現代美術家・ENAさん
皆さま、はじめまして。アートテラーのとに~です。今回から『点灯者たち -LIGHTERS in It’s a small Kawaii world-』の記事を担当することとなりました。僕が注目するアーティストの方々に、オリジナルのライターケースを制作して頂き、それらをパーマネントコレクションに加えていきたいと思います。
さて、記念すべき第一回目に白羽の矢を立てたのは、現代美術家のENAさん。舞台俳優をイメージしたポートレートの顔の上にアクリル絵具のマーブリングを施す「f_a_c_e」シリーズや、日常生活のなかで誰もが経験した事がある“あくび”をテーマにした「YAWN」シリーズなど、独創性のある作品シリーズを次々に発表している気鋭のアーティストです。常にアンテナを張り、さまざまなマテリアルに興味を抱いている彼女なら、きっと・・・いや、確実に斬新なライターケースを作ってくれるはず。
そう信じて、制作でお忙しい中、このオファーをしたところ、嫌な“f_a_c_e”一つせず引き受けてくださいました。果たして、ENAさんはどんなライターケースを完成させるのでしょうか?
ENA – 現代美術家。美術専攻で高校を卒業後、油彩画、アクリル画、コラージュ、立体造形、写真、映像、音響、インスタレーションなど、固定概念や枠にとらわれず、様々な手法で自身を表現している。
Instagram:@e_n_a_58
はじまりから完成まで
工程1:石拾い
工程2:石に穴を開ける
多摩川の河川敷を小一時間ほど探索し、ようやくお眼鏡にかなう石に出会ったENAさん。しかし、普段彼女は石彫作品を作っているわけではないので、どうやってライターが入る穴を開けるのでしょう。そう疑問に思っていたら、持ち前のリサーチ力で、この石に穴を開けることができる業者を探し出してきました。そして、ENAさんが理想とする大きさと深さの穴を見事開けることに成功したのです。とはいえ、それで終わりではありません。むしろここからENAさんによる仕上げが始まります。
工程3:石の中にライターを固定
石のライターケースが完成
ENAさんなら、斬新なライターケースを作ってくれるはず。そう信じてはいましたが。「石をくり抜いて、ライターケースにしようと思います!」という提案は、こちらの想定の何倍も斜め上を行くものでした(笑)。さすがENAさん。積んでるエンジンが違います。
発想力もさすがですが、仕上げのクオリティもさすが。色に強いこだわりを持ち、自ら“作色家”を名乗るENAさんとしては、穴を埋めた粘土の色に納得がいかなかったようで、最終的にはアクリル絵の具を使って石と見分けがつかない塗装を施し、仕上げていました。 石を大胆に使ったENAさんのこの斬新なライターケースは、この企画にとってのマイルストーンにもなりました。
完成動画
おまけ
感性はもちろんのこと、コンセプトにも重きを置くENAさん。それゆえ、制作の話となると、言葉が溢れるように飛び出します。
本編とはそこまで関係ないですが、すべてカットするのはもったいないので、冒頭のインタビューでなくなくカットした部分を一挙公開いたします。ENAさんのことをもっと知りたくなった方は、こちらをどうぞ。
インタビュー動画
著者
1983年生まれ。千葉大学法経学部法学科卒。元吉本興業のお笑い芸人。
芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」に転向。
現在は、美術館での講演やアートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など幅広く活動している。
著書に『名画たちのホンネ』(三笠書房)、『東京のレトロ美術館』(エクスナレッジ)など。
公式ブログ(アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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