磨き続けた本能と直感に従い、自由な生を謳歌した先に人間の本質を探し続けるネオホームレス・SHO。
今回は、20年以上もコンサルタントとして飲食業界に関わり続け、JALとANAそれぞれ年回50回以上利用するとなることができる上級会員を23歳で取得、さらにこと焼き鳥屋に関しては食〇ログの全国トップ100を制覇したというSHOに、「グルメとマナー」の話を聞いてみた。
もし飲食業界に関わる読者がいたら、今回はマジで必読。
心して読んでほしい。
……と、いつものノリのままいきたいところだが、待ってくれ。
なあ、考えてもみてほしい。
この連載は過去3回に渡り、SHOのライフスタイルと人生哲学を明らかにしてきたわけだ。
たまには気分を変えたいよな。
そこで今回は緊急対談。
容姿端麗・才色兼備な特別ゲストが登場だぜ!!
元CA&飲食コンサルタント・Aさん
大学卒業後、大手航空会社にて客室乗務員として勤務。2021年、コロナ禍で航空業界が苦境に立たされるなか、SHOの会社・株式会社citrusの「CA副業サポート」にて飲食コンサルタントとして参加する。
現在の仕事もあるため顔出しNGとのことだが、そこがまたミステリアス……!
ケムール読者諸氏、覚悟はできてるか?
本能を解き放て!!
本名、野口昌一路(のぐち・しょういちろう)。2010年、株式会社citrusを創業。飲食業界に特化したコンサルティングサービスのほか、飲食店も4店舗経営し、焼肉・イタリアン・和食・沖縄料理とそのジャンルも多岐に渡る。2021年ごろより現在のホテル暮らしを開始し、リュック1つで世界中を旅し続ける。車や現代アートを多数所有。モットーは3Sミッション「死ぬまでに知らないことを少なくする」。
CAコンサルが唸った三ツ星有名店
担当編集(以下「編」) Aさんは飲食コンサルであることももちろん、SHOさんからは”自分に負けじ劣らずのグルメだ”とお聞きしました。
Aさん どうなんでしょう(笑) 私の経験が少しでも役に立てば幸いです。
SHO 実際けっこう行ってるでしょ。人生で1番よかったとこってどこ?
Aさん デンマークの話なんですけど…
SHO 自尊心がすごいよね。いきなり海外かよってね(笑)
Aさん ひどい(笑) あまりないんですよ、日本に(笑)
SHO まあたしかにそうかもしれない。それで、デンマークのどこ?
Aさん コペンハーゲンの「noma(ノーマ)」です。
SHO そりゃそうだろ。ミシュラン三ツ星じゃん!
2003年、コペンハーゲン中心部のウォーターフロント地区にオープンしたレストラン。これまで「世界のベストレストラン50」における世界1位に5度輝く。北欧の食材だけを用いた料理は清新かつ革新的で、料理業界に衝撃を与えた。
2018年には姉妹店「inua(イヌア)」が飯田橋にオープン(2021年に閉店)、2023年3月には「noma Kyoto」と題してエースホテル京都での期間限定営業を行うなど日本との関わりも深い。
2024年末で通常営業を終えることが決まっている。
Aさん お料理を楽しむっていう概念が変わったんですよ。
料理が美味しいのはもちろんなんですけど、使っている食器もすべて現地の作家さんがお店のために作っているもので、あらゆる場所にお店のこだわりが詰まってたんです。
目で見ても、味わっても、お店という空間自体もどれも一流で感動的な体験でした。
SHO 日本人で本店に行ったことがある人はなかなかいないだろうね。
編 (いきなりとんでもないのぶっこんできたな…SHOさんの周りみんなこんななのかよ)
悪評は千里を走る…!?
SHO 逆にさ、ヤバかった店は?
