HR 作為的でアートな洋服
前回、“ボロ”の魅力に迫った本校。
僕自身、着の身着のままの意図しないボロさやだらしなさが醸し出す唯一無二の退廃美が大好きなわけであるが、当然90’sのトレンドには真逆のベクトルも存在する。
デザイナーの感性や意図に満ち、見せ方や着方1つをとっても計算され尽くしたコンセプチュアルな1着…。
いわゆる”メゾン”と呼ばれるようなインポートブランドである。
90’sと聞けば、ファッションに明るい人ほど「ああ、あの時代のあれね」と特定のブランドを思い浮かべる人も多いに違いない。
そう、ファッション史に多大な影響を与えたブランドの1つ「Maison Martin Margiela(メゾン・マルタン・マルジェラ)」である。
■BRAND DATA
No.14 Maison Martin Margiela(メゾン・マルタン・マルジェラ)
ABOUT
1988年、フランスのパリに設立されたマルタン・マルジェラによるブランド。
マルジェラは1977年にアントワープ王立芸術学院に入学しており、同期の”アントワープの6人”――ダーク・ビッケンバーグ、アン・ドゥムルメステ―ル、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク、ドリス・ヴァン・ノッテン、ダーク・ヴァン・セーヌ、マリナ・イーと並び称されることが多い。
設立以来、マルジェラ自身がデザイナーとしてブランドに関わっていたが、2008年に引退。
その後、ジョン・ガリアーノのクリエイティブ・ディレクター就任を受け、2015年にブランド名を「Maison Margiela(メゾン・マルジェラ)」に変更している。
とはいえ、メゾンブランドの90’sはマルジェラだけじゃない。
むしろ本来のマルジェラが掲げていたものが「反モード」であったように、反骨すぎて王道から逸れてしまった姿勢にこそ90’sの空気感というヤツが詰まっているような気さえする。
90’sのカルチャーや雰囲気を継承しつつ、当時のトレンドという意味では見向きもされなかった洋服たちに現代的な文脈でスポットを当てる――そんな最高に面白すぎるショップが表参道にあった。
■SHOP DATA
No.5 ÉLÉMENTS
ABOUT
2021年2月オープン。90~00年代のインポートアイテムを中心に、「PRADA SPORTS」「MIU MIU」のメンズラインなどの希少なアーカイブを取り揃える。
OPEN:14:00~19:00(CLOSE Thursday)
ADDRESS:東京都港区南青山6-1-21-403
Instagram:@elements0109
オーナー:ナオキさん&リューマさん
オーナーの2人は26歳。つまり90年代当時をリアルに経験していない世代ということになる。
けれど、そんな2人がやるショップだからこそ、もう経験しえないストリートへの強い憧れや思いが、セレクトするアイテム、店という空間からひしひしと感じられる。
そんな彼らの思いを紐解いていくと、そこには洋服とファッションへの凄まじい熱量と愛情が垣間見える。
少々長い講義ですが、最後までお付き合いください。
服オタクのあなたは必読です。
1限目 不必要なものほど必要!
鳥居みゆき(以下「鳥居」) このお店は2人でやってるんですよね。お店をやろうってなったきっかけとかって?
ナオキ もともと、5、6年前くらいに「ニブンノイチ」っていう古着屋で2人で働いていたんです。
鳥居 そうなの! 知ってますし、行ってました。もしかしたら会ってた可能性あるじゃん!
ナオキ ですね。そこで働かせていただいているときに、2人でこういう店やりたいねって話したのがきっかけです。
鳥居 本当に気が合ったんですね。
ナオキ 同い年なんですけど、僕らはまた少し個性が違って、性格なんかも真逆のタイプでもあって。
鳥居 そうしたら、あんまりケンカとかしない?
ナオキ 意見の違いでぶつかることはありますよ。世の中の彼氏彼女と一緒です(笑)
鳥居 いい関係だ。
鳥居 奥にもあるんですね。
ナオキ 奥はテック系を中心にセレクトしてあります。
鳥居 テック系?
ナオキ テック系って言われるジャンルのアイテムで、平面的に見たらジップがない洋服に見えるのに実は斜めにジップが入ってたり、長袖なのに袖が取り外せて半袖になったり、そういう隠されたギミックがあるような洋服です。
鳥居 これも?
