ネオホームレス-自由と稼ぎの流儀-【No.7】ハラスメントがヤバい時代――SHO直伝・人との上手い付き合い方

世の中には2種類の人間がいる……。
「持っているヤツ」と「持ってないヤツ」
それは金も、人脈も、情報も、そして経験も同じこと。
持っているヤツと持ってないヤツ、その違いはどこにあるのだろう?

答えは簡単。
全部を欲しいと思えるかどうか。
その本能に従い、行動し続けられるかどうか。

強欲?傲慢? 言いたいヤツには言わせておけ。

磨き続けた本能と直感に従い、自由な生を謳歌した先に人間の本質を探し続けるネオホームレス・SHO

連載開始から半年が経ち、新たな1年が始まった。
そこで今回は2023年を振り返り。

やはりケムール的に気になるのは、プロ野球や有名劇団などなど、あちこちで起きたハラスメントなどの問題。
組織やチームをマネジメントしていく上で、あるいは人と付き合っていく上で、一体何が大切なのか。

ケムール読者諸氏、覚悟はできてるか?

本能を解き放て!!

ネオホームレス・SHO
本名、野口昌一路(のぐち・しょういちろう)。2010年、株式会社citrusを創業。飲食業界に特化したコンサルティングサービスのほか、飲食店経営、不動産、デザイン、発送代行など多くの事業を手掛ける。2021年ごろより現在のホテル暮らしを開始し、リュック1つで世界中を旅し続ける。車や現代アートを多数所有。モットーは3Sミッション「死ぬまでに知らないことを少なくする」。

ハラスメント=時代の変化の現れ

――2023年を振り返ると、劇団〇季や、楽天ゴールデン〇ーグルスなど、色々な組織内で起きていたハラスメントが問題になった年だったような気がします。
SHOさん自身は会社員時代、あるいは経営者として組織を運営していくなかでハラスメントに直面したご経験はありますか?

SHO そりゃあね。でも、そもそもの前提として、去年はそういう問題が多かったって話になってるけど、俺は違うと思ってる。
パワハラもセクハラも、もともとどの時代にもあって、それが暴露され問題化される時代になったっていう変化の現れが2023年だったって考えたほうがいい。

――たしかにマタハラ(マタニティハラスメント)、スメハラ(スメルハラスメント)など、ハラスメントも細分化されていて、社会に”ハラスメント絶対に許さない!”という空気ができてきたように感じます。

SHO そうなっている要因として、権力がある人・組織っていうのが弱くなって、個人主義に移行しているっていうのが1番大きいんじゃないかと思ってる。
たとえば、〇ャニーズとか〇っちゃん(M本H志氏)の問題も、噂レベルではずっと昔から言われていたこと。今は個人事務所で仕事をしている人も多いし、巨大な事務所の力が昔よりも弱くなっていて、そこに入るっていう当たり前が通じなくなっている。
ハラスメント問題はその時代の変化の現れの1つで、本質的に考えるなら、旧権力(=マスコミ、組織主義、テレビや超デカい組織など)が弱まって、新権力(=個人発信、個人主義、YoutubeやSNSなど)が台頭してきたことで、既存のプラットホームに頼りきりにならなくてもよくなった。
だから”パワハラに気を付けないと”とか”パワハラよくないよね”みたいなのは俺的にはちっちゃい部分で、ハラスメントの予防講習なんて小手先のテクニックで、本質じゃない。
そうじゃなくてより本質的に、俺たち自身もその新しい個人主義的な価値観に合わせるよう動いて、対応できる状況を作っていかないといけない。

――つまり今の30~40代くらいのプレイヤーからマネジメントする立場に移行した人たちって、自分が若いときに鍛えられた教わり方と全く違う方法で後継を育てていかないといけないわけですね。

SHO そう。だから面白いんだよ。
まず今の若い人たちは、今の上司が言っていることが必ずしも正しいわけじゃないってことを肝に銘じておかないといけない。

――上司がやってきたやり方が、必ずしも今の時代にも通用するかは分からないですもんね。

SHO たとえばさ、昔成功した人がセミナーとかで話すとするじゃん? 権威もあるからそれを聞いた人は「そういうことか、なるほどな」って信じたくなる。
でもその人の言っていることがいいか悪いかっていうのとは全く別の意味で、その人の成功はその時代のやり方にマッチしていたっていう側面が必ずあるから、鵜呑みにはしないほうがいい。
1秒ごとに世論・美意識・価値観は変わってるっていうのを大事にしてほしいね。

