高島雄哉×AI連載小説『失われた青を求めて』第10話【新訳】

小説家+SF考証・高島雄哉氏が、日本語最大規模の自然言語処理AI「AIのべりすと」の自動物語生成機能を使って綴る、文芸ミステリ。人間とAIのふたつの知の共作による人類初の小説実験。

【第10話】 花咲く乙女たちの中心に(二)

 始まりは何だったか考える。
 車椅子は自動運転ではなかったけれど電動で、わたしが思考する分の余裕はある。
『……園児たちの声が聞こえない』
「お昼寝中」
『じゃあ起こさないようにあなたを殺さないとね』
 わたしが天国のような中庭から病院内に入ったことが電話相手にバレているのか。
 しかしわたしは速度を落とさない。
 後輩社長がでっかい赤字で警告する。
 ──先輩そっち殺人鬼に近づいてる!
 わかってるわかってる。
 でもここで逃げるのが違うのもわかってる。
 殺人鬼はわたしがここにいることを知っていたのだから、眠っているうちに殺すことだってできた。
 きっとわたしに何か話があるのだ。たぶんその話が終わって、わたしの謝罪か反省かを聞きとどけて、満足してわたしを殺すのだ。
「わたし、何かしました?」
 もちろん何かしたのだろう。わたしは聖人君子ではない。
『その丁寧語は罪悪感から? ちゃんと思い出させてあげる』
「……勝負って言ったよね」
『ええ』
「わたしの勝ちは? わたし別にあなたの命ほしくないんだよ」
 後輩から連絡がある。
 ──いい感じっす! 通報したんで、あたしとパトカーがもうすぐつきます!
『あなたが勝てば四人の命は救われる。私の腕時計に四人の居場所が登録されてるから、私を捕まえればいい』
 腕時計ね。捕まえたらどうしてくれよう。
「ん? わたしが殺されたら? 四人は?」
 わたしが死んで四人が助かるなら──死にたくはないけど!──安心はできる。
『あなたが私の話を聞いて、自分の罪を思い出せば、全員が死ぬことはない』
 どうやら本当に話がしたいらしい。
 わたしは車椅子の最高速度を出して──みんなに怒鳴られながら──病院の玄関にたどり着いた。
「え?」
 病院前のロータリーには人も車も見当たらない。
 敷地の外の道路に宅急便のトラックが停まっているだけだ。
 しかし後輩社長の最新メガネが視界のなかに何かを見つけた。
 わたしも目を凝らす。
 ──げ。それ、ほぼ確実に致死性ドローンです!
 わたしの前に現れたのは殺人鬼本人ではなく、小さな小さなドローンだった。
 メガネAIがドローンの形状や挙動から、人間の頭を撃ち抜くには充分な火薬を積んでいると判定した。今は浮かんでいるだけだけど、動くときは超高速で、プロボクサーでも叩き落とすことはできない。
 そしてわたしは小説家だ。
 戦いを回避できると思うほど寝ぼけてはいないけれど、少なくとも原稿用紙数枚分の言葉をつむぐ時間はある。わたしはメガネで殺人鬼に呼びかける。
「わたし忘れっぽくって」
『知ってる』
「だから誰かにむかつくことはあっても、ずっと恨むようなことはないんだよ」
『あなた自身はそれが正しいとは思ってないんだね』
 言葉を的確にひろう殺人鬼だ。
 わたしと話したいのだから当たり前か。
「そっちの居場所も知りたいんだけど。今ってわたしのほうが超不利じゃない?」
『不利も何も、もう勝負は決しているのに。あとは、あなたが私の話を聞くだけ』
「耳をふさいだら?」
『一人ずつ殺すよ』
 これはこれはまじでさいあこだ。
「わかった。話って何?」
 ──先輩!
 後輩社長が騒いでいるが仕方ないじゃないか。
『まずはあなたに謝りたい。あなたの罪と罰は全然つり合ってない』
「どっちが重いの?」
『考え方次第かな。ただあなたの死は決まってる』
 展開が早すぎる。この十年ずっとのんびり生きてきたのに。
「十年一日って、展開が早いってことじゃないよね?」
『小説家でしょ、しっかりして。十年たったのに一日分しか進歩してないってこと』
 はいはい。話を引き伸ばしたかっただけ(ウソだ)。
 まさに十年一日みたいな十年を過ごしてきて、ようやく連載が決まった直後にこの有様。教え子はいなくなるし、いなくなったあの子が現れたと思ったら、弁護士二人とわたしもいっしょにビルが爆発するし、今は殺人鬼に命を狙われて──わたしそんなに悪いことした?
『あなたの罪悪はあの寮から始まっている』
「はあ」
 寮にいたときにやった悪事といえば、ロビーの椅子にヘンなかっこうで座ってそのままひっくり返って、椅子をバラバラにしてしまって、深夜で誰もいなくて、そのまま全部ゴミ置き場に持っていったことくらいだ。管理人さんに一度だけ「あれ? 椅子知らない?」と訊かれて、素知らぬ顔で「さああ」と答えたのだった。
「まさか椅子の妖精?」
『何の話?』イラついているのが伝わってくる。『あなたは自分勝手すぎるんだよ。気づいてる?』
「そんなの! とっくに知ってるよ!」
 わたしは、二十メートル先で甲高い音をたてて滞空する致死性ドローンに叫んだ。
 どうせ搭載されたカメラでわたしのことを見ているに違いない。
『あなた、今日ここでは殺されないと思ってる?』
 ドローンがわずかに傾いて、わたしにむかって一直線に飛んできた。
「先輩!」
 後輩社長の声がリアルで聞こえた瞬間、わたしは再び爆風に包まれて、吹き飛ばされてしまった。

〔第10話:全1,977字=高島執筆字+AI執筆1,048字/第11話に続く〕

▶これまでの『失われた青を求めて』

高島雄哉(たかしま・ゆうや)

小説家+SF考証。1977年山口県宇部市生まれ。東京都杉並区在住。東京大学理学部物理学科卒、東京藝術大学美術学部芸術学科卒。2014年、ハードSF「ランドスケープと夏の定理」で創元SF短編賞受賞。同年、数学短編「わたしをかぞえる」で星新一賞入選。著書は『21.5世紀僕たちはどう生きるか』『青い砂漠のエチカ』他多数。2016年からSF考証として『ゼーガペインADP』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』やVRゲーム『アルトデウスBC』『ディスクロニアCA』など多くの作品を担当。
Twitter:@7u7a_TAKASHIMA
使用ツール:
AIのべりすと

Twitter:@_bit192

次回をお楽しみに。毎週木曜日更新です。

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