高島雄哉×AI連載小説『失われた青を求めて』第12話【新訳】

小説家+SF考証・高島雄哉氏が、日本語最大規模の自然言語処理AI「AIのべりすと」の自動物語生成機能を使って綴る、文芸ミステリ。人間とAIのふたつの知の共作による人類初の小説実験。

【第12話】 花咲く乙女たちの中心に(四)

 病院の前にはドローンの爆発音で人が集まっていたが、特に何かが壊れたわけでもなく、ひっくり返っていたわたしも元通り車椅子に座っているし、再びわたしと後輩だけの静けさを取り戻していた。
「すみません先輩。あと数秒だったんですが、向こうのドローンにも逃げられちゃいました」
「こっちこそごめん。わたしがもっと殺人鬼をキレさせるべきだった」
「あは。先輩が本調子ならできたでしょうね。でもとりあえず無事で良かったっす」
 後輩がわたしの顔や服についたドローンの破片を払ってくれる。
 ほっとしたのもつかのま──というべきかどうなのか、わたしは超大事なことを思い出す。
「やばい。あの四人、どこかに監禁されてるってことだよね」
「弁護士コンビは大人なんだし、二人の事務所も探すでしょうから、とりあえず任せましょう」
「確かに! それよりあの子! 高校生の! わたしのとばっちりで誘拐されちゃったってことでしょ?」
「高校生は警察が本気で探してますから、あたしたちにできることは少ないですね」
「あー、そうかも」
 こういうとき後輩の弁護士なんかだと、
 ──先輩、悪いのは犯人だけですよ。味噌とクソは、名前も見た目も似てますが、全然別物です。先輩は悪くない。
 なんて、気が利いているのか全然利いていないのか、後輩本人もどう思っているのか謎なことを言ってわたしを励まそうとしてくれるのだけれど、その後輩も捕まっているのだった。
「とりあえず今のこと警察に話そうか」
「メールしときました。警察の担当部署と知り合いと、それから二人の事務所にも」
「さすが仕事速い。くわしくは後で伝えるか」
「くわしく? 先輩、爆発であたしの仕事を忘れたんですか。状況すべてまとめて送信済みです」
 もちろん覚えてるけども、まじか。
 AIベンチャー社長である後輩は、わたしたちの状況をAIに見せていた。そのAIはリアルタイムで分析を続けて、後輩が実行ボタンを押した瞬間に画像と映像つきの五千字のレポートにまとめて送ったのだという。
「すごい」
「いやいや。映像データと音声データを文章化しただけです」
 どれだけすごいのかわからないのがくやしいくらい、きっとすごいことに違いないのだけれど、それはわたしがもっとAIにくわしくなってから、改めて我が後輩を褒め称えよう。
「つまりわたしは寮からいなくなったあの子を捜すしかないってことだね。わたししか見てないみたいだし。あ、タブレットは病室? 警察?」
「タブレットって何のことですか」
「……病室に戻る!」
 しかし、せっかく弁護士二人が命を賭けて──かどうかはわからないけれど──手に入れたあの子のタブレットは、爆発か入院のどさくさでどこかに消えてしまっていた。あるいは誰かが持ち去ったか。
「どうせ二人の事務所にも、あの子の証拠は残ってないんだろうね」
「残ってないですね。どっちの事務所もうちのクラウドサービス使ってますからわかります」
「きみが検索できても良いの? 個人情報のかたまりな気がするんだけど」
「先輩入れて五人の命が懸かってるんですから緊急避難です。それに見てるのはAIで、あたしじゃないし、それに──」
「──まずいことになったらあの二人に弁護させよう」
 わたしたちはいつもの決り文句を言って、少しだけ笑った。命がけの局面だって笑うことくらいできる。
 しかしなぜか後輩の表情がみるみる暗くなる。
「どうした? どこかケガした?」
「あの二人の事務所なんて調べてる場合じゃなかったっす……」
「どういうこと?」
「……うちには弁護士二人の個人データも置いてあるんですけど」
「きみたち仲良いねー」
「先輩の小説だって改稿データも含めて全部うちで保管してるの、覚えてますよね?」
「あ、そうだっけ。で、何かわかったの?」
「予測検索の結果が今届いて……。弁護士二人と高校生と先輩──この四人には共通点があります」
 よくわからないけれどドキドキしてしまう。
 後輩の話し方のせいだと思うけど、何かイヤな予感がする。
「んー、共通点は四人ともわたしの知り合いだってことでしょ。……いや、わたしはわたしの知り合いなのか?」
「そういうんじゃなくて、もっと明確な共通点です。四人は全員、あたしの──うちの会社の新しいAIアプリのモニターなんです」

〔第12話:全1,726字=高島執筆427字+AI執筆1,299字/第13話に続く〕

▶これまでの『失われた青を求めて』

高島雄哉(たかしま・ゆうや)

小説家+SF考証。1977年山口県宇部市生まれ。東京都杉並区在住。東京大学理学部物理学科卒、東京藝術大学美術学部芸術学科卒。2014年、ハードSF「ランドスケープと夏の定理」で創元SF短編賞受賞。同年、数学短編「わたしをかぞえる」で星新一賞入選。著書は『21.5世紀僕たちはどう生きるか』『青い砂漠のエチカ』他多数。2016年からSF考証として『ゼーガペインADP』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』やVRゲーム『アルトデウスBC』『ディスクロニアCA』など多くの作品を担当。
Twitter:@7u7a_TAKASHIMA
使用ツール:
AIのべりすと

Twitter:@_bit192

次回をお楽しみに。毎週木曜日更新です。

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