登山、キャンプ、BBQ……ひとりでも美味しいアウトドア飯 「をんなひとりそとごはん」〜vol.8 富士山見ながら身体に喝! 絶品ラーメンを堪能の巻〜

「ライター・カワグチがどこか外で美味しいご飯を作って食べる」というこの企画。気がついたら季節は夏から秋を飛び越して冬に突入しつつある、そんな陽気じゃないですか?

秋、どこ行ったん?

なんでこんなことをぼやいてるかと言いますと。正直に言います。この連載、「冬はどうするか」を考えてませんでした。

寒いよねー。いやまあ火が使えれば温かいものは食べられるけどね……。ぬくぬくと瀬戸内で育ったカワグチ、寒いのは苦手。でもまあ、空気もきれいになってきたことだし、山登りとしてはベストシーズンでもある。ここは一念発起して「山ごはん」といきましょう。
行き先は初心者向けの山になりますが、山で食べれば山ごはん。異論は認めません。

やってきました、JR中央本線猿橋駅。高尾山方面もちょっと考えましたが、そろそろ紅葉の季節にも突入するので人手が凄そうだなと(いや物凄いんですよこの時期の高尾山)。初心者でも大丈夫&眺望に定評があるとのことで、大月市の「百蔵山」を目指すことにしました。

気持ち良いほどの秋晴れ。都内を出た時は空がどんよりしてたんで
「またこのパターンか……」
と一瞬泣きべそかきそうになりましたけど、駅についたらスッキリ青空。いざ登山口に向かって歩みを進めます。

車道を30分ほど進み、そこから林道へ。登山の始まりです。気候のせいか紅葉にはまだ少し早い? という感じでしたが、時々見える色づいた木々がいい感じ。
ハラハラと落ち葉も舞い、気持ちいーい。

こんなちょっとした水場も乗り越えつつ、山を登っていきます。
ここで突然ですがー。高尾山レベルから全然レベルアップしない永遠の登山初心者・カワグチが個人的に思う、「山登り初心者が思うこと」を発表〜。

① ガイドブックやWEBサイトで書いてある「初心者向け」の山、全然「初心者向け」じゃない
② 「初心者向け」の山、普通に気を抜いたら死ぬ場所いっぱいある
③ 何なら鎖をつかって登る「鎖場」もある
④ そもそも想定してる「初心者」がよくわからない

要はこの百蔵山も
「あ、これ気を抜いたら死ぬな」
という場所が結構ありました、ということです。
以上!

……そんなことを思いながら、汗だくで登ること2時間。ようやく山頂に到着。

時間かかったのでちょっと雲が出てきちゃった(泣)。でもやってきましたよ標高1003m!
遠くに見えるは富士山。そう、ここは山頂から富士山がきれいに見えることで知られている「絶景スポット」なのです。写真はちょっと木がかかってますが。

さて、山頂にあるベンチとテーブルを独り占めしてさっそく料理開始ですよー……と準備を始めていたら突然ブルッ。うわ寒くなってきた。温度計を見ると約10度、そりゃ寒いわけですわ。この日、東京は普通に最高気温20度とかだったんですよね。慌てて持参したフリースを羽織り、作業を続けます。

今回、いつもレシピを提供してくださる蓮池先生には「煮込む系の“山ゴハン”がいいです!」とリクエストしました。いや、企画を立てたときの自分を褒めてあげたいよね。この気温で冷たいご飯は辛い。
そして頂いたレシピが、こちら。

蓮池先生
蓮池陽子
ビストロ勤務の後、料理教室で講師を務める。アウトドアで山菜や貝などの山や海の恵みを採取する中で、美味しい物の背景には“美しい自然”や“沢山の物語”があることに開眼。現在は料理教室からフードコーディネートまで幅広く活躍し、アウトドア料理のレシピ本も多数出版。