――これは初回でもお話いただきました。

SHO 価値観は1秒ごとに変化してるんだけど、分かりやすく大きな分断がある地点があってね。俺は「平成ボーダーライン説」って呼んでいて、昭和以前生まれ(旧世代)か平成以降生まれ(新世代)かで生きてきた社会の価値観が大きく変わる。
今35歳前後くらいがその分岐点の人たちなんだけど、ちょうど役職がついて出世していく世代じゃん? だから1番大変なんだよ。今までの自分が培ってきたものを大きく変えていなきゃいけない岐路に立たされてるから。

――具体的にはどういう変化なんでしょう?

SHO 俺は旧世代と新世代を「犠牲的利他世代(旧)」「利己的利他世代(新)」に分けている。
たとえば昔は会社のために、社会のために、家族のためにって犠牲を払うことが美徳だった。

――なるほど。確かに日本人は自己犠牲大好きですね。

SHO 徹夜して、休みの日も働いて頑張るっていうことが昔はよしとされていたんだけど、今の世代は自分の楽しさや居心地のよさをすごく大事にできる世代だと俺は思っていて、それを広げていくことで周囲に利を還元できる世代なんだよね。
どっちがいい悪いって話じゃなくて、時代が変わったことで美徳や憧れられる生き方が変わってる。

――昭和と平成の切り替えとなると、その少しあとにバブル崩壊があったり、冷戦終了があったりします。そういった社会的なものも価値観の変化に影響を与えてるんでしょうか?

SHO それでいくと、平成以降の世代はスマホやSNSを当然のものとして使ってるっていうほうが直接の影響としては大きいと思ってる。
昔は情報を得られるツールってテレビや新聞に限られていて、みんなで一丸となってやっていくみたいな価値観が強かった。
俺の時代って、ビジネスのシーンでも当たり前に”守破離”って言葉が使われてたんだけど、今って言わないでしょ?

――そうですね。ケンガンアシュラくらいでしか聞かないです。

編集部メモ:守破離

茶道や武道において使われることの多い、修行の過程を示した言葉。

守:基礎や型を身に着ける
破:既存の型を発展させる
離:型から離れ、独創性や個性を発揮する

SHO そうでしょ。旧世代はテレビや新聞とか得られる情報が画一的だったから、守破離みたいな「型」とか、「量が質を生む」っていう考えで取り組むことが重要だった。
でも今はだいたいのことは自分で調べられるし、むしろ情報をジャッジしていかないといけない。新世代はSNS台頭で爆発的に増えた情報のなかで色んな疑似体験を得られるから、決められた型が必要なくなったし、最初から質を追及できるようになった。
得られる情報っていう視点で見ても、世代間でだいぶ違ってきちゃうんだよね。
そういう時代のなかで生きてきてる世代に、そうじゃない昔の世代が何かを教えるっていうだけでも、価値観が違うことが分かるのに、一方的に自分たちのやり方だけ押し付けたらひずみが生まれるでしょ。

友達は価値観変容のためのツール

――価値観をアップデートするってかなり難しい気がするんですが、犠牲的利他世代の人たちは具体的にどうしたらいいんでしょう?

SHO 行動としては、若い世代の友達を作るっていうのが1番手っ取り早いかなと思う。ポイントは仕事での上下関係のある交わりではないってこと。

SHO 俺は旧世代の人間だけど、友達も年代問わずたくさんいるし、仕事でもプロジェクト型のビジネスモデルで10以上ある事業を回していて、対等な関係性で新世代の人との付き合いがあったっていうのが大きかった。
友達っていうとハードル高いかもしれないから、趣味とか習い事とかがいいね。若い子と飲んでるよっていう旧世代の人はけっこういるんだけど、飲み会は時間が短いし、深い話はしづらいから。
趣味とか習い事とか、1つのことをじっくり話すことで価値観の違いがよく分かる。習い事ならお金を払えば通えるし。