ナオキ これはスキージャケットなんですけど、メッシュで通気性を確保できるようになってます。
鳥居 ゆるキャラと一緒だ。
ゆるキャラも中が暑くなりすぎないように、ここあけられるよ~みたいになってるんですよ。
ナオキ そうなんですか(笑) ゆるキャラにもギミックあるんだ(笑)
鳥居 でもさ、こういうのって必要?
ナオキ 機能的ではあるんですけど、なくてもいいし、不必要と言えば不必要です。でもいらないからこそ面白いんですよね。
鳥居 不必要なものほど必要ですからね。
お笑い芸人って、音楽とかとは違って生きることにおいて不必要なんですよ。だから私、不必要なことやってるんだっていい気持ちでした。
それと一緒だね。
ナオキ そうですね。遊び心は大事です。
ちょっと変わった、他では見つからない唯一無二のギミックを見つけたときの楽しさみたいなものが、心をぎゅっと掴んでくるんですよね。
鳥居 ギミック探し楽しい。
この帽子とかはどんなギミック?
ナオキ これ、普通にナイロンの帽子に見えるじゃないですか。
鳥居 はい。
ナオキ このラインがリフレクターになっていて、光を当てるとシルバーっぽく光るんですよ。
鳥居 おー銀色だ。面白い。これで夜道も安全だ。私よく轢かれるから。
ナオキ そこは気を付けてください(笑)
2限目 店名に込めたファッションへの愛
鳥居 ここってブランドものばっかりってわけでもないんですね?
ナオキ そうですね。
軸は確かにインポートのブランドなんですけど、普通のビンテージもあります。ファッションを色んな人が色んなかたちで楽しめる場所であることをお店として大事にしたいんですよね。
ナオキ 「ÉLÉMENTS」っていう名前には、要素(element)と要素(element)が繋がり合って1つのものができるっていう意味が込められていて、特定のブランドを推していくっていうよりは、その人なりの色や感性がお店と繋がったときの面白さや新しい発見、そういう化学反応みたいなものを大切にしていきたいっていう気持ちがあります。
鳥居 たしかに、ブランドものに興味がない人でも、さっきのテックとかは新鮮で楽しめますね。
担当編集(以下「編」) マルジェラもかなり置いてらっしゃるんですか?
リューマ 以前はアーティザナルもけっこうな数揃えてました。今はもうだいぶ減っちゃいましたね。
■とりいのーと:アーティザナル・コレクション(artisanale collction)
Maison Martin Margielaがブランド設立時より発表している、ヴィンテージなど既存の服や布地を解体・加工し、新しいものへと再構築するコレクション。
”アーティザナル”とは「職人的な」を意味しており、クリエイションはすべてパリのアトリエにて手作業で制作される。
タグのナンバリングは「0」「010」。文字通りマルジェラの原点とも言えるコレクションである。
編 最初のころのマルジェラはなんというかなんとしても好きなものを作ってやろうっていう熱量みたいなものがプロダクトから感じられる気がします。
リューマ そうですね。そもそも大量生産できるようなものを作ってませんでしたし。
ナオキ そういう意味では、これからご紹介する洋服もそれに近い熱量がこもってると思います。
鳥居 お店の奥がブランドもの?
ナオキ そうです。「MIU MIU」のメンズラインと「PRADA SPORTS」が中心です。
僕らは洋服自体を集めるのも好きですけど、着るということが好きなんですよね。
スタイリングも、集めるのも、ブランドが持つ背景や歴史を知るのも、全てを楽しんだ上で、僕らのスタイルに絶対に外せないよねっていうのが「PRADA SPORTS」と「MIUMIU」のメンズラインなので、それを軸にした提案をさせてもらってます。
鳥居 ふと思うんですけど、自分がいいなって思った服が買われていくの悲しくないですか?
