平面・立体をはじめ、衣装や空間なんでも切り絵で作ってしまうカジタさんに、ライターを日常的に使用する“ある場所”をテーマにライターケースを制作していただきました。
緻密オブ緻密なコラージュ切り絵に、合掌せずにはいられない!
極彩色のkawaiiケースができるまで
ライター「クレーターネオ」ぴったりサイズのABS製ライターケースが、絢爛豪華なケースになるまでの工程とは……?
ミリ単位の職人技、まさに神の手
一心不乱に極細パーツを切り分けていくカジタさん。
パーツによって「デジタルデータを印刷」「手描き」「手描きをデータに変換+修正」と作り方を変えているらしく、制作コストの最適化を感じられます。カッコイイ♡
圧倒的な手数に唖然とするなか、仏像の背中に飾られる「光背(こうはい)」(※右上)や女性の体、後光、猫、花と、とんでもなく細かなパーツがずらり。
一番面積の大きな和柄パーツは「出雲柄」といって、かつては出雲で日常的に使われていた染め物の柄。カジタさんはよく作品の一部として使うそう。
ゴールドのケースを覆い尽くす和
ゴールドのアクリル絵の具で華やかさを増したケースに出雲柄のパーツを一周させ、レジンでコーティング。
その上から次々とパーツが重ねられ、段々とサイケな雰囲気に。
ここで、特に小さい招き猫の目をカット。2枚の紙を使い、水色と黄色で猫の目を見事に表現。これを神業と呼ばずなんと呼ぶ!
招き猫はカジタさんが頻繁に使うモチーフ。実際の猫とは違う魅力があり、ことわざ「猫に小判」を体現しているのにご利益があるのも不思議で好きなのだとか。
さらにカジタさん宅のお猫様もKawaiiパーツに♡
好きなあまり、イラストでは猫の魅力を伝えきれないと思い、写真にしたとか(愛が深い)。
すべてのパーツを貼り終えて、丁寧にレジンでコーティングしたら…
厳かでシュールなパーツとギラギラ配色で気分もハイ!和×サイケコラージュ切り絵ケースの完成!!(制作時間は約30〜35時間という大作!)
人権問題を表現し、生き続ける作品を作りたい
──切り絵の作品を作り始めたきっかけは?
2008年に骨董屋さんで、年に一度の催事がありました。その催事を手伝う予定だった母が風邪を引いてしまい、急遽、母の代わりに私がお手伝いに行きました。
そこで、「柿渋染(かきしぶぞめ)」の紙で作られた、出雲柄の紙と出会ったんです。(※明治時代、大正時代頃の型紙)
お店の人に「昔は着物や手拭いに使われていた柄だよ」と聞いてよく見ると、どれも虫食いもあってボロボロの茶色い紙なのに、光っているような宝の山に見えて。
もともと知っていた「和柄」の概念が覆り、その芸術センスに驚嘆しました。
大量にあった型紙のなかから2、3枚買ってデータに取り込み、感覚で修正して綺麗な紙に印刷し直しました。それから台紙に貼ってポストカードにするなど、趣味として切り絵を作り始めたのがきっかけです。
──オリジナルの作品は、どのようにして作り始めたのでしょうか?
柄として使えそうな型紙を30枚ほど買い取り、2010年頃までは型紙を使ってひたすら切り絵を作っていました。しかしある時、「オリジナルを作りたい。作れるかも」と思って。
半立体になる蝶々の切り絵を作り、厚みのある額に入れたのが最初のオリジナル作品です。
──どんな作品づくりを得意としていますか?
クジラのなかに惑星や蝶々を取り入れるなど、パーツやモチーフを組み合わせて作るのが得意です。
以前は綺麗で幻想的な作品を作っていましたが、去年(2022年)の8月頃から作風が変わり、サイケデリックになりました。
以前の作品も好きですが、人から望まれているものを意識して作っていました。しかし「明日死ぬかもしれない」「本当に作りたい作品を作らずに死んだら後悔する」と考えて、心から作りたいと思える、自分が「面白い」と感じる作品を作り始めました。
今の作風になってからは「作品作りってこんなに楽しかったの!?」と思うほどに楽しく、手が止まらなくなります。これほどまでに楽しいのは初めてです。
──ファンの方は、どのような方が多いですか?
