登山、キャンプ、BBQ……ひとりでも美味しいアウトドア飯 「をんなひとりそとごはん」〜vol.1高尾山のマリー・アントワネットごはん〜

食欲はなぜ、一向に衰えないのに、代謝はしっかり衰えて、年々体重が落ちなくなっていくの?おしえておじいさん(アルプスの方言でこんにちはの意味)。とにかく食べることが大好きなライターのカワグチと申します。

ところで。コロナ自粛で外出・外食がどうしてもはばかられる今日このごろ。大して贅沢はしていないのに明らかに大きくなっていく身体、増えぬスマホの距離移動と歩数表示。体重計? 怖くて最近乗ってません。ああ、そろそろ限界。もっと健康的になりたい。でも美味しいものも食べたい。できれば罪悪感なくハイカロリーなものを食べられる、そんな夢のような話はないものじゃろか……。部屋でゴロンゴロンしながら勝手なことを考えていたら、ひらめきました。

「〝そと〟で食べればいいんじゃね!?」

密を避けなきゃいけないなら、アウトドアで、しかも一人で食べればいいじゃない。そんなマリー・アントワネット的発想です。ついでに山とか登ってみれば、運動不足解消も兼ねて一石二鳥なのでは?! 王様(クライアント)の要望は叶えつつ、自らのささやかな欲望もちゃんと満たせる、なんてナイスな企画。気分はすっかりマリー・アントワネット。
さて、料理はどうしよう? せっかくなら美味しいものが食べたい。というわけで、アウトドア料理に関するレシピ本を多数出されている蓮池陽子先生にレシピをご教授いただくことに。「美味しくて、初心者でも簡単にできて、あっ運動不足なんで重い機材は無理、それでできるアウトドア料理を教えて!」というワガママなリクエストを聞いてくれた先生本当にありがとう。


蓮池陽子
ビストロ勤務の後、料理教室で講師を務める。アウトドアで山菜や貝などの山や海の恵みを採取する中で、美味しい物の背景には“美しい自然”や“沢山の物語”があることに開眼。現在は料理教室からフードコーディネートまで幅広く活躍し、アウトドア料理のレシピ本も多数出版。

さて、行き先はどこにしよう? 日帰りで、全然外出してない体でも無理せず行くことができて(←ここ重要)、「そとごはん」が可能そうな場所。

「……高尾山?」

ミシュランガイド三ツ星入りで、東京都民ならず全国にもその名を轟かす高尾山。都心から1時間で行けるというアクセスの良さが魅力ですが、実は過去数回登山済み。ちなみに山登りに関しては年に1〜2回低山に登る程度の「永遠の初心者」であるカワグチ、久々のアウトドアということもあり、今回は土地勘がある場所に行くことにしました。
「いいじゃないミシュラン。ふふふ……」
今回の裏テーマ〝マリー・アントワネット〟気分にもぴったり!(たぶん)

というわけで、京王高尾山口駅です。まずはルートを決めましょう。ちなみに高尾山、バラエティに富んだルートがいくつもあり、長くても2時間弱ほどの所要時間。まさに日帰り登山のための山と言えましょう。しかもルートによって「普通のスニーカー&服装でも割と平気」な道から「登山気分を味わえる自然満載」な道まで幅広く、しかもケーブルカーを使えば中腹までショートカットすることもできるというまさにいたれりつくせり。さすがミシュラン三つ星。

はて、今日のルートはどうしよう? 山頂で美味しいゴハンが待っている、そのためにはやはりちょっと運動したほうがいいわよね? じゃあ登山ルート的な稲荷山コースとか行こうかしら……

ごめんなさい嘘をつきました。途中までケーブルカーに乗りました。マリーは貴族、自分の足で歩くなんてそんな下賤なことはいたしませんの……というのは言い訳で、単純に体力に自信がなかっただけです。で、でもね! 降りてから山頂まで1時間くらいかかるから! 完全にズルしたわけじゃないから!!(必死)

残念ながら、お天気はどんより。でもまあ気を取り直して進みます。あれ? い、意外としんどいぞ(ぜーはー)。こんなんだったけ高尾山。

着きました、高尾山山頂。ちなみにこの時点ですでに膝はガクガクです。マリー・アントワネット的な優雅さはどこに行ったんでしょう。おそるべしコロナ自粛。
いやいやマリー的にここでダウンするわけにはまいりません。本来の目的はここからスタートですわよ!
今回、蓮池先生が用意してくださったレシピはこちら。

