高島雄哉×AI連載小説『失われた青を求めて』第31話【新訳】

小説家+SF考証・高島雄哉氏が、日本語最大規模の自然言語処理AI「AIのべりすと」の自動物語生成機能を使って綴る、文芸ミステリ。人間とAIのふたつの知の共作による人類初の小説実験。

【第31話】 囚われた小説家(一)

 かつて来たことがあるはずの場所。なにかを得るために訪れたのだとしたら、なにかをまた失くしてしまうのは滑稽だ。ここにはわたしの落し物が堆積することになる。
 なんの前ぶれもなくチーフが消えて、わたしはしばしフリーズ状態になってしまった。広大なIKEAの出口。まさか、わたしを置いて先に街に?またわたしの記憶が飛んだのだろうか?空港で借りた携帯にかけてみるが、つながらない。
「電波の届かない場所に……」
 周囲に聞き込みをしたものの、まったく手がかりがつかめない。蒸発だ。店員にチーフの特徴を伝えて、なにかあれば連絡してほしいと言伝をしたものの、期待はできそうにない。ひとまず、ホテルに戻ろう……。バスでストックホルム中央駅まで出る。
 “HOW DARE YOU!”――少女が怒りをあらわに叫んでいるポスターがちらほら見える。環境活動家グレタ・トゥンベリだ。国会議事堂をのぞむ市街ではちょうどデモの真っ最中で、有名人であるところのグレタ本人が街頭演説を行っていた。周りには人だかりができている。
「あの子、見たことがある。……けど、きっとテレビで観たんだ。わたしの本質的な記憶とは関係なさそう」
 最初は遠巻きに観察していたが、そのうちせっかくだから、という気持ちが沸いて握手を求める列に並んでしまった。グレタは環境問題について説き、賛同者に握手をしていく。私の番が訪れ、グレタは言った。
「政治家も企業も、みんな嘘つきです。あなたは騙されないで」
 興奮状態にあったわたしは、それが環境問題についての文脈であることを忘れ、唐突に―ーまたしても自動筆記的にしゃべりだした。
「そうです、嘘……わたしは、嘘によって、いえ、あれは見ようによっては正しかったのだけれど、でも、正確な意味でいえば噓によって、あなたがたの国民を殺してしまいました……。そう、ほとんど殺してしまったと言って過言ではないでしょう。グレタさん、嘘によって人を傷つけてしまったわたしは、一体どうやって償えばよいのでしょうか?代償や報復ということはありうるのでしょうか?」
 そのなかば呟きにも似た独白に驚いたグレタだったが、演説中にはさまざまな人が集まるものだ。グレタはわたしの手をとり、まっすぐに目をのぞきこんだ。
「嘘は連鎖します。虚の積み重ねは、我々をいずれ滅ぼすでしょう。あなたはまず、嘘をあらためるべきです」
 私は言った。
「ええ、そのとおりですね」。
 そして、ふと思い至る。わたしが殺した人々はどこへ行ったのだろうか。
 その疑問を口にすると、周囲の聴衆がざわついた。
「そんなバカな」「殺されたはずなのに、生きてる」「もしかして幽霊だったんじゃ……」
 そのとき、遠くで爆発音が聞こえて人々の注意が逸れた。
 私はとっさにその場を離れたが、どうも不自然だ。
 音は一度だったのだろうか。もしかすると、もっとたくさんの場所で鳴ったのではないだろうか。それとも、ただの不吉な予感にすぎないのか?
 ホテルにて落ち着いたところで後輩社長に事態を説明すると、
「ではストックホルムの警察にはあたしが連絡しておきます。とにかく今は休んでください」
「またわたしのせいで、人が?」
「まだ犯罪だと決まったわけではありません。ホントにただの迷子かもしれませんし。気分転換にシャワー浴びてカフェでも行ってきたらどうでしょう」
 ちょうどホテルの1階に、通りに面したカフェが併設されていた。また頭がぐるぐるしている。カウンターごしにぼんやりと通りを眺めながら、サフトでも飲もうか……。
 ベリーの甘酸っぱさが脳にしみる。右へ左へ、行きかう人々を眼で追っていると、こちらを見返す目線を感じた。グレタだ。演説がひと段落したのか、小休止か。とにかくグレタはこちらを認識するやいなやカフェに入り、あれよあれよという間にわたしの横に座った。
「あなた、さっき演説に来てくれた方ですね?日本人?」
「そうですが……。覚えていてくださったんですね」
 さすがの押しの強さだ。
「ずいぶん思いつめた様子でしたから、気になっていたんです。よかったら、詳しくお聞かせ願えませんか?」
「え……なにを?」
「嘘についてですよ。あなたが一体なにをしたのか。場合によっては、力になれるかもしれません」
 この気高く優しい少女は、おそらくわたしが政治的な悩みを抱えているのかと思ったのだろう。まさか、この上なくあいまいな凶悪事件のさなかにいるとはつゆ知らずに。
「それは、どういう意味ですか?」
 グレタさんの言葉には、どこか不思議な強制力があった。
 まるで見えない手に押し流されるように、記憶が呼び起こされていく。……そうだ、わたしはかつて過ちを犯したことがあった。
 わたしがまだ十代の頃のことだ。
 当時のわたしは、小説家を目指していた。大学四年のときの卒論のテーマも『AIを用いた小説生成における人間の役割』というものだったし、『人工知能が書いた文章の評価基準の明確化に関する研究』(要旨)も書いていたし、つまりはそういうことをやっていた。今でこそ当たり前のように存在するが、当時はまだ黎明期であったコンピュータのAI化に取り組み闘っていたのだ。

〔第31話:全2,063字=高島執筆207字+AI執筆1,856字/第32話に続く〕

▶これまでの『失われた青を求めて』

高島雄哉(たかしま・ゆうや)

小説家+SF考証。1977年山口県宇部市生まれ。東京都杉並区在住。東京大学理学部物理学科卒、東京藝術大学美術学部芸術学科卒。2014年、ハードSF「ランドスケープと夏の定理」で創元SF短編賞受賞。同年、数学短編「わたしをかぞえる」で星新一賞入選。著書は『21.5世紀僕たちはどう生きるか』『青い砂漠のエチカ』他多数。2016年からSF考証として『ゼーガペインADP』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』やVRゲーム『アルトデウスBC』『ディスクロニアCA』など多くの作品を担当。
Twitter:@7u7a_TAKASHIMA
使用ツール:
AIのべりすと

Twitter:@_bit192

次回をお楽しみに。毎週木曜日更新です。

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