高島雄哉×AI連載小説『失われた青を求めて』第41話【新訳】

小説家+SF考証・高島雄哉氏が、日本語最大規模の自然言語処理AI「AIのべりすと」の自動物語生成機能を使って綴る、文芸ミステリ。人間とAIのふたつの知の共作による人類初の小説実験。

【第41話】 消え去ったチーフ(二)

「顔が別人のものになるというのはなかなか興味深い体験ですね。私の口が勝手に動いているかのような……」
 そろそろベテランの仲間入りといった風体の刑事さんは、意外なほど落ち着いていた。もしかして、似たような事件に関わった事があるのだろうか?聞くまでもなく、刑事さんは自ら語り出す。
「実は、こうした機械がからむ事件は初めてではありません。まだ現代の警察では、きちんと対応できる体制は整っていないのです。しかしながら、私の独断で釈放というわけにもいかない。今のARが一体誰による仕業なのか、正確につきとめられない限りは……。証拠の掴み方さえ、曖昧なのです」
 刑事さんの〈機械がからむ事件〉という言い方は、なるほど言い得て妙だと思いながらも、わたしは刑事さんにリクエストする。
「わたしは一刻も早くここを出て、チーフをひどい目に合わせたやつを見つけたいんです」
「見つけて、どうするんですか?」
「え……」
「個人による報復は認められていません。相手がたとえAIでも。それはスウェーデンでも日本でも同じでしょう。──そこで提案ですが、もしあなたが既定の金額を払えるなら釈放が可能です。一定期間の監視が条件ですが。その後、目立った問題がなければ、自由になります。監視は私が請け負いましょう」
「刑事さん……」
「小説家さんも大変ですね」
 刑事さんがやさしくほほえんだ。

 後輩社長に相談すると、すぐに手続きを進めることができた。
 容疑が晴れたら返金されるとはいえ、それなりに高額の保釈金は、もちろん後輩社長に出してもらった。
「とにかく、あなたは疲れすぎている。いったんホテルに戻ってお休みください」
 わたしは刑事さんの車でなんとかホテルに戻ることができた。偽グレタ氏と出会った、あの奇妙な場所に。
 あんな大規模なパレード、一日二日で準備できるはずがない。グレタ氏が偽者であればなおのことだ。
 パレード参加者には──わたしとは別の意味ではあるけれど──だまされて集まった人もいるだろう。でも少なくとも偽グレタ氏の近くにいた数人は、偽者だと気づきながら、わたしをだましていたのではないだろうか。
 メガネの時計を見ると、もう24時を過ぎていた。
 わたしはレストランスタッフを呼び止めた。
「ここは何時までですか?」
「27時までです。──ご注文は?」
 わたしは何を思ったのか、あのときと同じサラダを注文し、記憶を反芻することにした。
「後輩社長、あのパレードって本物だった?」
 ──いちおう公的な許可は取ってますね。っていうか、先輩、もうちょっと食べて、シャワー浴びて寝てください。
 メガネを通じ、後輩社長が語りかけてくる。そういえば今のわたしの思考状態もすべて、向こうにデータとして送られているのだ。
「後輩社長はくやしくないの?せっかくのチャンスだったのに」
 ──先輩、今は冷静に、論理的に考えてください。またチャンスはありますよ。きっと〈マリッジブルー〉のほうから接触してきますから。
「冷静って、後輩社長、それ本気で言ってる?」
 ──先輩……。
「あいつがチーフを殺したんだよ。チーフの仇を取るチャンスなのに、どうして!」
 ──先輩、お願いですから、いったん寝てください。
「わたし、チーフが好きだった。だからこんなに辛いのに、後輩社長はなんとも思わないの?」
 ──……あたしだって、先輩があんな風に殺されたら、すごく悲しいです」
「だったら!」
 ──……わかりました。じゃあわかっていることの整理から始めましょう。
 反撃だ。わたしの意思はすでに固まっている。

〔第41話:全1,440字=高島執筆78字+AI執筆1,362字/第42話に続く〕

▶これまでの『失われた青を求めて』

高島雄哉(たかしま・ゆうや)

小説家+SF考証。1977年山口県宇部市生まれ。東京都杉並区在住。東京大学理学部物理学科卒、東京藝術大学美術学部芸術学科卒。2014年、ハードSF「ランドスケープと夏の定理」で創元SF短編賞受賞。同年、数学短編「わたしをかぞえる」で星新一賞入選。著書は『21.5世紀僕たちはどう生きるか』『青い砂漠のエチカ』他多数。2016年からSF考証として『ゼーガペインADP』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』やVRゲーム『アルトデウスBC』『ディスクロニアCA』など多くの作品を担当。
Twitter:@7u7a_TAKASHIMA
使用ツール:
AIのべりすと

Twitter:@_bit192

次回をお楽しみに。毎週木曜日更新です。

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