第25回 アクセサリー作家・QUE(キュウ)さんの遊び心満載!歯車重なるスチームパンク

歯車やネジなどのパーツを使い、スチームパンクのアクセサリーを制作しているQUE(キュウ)さんに、機械仕掛け風のライターケースを作っていただきました。

アナログとデジタルが共存する、スチームパンクの魅力をとくとご覧あれ!

アクセサリー作家・QUE(キュウ)さん

スチームパンクのkawaiiケースができるまで

ライター「クレーターネオ」ぴったりサイズのABS製ライターケースが、アンティークのようにレトロなケースになるまでの工程とは……?

ライターケースのデコレーション・ビフォアフター

金属製!?まるで何十年もの時を経たケース

ケースにネジを通すための穴を開ける

はじめにネジを通す穴づくり。リューターを使って印をつけ、ドリルで穴を開けます。

するとQUEさん、ケースの内側から穴の周囲に溝を彫っていきます!

これは「ザグリ」と呼ばれる、ネジを溝側から通した際にネジ頭部が出っ張るのを防ぐ加工法。

ザグリを終え、次に使用する塗料の密着性を高めるために下塗り塗料「プライマー」を塗ったら塗装へと移ります。

エイジングをケースに施す様子

「ブラウンラスト」という塗料を2種類使い、真っ白なケースに「エイジング」!
(エイジングとは、新しいものをわざと古ぼけたように塗装する技術のこと)

スポンジでポンポンと軽く叩くようにして、まずはライトブラウン、次にダークブラウンを塗り重ねます。色だけでなく、ザラザラした質感も錆っぽい!

エイジングをケースに施す様子2

ダークブラウンで暗い錆び感を演出して完成!と思いきや、さらなる錆っぽさを演出!これぞプロ!

塗料の保護にトップコートをコーティングしたら、いよいよ歯車の登場!

今にも動き出しそうな歯車たち

スチームパンクパーツにネジを通す穴を開けていく様子

手慣れた様子でパーツに穴を開けていくQUEさん。

歯車だけでなく、アンティークな装いの草花模様、時計の針、レンズなどのパーツもスチームパンクっぽさが出ていてKawaii♡

スチームパンクパーツをケースにつけていく様子

パーツが加工できたらケースの内側からネジを通します。ネジは直径1.7mm〜2mmという極小サイズ!

続いてネジにパーツを載せて、歯車が回るか、時計の針が想定した位置で固定できるか、高さに問題ないかなどを確認しながらパーツを留めていきます!

パーツの位置が決まったらナットでしっかり固定。

ケースに取り付けたネジやナットを削っていく様子

仕上げに余分なネジの先を糸鋸(いとのこ)でカット!切ったネジの先端が丸くなるように丁寧に削っていきます。

最後にナットとネジを磨いたら、蒸気機関で回り出してもおかしくない時計の針や歯車が魅力的なスチームパンクケースの完成!(制作時間は16時間ほど!)

レトロフューチャーな世界観を作品で表現したい

──物作りをするうえで、大切にしていることはありますか?

ケータイの話を例として挙げますと、1990年〜2010年頃には色鮮やかで個性的なデザインのガラケーが続々と登場しました。

機能性を重視したスマートフォンが普及してからは失われていきましたが、個人的にはガラケーのように個性的なデザインやフォルムに惹かれます。スチームパンクも、このガラケーに近いものがあると思っています。

スチームパンクは、アナログのものをデジタルで動かすなど、アナログとデジタルが共存しています。

スチームパンクのレトロフューチャー(過去の人々が思い描いていた未来像)な世界観は、まるでノスタルジーと、憧れや空想の未来がかけ合わさったようです。そのエネルギッシュでワクワクする感じを、作品で表現したいと考えています。

──スチームパンクの作品を作り始めたきっかけは?

2011年に『スチームパンク東方研究所』という本を見つけてスチームパンクを知ったのがきっかけで、2012年から作り始めました。

ちょうど彫金を始めた頃で、和や宇宙をテーマにするなど、探り探りでさまざまな作品制作に挑戦していました。

「ほかに何を作ろうかな?」と思っていたところで本に出会い、「自分が表現したいものはこれだ!」とピンときて。彫金で表現したいものと、スチームパンクの世界観がマッチしたんです。

最初は市販のパーツは使いたくなかったので、真鍮の板からパーツを切り出し、溶接して作っていました。しかし、パーツから作ると時間がかかってしまい、いつまで経っても表現したいものが作れそうにないことに気づきました。

歯車のパーツは2013年頃に見つけたため、試しに使ってみたところ、しっくりきたので作品に取り入れるようになりました。

QUEさんが初めて作ったスチームパンクのバングル
こちらが、QUEさんが初めて作ったスチームパンクのバングルだそうです。複数の歯車の部分も、ご自身で金属板を切り出して作ったとのこと。最初から難易度が高そうなものに挑戦なさっていて、さすがです!