ナオキ それは確かにありますね。
だから大事にしてくれたり、手に取った瞬間に感動して心が動かされた人に届けられるようにしたいなっていう思いはありますね。
■BRAND DATA
No.15 PRADA SPORTS(プラダ・スポーツ)
ABOUT
1998年より始まった、赤いラインが特徴となるプラダのカジュアルライン(発表当初の名前は「PRADA ACTIVE SPORTS」)。テクニカルなスポーツウェアからインスパイアをうけ、2000年代初頭まで展開された。
2度に渡る世界大戦の影響もあり、ハイブランドとして低迷していたプラダを復活させ、再び世界のモードシーンを牽引するブランドへと押し上げることになる一因でもある。
その後ラインナップが変更され、現在はPrada Linea Rossa(プラダ・リネア・ロッサ)という名称でスポーツラインが継続されている。
No.16 MIU MIU
ABOUT
1993年にミウッチャ・プラダによりスタートしたプラダのセカンドライン。シックで上品なPRADAに対し、ガーリーで可愛らしいMIUMIUは設立後すぐに話題となり、若い女性を中心に人気を博した。
設立当初からメンズ・レディース共に展開されていたが、ブランドのコンセプトもあってかメンズラインについては当時ほとんど知名度・人気がなかった。
■とりいのーと:ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)
戦後、人気が衰えていたブランドの救世主となったのが創業者マリオ・ブラダの孫娘である彼女。
セカンドライン「MIUMIU」の立ち上げほか、パラシュートなどのミリタリー用品に使われていたナイロン素材「ポコノ」をバッグに取り入れるなど、革新的な発想とデザインによる功績を残している。
編 MIUMIUってメンズラインのイメージないですよね。
ナオキ もともとMIUMIUのメンズラインって1998SSから2008SSくらいまでのごく短い期間しかやっていなかったんです。そのうえ、面白いデザインが多かったのはさらに短い2000年前後の2、3年な印象です。
鳥居 じゃあ今はメンズラインはないんですか?
ナオキ デザインの一部がレディースラインに取り入れられるようなかたちで復活はしてるんですけど、メンズラインとしての復活はしてないです。
編 それがこれだけ揃ってるっていうのは、資料としても超貴重ですね。
3限目 みゆき学長とミウッチャ・プラダの共通点
ナオキ このジャケットはナイロンとスウェードレザーのコンビになっていて、MIUMIUらしい面白い素材遊びの1着です。
鳥居 面白いことしますね。重たいレザーと軽いメッシュじゃ真逆の組み合わせだもんね。
ナオキ ちょっと変わってるんですよ。裏返してみると、裾の部分にキャップのスナップバックがつけられています。
鳥居 え、なんで(笑)
ナオキ デザイナーのミウッチャ自身が、少し違和感があるようなことをするのが好きなんです。なのでプラダよりも、より女の子に向けたかわいらしいブランドとしての色が強く出ています。「MIUMIU」ってブランド名も、ミウッチャが子どものころ呼ばれていた愛称に由来するんです。
鳥居 わたしもみゆきだから、子どものころ”みうみう”だった。
ナオキ 思わぬ共通点だ(笑)
鳥居 これ、ジップはプラスチックなんですね。かっこいい。
ナオキ レザーみたいに重厚感がある素材だとジップも金属にすることが多いんですけど、あえてプラスチックなんです。
普通だったら安っぽく見えそうなのに、そうは見えないんですよね。
鳥居 あえて遊んでる感がある。
後ろとのバランスも取れてるし、前もすっきりしてて絶妙ですよね。前って大きいポケットつけがちじゃん。
ナオキ 普通だったら絶対にまとまらないだろっていうことを、きちんとまとめてくるところに魅力があるんです。
鳥居 ここポッケないんかいって突っ込みたくなるよね。めっちゃ浅いですし、モノ入れさせる気ないじゃんって。
ナオキ モノを入れるっていうより、ちょっと手を突っ込んでかっこつけちゃえば? みたいな感じなんだと思います。
鳥居 いいですね。手品師みたいに、デザイナーさんの意図に誘導されてる感じがします。
こっちも面白いですね。レザーとナイロン。ナイロンはエコバックみたいだし。
ナオキ ちゃちいですよね。ミウッチャならもっと肉厚でしっかりしたナイロンを使うことも当然できたと思うんですけど、あえてこのペラペラのナイロンを使ってくるんですよ。
リューマ 面白いのが、着てみるとナイロンの部分も安っぽくならないところなんです。
■TFC STYLING
TOPS:MIU MIU
SHIRT:VINTAGE
SKIRT:PRADA
TIE:PRADA
SHOES:PRADA SPORTS
ナオキ 90’s当時っぽさと今っぽさをÉLÉMENTSなりにミックスさせたスタイリングです。
鳥居 このジャケット、着てみるとフードの部分も全然エコバック感なくなりますね。触ると本当にエコバックなんですけど。
牛乳とタマゴを買うとちょっと頼りないよな、バランスどうしようってなるタイプのエコバック。
リューマ レザーの重厚感とナイロンの軽さにギャップがつきすぎてチグハグになりそうなアイテムなんですが、素材のギャップはありつつも1着の洋服としてすごく完成度が高い、ミウッチャのすごさを感じさせられるアイテムですね。
4限目 90’sのPRADAはこうだった!?
