術学科卒。2014年、ハードSF「ランドスケープと夏の定理」で創元SF短編賞受賞。同年、数学短編「わたしをかぞえる」で星新一賞入選。著書は『21.5世紀僕たちはどう生きるか』『青い砂漠のエチカ』他多数。2016年からSF考証として『ゼーガペインADP』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』やVRゲーム『アルトデウスBC』『ディスクロニアCA』など多くの作品を担当。
Twitter:@7u7a_TAKASHIMA
使用ツール:
AIのべりすと

Twitter:@_bit192

次回をお楽しみに。毎週木曜日更新です。

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