Record7 MUCC ミヤ

ジョー横溝が、親交のあるミュージシャンを迎え“レコードと煙草”について語る連載『スモーキング・ミュージック』。
連載7回目のゲストはMUCCのミヤさん。
今年25周年のMUCCのほぼすべてのプロデュースを担当するMUCCの音楽ブレインのミヤさん。
そのミヤさんの<レコード>というキーワードでジョーが切り込むディープなインタビュー!

■著者プロフィール


ジョー横溝 -Joe Yokomizo-
ライター/ラジオDJ/MC。1968年生まれ。東京都出身。
WEBメディア『君ニ問フ』編集長や音楽&トーク番組『ジョー横溝チャンネル』にて音楽に関するディープなネタを発信。

■ゲストプロフィール

ゲスト:MUCC ミヤ
ミヤ -Miya-
1979年生まれ。茨城県出身。
ロックバンド「MUCC」のギター兼音楽プロデュースを行う傍ら、スーパーグループ「Petit Brabancon」には欠かせないギタリスト・作曲家。エンジニアとして他楽曲のミックス・マスタリングを担当し、別名義でDJ活動も精力的に行う。

▼こちらの記事はミヤ氏厳選の「無人島に持っていきたい」プレイリストとともにお楽しみください
※記事の最後にミヤ氏の解説もあります

――番組とかでご一緒することは何度かあったんですが、実はこうして向き合ってちゃんとインタビューするのは初なんですよね。音楽ルーツも含めて無茶苦茶気になっていてずっとディープな音楽トークをしたかったんです。で、このレコード対談企画のことを投げたら「レコードしか聴かないんです」って返事が来て、やっぱり!というのと流石だなぁと。
ミヤ「子供の頃から家がレコードだらけだったんです。全部クラシックのレコード。母が高校の音楽教員なんですよ。俺が幼稚園や小学校の頃は83年、84年とかでまだCDが出る前。ステレオとレコードは当たり前に家にあって、よく親が聴いていたんですけど、まったく興味がなかった。スピーカーのコーンの部分をポンっと押してへこまして怒られた記憶しかなくて。ただ、いい音だなとは思ってたかも。不快だとは思ってなくて。でも、思い起こすとポップスとか、当時で言うニューミュージック的なものを、俺の前で聴いてなかったのか、あえて聴いてなかったのかわからないんですけど、あんまりドラムの音が鳴ってるっていう記憶がなくて。当たり前にレコードがあった中で、井上陽水さんの『氷の世界』を発見して聴いたのが、自分でかけてた聴いた初めてのレコードの音で、この音楽はすごいんだって思いましたね。たぶん小学4年とか5年ぐらい。X JAPANに目覚める前なんで」

――小4とかで『氷の世界』を聴いてたんですか!小学校中学年代が最初に聴く音楽ってアイドルか、当時であればアニメ主題歌とかなのに。
ミヤ「当時Winkとかが流行ってましたね。うちらの世代は90年代なので、もう大事MANブラザーズバンド。小学校の時のシングルヒットといえばそれと『浪漫飛行』。そこから時代は安室ちゃん(安室奈美恵)、TKになっていったんで。その時代になる前に『氷の世界』を体験していて。ただ音楽とはなんだ?ポップスとはなんだ?とかっていうのをあんまりわかってなかったですけどね。ゲーム音楽が大好きだったんです。習ってたピアノも、教則本のバッハとか面白くないなと思いながら習ってた。ドラゴンクエストの曲はめっちゃ弾ける。でもバッハの曲は普通にしか弾けないし、譜面がないと弾けない。ドラクエは全部暗譜してる。そういう感じでした。ドラクエのゲーム音楽ってクラシックベースで作られてて、それが生オーケストラでコンサートのCDになったものが当時はけっこう売ってて。それが好きでしたね。」

――なるほど。ちなみにレコードは現在何枚ぐらい持ってますか?
ミヤ「DJやるようになってテクノとかそっちがすげー増えちゃって、3段のカラーラック4つ分ぐらいですかね。でもだいぶ処分はしました。あげちゃったり、捨てちゃったりとか。今日持ってきている系はCD世代なんで、CDで聴いてたもののレコードが出てたじゃんって。でも、もう昔のものだから売ってないので、中古屋に探しにいった感じですね。だから音楽との本当の出会いに関してはレコードですけど、そっからレコードを聴いていた子供ではない」