Aさん ちょうどつい最近あった出来事なんですけど、夜、友達とご飯行くときにあるお店を電話で予約したんです。
本当は19時半くらいに予約したかったんですけど、18時スタートなら最後の席が空いているので取れますって言われて、どうしてもそこのお店に行きたかったので18時で予約したんです。
Aさん 当日は急いで仕事を終えて、お店に行ったら、お客さん誰もいませんでした(笑)
店員さんの出勤時間とか、オペレーションの問題かなと思ってみてたんですけど、店員さんめっちゃいるし、あれは何だったのか未だにもやもやしてます。
SHO それはご飯マズくなるよね。
Aさん すごい気になっちゃいましたよ。
けっきょく19時くらいからお客さんがちらほら入ってきて、最終的には満席くらいにはなってたんですけど、予約の電話のときは18時スタートじゃないと入れないみたいな口ぶりだったので。
SHO 俺はさ、食事をするときにトータルでの居心地のよさを1番大事にしてるんだよね。
それは何かっていうと、ご飯の味、接客、ストレスの有無、誰と食べるかって4つの要素で構成されていて、中でもご飯の味っていうのは一番下だと思ってる。
だからそれだと、ストレスだし、接客も微妙だし、どんだけご飯が美味しくてもイヤだよね。
Aさん そうですよね。
SHO ちなみに食事をするときのポイントって何? 大きく分けると味、サービス、空間って要素があると思うんだけど、優先順位ってどう?
Aさん んー、サービス、空間、味の順番ですかね。だから味がいまいちなチェーン店だったとしても、接客とか他のクオリティが高かったら居心地よく感じますし、また来ようって思えます。
SHO すばら(拍手)
Aさん&編 すばら(笑)
取材当日、SHOさんは午前中Youtubeなどの取材もあり、なんと夕方から飲んでいたため早くも出来上がりつつあった。
SHO サービスがよくなれば空間ってよくなるんだよね。がやがやした赤提灯系のお店でも、超接客がよければアットホームでいい空間になるし、どんだけ綺麗で美味しい高級店でも接客がいまいちだったら味まで台無しになるから。だからサービスによって空間が変わり、空間によって味が変わるんだよ。それが居心地に繋がる。
たとえばだけど、俺は料理が出てくる順番とかけっこう気になるんだよ。10人分の声がいっぺんに聞こえるから。
編 聖徳太子なの…?
SHO たとえばランチで定食屋に入って、刺身定食を頼んだとするじゃん。俺の5分後に入ってきた別のお客さんが同じように刺身定食を頼む。俺はそういうの多少離れてても全部聞こえんのね。
それからまた5分後に、そのお客さんのほうが早く刺身定食が出てきて、俺のがなかなか出てこなかったりしたら、俺はその瞬間にもう食べる気なくなる。
Aさん (笑)
SHO だってランチってお腹を満たすために行ってるわけじゃなくて、息抜きとか楽しさとかその次の行動の活力を求めて行ってるから。
Aさん 食べる気なくなってどうするんですか?
SHO もしまだ作ってなければ、すいませんキャンセルでもいいですかって伝えて店を出る。
もちろんお店の迷惑にならないのが大前提だけどね。作り始めてたらさすがにしないよ(笑)
ちなみにさっきのヤバかったお店ってどこのどんなジャンルのお店?
Aさん 麻布十番の〇〇屋さん※です。
※ジャンルが分かると店名が分かってしまうため伏字です。
SHO どこだろ。俺、昔(まだ家があったころ)麻布十番に住んでたから分かるかも。地下?
Aさん 違います。
SHO じゃあ1階だ。商店街の、駅側から来て左側でしょ。「〇〇〇※」?
※店名なので当然伏字です。
Aさん え、すごい(笑) よくわかりましたね。
SHO 俺、住んでたときに1回行ったことあるんだけど、なんか接客と料理が値段に見合わないなって思ったからめちゃめちゃ微妙な印象あった店だわ(笑)
Aさん わたしだけじゃなかったんだ(笑) 意外なところで繋がってるんですね。
クレームにこそチャンスがある
編 不誠実な対応は問題外ですが、どんなお店も人間の仕事である以上はミスが起きると思うんです。そういう場合って、お店側としてはどういう対応をするのが正解なんでしょう?