◯旨煮込み辛ラーメン

<材料>
辛ラーメン   1袋分
いりこ     5〜6個 ※別途50〜100ccの水につけておく
あさりの水煮缶 小1缶
水       適量
しめじ     1/4パック
豚肉      100gほど
豆もやし    1/4袋
青ねぎか白ねぎ(小口切り) 適量
とろけるスライスチーズまたはシュレッドチーズ  1枚または適量
(お好みで)卵 1個

水の分量が意外と多いので、今回はコッヘルで調理します。
「前回のサムギョプサルからの勢いで、今回は辛ラーメンです! 辛いのが苦手な方は溶き卵でとじてもOK。いりこは事前に水のこぼれない容器に入れ、水につけて持参しましょう。瀬戸内産のものがオススメですよ」
と蓮池先生。
そう、前回判明したんですが蓮池先生、韓国料理系のレシピがお得意とのことで、これはもう間違いないやつ。

というかそもそも、この「辛ラーメン」が間違いないやつ。いわばアレンジレシピなわけです。ほら、よく山登りしてる人たちが山頂でインスタントラーメン作ったりしてるじゃないですか。あれを一度やってみたかったというのもあり。
楽しみー!

鍋にあさりの水煮缶、水で戻したいりこと戻した水、それに水を入れて、水分量が全体で600mlになるよう調整。ここに石づきを取ったきのこを加え、火にかけます。コッヘルに目盛りが付いてるので作業が楽ちん。

沸騰してきたら粉末スープとラーメンを入れて軽くほぐします。そのままだと入らないので割り入れる感じで。お、なんか山ゴハンぽくなってきましたよー。

豆もやしと豚肉を加え、豚肉に火が通ったらラーメンが好みの硬さになるまでグツグツ煮まして……。

仕上げにチーズとネギをふりかけて完成―!
ちょっとチーズでディテールが見えなくなってますが、完成―!

この日、気温はともかく結構風が強かったこともあり、作ってる間に急激な勢いで低下していく体温。は、はやく食べさせて……死ぬ……そんなことを思いながら、ズルリ。

おいしいいいいそして辛いいいいいでもあったかいおいしいいいいいいい

「生き返る」ってこういうことを言うんですね。いや大げさではなく。辛さもチーズのおかげで少しマイルドになっているし、何よりこれは煮干しとあさりの効果なのでしょうか? 私の知ってる辛ラーメンとは違う味がします。いや当たり前なんですけどね。
なんというか、味がものすごく「上品」なんですよ。旨味を「プラス」してるのに、辛ラーメン独特のパンチが消え、まろやかになってる感じ。時々口に入るあさりや煮干しがいい感じに魚介風味をプラスしてアクセントに。これ面白い、家でもやってみようー。

半分ほど食べたところで、せっかくなので持参した生卵を溶いて……。

再び火にかけて、とじますよー。先生オススメのスタイルを、いわゆる味変でやってみようという試み。
あ、先生―、卵、大正解ですー。卵のまろやかさがまたこのピリ辛スープに合う! というかスープがすごく美味しいから、これおにぎり持参して麺食べた後におじやにしてもいいやつかも……とまた大食らい発想が頭に浮かびます。

またね、見てくださいよこのシチュエーション。

ふっじっさーん! さすが山梨県、本当にきれいに見えます。
鼻水ダラダラ流しながらズルズル麺をむさぼり、目の前にはこの光景。いやー、たまらんですわ! しかも何がたまらんって

誰もいない

平日だったとはいえ、紅葉シーズンですよ? 山頂、小一時間ほど私だけだったんですけど。
要は絶景、独り占め。鼻水、垂らし放題。なんて贅沢……!
美味しいものを食べて、美しい景色を見て、心と体をリフレッシュ。オススメです、百蔵山登山!!

(この30分後、下りのルートが思ってた以上の急な坂道、要は「急登」というやつで、何度も本気で転びあやうくケガしかけて「あ、これは……みんな高尾山にいくわけだわ……」と本気で思うことになるとは、この頂上での私は思う由もないわけで。注意一秒ケガ一生、山、舐めちゃいかんです。人生と一緒です)

 

文・川口有紀

あわせて読みたい