登山、キャンプ、BBQ……ひとりでも美味しいアウトドア飯 「をんなひとりそとごはん」〜vol.3 三度目の正直! きちんと“山ゴハン”でデトックスの巻〜

「癒やされたい」

初っ端から不穏な一言でスタートしてしまいました。どうも、いろいろと仕事も私生活も落ち着かない日々が続いているライターのカワグチです。

いや皆さん、正直、ストレス溜まってません?緊急事態宣言は延長されるし(執筆時6月上旬)、蒸し暑くなってきてマスクは顔にはりつくし、ライターという職業上この先仕事どうなるかなあと不安は尽きないし。こんなとき、いつもだったらライター仲間や友人とちょっと美味しいものでも食べて飲んで、仕事の愚痴喋ってガス抜きだー……ってできていたのに、それができない。というかそもそもここ数ヶ月、ほとんど“雑談”をしていない気がする……。え?私生活のストレス?それ話し出すとこの連載の字数が尽きますけど!?というわけで。

どこか、私を癒やしてくれる場所に行ってデトックス。

今回のテーマは勝手にこう決めました。前回2回、お天気に恵まれなかったリベンジも果たしたい。毎度素敵なレシピを提案してくれる蓮池先生、このストレスフルなアラフォーを助けてくれるレシピをどうか、お願いいたします(←重い)。


蓮池陽子
ビストロ勤務の後、料理教室で講師を務める。アウトドアで山菜や貝などの山や海の恵みを採取する中で、美味しい物の背景には“美しい自然”や“沢山の物語”があることに開眼。現在は料理教室からフードコーディネートまで幅広く活躍し、アウトドア料理のレシピ本も多数出版。

をんなひとりそとごはん第3回_3というわけで。後日届いた蓮池先生からのレシピをもとにさっそく準備を整え、またもや中央線にひょいと飛び乗りいざ青梅線の御岳駅へ。前回の奥多摩駅より少し都心寄りですね。ねえねえ見てくださいよこの天気! 梅雨入りがドキドキでしたが、お天気はなんとか持ってくれました(号泣)。
をんなひとりそとごはん第3回_4まずは御岳駅からバスに乗り約10分。こちら、御岳登山鉄道のケーブルカー乗り場へと向かいます。ここで第一回の高尾山をご存知の方からは「またケーブルカーかよ!?」というツッコミが聞こえてきそうですが、まあ見ててくださいよ。
をんなひとりそとごはん第3回_5駅を降り、まずは階段が続く参道を登って「武蔵御嶽神社」へ。というか、この階段が地味にきつい。早くもこの場所を選んだことを後悔し始めたのは内緒。
をんなひとりそとごはん第3回_6こちら、武蔵御嶽神社です。標高929mの御岳山山頂に鎮座する、由緒正しい神社。お参りをして振り向くと武蔵の国が眼下に広がる、見事なロケーションの神社としても知られています。
ちなみにわたくし、既に汗だくです。ここまでで既に登山気分を味わえるので、神社境内でお弁当を広げて休憩している人たちもちらほら。が、今回はここでは終わりません。
をんなひとりそとごはん第3回_710分ほど歩いて「長尾平」という場所に向かいます。ここはお茶屋があって休憩できたり、いくつかのルートにも分岐する場所。あらかじめ決めていた、今日のお昼ごはんスポットはここから歩いて数分の展望台なのですが……時計は午前11時。
はい、いざ覚悟を決め、御岳山の名所・ロックガーデンへ。御岳山には苔むした奇岩が立ち並ぶ場所があり、ハイキングコースとして人気を博しているのです。この看板の「七代の滝」方面から回るとぐるっと周遊でき、およそ1時間20分ほどのコース。

これは……行くしかないよね。

だってさー、せっかくの「そとごはん」企画、動かせるときには体を動かしといたほうがいいじゃないですか。その方がごはんも美味しくなりそうだし。というか実際美味しいのを知っちゃったし。汗もしっかりかいて、新緑の中でデトックス!今回のテーマはこれですよ。ここでヘタレたら新調しちゃったトレッキングブーツが泣くっていうもんよ。ところで編集長、トレッキングブーツ経費で落ちませんかね……ダメですよね……。
をんなひとりそとごはん第3回_8と、初っ端からとんでもない急坂をひたすら下り、「これ下ったあとは登るってことだよなあ……」と思っていたらこんなほぼ梯子状の鉄階段が出てきて、この日二度目の後悔が頭をよぎります。
「なんでこんな企画立てちゃったんだろう」
いや決めたの自分だから。あとリタイアしても帰れないだけだから。ガクガクする足腰を奮い立たせて進むことに。
をんなひとりそとごはん第3回_9息を切らしながら梯子を登りきり、しばらく歩くとお待ちかねのロックガーデンへ。……ねえ、見てくださいよこの光景!誰も居ない森の中で響く小鳥のさえずり。美しく苔むした岩と、その間を流れる沢のせせらぎ。新緑から降り注ぐ木漏れ日……都会のストレスが溶ける、溶けてゆく……。まさに、デトックス。これですよ、これを求めてたのですよ!!