Aさん 皆さんも似たようなご経験があると思うんですが、前に旅行先ですごく人気のあるレストランに行ったとき、お料理のなかに髪の毛が入っていたんです。
SHO うわぁ、ちなみにいくらくらい?
Aさん 3万円以上するコースです。
お店の人に伝えたら真摯に対応してくれて新しいものと取り替えてくれたので、それで後に尾を引くようなことはなかったんですけど、やっぱりちょっともやもやしましたよね。
編 対応としてはそれじゃダメなんですか?
Aさん もったいないなって思います。ちなみに余談なんですけど、そのレストランはもう閉業しちゃいました。
SHO ダメな店はちゃんと淘汰されてんね。
因果応報でちゃんと自分に返ってきてる。
SHO ミスしたときの対応で全てが決まるんだよ。俺も4店舗飲食店を経営してたから分かるんだけどさ。
料理を変えるだけじゃ絶対だめ。お客さんがすでにイヤな思いをしてるわけだから、新しい料理を持ってきたって食べ直すだけだとマイナスのまま。
最低でもプラマイゼロまで戻さなくちゃいけない。
Aさん コンサルタント目線でも、マイナスをプラスに変えられるようなお店が強いなっていうのは感じます。
SHO ピンチをチャンスに変えられるお店が最終的に生き残っていくよね。
何でかっていうと、クレームっぽいことが起きたときの対応がうまく出来たときにこそ、ファンができるからなんだよね。
実際、俺もお店の不手際があったときの店長さんの対応で、そのお店と店長のファンになったことがあるよ。結果その店の常連になって、最終的にそのときの店長とは一緒にうちの店を開くことにしたんだよね。
だからクレームはチャンスだと思ったほうがいいし、ミスったときにそのお店の本当のスペックが出る。
Aさん 客室乗務員の立場で接客をしていたときも、万が一お客様からそういう声が上がったら、そういう気持ちで対応していましたね。
SHO 別に安くするとかそういう話じゃなくて、チョコレート1個をお詫びとして渡すとか、通常のメニューでは出してないんですってお酒を1杯サービスするとか、帰り際にお土産渡すとかでもいい。
もちろんこれは別にミスしたときに限った話ってわけでもなくて。
原価で考えれば数百円のことかもしれないけど、そういうプラスアルファの何かができるとお客さんの気持ちを動かせるんだよね。
Aさん ちょっとの手間や気持ちでいいんですよね。
SHO 俺が店長なら、ピンチをチャンスに変えて絶対にいいなって思わせてやろうって思う。
これからの時代こそそういう部分が大事になってくるんだけど、バズったりした人気店ほど意外と出来てないんだよね。
でも長くミシュランを獲り続けるような名店は、総じて小さなサプライズのサービスができるところが多い。
期待値インフレ国・日本
SHO じゃあ何がサプライズになるのかっていうと、全ては期待値とのバランスだと思う。
安いお店、赤提灯系のお店とかならミスっても、おばちゃん気にしないで~ってなる。けど同じミスでも高級店でやられるとイラっとする。
それは高いお金を払って、それだけ期待して行ってる以上仕方がないことなんだけど、俺はストレスフリーでいたいから期待値が上がりすぎる高級店には何度も行こうとはしないし、飛行機とか電車でもビジネスクラスとかグリーン車はなるべく使わないようにしてる。
Aさん えー、意外ですね。
SHO 昔は乗ってたし、皆で行こう、皆で乗ろうってなったときは別だけど、一人だったらなるべく乗らないね。どうしたって期待値が上がっちゃうから。
編 このあたりのストレスフリーに向かう考え方は、連載読者ならだんだんと理解してるころでしょうね。
SHO 前にさ、1泊10万円以上する高級ホテルに泊まったとき、ルームサービスを頼もうと思ったら電話が繋がらなかったんだよ。
外線を調べて問い合わせたら、”線が抜けてました”って。いやいやいやいやいやってなったよね、さすがに(笑)
対応に来てくれた人もめちゃめちゃ雑で、注文も聞かずに戻ってっちゃったから、チェックインしてまだ30分くらいだったし出ちゃった。
Aさん え、出たの(笑)
SHO ホテルは泊まるのが目的じゃなくて、いい時間を過ごすのが目的だから。
そのあと近くにあった1万円くらいのビジネスホテルに泊まったんだけど、そっちのほうがよっぽど居心地よかった。
だからイライラしたり、もやもやしたりするところにい続けるくらいなら変えちゃったほうがいい。
編 電話線が抜けていたのも、ビジネスホテルだったら許せたかもしれないっていうのもありそうですね。
Aさん 価格もですけど、そもそも日本ってサービスや接客に求められる期待値が高いような気がします。
SHO 場所によっても違うってこと?
