ネオホームレス-自由と稼ぎの流儀-【No.8】SHOのチャリティ論――”自己責任で落ちぶれたヤツは助けなくていい”

世の中には2種類の人間がいる……。
「持っているヤツ」と「持ってないヤツ」
それは金も、人脈も、情報も、そして経験も同じこと。
持っているヤツと持ってないヤツ、その違いはどこにあるのだろう?

答えは簡単。
全部を欲しいと思えるかどうか。
その本能に従い、行動し続けられるかどうか。

強欲?傲慢? 言いたいヤツには言わせておけ。

磨き続けた本能と直感に従い、自由な生を謳歌した先に人間の本質を探し続けるネオホームレス・SHO

前回、印象的な話の1つに「犠牲的利他」と「利己的利他」という2種類の利他行動についての話があった。

ネオホームレス-自由と稼ぎの流儀-【No.7】ハラスメントがヤバい時代――SHO直伝・人との上手い付き合い方

そこで、今回のトピックは”チャリティ”
元旦に起きた令和6年奥能登地震に象徴される災害や貧困などの社会問題を抱えるなか、人と人がどう助け合って生きていけるのか。

お金も時間も、一般人より遥かに「持っているヤツ」であるSHOならではの視点で、世の中を斬る!!

ケムール読者諸氏、覚悟はできてるか?

本能を解き放て!!

ネオホームレス・SHO
本名、野口昌一路(のぐち・しょういちろう)。2010年、株式会社citrusを創業。飲食業界に特化したコンサルティングサービスのほか、飲食店経営、不動産、デザイン、発送代行など多くの事業を手掛ける。2021年ごろより現在のホテル暮らしを開始し、リュック1つで世界中を旅し続ける。車や現代アートを多数所有。モットーは3Sミッション「死ぬまでに知らないことを少なくする」。

チャリティの肝は当事者意識

ナイジェリア・マココの子供たち

――令和6年奥能登地震からだいたい1ヶ月半くらいが経ちました。SHOさんは世界中あちこちを巡っていらっしゃいますが、能登とか金沢とかは行かれたことありますか?

SHO あるよ。ちょうど来週ボランティア行こうって誘われてたんだけど、タイミング合わなくて残念だったね。
だから俺の周りも、けっこうみんなボランティアに行ってる。

――金沢は大きな被害があるわけではないんですが、観光離れによる打撃が大きく、飲食店なんかだと新型コロナウイルスの流行時よりも苦しい状況の方もいるみたいです。

SHO 俺も飲食店経営しててコロナのときは本当に大変だったから、金沢のことは応援したいね。

――以前、マココの学校に寄付した話もあり、チャリティ活動を積極的にされてますけど、今回の震災に募金とかはされました?

SHO 経営者仲間で今準備してる。俺は何に使われるか、どういう用途で使われるかが気になるから、Yahoo!でやってる募金とかにはしないんだよね。
チャリティも、ただお金をポンと出して終わりじゃなくて、いかに当事者意識を持つかってことが大事だと思うから。そうすると、実際に現地に足を運ぶとかっていう動きになるし、募金も何に使われたかが知りたくなる。
だから俺が利用してる海外の募金なんかは、毎月何にどう使ったのかレポートが届くよ。
あとはいくつかの海外の学校に定期的に寄付したり、フィリピンの児童養護施設にボランティアに行って一緒に遊んだりとかもしたね。

フィリピンの児童養護施設へボランティアに赴いたときの写真

SHO 当事者意識を持つと、永続的利他主義にも繋がっていくと思うんだよね。
だから募金とか寄付してもらう側も、どんな用途に使ってどれだけの人がどういう風に助かったのか情報発信していくほうがいいと思う。寄付する側としては、それだけで自分がやったことの手応えとかを感じられるし、またやろうって気持ちにもなるから。

――SHOさんはお金も時間も明らかに普通よりは”持ってる”人なわけですが、こういったチャリティ活動に参加するのはノブレス・オブリージュ的な精神なんでしょうか?