――以前、宮台真司さんにお話を伺ったときには、現代のこの「友達がいない」ことによる孤立と孤独を問題視されていました。

喫煙所と現代人の孤独について、宮台真司氏(社会学者)に語っていただきました。

▶いままでの #たばこのことば はこちらをクリック 愛煙家の方々がけむりを通して見えたもの・考えたことを語る直撃取材です。今回の愛煙家は、社会学者・宮台真司氏です。 喫煙は孤独な現代の希望…? 「クソ社会」「ケツナメ右翼[…]

SHO 別に問題ってほどじゃない。時代がそうなってるってだけでいい悪いじゃないから。
ただ、上手く生きていくためには適応していったほうがいいんじゃないってこと。
だから友達を作るべきみたいなことは言わないよ。1人でいたい人は1人でいたらいい。ただ周りと価値観のギャップが生まれて、揉めごとが起きている以上は、いたほうが生きやすくなると思う。
友達は目的じゃなくて、ツールなんだよね。あ、もちろん親友は別ね(笑)
1秒ごとに価値観は変わっていくんだから、時代に合わせた考え方を知ってそれにアジャストしていくのが、生きやすくなるコツなんじゃないかな。

――処世術の1つとして、友達づくりやコミュニティへの参加ってことなんですね。

SHO 言ってた通り価値観を変えることは超ムズい。俺も超ムズかった。価値観を変えるって、自分の人生や成功体験に否定を入れなくちゃいけなくなるから。
最初はね、「マジで⁉ そんなこと考えてんの⁉」ってなる。同じものを見ているはずなのに、感じてることが全然違うから。話が通じないんだよね(笑)

――たしかに、僕の目線から見て今の高校生とかは分かる部分もありますが、別の生き物なんじゃないかって思えるようなときもあります。

SHO 価値観の違いはマジで分かんない。まず大前提として世界の80億人全員の価値観が違うって思わないと。そのうえで話して聞くってことが大事。
たとえば、彼女が旅行に出かけて全然連絡してこないとする。
彼氏としては心配だから連絡ほしいし、全然来ないと大事にされていないんじゃないかって不安に思ったりもするわけだよ。
でも実は彼女のほうは、旅先で何食べたとか送られてきても返信しづらいだろうからと、よかれと思って連絡をしなかった。
これ、お互いが良かれと思って真逆のことやってるんだよね。でもこれって話し合わないと絶対に分かんないじゃん。

――すれ違いの大多数はコミュニケーション不足でしょうからね。

SHO 分からないから疑心暗鬼になる。でも”何でなの?”とか”どうしてそうしたの?”とか聞いて話し合っていくと、お互いの価値観を知ることができる。
だからモヤっとしたり、なんか違うなって思ったことはちゃんと聞いて説明してもらうことだね。
恋愛だけじゃなく、上司と部下の関係でも一緒。話し合うことで価値観に幅があることを知れる。必ずしも合わせたりする必要はないけど、知っていればお互いに尊重したり許したりできるじゃん?

SHOが脱旧世代したきっかけは?

――SHOさんが価値観をフラットにできたきっかけってありますか?

SHO 5年くらい前までは、会社の規模を拡大しようと思ってやってたから、社員もバイトもめちゃくちゃ雇って、朝礼とか日報とか飲み会、旅行、評価制度、社員+家族全員に誕生日プレゼントwもかなりきちんとやってた。
でもだんだん本当に社員が求めているものなのか?俺自身がそこに楽しさを感じなくなった。俺が楽しくないってことは、働いている人たちはどうなんだろうって悩みだしたのがきっかけで、自分が信じてた価値観に疑いを入れることができるようになった感じかな。
だから傷ついたり、失敗したりしてみるのも悪いことばっかりじゃない。そういうときこそ考える機会になると思う。
まあでも、読者の方にはこの連載読んで、傷つく前に気づくきっかけになってくれたら嬉しいよね(笑)

――そういう気づきって、そもそも現状にざらつきや違和感を抱いていないと見過ごしてしまいますからね。

SHO そうなんだよ。まず気づくのが超ムズいんだよ。だからこれを読んでくれた人は、この話を頭の片隅に置いておいてほしい。
「平成ボーダーライン説」とかが頭の片隅で認識されていると、右脳から左脳に入るから。

――右脳から左脳? 直感から理論へみたいなことですか?