――リアルタイムではどうしてもCDになりますもんね。
ミヤ「あと単純に針を落としてブチブチいうのが当時面倒くさくて。『氷の世界』のCDも家にあったんですよ。で、聴いた時にすごく感じたのは、音が全然違う。あと入ってるはずの俺の好きな曲が一曲CDに入ってなくて。歌詞でカットされてる。『自己嫌悪』という曲が、歌詞に<めくら>という言葉が出てくるのが理由でCDには入ってなくて。それとか、子供ながらになんでなんだろう?って思って。親に聞いても、いろいろあるんじゃない?って言われて(笑)。それをきっかけに、歌詞に興味を持ったりしましたね」

――「自己嫌悪」がCDに入らなかったのはほぼ言葉狩りと言っていいと思います。MUCCにも表現自由に挑戦したような歌詞ってあるんですか?
ミヤ「ありますね。「自己嫌悪」とおなじく<めくら>って歌ってる曲があって、それはラジオではかからないでしょうね。でも別にそれはかかんなくていいやと思って書いたんじゃなくて、自分がそうだと思っての表現なんで。自分がすごい目が見えてない。それだったら別にいいかなっていうのと、見えてないことに対して、自分がっていう表現なんで。それを使うことによってしか表現できないんだったら別にそれまでなんじゃない?って。その目的によりますよね。いろんな人に聴いてもらいたいって思ってるんだったら、聴いてもらえない要素を入れるべきじゃないんですよ。仕事として。だから、そんなにないかもしれません。インディーズの頃の音源ではちょこちょこありますけど」

――ちなみにその曲は配信にも乗ってないんですか?
ミヤ「配信がなかった時代のもので、2000年ぐらいのインディーズのアルバムの中の曲で、『盲目であるが故の疎外感』っていう曲なんです。歌詞の中では<めくら>って歌ってます」

――買ってみます。
ミヤ「ファーストアルバムなんでね。ちょっと若気がすごいですよ(笑)」

――歌詞の面でも陽水さんの『氷の世界』があったから興味を持ったということなんですが音楽性的にはどうなんですか?
ミヤ「『氷の世界』のアレンジとか本当いい意味で頭おかしいというか。ごちゃまぜ、ミクスチャーだし、ほぼパクリじゃねーかみたいなのもあるし。大人になってからよくよく解析すると、ブラックミュージックからの影響、海外レコーディングとか、コーラスの厚みとか、そういうのは大人になってからその辺のよさがわかったなって感じです。当時はそこまで追いきれてないですよね。リアルタイムの陽水さんは、俺は『少年時代』なんで。だから、ギャップがあるんですよね。初めて聴いた陽水さんは『氷の世界』で、その一年後か二年後にテレビから流れてきた陽水さんは、もう見た目も変わってて。その当時のアルバムも親が買ってて、めちゃくちゃ90’sのトラックだったんですよ。やっぱりその時代その時代の音をすごく取り入れるのが早い人なので。それも今聴くと、あ、ここはそういう音かっていうのが今はわかるけど、当時は宇宙っぽいなとかって思ってましたね。中には『少年時代』みたいな曲もあって、それはめちゃくちゃいいなって思ってました」

――それにしても『氷の世界』がミヤさんにとってかなり重要なアルバムなんですね。
ミヤ「ですね。なので、『氷の世界』は無人島に持っていきたい1枚です。あと、煙草のジャケットも探したんですけど、家になくて。『氷の世界』のジャケって煙草くわえてなかったっけ?っておもったんすけど、くわえてなかったんですよ。ハーモニカでしたよね」

――ですね。ちなみにミヤさん煙草は?
ミヤ「2010年ぐらいまでは、1日2箱ぐらい吸ってました。でもすっぱりとやめました。ただ、タバコ吸ってる人がいるところには行きますけど。喫煙所とか。全然嫌じゃない。タバコの匂いも嫌いじゃないし。やっぱタバコってファッションとかと一緒で、人間に付随してくるもの。毒なんだけど、欠かせないものってあるじゃないですか。例えば、ファーストフードとか。まぁ娯楽だろうな。そういうところに付随してくる文化として、最近すごく煙たがられてますけど。俺は好きなものです。自分がタバコをやめると思ってなかった。めちゃくちゃヘビースモーカーだったんで」

