第27回 スプレーアート作家・あきさんの表現する、夜来る黄昏の森

スプレーで幻想的な作品を描くあきさんに、夕焼け色が夜色へと変わる瞬間を切り取ったケースを制作していただきました。

掌の上の夜空にうっとりすること間違いなし!

スプレーアート作家・あきさん

黄昏時のkawaiiケースができるまで

今回はクールな金属製のライター「DEVIN」の外側に直接、スプレーアートを施していただきました!

星の瞬く美しいDEVINができるまでの工程をご紹介します。

DEVINのデコレーションビフォアフター

夕闇の空に現れる星々

スプレーの塗膜が定着しやすいようにDEVINをやすりがけする様子

まずは着色前の下準備。スプレーの「塗膜(とまく。塗料を塗るとできる層)」が定着しやすいように、やすりでDEVIN表面を削ります。

ふたの開閉によって塗装がはがれやすい蝶番と、ロゴが刻印された底面はスプレーがつかないようにマスキングテープでカバー。

内側のオイルユニットを外したDEVINを「画板(がばん)」の上に置いて粘着剤で固定したらスプレー開始!ちなみに今回使うスプレーの「ノズル」はすべて、細かい粒子を飛ばせるタイプに付け替えていただいたらしく…ありがとうございます!

DEVINにスプレーを吹きかける様子

全体のバランスを見つつ、画板を回転させながら青いスプレーを全面に吹きかけます。一面ずつではなく、広範囲をつなぐように塗装できるのがスプレーのいいところ。あえて青を塗り切らずに残したケース下部には、黄色とオレンジのスプレーをシュッ!

上部に黒いスプレーを重ね塗りしたら、DEVINは見る間に夕闇色のグラデーションを纏いました!

そして、ほかの色よりも慎重にノズルを押して白いスプレーを軽く吹きかけた途端、ケースというキャンバスにが輝き始めます。

その後表面が乾く前に指で色の境目をなじませたり、スプレーを吹き足したりして微調整。30分ほど乾燥させたら次の工程へ。

夜空に1羽の鳥が舞い、地上には森が広がる

スプレーが終わった表面にアクリル絵の具で白い鳥と黒い森を書き足す様子

アクリル絵の具細い筆で、鳥と森を描きます!

スプレーに関してはサクサク進めていらっしゃいましたが、ここにきて鳥をどこに飛ばすかをしばらく真剣に悩むあきさん。確かに鳥の位置によって印象がかなり変わりそうです。

そう思い耽るよそで見事な一発描きで白い鳥を夜空に羽ばたかせたら、黒い絵の具で木を描いていきます。ほのかに夕日の色を残す下部分は覆われ、そこには暗い森が出現!描き終えたらまた乾燥。

スプレー塗膜を補強するため保護用ワニスを吹きかけ、蝶番のマスキングテープを剥がす様子

スプレーは耐水性・耐候性が高くて乾燥すると落ちにくい画材だそうですが、さらに補強するために「バーニッシュ(保護用ワニス)」を全体に吹きかけて乾燥させます。最初に貼ったマスキングテープをはがしたら、心ときめく黄昏時のDEVINが完成(制作時間は約3時間!爆速)!!

アートをもっと気軽に、生活の一部として楽しんでほしい

──スプレーアートを始めたきっかけは?

YouTubeでスプレーアートを見つけて、2017年の春頃にスプレーを手に持って描いてみたのがスタートです。最初に描いたのは初心者でも挑戦しやすい惑星の絵だったと思います。

もともと絵自体は小さい頃から描いていて、スプレーアートに出会うまでにも趣味の範囲で、旅先の風景のデッサンや自作ゲームのイラスト、友達の似顔絵やウェルカムボードを描いたり、毎年描き方に工夫を凝らした年賀状をつくったりと、絵を描くことがとても身近に感じる生活をしていました。

スプレーアートに出会ってからは、より創作意欲が爆発してのめり込みました。

──スプレーアートがご自身に合っていたのですね!どんな作品づくりを得意としていらっしゃるのでしょうか?

スプレーアート作家・あきさんの作品①

スプレーで色のグラデーションを活かした、変化のある風景の絵を描くことが得意です。そこに動物を描き足してストーリーを加えることもあります。

また、明るい色から暗い色へと、色彩や明度の移り変わりがわかるようなグラデーションを作ることで奥行きを出したり、モチーフを真ん中ではなく例えば端や手前に寄せたりと、「見た人の視線を作品のさらに奥へと誘導し、惹き込まれるように」とも意識しています。視線誘導については漫画などからも着想を得ており、自分なりに模索しています。

──物作りをするうえで、大切にしていることはありますか?