SHO いや少し違うね。
もちろんよりよくなったらいいっていう思いはあるけど、それだけだと「犠牲的利他」じゃん。俺は「利己的利他」の精神だから、自分にも経験とかのメリットがあることを選んでる。だからチャリティ活動も3S ミッションに繋がってる。

編集部メモ
〇犠牲的利他……自己犠牲の精神で他人を利することを美徳とする態度
〇利己的利他……自分の楽しさや居心地のよさを重視しながら、それを周囲に還元していく態度
SHOが捉える時代の変化をもっと詳しく!

世の中には2種類の人間がいる……。 「持っているヤツ」と「持ってないヤツ」 それは金も、人脈も、情報も、そして経験も同じこと。 持っているヤツと持ってないヤツ、その違いはどこにあるのだろう? 答えは簡単。 全部を欲しいと思える[…]

独居老人も施設の子供もみんな一緒に暮らせばいい

――SHOさんのチャリティ活動には”経験に対する投資”みたいな側面があるということかと思いますが、効果やリターンを重視する点は”効果的利他主義”と重なる部分があるように感じました。

編集部メモ
〇効果的利他主義……アメリカの倫理学者ピーター・シンガーが提唱した概念。利他行動をする際、感情に流されるのではなく、功利主義の基本原理である「最大多数の最大幸福」に対する効果を最大限発揮できる利他行動対象を理性的に選ぶことを推奨する。具体的には、グローバルな健康や開発、動物福祉、長期的な人類の存続に関わるリスクなどが優先事項として挙げられることが多い。
要は、”より個人と社会の幸せの総量が増えるものを選んで利他行動しようぜ”という考え方のこと。

SHO それでいくと俺の考えとめちゃくちゃ近いと思う。
寄付とかのチャリティ活動だけじゃなくて、仕事とか会社とか友達関係に関しても、俺は最大の効果を望めることってなんだろうって常に考えるから。
効果を最大化していくのって大事なんだよ。成長スピードが全然違うから。

――”効果的利他主義”はアメリカの若い世代を中心に支持されている思想で、限られている支援のパワーを効率的に配分できますから合理的なんですよね。
でも一方で、定量化された効果だけで利他行動の対象を決定されると、貢献度が低い問題は切り捨てられてしまうという懸念もあります。

SHO そんなの懸念する必要がない。全部助けるのは現実的に難しいから、効率よくやっていかないと。
逆に今の日本は非効率なやり方とか政策が多くて、効果的利他主義の部分が少なすぎるように思うね。切り捨てるっていうのも、別に0か100かにしろって極端な話じゃないだろうけど、どっちかを選ばないといけないなら、効果を重視したほうがいい。

SHO たとえばさ、児童保護施設の経営難とか生活保護の不正受給とか、色んな問題があると思うんだけど、1つの大きな施設を使ってみんなで共同生活させれば、けっこうな問題が解決すると思うんだよね。
個々に支援すると非効率で、手が回らなかったり、税金の無駄も増える。でも共同生活できるようにしたら効率的だし、本当に必要なことに税金を投じられるから効果的だよね。

――かなりラディカル……。でもまあ、言いたいことは間違ってはいないのかもしれませんね。

SHO 俺の友達のお爺ちゃんはさ、1人で田舎暮らししてるんだけど、足腰が不自由だから仰向けに倒れちゃうと自力では元に戻れないんだって。どうするかっていうと、もう救急車を呼ぶしかなくて、仰向けに倒れたお爺ちゃんを椅子に座らせるためだけに救急隊が出動するわけなんだよ。でもこれって誰かが一緒にいればすぐ解決する話じゃん?
それに生活保護を受けている人も、施設の子供も、社会のなかで孤立しがちで寂しいっていう部分はけっこう共通しているような気がする。
もし近くに住んでいればお互いに助け合えるし、人との繋がりを実感できるから、生活保護のお金をギャンブルに使ったり、子供が非行に走ったりするようなことも減るんじゃないかな。

――独居老人の孤独死のような問題とか”無敵の人”の事件なんかも、人と人とのつながりがあれば防げるかもしれないことではありますね。

SHO 孤独死は東京都だけでも年間5000人以上って言われていて、年々増えてるわけでしょ? 国が選択肢の1つとしてそういう共同生活に税金を投じてもいいんじゃないかと思うね。
もしそういう共同生活が嫌だったら、頑張って自分で稼いでいきましょうって話。

出典:国土交通省 死因別統計データ

なぜ子供の支援だけ?