――1日2箱だったらもはやチェーンスモーカーですよね。
ミヤ「チェーンスモーカー。自分が行くすべてのところにタバコが置いてありました。スタジオのギター弾くところ、聴くところと、あとロビーにも置いてあった。それが当時マネージャーの仕事だった。あとライターを俺がポケットに入れておいたんですが、そのライターが喫煙するところに10個ぐらい溜まっちゃって。それを集めて、元の場所に戻すっていう仕事は、今のマネージャーにはないけど当時はあったんです(笑)」

――で、ぼくの方でゲストに合わせて毎回煙草のジャケットを持ってきているんですが、今回は沢田研二さんの『今度は、華麗な宴にどうぞ』です。

ミヤ「何年ぐらいの作品ですか?」

――1979年です。「TOKIO」の大ヒットの後ですね。ジャケのデザインを早川タケジさんが担当してるのも注目ですし、アルバムのラス曲が「スピリット」という退屈なバラード曲が9分24秒という長さで収録されていて70年代の狂気みたいのも含んでいて好きなんです。MUCCの音楽には昭和歌謡の影響も感じるんですが、70年代音楽の持つ狂気みたいのを感じるんで、MUCCオマージュも込めてこのアルバムを持ってきました。
ミヤ「70年代は、歌謡曲のような古いものを掘っていったかどうかで言うと、掘っていかなかったかもなぁ。でも、南こうせつさんとか浜田省吾さんとうちらの親世代の人がみんな好きな人が俺は正直苦手で。陽水さんのこの感じが好きだったんで、歌詞も含めて、日常的じゃないと思ってて。そこから90年代はもっと幻想的になっていく。そのころにフォークに出会ってそれでやっぱりフォークがいいなって思ったんですよ。その頃は、フォークってものを覚えて、やっぱフォークがいいなってなった。こうせつさんは好きだけど、ちょっと綺麗すぎるんですよ。ただ泉谷さん(泉谷しげる)は好きだった。あとは、浅川マキの有名な曲じゃない『赤い橋』っていうすっごく暗い曲が好きでしたね。正確には暗いじゃなくて、怖い。そこがたぶん初期のMUCCの世界観につながってて。若かったっていうのもあって、綺麗すぎるものを拒否していた感じがあります」

――今年の11月に公開された直木賞作家の松浦寿輝さん原作の綾野剛さん主役の映画『花腐し』の世界に通じるものがありますよね。この映画では雨で腐ってゆく花の美しさを描いています。それは日本的な美ですよね。西洋は石の文化なので建物も腐ることがないものですが、日本の家屋は木と紙で作る障子と木の家なのでやがて、風雨にさらされ朽ちていく。そしてそれが美しいし、腐ったところから何かが生まれる、再生していくっていうのが日本的な美。MUCCの世界観も、もちろん洋楽の影響もあるけど、今の話を伺っていると、詩の世界とか音像(左右の耳で音を聴いたとき、音源の位置・大きさ・形などを感覚的にとらえた音のこと)とかに、そういうものが多分にあると思うんです。
ミヤ「どういうお皿にするかっていうところですよね。お皿はいろんな国の、いろんなお皿を使いたいんですよ。でも乗せる音楽は、結局フォークがしっくりくる。乗せるお皿はね、やっぱ気分によっても変えたいし、季節によっても変えたい。あと、寒い時はこんなお皿、暑いときはこんなお皿とか。ガラスなのか陶器なのかとか。あと、あえて金継ぎしてある親が使ってた古いものに乗せたいなとか。いろいろあるんですよ。そこに制限はない。陽水さんの『氷の世界』は音がめちゃくちゃ黒いんですよ。ただ当時それを日本人の一流ミュージシャンがやってるからいいんだと思うんです。乗せるものに関して制限を設けたくないっていう感じのミュージシャンに憧れてきた。だから、あんまりお皿にオリジナリティを求めない。皿に乗った瞬間にオリジナルになればいいかなっていう感覚ですね」

――確かに、陽水さんのスタイルは根本的にそうだもんなぁ…。
ミヤ「あとBUCK-TICK。だいたい俺、好きなものとか、目標にしているアーティストって、アルバムごとに変わるんですよ。そう考えてみると、BUCK-TICKは毎回コロコロ変わる。でも、もっと先に知ってたのは陽水さんだなって、今思ったっすね。『氷の世界』の前のアルバムは、めちゃくちゃフォークでした。もうギターと歌だけの曲が多くて。でもこのアルバムから変化していって、そっからどんどんどんどん変わっていくっていう。その感じが俺も好きだったんでしょうね」