前の作風だと男女問わず、10代〜70代の方まで幅広くいらっしゃいました。Instagramを見てくださっているのは、30代や40代の女性が多いです。
今後の展示で初めて新しい作風の作品を出すため、今の作風が好きな方がどんな方なのかはまだわかりません。
──2022年からは「女性モチーフ」の作品を作っていらっしゃいますが、それはなぜでしょうか?
女性や子どもの人権問題を表現したくて、「女性の体」をモチーフにし始めました。このモチーフには実は「墓碑(ぼひ)」という意味があり、「『私たちと同じように生活していた人が、さらわれて捨てられる』といった世界中の事件を知らない人に気にかけてほしい」という社会的メッセージと、個人的な面での祈りを込めています。
人権問題と、はたから見れば「ふざけている」と取られかねないモチーフを絡めているため、なかには批判する人もいるかもしれません。
しかし作品制作は自分が面白く思えないと続けられませんし、自分が感じた“面白さ”をインパクトとして周りに伝えることすらできません。
そのため「快楽や権利のために人の命を物のように扱う許されざる行為」への認知が、自分の作品をきっかけに広がればと強く思います。
──物作りをするうえで、大切にしていることはありますか?
自分の作品が社会や世界にとってどういった役目があるのか、作品をどう活かすか、人権問題にどうアプローチしていくかを意識しています。
それと同時に作品が自分の手を離れたとき、自分が関わりのないところで活躍できる力。つまり私を知ってから作品を知る以外に「作品だけで独り歩きしていける力」があってほしいです。
私が死んだあとも、作品自体がなくなっても、何かしらの意志が残り繋がりを持てば作品も生き続けます。作品が消えたあとに存在するものをどれだけ残せるか、人生をかけて勝負しています。
作品イメージと、制作してみた感想
──完成したライターケースのイメージを教えてください!
ライターを日常的に使う瞬間が「お仏壇」でお線香をあげる時だったので、うちの仏壇を眺めてみました。まじまじと見て身近なモチーフの面白さに気づき、お仏壇とサイケデリックを合わせました。
いい意味で「面白い」「ダサい」「笑える」と感じて、ニヤッとするようなケースを作れたと思います。
──作ってみた感想は?
小さいケースにモチーフを詰め込むのは初めての挑戦で、面白くてひたすら楽しかったです。
裏表を統一した世界観を作ったのも初めてでした。とはいえ表と裏を別パーツで構成したかったためつながってはおらず、2つ同時に作品を作ったような感覚です。
普段の作品は紙をむき出しにするわけにはいかないので額装します。しかし今回レジンを使ったことで、他の作品にもレジンを使えるのでは、とヒントをいただけてありがたかったです。
──こだわったポイントも教えていただけますか?
色が多いので相殺しないように、全部のパーツが見やすいように工夫しました。
火がついたロウソクを持っている手のパーツは、「あの世」や「ひとつの火が魂をそっと灯す」イメージで制作しました。生きている人が死んだ人のことを想い、死んだ人もまた生きている人を想ってお互いに寄り添っている。そんな「救い」があったらいいですし、仏教らしい考えかなとも思いました。
奇抜で面白いライターケースを抽選で1名さまにプレゼント!
奇抜で笑えてkawaiiライターケースを、抽選で1名さまにプレゼント!
【カジタさんからの一言コメント】
自分と近い感覚で、ケースを見た時に笑ってくださるような方に使っていただきたいです。
「着心地が悪い服」「B級映画」「その個体にしかない突起があり、独特の手触りのもの」など、癖があるものが好きです。同じように癖の強いものが好きな方だと合うと思います。
※白くなったり割れたりする可能性があるため、ケースをアルコールで拭かないでください。
応募方法は、ケムールのTwitterアカウント(@kemur_tw)をフォローしたあと、該当のツイートをRTするだけ!
期間は1週間なので、ご応募はお早めに!
カジタさんのプロフィール
カジタミキ Miki Kajita
切り絵作家
カジタさんは今の作風で、空間展示をしてみたいそうです。ごちゃごちゃした商品パッケージの制作にも興味があるのだとか。そのようなお仕事をご依頼したい方は、ぜひカジタさんに連絡を♪
■カジタさん活動場所
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公式サイト
SUZURI(オリジナルアイテム通販)
今年(2023年)2月に発売された、カジタさんの3冊目の書籍はこちら!↓
「心を癒す、静める、整える 立体マンダラ ヒーリング切り絵」
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