ナオキ このライダース調のナイロンジャケットも、ミウッチャらしい遊び心がある1着です。
MIUMIUにしてはカッコいい雰囲気の提案かと思いきや、襟周りのスナップを外すと……。
鳥居 わ、セーラーだ! かわいい。
ナオキ そのままだったらプラダでいいじゃんってデザインなんですけど、襟がセーラーになることでミウミウらしいかわいらしさが一気に足されます。
編 さっきからめちゃくちゃハイセンスで面白い服がごろごろ出てくるんですが、どうしてこれが90’s当時に評価されなかったのかが不思議ですね。
鳥居 前回のお店でも、当時ダサいよねって思っていたものが、今は評価されてたりしてましたね。
ナオキ ミウミウにY2K感が出たのって、3年くらい前にロッタ・ヴォルコヴァっていうスタイリストが参加したことがきっかけなんです。日本的なギャル要素を取り入れたスタイリングが提案されるようになったんです。そこで海外Y2Kが生まれたといっても過言じゃないと思います。
僕らはもとから好きで、それを突き詰めていったら現在地に行き着いた感じなので、Y2Kっていう時代の背景がマッチしたのはラッキーでしたね。
鳥居 2人はもちろん当時を見てるわけじゃないんですよね?
リューマ そうですね。
ナオキ なのでコレクションとかの資料を漁って、遡って掘り出してっていうのをやっています。
ハイブランドなのでそこで敬遠されがちなんですが、知れば知るほど服自体の魅力がよく見えてきます。
鳥居 これも袖の内側に妙なポケットありますね。
ナオキ それはプラダの99AWのアウターですね。開けてみてください。
鳥居 えーなになに。私にプレゼント?
……ん、何これ、どうなってんの? またエコバック?
ナオキ かと思いきや、グローブです。
鳥居 ほんとだ! 手袋だ!
ナオキ ジャケットはリバーシブルになっていて、裏がプラダスポーツらしいカーキになってます。
あとおまけに、右のポケットにはメガネケースがついてます。
鳥居 うわ、しかもけっこう本格的なメガネケースじゃん(笑)
なんで(笑)
ナオキ なんでメガネケースを選んだのかは分からないんですが、アウトドア的で無駄な機能がデザインとして落とし込まれているっていう遊びですかね。
鳥居 無駄なことはやっぱり面白いですね。
これもテックってことになるんですか?
ナオキ そうですね。でもナイキみたいなスポーツブランドがテックをやってても、そもそもアウトドアとかスポーツのイメージがあるじゃないですか。
だけどコレクションブランドがテック的なことをやっているっていうところに、ファッションとしての面白さがより感じられると思います。
編 ちなみに、当時のコレクションの雰囲気を即興で再現したりできます…?
ナオキ できますよ。
■COLLECTION ARCHIVE
■TFC STYLING
KNIT:VINTAGE
SKIRT:PRADA
BELT:PRADA
SHOES:PRADA SPORTS
BAG:PRADA SPORTS
編 めちゃめちゃいいっすね…そのままルックブック載れますよ。
ナオキ 当時のコレクションで特徴的だったのはニットの上からウエストにアクセントをつけるように締めていた細めのベルトです。
スカートは90年代のプラダのものなんですが、ベルトとセットになっています。
鳥居 さっきとはまた全然違う雰囲気。今まで着たことない感じで新鮮です。
5限目 ”原宿”というカルチャーの熱
ナオキ 鳥居さんって90’sの原宿とかのストリートの空気とファッションをリアルに楽しんでいらっしゃったんですよね。
鳥居 はい。年齢的にナオキさんたちは体験したわけではないですもんね。
ナオキ そうですね。「TUNE」とか「STREET」とかの雑誌から昔の裏原の雰囲気を知ったり、当時を知っている人から聞きながら、うわー昔の原宿ってこんぐらいフランクでフレンドリクエストで楽しそうだったのかなぁって憧れたりします。
鳥居 すごい楽しかったですよ。ホコ天だったし。
私そのときサイバー系を着てたから、カラフルな服を着て表参道を練り歩いてました。
文化屋雑貨店に行くっていうのがお決まりだった。
洋服屋じゃなくて雑貨屋なんですけど、いち早く軍手にペイントしたりして、安い玩具みたいなものを売ってたんですよ。毛沢東のシールとか。
ナオキ なんで毛沢東(笑)
■SHOP DATA
No.6 文化屋雑貨店
ABOUT