――ふと思ったんですが、学校や児童養護施設にチャリティが集中していて、たとえば老人ホームへの寄付や貧困層への炊き出しとかじゃないのは、SHOさんのなかにどういった基準があるんでしょう?

SHO そうだね……あえてやってるわけじゃないけど、直感的に判断してるのかもしれない。

――あくまで想像ですが、自己責任みたいなことでしょうか。

SHO そうそう、それ。
自分のやってきたこと、未来を見据えてこなかったことの結果として今の現状があるなら、それは自己責任だから助けなくていいし、むしろ責任をとるべきだとすら思うね。そこを助けられるっていうのは、楽したもん勝ちになっちゃう世界で嫌だし、チャンスがない人に使うほうが平等だと思う。
もちろんどうしようもなくできなかった人に手を差し伸べる仕組みは必要だけど、チャンスがあったのに自己責任で落ちぶれてた人の最後を助けるっていうのに、チャリティ活動のパワーとか税金とかを使ってほしくない。

――たしかに、全力を尽くした現在と地続きで先の人生があるわけですもんね。

SHO それでいうと、めちゃめちゃ衝撃を受けたことがあってさ。
先月、大阪で皆で食事してたときに知り合った女の子の話なんだけど、食事のあと皆でカラオケ行くとさ、その女の子が「歌ってよー!」って言われると自分が知らない曲とかも何でも歌うのね。
俺はなるべく自分が上手く歌える曲とか、せめて知ってる曲を歌いたいなって思うから、これって俺にとってかなり衝撃だった。それで、恥ずかしいとか思わないのって聞いたら、”実は最近妹が亡くなって、人の目なんて気にせずに妹の分も楽しく生きようって思ったんです”って教えてくれて。
体験が羨ましいわけじゃないけど、そういう気持ちで生きられるっていうのはすごいことだよね。

――死を身近に感じたことで吹っ切れるっていうようなこともありそうですね。

SHO 東日本大震災の話し手さんに宮城県で当時の話を聞かせてもらったことがあって、地震と津波で海沿いに住んでいたご両親を亡くされているっておっしゃってたけど、その方も服装とかがめちゃくちゃ派手で、すごい元気で、震災を期に自分のやりたいことに忠実に生きてるって言ってたね。
自分にも他人にも素直で、ピュアでいられるっていうのが大事なんだと思った。

――身内の不幸も震災も、もちろん望んでする経験ではないですが、お二方の生き様には魅力がありますね。
ただ、今を全力で楽しむ生き方と未来に向かって現在を修行と捉えるSHOさんの生き方と、矛盾はしませんか?

SHO 後悔しないようありのままの自分で素直に生きようっていうところは共通してる。現在なのか未来なのか、大事にしているものが違うだけで、大事にしているものに対して今を全力で生きているってところは同じだから。

「ピュア」がカッコいい時代

SHO 俺、今「用益潜在力」って言葉にすごく注目してるんだけど、知ってる?

――資産運用の文脈で使われる言葉ですよね?

SHO そう、俺はそれを生活にもあてはめて考えてるんだけどね。

編集部メモ
〇用益潜在力……現段階で資産価値がなくとも、利用価値があり将来的に何らかの価値を期待できたり、収益を期待できる支出なども資産であるとする考え方。

SHO 第2回で、お金を使うときの価値基準について話したと思うんだけどさ、用益潜在力の考え方はこれとも深く関わっていて、一般的な意味通り”今は儲からないけど数年後資産価値があがる”っていうのも用益潜在力だけど、俺はここでお金を使うことがどういう経験になるか、どんなブランディングになるかみたいな無形価値の用益潜在力のほうにより強い魅力を感じやすい。
経験や能力やスキルは絶対になくならないし、常に持ち運べるものだから、そこにどれだけベットできるかっていうのを常に意識している。

SHOのお金の使い方をもっと詳しく!