――ちなみにMUCCもアルバム毎に皿が変わるのは、歌詞に引っ張られてですか?
ミヤ「いや、好きなもの。やっぱりその時好きなものっていう感じっすね、完全に。当時、音楽を作るって、どういう表現をしていかなくちゃっていうのがまだ決まってなかった時は、逆に歌詞があんまり定まってなかった。その中で見つけた表現が、例えば江戸川乱歩だったんです。ああいう世界観ってすごく日本的だし、俺から見てまったくアメリカ的でもない。どっちかっていうとフランス的。それがやっぱり良かったんですよね。それを乗っけていった中で、それはまずいと思えたんです。雰囲気で作る良さももちろんあるんだけど、実体験を乗せていかないと説得力がないし、なんせ自分がステージで入り込めないなっていうのがあって、実体験を乗せていくようになったとこから、洋楽にはまっていくんですよね。そこで出てくるのがKornとかで。で、フォークとラウドなニューメタルが交わっちゃった時期があったんです。一生交わると思ってなかったところが交わって、そっか、いいんだって思えた。フォークって自分の実体験で、まぁ辛さしかないような演奏をしてたものを、演奏することによって消化していくってことはやっていいんだっていうことに気づいてから、どっぷり洋楽にはまっていった。だから洋楽っぽいサウンドを出すようになってからのほうが、よりフォークなんすよね。ただ、実体験というのは確実になくなっていくんで。なくなって、全部消費したなって思ったとこからが、日記になっていくっていう感じ。それは今も。日記にしておけばネタはなくならない」

――なるほど。ちなみに、25周年記念の今年を締めくくるニューアルバム『Timeless』は、アプローチとしては今までと違う手法が何かあったんですか?
ミヤ「25周年でアルバム再現ツアーを、アルバム8枚分やったんですよ。全部で4回ツアーやったんです。当時のアルバムのセルフカバーをもちろんやろうと思ってたんですけど、それだと、ありがち。何が面白いかなって考えた時に、当時の自分たちが作ったらこんな曲だよねっていうイメージで今のMUCCが作ったら、どういう曲になるかってことで、新曲を作ってシングルとしてツアーごとに出したんです。つまり、当時のMUCCをイメージして、今のMUCCが作るから、新しさもあるし、当時できなかったことも表現できるっていう面白さがあって。当時のアルバムのツアーのセットリストにも親和性がある。っていうのをやってきた時に、逆に作るのがめっちゃ簡単だったんですよ。普通、シングル、アルバムって、このアルバムの世界観や伝えたいことはこうだよねっていうのを一から作っていくんですけど、自分の性格上、何かをちょっとアレンジするのが得意で。あるものをちょっと良くするとか、ちょっと変えてみるとかっていうのが、結構昔から好きだしすごく容易で楽しかったんです。会場限定のシングルと、ツアーで化けた今のMUCCがするセルフカバープラス新曲1曲の全部で12曲。まぁ、ベストアルバム的なものです。ただ、ツアーしてるうちはそれは出てなかったんで、周年の最後、ツアーファイナルの国際フォーラムAの日、12月28日にアルバム『Timeless』はリリースはします」

――過去の自分たちの目線で新曲を書くという手法は面白いですね。
ミヤ「ありがとうございます。過去に立ち戻るところもありながら、今の自分たちも入れる…だから原点回帰とは違うと思う。だから楽しかったんでしょうね。原点回帰なんて絶対できないですよ。だから原点回帰とは絶対言いたくない。再現、再構築みたいなことを言ってましたけど」

――その再構築のファンの反応は?
ミヤ「当時ライブに来てた人は、当時は全然好きじゃなかったけど、今この年になってあらためて聴くと、めちゃくちゃいいと思いましたとか、結構言われる。だから、聴く環境も心も変わってるんですよ。スタッフの中でもありますからね。当時はよくわからなかったけど、めちゃくちゃいい曲だと今回思いましたって照明が言ってて。あんたが言うなよって(笑)。俺も若かったんですよ、みたいなこと言ってて。そうっすよねって(笑)。自分でもありますもん。当時のこの曲、当時よりめちゃくちゃいい曲に感じるとか」

――そういう意味では20代の自分を褒めてあげたいところじゃないですか?
ミヤ「そういうのもありますけど、でもちょっと早すぎたんじゃないの?って思うところも結構あったりします。でも、早くやるってことに関してプライドを持ってるので。日本ではあと2年後かな、とか考えながらちょこちょこエッセンスを入れとくっていうのがやっぱりカッコいいと思うし。日本は、最新のものが現場に下りてくるのが遅いんで。それはリバイバルもちょっと遅いですよね」