そういえば仕事の電話とか来てないなあ……と思い、途中の休憩場所でふとスマホを見ます。

圏 外 でした。

うっは、期せずしてデジタルデトックスもできちゃってたわ!犬のお父さんの某キャリアだけかもしれませんが。ロックガーデン最高!あと担当編集氏ごめん!(めっちゃ着信来てた)
をんなひとりそとごはん第3回_10あー来てよかった……汚れきった心を新緑と流れる汗で浄化したかのような清々しい顔で長尾平へ戻ります。先程の分岐から300mほど歩くと展望台に到着。いい感じのテーブルも確保したので、お昼ごはん製作に取り掛かりましょう。
今回、先生にお願いしたオーダーは「景色のいいところでなんか美味しいものが食べたいので、それ用のレシピをお願いします」でした。

うん、無茶。
でも、優しくレシピを提供してくださった蓮池先生。本当にいつもいつもありがとうございます……!(涙)

夏野菜と鯖のトマト煮
【材料】
オリーブオイル漬けサバ缶       1缶
グリル野菜(セブンイレブン冷凍品) 1袋
ニンニク(ドライでも)       1かけ(1かけ分)
トマトジュース           180ml〜200ml
味噌、塩、こしょう         適量
パルメザンチーズ、あればバジルなど 適量
しろおむすび、パンなど       適量*最後にカレーにする場合
カレー粉              適量

「暑くなってくると、トマト味&夏野菜のものが美味しくなりますよね。味噌はトマト&鯖と抜群に相性がよく、また機能食品でもあるので、汗をかいた後に摂取するのがオススメです。主食はパスタでもいいですが、初心者の場合はごはんやパンなどすぐに食べられるものと合わせるといいですよ。余裕があるなら、シメのカレーもぜひ楽しんでみてください」――蓮池先生談。

ああ、レシピ読んでるだけで既に美味しそう(めっちゃ空腹)……さっそく作っていきます。
をんなひとりそとごはん第3回_11合わせるのはフランスパンにしてみました。パンの量がちょっと多い気もしますが気になさらぬよう。冷凍のグリル野菜は保冷バッグに入れて持ち込みます。気温が高くなってきましたので、みなさまもそのあたりご注意を。
をんなひとりそとごはん第3回_12フライパンにトマトジュース、サバ缶、スライスにんにく、グリル野菜を入れてバーナーにかけます。オリーブオイル漬けのサバ缶がない場合は、普通の水煮サバ缶にオリーブオイルを大さじ1/2足せばOKと蓮池先生。
をんなひとりそとごはん第3回_13煮立ってきたら味噌約小さじ1、塩・こしょうを入れて2分ほど煮込みます。いつもお手軽レシピですが、今回はそれに輪をかけて簡単。冷凍のグリル野菜や缶詰を使っているので加熱時間が少なくて済むのもポイントですね。サバを適当にほぐしながら火の番をしていると、美味しそうな匂いが漂いだしました……。
をんなひとりそとごはん第3回_14煮込み終わったら、バジルとパルメザンチーズをかけて完成!既に空腹と筋肉痛で瀕死のわたくし、さっそくいただきます。
をんなひとりそとごはん第3回_15
あああああ美味しい!!!!

これ、渋谷あたりのワインビストロで1000円くらいで出てくるやつですよね先生? 山でササッと作ったとは思えないほどのオシャレな味。かつ煮込み時間が数分とは思えないほど、しっかりとした旨味とコクが口に広がります。味噌の効果なんでしょうか? バジルとチーズも効いてサバの臭みは皆無。パンにのせて夢中でかき込みます。
をんなひとりそとごはん第3回_16ふと手と口を休めて目の前を見ると、この光景。控えめに言っても 最 高 。ああ、前回2回分のリベンジがここで果たせた気がします。運を全部使い切ってないといいけれど。
をんなひとりそとごはん第3回_17おっと、夢中で食べすぎて大事な「味変」を忘れるところでした。半分残った煮込みに、小さじ1くらいのカレー粉と味噌、塩を少々追加します。再度火を入れてパクリ。

ふしぎ。本格ネパール料理屋で食べるカレーの味がする。

いや驚愕です。渋谷のビストロから、ネパール人が経営する大久保あたりの料理屋のランチで提供されてそうな味に。こんなに簡単に、本格的な味が楽しめていいんでしょうか。しかもこの絶景で。あーーーー下山したくない、仕事したくない。ここでずっとゴハン食べてたい……。快適すぎると人は、現実に戻りたくなくなりますね。いや、戻りますけどね。とりあえずスマホの電波が長尾平では復活してたので担当編集氏に返事しますね……。
をんなひとりそとごはん第3回_18そうそう、武蔵御嶽神社は「おいぬ様」信仰があり、ワンちゃん同伴での参拝客も多いのです。ケーブルカーも乗車可能。一緒にロックガーデンへのハイキングに挑戦している飼い主さんとワンちゃんもいましたよ。めっちゃ軽快に追い抜かされましたが。

というわけで、今回はある意味清く正しい「山ゴハン」を体験できたので、大満足となりました。ひと汗かいてデトックスしたい、ついでにデジタルデトックスも……という人、おすすめです!

※ロックガーデンに向かう道のりはそこそこの山道なので、雨具とかそれなりの準備をした上でトライを。
※場所によっては火気厳禁の所もあるので注意書きなどを守りましょう
※出したゴミはきちんと持ち帰ること!

文・川口有紀

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