俺は左脳で直感的に判断できる

SHO 俺、実はあれまったくしっくりこないんだよね。よく右脳っぽい(直感的)よねって言われるんだけど、俺ってけっこう理屈で考えてるじゃん?
たしかに超素早く判断しているんだけど、それは別に直感的な判断じゃなくて、左脳を鍛えすぎた結果、理論から即座に答えを導き出せるだけなんだよね。
だから俺は一般的な右脳左脳の定義がずっとしっくりきていなかったから、右脳と左脳を自分で定義し直した。

――(なんかこのパワーワードでぶん回す感じひさしぶりだな……)

SHO 右脳的な思考は自分が認知できていない、感じている経験から出す答え。たとえば知らないものを食べたときに、なんか美味しいなっていうのは右脳。
左脳的な思考は認知している、具体的な認知できている経験から出す答えだから、美味しいと感じる理由がはっきりと分かってる。

――醤油とみりんのバランスが絶妙で、火の通し具合が~みたいなこと?

SHO まあそんな感じ。
で、左脳で処理すると再現性がある。

SHO まず経験したことはすべて右脳に入るイメージ。だから右脳の範囲はめちゃめちゃ大きいし、どんどん大きくなる。でも、あやふやななんか好きだよね、なんか嫌だよねには再現性がない。
左脳は認知できるものしかないから小さい。小さい左脳を大きくしていくために、俺は言語化をしてる。
言語化をして「平成ボーダーライン説」「犠牲的利他世代」「利己的利他世代」っていうことが認知できていれば、世代間のギャップに直面したときも頭のなかで整理がしやすくなるし、冷静になれる。
逆に言語化できてないと”最近の若者は……”っていう状態になる。
でも言語化って考えを深掘んないといけないから大変なんだよ。だから俺はケムールの連載とか、Youtubeとか、自分が言語化したことを発信してる。
だからこの連載を読めば読むほどこれまで感じ取れなかったものが感じ取れるようになっていくはず。

――ちなみに、価値観の幅を知った上でどうしても相容れないな……っていう人との付き合いはどうしたらいいですか?

SHO 歩み寄れない人に無理に歩み寄ろうとしなくていい。どうしても無理な違いってあるからね。
だから同次元共鳴者を集めたほうがいい。

編集部メモ
同次元とはレベル、思考スピードが近しく、お互いにとって刺激となり高め合えること。
共鳴とは価値観、大切にしているものが同じであること。
これらどちらか一方でも当てはまると、その人は自分にとっての「同次元共鳴者」になる。

〇同次元共鳴者を見つけるための5分類ワークシート〇

今自分の周りにいる人を下記の5つに分類してみてください。どんな人が自分にとっての同次元共鳴者かが見えてくるはず。

■刺激を受ける人

■価値観を変えてくれる人

■居心地いい人

■知らない世界を見せてくれる人

■会ったことないけど有名人で価値観合う人

SHO でも漠然と合う合わないみたいな線引きをしてるのは右脳的だから、何がどう合わないのかを言語化して左脳で判断できるようしていくほうが俺は効率がいいと思う。
自分のなかでの線引きに再現性が生まれるよね。このワークシートを使ってもらえれば、右脳から左脳に入れやすくなるはず。

――人を知っていくことも大事ですが、まずは自分の価値観をちゃんと把握していないといけないわけですね。

SHO そうそう。これがまたムズいんだよ。俺だってまだまだ。

――SHOさんのレベルでまだまだなんですか……。

SHO 全然足りてない。
それに、自分の価値観だって時代に応じて1秒1秒変わっていくしね。この言語化は死ぬまでずっと続く作業だから。


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◆ネオホームレス・SHO/野口昌一路(のぐち・しょういちろう)

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ライター:小梅之々(こうめこれこれ)
Twitter(X):@korekore_koume
ケムール編集部員。前は古着屋。潰れたソフトケースのなかにあるしわしわの煙草がすき。担当連載は「鳥居服装学院」「煙たい物語」「ネオホームレス-自由と稼ぎの流儀-」
株式会社STSデジタル所属。
HP:https://sts-d.com//

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