世の中には2種類の人間がいる……。 「持っているヤツ」と「持ってないヤツ」 それは金も、人脈も、情報も、そして経験も同じこと。 持っているヤツと持ってないヤツ、その違いはどこにあるのだろう? 答えは簡単。 全部を欲しいと思える[…]

――これですね。

SHO それそれ。それでいくとさ、効果的利他主義は調べるところから始まるよね。まずはどんな問題があって、どんな種類の寄付や募金があるかとかを知らないと判断のしようがないから。
実際、俺も募金とか寄付をする前に、周りでそういうのを積極的にやってる人たちに聞いて回った。
それで、知るっていうことが既に用益潜在力なんだよね。知ることが自分の資産になるから。

――たしかに寄付するかどうかみたいな問題以前に、何がどう問題として起きているのか、世の中はそれに対してどんな支援や活動をしているのかを知るっていうのは重要ですね。

SHO もちろんお金だけじゃなくて、どれだけ深くコミットできるかがチャリティ活動では重要なんだけどね。
だから効果的利他主義って、突き詰めてやればやるほど自分に返ってくるんじゃないかなって思う。これは「利己的利他」と繋がる部分があって、自分に還元されるものだから利他にも継続性が生まれる。
自分がそこに楽しみとか嬉しさを見いだせないと、どんな活動も継続しないでしょ。

――最初、僕はけっこう”効果的利他主義”に対して、懐疑的というか、冷たいなという印象を持っていたんですが、話を聞いていると非常に合理的な考え方であることが分かってきた気がします。
自分を殺しながら自己犠牲的になるのこそ、旧時代的な「犠牲的利他」になるわけですもんね。

SHO 日本って自己犠牲好きだし、利己的利他よりも犠牲的利他のほうが好まれがちかもしれないけど、もう今は利己的利他を前面に出してもそれが魅力になる時代なんだよね。
東日本大震災の話し手の人も、大阪でカラオケに行った女の子も、より自然体に近くてピュアに見えるからカッコいいんだよね。
「ピュア時代」の到来だよ。

――んん? ……ピュア時代?

SHO 昔は自分を犠牲にして自分に嘘を吐いても何かを人のためにするっていうのがよしとされていたけど、今はそれだけだと生きづらい。今の時代は自分に対してピュアでいられる人がカッコよく見える時代。そうなると利己的利他のほうが自分に対して素直で、かつピュアでいられる。

――なるほど……。素朴な疑問ですが、いくら自分に対してピュアに生きたとしても、そのピュアさが他人を害するような場合もありますよね。その場合は自分を押さえつける必要もあると思いますが……

SHO 俺と梅ちゃんでは立ってる前提が違うんだよね。
俺はこの世界を善世界・聖人世界だと思ってる。前回、ハラスメントの例で上がってた人たちみたいに、悪いやつは自然と排除されていく。まず前提として、正しいことをやるっていうのが大事な世界。
だからもちろん、ピュアさはある程度世論とか常識とともにあるものじゃないと、ただピュアなだけでははじかれちゃう。

SHO それに、価値観とか世論もより平等に近づいている。旧時代に求心力があった権力も弱くなっているし、今まで見逃されていた男女の格差とかハラスメントも見直されようとしている。昔に比べてフラット世界なんだよね。

――たしかにまだまだな部分も多いですが、多様な価値観が認められるようにはなっています。

SHO だからフラットな善世界に合わせながらピュアでいないといけない。それを敏感に感じ取った上で、自分のピュアさに従って生きていくのがカッコいい。
だからチャートを見て自分の現在地を知ったら、”ピュアwith世論”でカッコいいと思われる人間を目指したいよね。


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◆ネオホームレス・SHO/野口昌一路(のぐち・しょういちろう)

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ライター:小梅之々(こうめこれこれ)
Twitter(X):@korekore_koume
ケムール編集部員。前は古着屋。潰れたソフトケースのなかにあるしわしわの煙草がすき。担当連載は「鳥居服装学院」「煙たい物語」「ネオホームレス-自由と稼ぎの流儀-」
株式会社STSデジタル所属。
HP:https://sts-d.com//

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