登山、キャンプ、BBQ……ひとりでも美味しいアウトドア飯 「をんなひとりそとごはん」〜vol.9 最終回にしてさらなるスキルアップ! ダッチオーブンと焚き火デビューの巻〜

「ライター・カワグチがどこか外で美味しいご飯を作って食べる」というこの企画。
なんと今回で最終回と相成りました……!

▶いままでの『をんなひとりそとごはん』

思えば「なんとなく外でご飯作って食べたら面白いんじゃね? 山ゴハンとかBBQとか流行ってるしキャハ♪」的な軽いノリで始めたこの企画。しょっぱなから高尾山で自分の体力の無さに愕然とし、奥多摩で川を眺めながら日本酒をあおり、よみうりランドで家族連れやカップルがはしゃぐ中黙々と肉を喰らい、先月は百蔵山でちょっと死にかけました。
予想を遥かに超えてしんど……いや楽しい連載となりました。いや楽しい、楽しかったよ! 基本的に企画立ててるの自分だし! 山登ってるときとか「なんでこんな企画立てちゃったかな……」と頭の中に100回くらい渦巻いたけど!!

でもこれもひとえに、毎回神レシピを提供してくれる蓮池先生のおかげです。これは心底のホンネ。「外で食べるゴハン、美味しい……」これが食いしん坊カワグチの最大のモチベーションでしたから。そりゃ山も登りますって。

さて気を取り直して最終回、どこに行きましょう?……なんて考えたら、世の中の状況がちょっと落ち着いてきました。当初この連載で想定していた場所の1つ「公園のBBQ場」が予約を再開、使えるようになってきまして。なんだよ遅いよ……とちょっと文句を言いかけましたがこのタイミングだけは如何ともし難い。

そこで今回やってきたのはここ、舎人公園駅です。西日暮里から舎人ライナーに乗って約16分。
東京都内にはBBQができる公園がいくつかあります。多くはネット予約が可で、バーベキュー用の機材レンタルとかも充実していることが多く。この舎人公園駅はその名の通り舎人公園に隣接(というか公園のど真ん中)にあるのですが、BBQ場の使用料はなんとタダ! 近所に住む友人から「ここいいよー」と聞いてやってきた次第。

だって上の写真を撮ってすぐ後ろを振り向くと、はい出ましたBBQ場! 駅から徒歩2分もないのでは? 何この激ヤバアクセス。

実はBBQ場が無料の公園は自宅の近所にもあったけど、わざわざここにやってきたのには理由がありまして……。

じゃーん! この舎人公園、なんと機材レンタルの中に焚き火&BBQに使えるファイヤーグリルと、そしてダッチオーブンがあるのです! ファイヤーグリルは他の公園でもありましたが、ダッチオーブンは舎人公園だけ。
いやほら、せっかくだったらさー、本格的なBBQっぽいことしてみたいじゃん? 憧れのダッチオーブン。ひとりごはんでは絶対ムリだと思っていたので(だって車持ってないし重いし)これはやるっきゃない。

とりあえず売店で薪を買ってきて、さっそく準備を始めます。ここではたと気づく。

ちゃんとした焚き火、初めてかもしれない

おもむろにスマホを取り出し、検索窓に「焚き火 薪 組み方」を入力する私。

とりあえずこうなった。これで合ってるかどうかはよくわからないけど。

真ん中に着火剤置いて、細い薪を足していって……。

ついた。焚き火、全然チョロかった。まあ普通に遊びの延長で庭で七輪使ってた田舎育ちですからね……だってみんなゴミとか自分ちの庭で燃やしてませんでした? 親に見せられないテストとかこっそり大量に焼いて、ついでに台所に転がってたサツマイモとかアルミホイルにくるんで焼き芋やるの。え、やらない?
(注:今は自宅のゴミ焼きは大半が条例違反です)

……カワグチの田舎モノっぷりを暴露してる場合じゃない。ここで今回のレシピをご紹介しましょう。
蓮池先生に出したオーダーは「焚き火でダッチオーブンやります」、これだけ。

蓮池先生
蓮池陽子
ビストロ勤務の後、料理教室で講師を務める。アウトドアで山菜や貝などの山や海の恵みを採取する中で、美味しい物の背景には“美しい自然”や“沢山の物語”があることに開眼。現在は料理教室からフードコーディネートまで幅広く活躍し、アウトドア料理のレシピ本も多数出版。

◯茹で丸鷄
<材料>
丸鶏(1.2kg〜1.5kgぐらい)  1羽分
にんにく(皮をむく) 2かけ
青ねぎ(青い部分)  1本分
じゃがいもなどお好みの芋類
塩          大さじ1強
酒(日本酒か紹興酒) 大さじ1

(お好みで)
バター 適量
シメ用の麺 適量

●台湾胡麻味噌ダレ
味噌        大さじ3
白練りごま     大さじ3
酒         大さじ1〜
食べるラー油(花椒入り)大さじ1ぐらい
とれたチキンスープ   適量

●ねぎしょうがソース
ねぎ(みじん切り)  1/3本
しょうが(すりおろし)1かけ〜
サラダ油       大さじ1/2
ごま油        大さじ1/2
塩、コショウ     適量