Aさん フランスに有名なオムレツ屋さんがあって、客室乗務員時代のステイ中に行ったことがあるんです。オムレツはもちろん美味しいし、雰囲気や空間、サービスもすごく良かったんです。
Aさん その何年かあとに都内に国内1号店ができたので、同僚と行ったんです。お料理はすごく美味しくて記憶通りだったんですけど、サービスがいまいちに感じられました。
でもそれはそのお店のサービスがダメだったっていう話じゃなくて、サービスはフランスと日本で何も変わらなかったと思うんですけど、わたしたちが期待していたサービスの質が高かったのか、物足りなく感じてしまいました。
SHO それは面白いね。
Aさん だから外国のお店と日本のお店でサービスに対する期待値が変わるような気がします。
編 日本はサービスの質がいい国って言われますからね。海外旅行から帰ってきた人がよく日本のサービスのよさを実感しますよね。
Aさん だからサービスの質とお客さんの期待値で考えると、日本は最初からかなりハードルが高くなっているのかもしれません。
サービス最強はあのコーヒーチェーン…?
Aさん そういう意味だとスタバのサービスはすごく素敵だなと感じることが多いです。
SHO 自由だよね。
Aさん そうですね。きっとマニュアル化されてないから、自由で接客に個性もあって、毎回楽しみにして行けます。
レシートにメッセージを書いてくれるとか、手間にしたら1、2分程度で大したことじゃないかもしれないんですけど、された側はすごく特別な経験をした気持ちになります。
SHO いいサービスっていうのはマニュアルが生んでいて、感動したり気持ちが動くようなサービスにはその先のアドリブが入ってる。
マニュアルじゃ人の気持ちは動かないんだよ。
Aさん 最終的には人なんですよね。
SHO 最終的に人だし、今の時代だから人なんだと思う。
やっぱり気にかけてくれているかってことが大事なんだよ。
Aさん お店からすれば大勢のお客さんのうちの1組ですけど、お客さん側からすればその日の大事な時間を預けている1対1の関係ですもんね。
SHO やっぱりそういう視点を持ってる店が長く続くね。
お金を貰ってる、お腹を満たしてるっていう発想じゃなく、時間を貰っている、幸せを満たしているって発想になれれば、自然とそういうサービスができるようになるはず。
お店だけじゃなく、自分自身もそういう意識で人と過ごしていきたいね。
◆ネオホームレス・SHO/野口昌一路(のぐち・しょういちろう)
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ケムール編集部員。前は古着屋。潰れたソフトケースのなかにあるしわしわの煙草がすき。担当連載は「鳥居服装学院」「Talk at Fillers」「ネオホームレス-自由と稼ぎの流儀-」。
株式会社アクロスソリューションズ所属。
HP:https://www.acrossjapan.co.jp/