――さて、『Timeless』のリリース日でもある12月28日に国際フォーラムAの25周年ファイナルはどんな感じになりそうですか?
ミヤ「25年続けてこられたって結構なことなので、この集大成をわかりやすく見せたいなっていうのと、コロナが始まった頃に作った曲があって。それは合唱曲なので、当時は歌えなかったんですよね。お客さんを集めて録音したかったけど歌えなかったんで、千人分ぐらいの音声ファイルを集めて、ミックスしてCDに入れたんですよ。だから、リモートでお客さんの合唱を入れたっていう。全員必ず入れるって約束したので、一週間ぐらいかけて全員分の音声を入れて。MP3のものもあれば、WAGのものもあれば、もうごっちゃごちゃで(笑)、ノイズだらけでした。赤ちゃんの声が入っちゃってる人もいたり。逆に赤ちゃんの声を目立たせたんですけどね。それがあって、コロナが明けたらみんなでライブ会場で歌いたいよね、その時は完成だよね、みたいなことがあったんですよ。それをやる日」

――それは素敵だな。約束の日ですね。
ミヤ「三年かかっちゃいましたね。それに尽きるというか。あとはやっぱりお祝いなので、たまにはシングル曲ばっかりのライブがあってもいいかなって。MUCCの有名な曲とかシングル曲って、世間一般的に有名な曲かどうかって言ったら、そうじゃないんですけど。MUCCのファンの中でヒットソング、リード曲って、それぞれ人によって違いがすごくあるので、なかなか難しいんですけど。そこを上手いことまとめられるライブになったらいいかなって思っています。会場も初めての会場で、東京国際フォーラム、意外とやったことがなくて。武道館とか普段やってるようなデカいところより、ちょっとカチッとしてるんですよ。そういう感じも、普段あんまりないし、いいかなって思ってます。あとオーケストラ入る曲とかもあるので、ちょっとだけ年末の東京駅近辺に、例えば人によってはカチッとした装いで行くとかもいいと思います。普段はTシャツ、スニーカー姿で、首にタオル巻いて参戦してるけど、今日はちょっとクラシックのコンサートに行くつもりで行ってみようかなっていうのも面白いじゃないですか。そういうのも含めて楽しめたらいいかなって。時期的にみんな忙しい時期なので、来られない人もいっぱいいるかもしれないですけど。なるべく来てもらいたいな」

