高島雄哉×AI連載小説『失われた青を求めて』第20話【新訳】

小説家+SF考証・高島雄哉氏が、日本語最大規模の自然言語処理AI「AIのべりすと」の自動物語生成機能を使って綴る、文芸ミステリ。人間とAIのふたつの知の共作による人類初の小説実験。

【第20話】 結婚式フォトグラファーのほう(四)

 護衛車はわたしのリクエストで表参道に向かっていた。飯田橋からだからすぐに着くだろう。運転なんてしたことがないから知らないけど。
「チーフさんは、先生ではなく、先生を模したAIに執筆させたいんですね」
「印税は全部わたしにくれるそうです。びっくりしました?」
「びっくりというか興味深いですね。先生のことを愛しているのか何なのか」
「純然たる愛ですよ。絶対」
「先生のほうはいかがですか」
「わたしは──」
 そのとき、タイミングよくチーフから電話がかかってきた。
「はい? どうしたの?」
『あの……私、先生にきらわれたくなくて』
「きらうはずないじゃん。スライムいっしょにくぐった仲だし」
 そもそもわたしからキスしようとしたのだった。
『怒らないで聞いてくれますか』
「どうぞ。ちなみにわたしのメガネの音声を聞いていることだったら、怒ってないって先に言っておくね」
『!』
 身もだえしているらしい音が向こうから聞こえる。
 担当編集はかすかに眉をひそめてはいるけれど、わたしにしてみれば何でもないことだ。
 ひと一人分のAIを作ろうというのだから、音声データくらい収集しているに違いないと思ってカマをかけたのだった。
「思いついたのはわたしの後輩の社長?」
『いえ……。いえ! 私が社長に直談判して。ごめんなさい! いつもは聞いてなくて、でも今、先生がわたしの話をしていたので』
「わけわかんなくなって電話してきたんだ」
『ごめんなさい!』
「謝らないでいい」
 そのとき助手席から着信音が鳴り響いた。
 聞いたことのない、けたたましい音量で。
『私じゃないです!』
 とチーフが言う。ここでチーフがかけてくる意味はない。POの仕事関係?
「超重要な要件では」
 というわたしの軽口も聞こえないくらい大きな音だ。
「失礼します!」
 PO2が慌ててスーツのポケットからスマホを取り出し、消そうとするのだが──気持ちはわかるものの──あたふたとして、音は全然消えない。
「落ちついてやれ」とPO1。どうやらPO2の上長らしい。
「はっ! しかし……操作を受け付けません!」
「捨てろ!」
 瞬間、音は止まって、車内は──高級車にふさわしい──完璧に静寂な空間になった。
 しかし、緊張がほどけたわたしがふふっと笑ったのを聞いていたのか、POのスマホから今度は生々しい笑い声が聞こえてきた。
 ──げらりげらり。
 たまにわたしもそういうふうに笑ってみたいのだけれど、なかなかに難しい。
 車内のみんなはもちろん、それが誰の笑い声か、わかっている。
「……あなたの名前、教えてくれない? ちなみにいつもは殺人鬼か誘拐犯か外道って呼んでる」
 ──素直に驚いたって言ったら?
「驚くためには縁{えん}が必要だって、講談の師匠に教わったことがある。あなたのは意味も何もない」
 師匠はそのときすでに芸歴七十年。十代のうちから修行をして客の前で話していた。わたしはそのとき新人賞を獲ったばかり。話しているうちに恥ずかしくなって泣きそうになってしまった。
 しかし師匠はそんなわたしに真摯な言葉をかけてくれた。『言葉の先にいる誰かとの縁を大切に。そうすればきっと──』
 再び笑い声。
──そういう感傷的なことを書き込むのが良い小説だって師匠は言ってた?
「名前」
 ──は?
「あなたの名前、殺人鬼で良い? 外道はそういう名前のプロレスラーがいるからナシで」
 ──考えておく。
「は?」
 ──今のあなたに名前を教えてもヒントにもならない。早くしないと四人とも死んじゃうよ?
「すぐそこに行くから! 待ってなよ!」
 そこ──犯人の本拠地に行くということは、四人の居場所が書いてある腕時計が手に入るということであり、わたしが犯人にわたしの罪について気づかされたうえで殺されてしまうということでもある。
 できればわたしとしては腕時計だけ確保して走って逃げたいところだけれど、わたしは足も遅いし、きっと──腕時計の情報は後輩社長かチーフになんとか送って──犯人に捕まって殺されてしまうのだろう。
 スピーカーから今度は耳障りな舌打ち。
 ──今度はチーフか。まったくあなたはとっかえひっかえ、節操ないんだから。いいや。今日は殺すつもりもなかったから。
『それ! 負け惜しみです!』
 ──またね。
 どうやらチーフが逆探知を仕掛けて、犯人が気づいたらしい。
『先生……』
「チーフ、愛してる」
 わたしは心に刻み込むように言った。

〔第20話:全1,803字=高島執筆538字+AI執筆1,265字/第21話に続く〕

▶これまでの『失われた青を求めて』

高島雄哉(たかしま・ゆうや)

小説家+SF考証。1977年山口県宇部市生まれ。東京都杉並区在住。東京大学理学部物理学科卒、東京藝術大学美術学部芸術学科卒。2014年、ハードSF「ランドスケープと夏の定理」で創元SF短編賞受賞。同年、数学短編「わたしをかぞえる」で星新一賞入選。著書は『21.5世紀僕たちはどう生きるか』『青い砂漠のエチカ』他多数。2016年からSF考証として『ゼーガペインADP』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』やVRゲーム『アルトデウスBC』『ディスクロニアCA』など多くの作品を担当。
Twitter:@7u7a_TAKASHIMA
使用ツール:
AIのべりすと

Twitter:@_bit192

次回をお楽しみに。毎週木曜日更新です。

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