──試行錯誤した結果、今の作風に辿り着いたのですね。QUEさんのスチームパンクは、作品にネジを使っているところも印象的です。パーツをネジで固定するようになった理由も教えてください!

ネジ留めをするようになったのは、2014年頃からです。それ以前はパーツをマルカン(パーツとパーツをつなぐ金具)でつなぎ合わせていました。

接着剤を使うことも検討しましたが、隙間から液体がはみ出てしまう可能性があったり、ただ貼っているだけになってしまったりして、イメージしているものとは違うと思いました。

ネジで留めると、複数の歯車が重なり合う部分をきれいに見せられますし、しっかりと固定できます。ネジの部分も、アナログで個性が際立つ表現のひとつです。

──ファンの方は、どのような方が多いですか?

男女比は女性が8割、男性が2割ほどで、年齢層としては高校生から20代くらいの方が多いです。

ゴシック系のアニメが好きな方、ごちゃごちゃした感じが好きな方、仕事でネジや歯車を扱っている方などもいらっしゃいます。

作品イメージと、制作してみた感想

温度によって変化するスチームパンクパーツの様子
温度によって色が変化するパーツも、QUEさんの手作り。面白い仕掛けが満載です!

──完成したライターケースのイメージを教えてください!

「スチームパンク」を表現したアート作品でありつつも、ケースを装飾する工程や技術なども見せたいと考えながら制作しました。全体的に、歯車の重なり合いをきれいに見せられるように工夫しています。

歯車は単体よりも、複数が重なり合って動き出しそうなところに魅力を感じます。そのため複数の歯車を重ねて、インパクトがあってごちゃごちゃした感じと重厚感を出しました。

──こだわったポイントはどこですか?

歯車を留める際に高さを調節して、ケース片面の歯車を回せるようにしました。今までの作品では1つの歯車が回転するだけでしたが、今回は2つの歯車が噛み合っており、1つを回すと2つとも回転します。

歯車が噛み合う部分をより目立たせるために、レンズのパーツも付けました(画像右上)。レンズ越しに見える歯車の位置と、歯車が動く仕掛けのバランスを見ながら作りました。

ネジを締めるための小さなナットも、作品に馴染むように六角形に削りました。

──作ってみた感想も教えてください!

今回のライターケースのような異素材にネジを留めるのは初めてだったため、できるか不安でした。

しかし無事に制作できたので、「プラスティックのような素材とも組み合わせられるんだ!」という発見があり、作るうえでの視野が広がったと感じています。

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【QUEさんからの一言コメント】

ケースを作る工程や技法に、「こうなっているんだ!すごいな」と驚いてくださる人に使っていただきたいです。

工程自体に刺激を受けてくださる方が、愛着を持って使ったり、鑑賞していただけたりしたら嬉しいです。

※ケースからライターを外すときは、側面を持ってライターを引っ張り出してください。

応募方法は、ケムールのTwitterアカウント(@kemur_tw)をフォローしたあと、該当のツイートをRTするだけ!

期間は1週間なので、ご応募はお早めに!

↓該当ツイートはこちら。

QUEさんのプロフィール

QUEさんの作品たち

QUE キュウ
アクセサリー作家

QUEさんが制作した、ピープショーを金属で表現した様子

QUEさんはスチームパンクとは別に、「ピープショー(覗きからくり)」と呼ばれる複数枚の絵を重ねて立体的に見せる仕組みを、金属で表現するのが好きなのだそうです。

こちらもネジを使用して作っており、ペンダントヘッドなどのアクセサリーにしているのだとか。

将来的にはピープショーのアクセサリーをもっと作りたいそうなので、作品を購入したい方など、ご興味がある方はQUEさんに連絡してみてくださいね♪

■QUEさん活動場所
Twitter:https://twitter.com/accessoriesque
Instagram:https://instagram.com/accessoriesque

■ライター紹介


多崎 ろぜTwitter

フリーランスのWebライター。美術系の大学に通っていたため、ものづくりをしている人の作業を見たり、話を聞いたりするのが好きです。学芸員資格保持。

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