・シナモンコーヒー
・ベーコンバターメープルトースト◯シナモンコーヒー
【材料】
ドリップコーヒー、シナモン、練乳(もしくは砂糖と牛乳)◯ベーコンバターメープルトースト
【材料】
食パン(6枚切りか4枚切り)、ベーコン(できれば厚切り)、バター、メープルシロップ(もしくははちみつ)、黒こしょう

「初めての方でも失敗が少なく、食べごたえがあり、素直に美味しいと思えるもの。まだ寒い時期ですし、こっくりしたものの方が美味しく感じると思います。少し濃厚なものを……と思い、このレシピにしました」―蓮池先生談。

いい感じのベンチとテーブルも確保できたので、さっそく作っていきます。

今回、下界から持ち込んだ機材と材料。ポイントは山用のシングルバーナーです。軽くて持ち運びが便利、でもこれ1つあれば「そとごはん」のバリエーションがぐっと広がる心強い相棒です。軽量化のためメープルシロップは空き瓶に小分けに。フライパンは100円ショップのものですが、軽いのでこういう時には役立ちます。執事のセバスチャン(来る来る言って結局来なかった編集長)がいればもっと色々持ち込めたのですけれど……。

まずはシナモンコーヒー。今回は市販ドリップバッグを使用しました。開けたところにシナモンを振り入れてドリップ、練乳を入れるだけ。拍子抜けするほど簡単です。疲れのせいか結構な量の練乳を絞り出してしまった気がしますが、いいよね歩いた後ですものホホホ。

続いてメインディッシュに。まずはベーコンを焼いて……。

ここで気づきます。屋外で焼くベーコンの匂いって

「暴力的」

ですね。パワーが凄い。通り過ぎる下々の方たちがみんなこちらを振り返っていくのは気のせいじゃないと思います。羨ましいでしょうほほほ。

ベーコンが焼けたら、フライパンを拭いて今度はパンを両面焼いていきます。結構すぐに焼けるので火加減注意!(裏面は少し焦がしました。えへ)
パンが焼けたらバターをたっぷり塗って、ベーコンをon。上にメープルシロップを容赦なくかけて、黒こしょうをふって……。

完成!! 写真を撮って思いました。
「え、マリー天才じゃない? めちゃくちゃ美味しそうじゃない!?」
疲労と空腹と寒さで自己評価が甘くなっているのは否めませんが、とにかくいい匂いが立ち込めてます。というわけでさっそくおかじり遊ばさせていただきます。

「うっっっま!!!」

動揺のあまりお下品な言葉が飛び出しましたわね失礼。
ふかふか&さっくりのバタートーストにメープルシロップがじゅわっとしみこみ、そこにベーコンの肉汁が追いかけてきます。甘みと塩気と脂分が見事にマッチ、これってどれも疲れた身体が欲する味ですものねそりゃ美味しいわけで。そこにアクセントを加える黒こしょうの風味。荷物を削減したいがために正直「なくてもいいのでは?」と一瞬思った私がバカでした、先生ごめんなさい。黒こしょう、重要でした。あと、ベーコンもパンも厚切りにしてよかった。本当に良かった。夢中で食べちゃったので瞬殺でしたけど。
トーストを食べながらシナモンコーヒーをごくり。あーこれ、いいです。すごく簡単なのに。練乳のほどよい甘さとコーヒーの苦味が、トーストの甘じょっぱさと合います。シナモンの香りがあるとぐっとカフェ感が増しますね。いままでおにぎりやカップ麺とかで済ませていた山ゴハンとは雲泥の優雅さです……高尾山ですけど!!
ちなみに今回のトーストのレシピは、蓮池先生の「バウルー公認! アウトドアでホットサンド」(山と渓谷社)という本に掲載されています。ホットサンド……いいなあホットサンド……次の「そとごはん」への期待が既に高まっているのは内緒。

ほかの登山者の人たちも、お弁当を広げたり、私のようにバーナーで料理を楽しんだり、売店で食事をしたりと、思い思いに食事を楽しんでいます。それを眺めながらのゆっくり昼ごはん。久しぶりの解放感とリラックス感、そして「私は! 今!! こんな美味しいものを食べている!!!」という優越感。いやー、最高。ひとりそとごはん、最高。
……まあ、これから下山しなきゃいけないんですけどね!

今回の「そとごはん」、マリー的には……

・外で食べると食欲が2倍増し
・運動したらがっつりしたもの食べても罪悪感少なめ
・高尾山は意外としんどいけどそとごはんには最適

ということで大満足。
最近なんだか食事にウキウキしない人、部屋ごはんに飽きた人、運動不足の人、「そとごはん」オススメですわよ!

※場所によっては火気厳禁の所もあるので注意書きなどを守りましょう
※出したゴミはきちんと持ち帰ること!

文・川口有紀

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