アートをもっと、気軽に」を活動のコンセプトにしています。

以前、オーストラリアのメルボルンで路上パフォーマンスをしていたところ、中学生くらいの男の子が「部屋に飾るから」と自分のお小遣いで僕の絵を買ってくれました。はじめて見る外国人の、名前も知らない僕の絵をです。日本では、絵に興味のある子供であったとしても、なかなかそんなことは起こらないと思いました。そのとき、「ここではアートがこんなにも小さな頃から身近なのか」とカルチャーショックを受けました。

こちらが、あきさんがメルボルンにてスプレーアート・パフォーマンスをしているところ。

日本では、美術館に足を運ぶことはあっても、絵を買う・飾るという行為についてはあまり習慣付いていない印象です。もしかするとアートと生活は関係ないものだと思っている方が多いのかもしれません。そこで「日本でもアートを生活の一部として楽しんでいただけたら」と考え、作品はリーズナブルな価格や手に取りやすいサイズにすることを意識しています。

自分が表現したいことを形にしつつ、気軽に手に取っていただける作品でもあること。どちらとも大事にしながら作っています。

──ファンの方は、どのような方が多いですか?

黄昏時や夜空、広がりのある自然の絵が好きな方、情景や世界観に共感してくれる方などです。

年齢層は10代〜ご年配の方と幅広く、ありがたいことにリピートしてくださる方も多いです。男女比率もほぼ5:5に近いかと思います。多くの方に共感いただいています。

お部屋への飾りやすさを意識した「サムホール」と呼ばれる小さなサイズの作品も、幅広い層の方にご購入いただいています。

作品イメージと、制作してみた感想

DEVINのデコレーションが完成した様子

──完成したライターケースのイメージを教えてください!

夜が来る」です。

1日が終わり、昼から夜へと切り替わる瞬間を切り取りました。グラデーションを活かし、空の色が変わって新しい世界が始まるときの高揚感を描いています。

──こだわったポイントも教えていただけますか?

鳥の配置にこだわり、そこから見ている人が感情移入しやすい構図を考えました。

孤独な鳥が夜の訪れにワクワクドキドキしているかのような、自分1人でその瞬間を楽しむ様子を表現しています。

──作ってみた感想は?大変だったところはありますか?

覚悟して挑みましたが、DEVINは今までに作った作品のなかでもっとも小さく、チャレンジングな企画でした。

スプレーの量はノズルを押す際の指先の力加減で調節できるため、押し切らずにちょんと押す程度にして吹きかけました。

何度もスプレーを吹き直して、最終的に満足のいくグラデーションができました。

ロマンチックなライターを抽選で1名さまにプレゼント!

黄昏時のkawaiiライターを、抽選で1名さまにプレゼント!

【あきさんからの一言コメント】

どなたでも、気に入ってくださる方に使っていただけたら嬉しいです。

※金属などの硬い素材で引っ掻いたり、強く握りしめたりすると塗料がはげる可能性があります。また、暑い場所に置いておくと塗装表面の粘着性が増し、触れていたものに塗装がくっついてはがれる場合があるため、できるだけ高温の場所を避けて使用・保管してください。

応募方法は、ケムールのTwitterアカウント(@kemur_tw)をフォローしたあと、該当のツイートをRTするだけ!

期間は1週間なので、ご応募はお早めに!

↓該当ツイートはこちら。

あきさんのプロフィール

スプレーアート作家・あきさんの作品②

あき AKI
画家、スプレーアート作家

あきさんは、さまざまな展示会やイベントに積極的に参加なさっているそうです。

あきさんのほかの作品も気になる方は、ぜひサイトやSNS、展示会をチェックしてみてくださいね♪

■あきさんが参加している展示はこちら!↓

「Handmade In Japan Fes 2023」
Handmade In Japan Fes 2023
開催日 – 2023年7月22日(土)、23日(日) 11:00〜19:00
会場 – 東京ビッグサイト西1・2ホール
展示会情報 – ブースNo.「Q-7」にてライブペインティングを予定しています。

3人展「ていねいに生きていくんだ」
3人展「ていねいに生きていくんだ」
開催日 – 2023年8月22日(火)〜9月3日(日)
平日11:30〜19:30、土日祝11:00〜19:30(※月曜休廊、8月29日(火)のみ休廊。土日は全日在廊予定)
会場 – ヨロコビtoカフェ(東京都杉並区西荻南3丁目21-7)

「画家の小道」
「画家の小道」
開催日 – 毎月第3日曜日 11:00〜16:00 ※雨天中止
会場 – JR大宮駅より徒歩1分
展示会情報 – https://akispraypaint.com/painterslane
他の絵描きさんを巻き込んで、毎月ゆるく開催しているイベントです。
画家、アーティストが手掛けた作品に気軽に触れることができる、日本の週末アートマーケット。

■ライター紹介
多崎 ろぜTwitter

フリーランスのWebライター。美術系の大学に通っていたため、ものづくりをしている人の作業を見たり、話を聞いたりするのが好きです。学芸員資格保持。

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