高島雄哉×AI連載小説『失われた青を求めて』第48話【新訳】

小説家+SF考証・高島雄哉氏が、日本語最大規模の自然言語処理AI「AIのべりすと」の自動物語生成機能を使って綴る、文芸ミステリ。人間とAIのふたつの知の共作による人類初の小説実験。

【第48話】 見出された青(五)


 誘拐されていた──と思われる──後輩弁護士、発見。生死は不明。
 要約すると、なんてシンプルなのだろう。わたしは新たな穴にはまり込みつつあった。
 ストックホルムの刑事さんが言う。
 ──小説家さん。あなたは我々ストックホルム警察にとっては、まずはチーフさん殺害事件の最重要人物です。
「容疑者ってことですか?」
 ──いえ、現時点では、あくまでも最重要人物というだけです。しかし、あなたを中心に事件は起こるし、後輩社長さんの会社に置かれた小説家さん用のサーバーから謎のAIも発見されたとのこと。そのサーバーには小説家さんもアクセスできたんですね?
「え?ええ……。写真とか小説の原稿とかアップロードしてたし」
 ここで後輩社長が大声でわりこんできた。
 ──刑事さん!先輩のサーバーにいたAIは超強力な暗号をつかって侵入したんです!こう言っちゃなんですけど、先輩にそんな技術はありません!
 ──技術がないことは証明できない。いわゆる悪魔の証明です。
 ──それはそうかもですけど。先輩は足し算引き算もできないんですよ。
「それくらいはできるって!」
 刑事さんはわたしたちの漫才には乗ってくれず、冷淡に話を続ける。
 ──本来なら小説家さんは拘留されてしかるべきなのです。しかし小説家さんの後輩である弁護士が発見されたことで、あなたたちが言う〈マリッジブルー〉の存在について信憑性はあると、我々ストックホルム警察は考えています。
「それはもう信憑性しかないですけどね。犯人はわたしじゃないって証明するのも悪魔の証明ですか?」
 刑事さんは少しだけ考えてから答えてくれた。真面目な人なのだろう。
 ──いえ、犯人ではないということは、本来は証明不要です。ただ、その人が犯人であることだけを証明すればいいのです。
 ここで後輩社長がかみつくように反論する。
 ──疑いがかかっているときは、無実の証明をしなくちゃいけませんよね?警察の捜査が完璧なら、裁判だって不要です!
 ──まったくそのとおりです。なので私は慎重に〝本来は証明不要〟と申し上げました。そして小説家さん。あなたは今回、犯人探しをすることで、自分の無実も証明できます。
「それは……わたしだってマリッジブルーを見つけたいですけど!」
 ──私はこれから後輩弁護士さんが発見された場所にむかいます。小説家さんもいっしょに行っていただけませんか。
「どこですか?」
 ──巌流島です。
「は⁉」
 ──?どうしました?
「いや、あの、その島は日本では結構有名なんです。剣豪が決闘した島として」
 ──なるほど。小説家さんとマリッジブルーの決闘の場ということですか。
 まったく、突飛な話だ。
 巌流島で、あの宮本武蔵とあの佐々木小次郎が決闘した。その島で後輩弁護士が発見されたという。なぜ。
 ──しかも先輩、巌流島って、先輩の故郷の山口県にあるんですね。
 ──ほう。興味深いですね。
「いや、わたしは山口県でも宇部生まれで、巌流島って確か下関?ともかく行ったことはないんだけど」
 このようにして、わたしはストックホルムから巌流島へ、絶望感あふれる旅をすることになったのだった。

〔第48話:全1,265字=高島執筆52字+AI執筆1,213字/第49話に続く〕

▶これまでの『失われた青を求めて』

高島雄哉(たかしま・ゆうや)

小説家+SF考証。1977年山口県宇部市生まれ。東京都杉並区在住。東京大学理学部物理学科卒、東京藝術大学美術学部芸術学科卒。2014年、ハードSF「ランドスケープと夏の定理」で創元SF短編賞受賞。同年、数学短編「わたしをかぞえる」で星新一賞入選。著書は『21.5世紀僕たちはどう生きるか』『青い砂漠のエチカ』他多数。2016年からSF考証として『ゼーガペインADP』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』やVRゲーム『アルトデウスBC』『ディスクロニアCA』など多くの作品を担当。
Twitter:@7u7a_TAKASHIMA
使用ツール:
AIのべりすと

Twitter:@_bit192

次回をお楽しみに。毎週木曜日更新です。

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