――お祭りですからね。
ミヤ「そうですね。来年しばらくライブやらないので、なるべく来てほしいですね」

【ミヤの無人島に持って行きたいレコード5枚】

●井上陽水『氷の世界』:本文参照
●X『BLUE BLOOD』:兄貴のダビングしてあったテープを借りて、初めて聴いたアルバム。このアルバムがリアルタイムではなかったんですよ。うちらのリアルタイムはもうX JAPANになってから。小学5年か6年ぐらいに兄貴が聴いてて。クラシックとロックが一緒になってて面白いなっていうのと、ボーカルじゃなくてドラムがこんなに映るバンドあるか?って思いました。今まであんなにドラムが目立ってるバンドを見たことがなかったので、それがまず面白くて。自分が気になる要素がすごくたくさん詰まっていたんですよ。それで好きになりました。
●BOOWY『BEAT EMOTION』:うちらの世代って、コピバンで BOOWYをやってる人たちがまったくいなかった。 X、LUNA SEA、GLAY、黒夢…のコピバンばっかりで。ただうちらの地元は田舎なんで(笑)、BOOWYのコピーバンドが隣の中学校に奇跡的にいたんですよ。そいつんちでやってて、それを見に行った時に、布袋さんモデルのギターで、自分が知らないカッティングリズムギターを弾いてる隣の中学校のヤツが、とにかくカッコよかったんです。Xとかって、結構支える系のメタルの感じで、ギターソロになると華やかなんですけど、伴奏は結構職人な感じなんですよ。 BOOWYを聴いたときにまた新しい音楽があるなって思ってはまっていって。Xよりこっちのほうがどっぷりですね。出てるアルバムの数オリジナルが6枚、7枚でコピーするのにちょうどいい枚数だったりして。自分のルーツは、こっちのほうが深いかもしれない。リズムギター、テレキャスターっていう意味では。なので、影響を受けたギタリストというと、ギターを始めた頃って考えると、布袋さんは確実にその一人かも。Xはどっちかって言うとドラムに影響を受けてますね
●Red Hot Chili Peppers 『Blood Sugar Sex Magik』:レッチリと言えば自分はこれなんですよ。『One Hot Minute』でもないし、その前の『Mother’s Milk』でもないし。このアルバムの何が一番好きかって、ドラムのサウンドなんですよ。当時このアルバムは、アナログで最初に聴いたんですよ。しかも友達の部屋で。92年ぐらいかな。これ古城でドラムを録ってるんですよね。プロデューサーがリック・ルービンなんですけど、その音がねー、まぁラウドで。レッチリって音数少ないじゃないですか。こんなに音数少ないバンドなのに、こんなにラウドかと。しかもレコードで、ぼろいスピーカーで聴いても相当ラウドなの。逆にCD盤のほうがちょっと薄くなってて。これは確実にアナログのほうが音がいい。そういう空気感も含めて好きなアルバム。あと、ファンクとは何ぞや?っていうものがわかりやすいんですよね。ファンクっていろいろあるんで、そんなに簡単ではないし、俺らはファンクだけをやってるバンドじゃないけど、やっぱりわかりやすさがあったっていう意味でもこのアルバムは秀逸です。あと、バンドを好きになるきっかけでもあったし。これは無人島に持っていきたい」
●Radiohead『OK Computer』:初めてこのアルバムを聴いたのはたぶん、2003年、2004年とかかな。このアルバムは97年リリースで、MUCC結成の年なんですよ。ただ、当時レディオヘッドをまったく知らなくて。だから『OKコンピューター』はちょっと後追いで、ラルクのkenさんちのスタジオで聴かせてもらったんです。kenさん的に別に『OKコンピューター』じゃなくても良かったと思うんですけど、アレンジの良さを教えてくれて。音の配置の仕方。計算された音楽なんだよって。ここにこれがあってねみたいなことを、これを教材にしてアレンジのことを教えてくれたことがあって。その時に聴いたのがこれだったんです。まぁ、すごいなって。UKロックが好きで聴いたんじゃなくて、音楽を始めて、自分がバンドのリーダーでアレンジも担っていて、セルフプロデュースでやっていくっていう中で、こういうアイディアも面白いよっていう一つのヒントになったアルバムです。で、音響的に自分が好きな部分のルーツになってる。あとは打ち込みとか、シンセのサウンドを使う音楽を自分がやるようになり始めるきっかけ。そういう意味では、無人島に持っていきたい。で、アルバムのほうが、しかもこの2017年に出たアナログが、いっちばん音がいい」

【特別追加】

●MUCC『新世界』:MUCCのアルバムでレコーディングからテープで録って、アナログカッティングしたのはこれが初めてです。基本的にデジタルレコーディングされたものをアナログに置き換えるのが、今はほぼなんですけど、例えば陽水さんの『氷の世界』とか、当時のものはアナログレコーディングだから、当然盤もアナログでっていう。デジタル化されてないから。その過程を一回知りたかったんですよね。どういうものなのか、どういう音なのか、どういう空気感なのか。それを一回やってみたかった。MUCCはアナログはもう4、5枚出してるんですけど、このアナログは、オールアナログなので自分の作品として無人島に持っていきたいものですね。エンジニアリングも全部自分でやってるので。ちなみにパンチインも出来ないからめっちゃ緊張感が生まれて、まず練習し始めるんですよ。でもそのほうが良くない?って思っちゃって。緊張感があって、練習の時間をちょっと取って、一発で決めるほうが、緊張感もあるし逆に早くない?って思って。やっぱ人間は制約があるところに置かれた時にパワーを発揮できる。デジタルレコーディングって、マンパワーを発揮できるかどうかの真逆に今いると思って。だから、いいとこどりっすよね。すーごいアナログなものを、今めちゃくちゃいいデジタルの音で取り込むと、もうアナログ超えてくるので。とにかくそれがやりたかった。今やってる人はすごい減ってるし、テープも高いし、いろいろ探したし。結局のちにいいものになるんだったら、そういう労力、時間も、いくらでも使えばいいじゃんって思うタイプです。しかも基本的に、デビューの頃からバンドの手法として一発録りなんですよ。一発録りで必ずやるというものがあったんで、そこには割と慣れてはいる。ただパンチインできないっていうのは、やろうと思えばできるけど、前のいいのも消えるからっていう、そのプレッシャーね(笑)」

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