1974年にオープンし、19189年に裏原エリアへと移転。店内にはチープでバラエティに富んだ雑貨が所せましと詰め込まれ、90’sの原宿のカオスを象徴する空間として愛された。
ポール・スミスは来日のたびに大量購入して帰るほどの大ファンで2013年にはコラボレーションが実現。2015年1月に惜しまれつつ閉店した。(実店舗は閉じたものの、現在も神出鬼没に活動している)Twitter(X):@bunkayazakkaten
鳥居 当時はデコラブームもあって、がちゃがちゃしたなんでもありの自由なファッションだったんですよね。
ナオキ 触れてみたかったカルチャーですね。話を聞いているだけで異世界だろうなって想像が膨らみます。
鳥居 原宿で会えばみんな友達みたいな感じすらあったよね。服で分かり合うみたいな。まぁ、私はそういう人できなかったけど。
ナオキ 一体感すごそうですよね。当時いたらもっと楽しかっただろうな。
鳥居 ほんといろんな服を着ましたよ。お洒落のやり方が決まってなかったから、めちゃくちゃでした。手錠をつけてみたり、針金をとりあえず巻いてみたり。
私はいつもパンの袋を止めるバッククロージャ―を繋げてアクセサリーにしたりしてた。そこらへんにあるもので、”これはお洒落かもしれない”を追及してた。
ナオキ 楽しそうだなぁ。いいですね。
鳥居 表参道のローソンのあたりとかでスナップ撮られたりされてる人をよく横目で見てました。
ナオキ 今はストリートスナップも変わっちゃったんですよね。僕らも撮っていただくことはあるんですけど、コロナの影響もあって、DMでアポがあって日にち決めて撮ってもらう感じなので、ストリートのライブ感みたいなものはなくなっている気がします。
鳥居 寂しいね。
ナオキ 昔って、ストリートスナップがあって、お洒落をして表参道を歩いてれば、自分のお洒落が人に伝わったり、共有できるような空間があったと思うんです。
だから、そういうカルチャーは大切にしたいです。服を着ることを楽しめる場所、みんながお洒落をして集まるような空間を作りたいっていう想いが、お店をやっている根本にあるんですよね。
小さい箱ですけど、そういう輪や縁みたいなものが少しずつ広がっていけばいいなと思います。
ゆくゆくはお店だけじゃなく、バチバチにお洒落して楽しめるイベントとかやりたいですね。
鳥居 それすごく楽しそう!
HR 服で僕らを繋ぐ場所
……奥が深すぎた。
そして分かってはいたことだけれども、発想と作り込みが凄まじい。
みゆき学長は”手品師”に譬えていたけれど、デザイナーの感性と技術の粋が詰まった洋服というのは非常に作為的で、だからこその魅力に溢れている。
当時から評価されていた「PRADA SPORTS」の色褪せなさはもちろんのこと、当時は見向きもされなかった「MIU MIU」メンズラインが四半世紀の時を経て、今こうして魅力的に思えることもまたファッションの面白さなのだろう。
何よりその魅力に取りつかれたナオキさん、リューマさんの沼具合(愛)が最高だ。
服で繋がることが当たり前だったあの頃のストリートの熱は、表参道の隠れ家的ショップにひっそりと、だが確実に芽吹いている。
(撮影:Rage Hongo)
■SHOP DATA
No.05:ÉLÉMENTS
No.06:文化屋雑貨店
■BRAND DATA
No.14:Maison Martin Margiela
No.15:PRADA SPORTS
No.16:MIU MIU
■鳥居服装学院×ÉLÉMENTS
1981年生まれ。2001年に芸人デビュー。「ヒットエンドラーン」のネタでブレイクする。映画・ドラマ・舞台出演のほか、小説・絵本の執筆も。発達障害をテーマにした番組『でこぼこポン!』(Eテレ)に出演中。
Instagram:@triimiyukitrii
YouTube:「鳥居みゆき地獄」
■ÉLÉMENTS
OPEN:14:00~19:00(CLOSE Thursday)
ADDRESS:東京都港区南青山6-1-21-403
Instagram:@elements0109
Twitter(X):@korekore_koume
ケムール編集部員。前は古着屋。潰れたソフトケースのなかにあるしわしわの煙草がすき。担当連載は「鳥居服装学院」「Talk at Fillers」「ネオホームレス-自由と稼ぎの流儀-」。
株式会社アクロスソリューションズ所属。
HP:https://www.acrossjapan.co.jp/