「実はこの料理、サルサヴェルデで食べてもおいしいんですが……おしゃれになるのでやめました(笑)。台湾ごま味噌ダレは、食べるラー油の代わりににんにく1かけ、馬告(マーガオ/山胡椒)小さじ1/2〜、花椒小さじ1/2〜、ラー油大さじ1/2〜を入れると本格的な味わいになりますよ」と蓮池先生。

「サルサヴェルデってなんだ?」と検索すると、イタリアンパセリをたっぷり使ったソースとのこと。いやそれも美味しそうなんですが、この連載の意図を本当にいろいろ汲み取ってくれてありがとうございます先生(涙)。でもいつかやろう。

この料理、下ごしらえは前日から始まりますが、ある意味ハードルはそこだけ。鶏肉はお腹の部分をよく洗い、水気を拭き取り鶏肉をフォークで刺して、塩を全体にすり込みマリネします。お腹の部分もよく塩をすり込んで、冷蔵庫に入れて一晩。

保冷バッグに入れて持ってきたこいつを軽く洗い、にんにく、ねぎ、ひたひたの水、酒ともにダッチオーブンにドーン。

丸鶏も実は初めて扱いました……いや一人で食べないよ丸鶏。普通に肉屋で売ってるんだね丸鶏。なかなかの存在感です。

ダッチオーブンの蓋をしめ、火にかけて……こう!!
わーイマドキのBBQっぽーい(小並感)

こちらは家で作ってきたたれ2種。両方とも混ぜるだけという手軽さ! 味噌ダレの方は最後にチキンスープを加えて仕上げます。でもこれだけでもなんかいい匂いなんですけど……。

先生からの残りの指示は「火にかけて1時間、30分ほど経ったところで洗ったじゃがいもを投入」……これだけ。

となるとさあ……まあ、こうだよね。仕方ないよね。アルコールをかっくらいながら、薪をくべながら、じっくりと出来上がりを待つこと1時間。人目? 気にしたら負けだと思ってる。
(実は待つ間に持参したサバ缶とか温めてつまみにしてたのはナイショ。焚き火、サイコー!)

1時間経過。
ほどよく酔いが回った状態で、いよいよオープンザ蓋。

じゃーん! ……これ、説明不要じゃないですか? 火加減が良かったのか澄んだチキンスープのいい匂い、ホクホクに煮えたじゃがいも……寒い冬空の下、あたたかそうな湯気が周囲に広がります。

持参したナイフで適当に肉を切り取り、さっそくいただきまーす……といけないいけない! 大事なもの忘れてた!

じゃがいもにバター投入。カロリー万歳。
ちょっと、「これだからデ◯は」とか思った人いませんか?……いやこれ、先生のレシピ通りなんです!(必死)本当だってば! 私が蓮池先生のレシピを全力で信頼してるのはこういうところですけどね、ええ。そして食らう。

美味しい。

美味しい(大切なことなので2度言いました)。

いやもう、言葉はいらない。いい感じに塩気が効いたホロホロの鶏肉と、上品なチキンスープ、ごまの風味がしっかり効いた味噌ダレと、ピリ辛生姜であっさり食べられるネギダレ、どちらも美味しい。これ、多分普通に丸鶏ぶちこむだけでも成立しますけど、一晩置くことでこんなに味わいが変わるんですね。鶏肉、めちゃくちゃ美味しいです。夢中になって肉を喰らいます。一人ナイフをダッチオーブンにつっこみ、無心に肉を解体するアラフォー女がどう見えていたのかはさておき。考えない、考えたら負け。

というかね、味噌ダレをスープに溶かすとほぼ「味噌ラーメン」のスープ、あの味なんですよ。しかもめっちゃ美味しい店のやつ。そりゃバターもじゃがいもも合うよね、という話なわけです。

となると、当然こちらも期待できるわけです。シメ用の鍋用ラーメン投入ー。

上にほぐした鶏もトッピングして。なにこの至福―!!!!

と。カワグチが今回用意した丸鶏は1.3kg。かなり食べましたが、さすがにまだまだ大量に残っている。
……この公園を教えてくれた近所に住む友人に連絡しました。

カワグチ「鍋、食べに来ない?」
友人「行きまーす」

持つべきものはフットワークの軽い(食いしん坊で吞兵衛の)友人。ほどなくしてビール片手に現れた友人と、延々と食べ、飲み続ける宴がこのあと続いたのでした。

帰り、舎人ライナーから見えた夕日。きれいに富士山が浮かび上がっています。舎人ライナーってこんなに景色がいいんですね。
そういえば前回も、山頂から富士山見たよなあ。しかし高尾山でヒーヒー言ってた私なのに、気がついたら結構いろんなスキル上がってない? あ、そういえば靴もリュックも新調したっけ……メスティンとか連載にかこつけていろんなギアが増えてるなあははは……。

というわけで。連載は最終回となりますが、カワグチのそとごはん道はまだまだ続いてゆくことでしょう。だって美味しいんだもの。
どこかの山や川や公園で一人飯を食らうカワグチらしき女を見かけたら、そっと(生ぬるい笑顔で)見守ってくださいませ。

 

文・川口有紀

 

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