魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【recipe:1】スパイシー・ブランケット

「煙草」と「魔法」

かつてタバコは、儀式の道具でした。
一説によれば8000年前に遡る煙草の起源。太陽を崇拝するマヤ族は火と煙を神聖なものとし神官が神前でタバコの煙を吸っていたといわれています。ネイティブ・アメリカンたちはタバコを回し喫むことで仲間意識を高めていたとされ、また、タバコの煙のカタチから未来を読む占いもあります。
たゆたう煙は魔を退け、その向こうに神々や精霊の住まう場所を覗き見る
ことができると信じられてきました。

その豊かな文化的背景を強く引き継いでいるのが、シャグ(手巻きタバコ)です。
たばこ増税が続き、多くの銘柄がひと箱500円以上まで値上がりしてしまった現在、たばこ葉のみで売られているため紙とフィルターの税金がかからないシャグは、増税の影響を受けにくい「コスパ最強のタバコ」として人気が高まっています。
シャグの醍醐味の煙草のひとつに「ブレンド」があげられますが、異なる銘柄、さまざまなスパイス・ハーブ・オイルを混ぜてオリジナルのフレーバーをつくれる楽しみには、実はサイエンス以前の人類の叡智の歴史につながる「魔術」や「まじない」の奥深い魅力が潜んでいるのではないでしょうか。
そこでケムールでは、お酒でいうところのカクテルにも例えられるシャグのブレンド技術を「シャグ・カクテル」と名付け、その世界を探究する連載をスタートします。

現代魔女のシャグ・カクテル

その案内役をお願いしたのが、本連載を担当する 弥冨Maha さんです。

目次

弥冨Maha

現代魔女術実践家
生きものから食べものへ 育み刈り取り繋ぐ者として「食」を通して母なる大地との循環を伝える者。
大阪道頓堀の川沿いにある隠れ家Restaurant&BAR 魔女の厨房CAULDRONのオーナー兼シェフ
辺境国を旅する事と異国の飯と煙草が好きな人。

マハさんは「現代魔女」。おとぎ話やハロウィンでおなじみの魔女=WITCHですが、現代の魔女は自立・主張・ユーモアを持つ行動的な生き方の表明として、欧米を中心に広がっています(WITCHに性別は関係なく、あらゆるバックグラウンドを持つ人々が参加しています)。その活動は占い・儀式などのスピリチュアルなものから、エコロジーやチャリティ活動・社会的発信、ひいてはファッション・料理などにも及ぶムーブメントです。ではそのなかでマハさんはどんな活動を行っているのでしょうか。
それを端的に表すのが、魔女としてのマハさん個人のシンボルです。現代魔女は「カヴン」と呼ばれる団体に所属するものと、どのカヴンにも所属せずに活動する「ソロ魔女」に分かれます。「ソロ魔女」であるマハさんのシンボルがこちら。

マハさんのシンボル

マハさんのシンボルのモチーフは「ニガヨモギ」「鎌(sickle)」。ニガヨモギは学名をArtemisia absinthiumと言い、魔女に縁の深い女神の名を冠しています。シンボルに込められたマハさんの存在は「育み、刈り取る者」。そう、命を命につなげること=「食」が、マハさんにとっての現代魔女術の実践の軸なのです。
マハさんは、大阪「魔女の厨房CAULDRON(コルドロン)」のオーナーシェフ。ジビエや多国籍ローカル料理の達人であり、世界中のスパイスの専門家です。魔女と言えば調合のエキスパート。さらにマハさんは、ヘビースモーカーで無類のタバコ好き。すでに自作のシャグ・カクテルのオリジナルレシピをいくつも持っています。
ブレンダーはこの人しかいない! ということで、本連載ではマハさん秘蔵のシャグレシピ(すべて市販のシャグと材料で作れるもの)を通して、手巻きタバコのブレンドの楽しさを深堀りします。

では、魔女が調合した秘密のシャグ・カクテルをどうぞ。
第一回は、マハさんが魔女になる前、シャグに出会ったころに生まれた初めてのレシピです。

recipe:1 スパイシー・ブランケット

――私が初めてシャグを覚えたのは、15年前。
まだ魔女になる前のことです。
長いタバコジプシーをしながら「ガラム」に行き着き、寝ても覚めてもガラムばかり吸っていた頃でした。

酒と煙草でガッサガサの声で、艶っぽさの欠片もない私は、毎日外国人しか居ないBARやクラブで過ごす日々。

そんなある日、私はある外国人と仲良くなりました。彼女は大柄なよく笑う黒人女性で、いつもノリが良くて陽気で。私が吸っていたガラムの香りを嗅ぎつけて、タバコを1本トレードすることになった。
そのとき貰ったのが、ゴールデン・バージニアのシャグを巻いた、手巻き煙草でした。
手際良くシャグを巻く彼女の太くて丸みを帯びた指はとても器用で、ゴールドの指輪が光っていたのを覚えています。
話し声すらまともに聞き取れないくらいの大音量の音楽、フロアで踊る人の汗や体臭や香水や煙草や泥酔者のぶちまけた酒と吐瀉物、トイレの下水の臭いに混じり、換気の悪い地下のこもったクラブの空気の中で、私は彼女と会う度に煙草をトレードするようになりました。
それがきっかけになり、私が自分で手巻き煙草を巻くようになったのは、彼女と仲良くなって半年も経たない夏―――。

―――さて、ゴールデン・バージニアと言えば、初心者向けシャグの王道と言えば王道です。

もはや語る事すら無いくらい、吸いやすくてマイルドで、飾り気の無い煙草葉の本来の香りがする、イギリスから来た誰にでも好かれるタイプのこのシャグ。

しかし私はこのゴールデン・バージニアの手巻き煙草以前にガラムユーザー。

…物足りない…

ニコチン大好き、しかもガラムしか勝たん!な私は次第にそう感じる様になっていました。

ガラムみたいなフレーバーって、手巻き煙草で作れないのかしらね。

そう思い立ち、家の食器棚を開けるとカレーやチャイに使う手持ちのスパイスが並んでいました。
このスパイスで、自分のためのタバコをつくろう。魔女になった現在まで続くシャグ・ブレンドはこのときに始まりました。

スパイスを前にして考え込む私。

カルダモン、クローブ、スターアニス、フェンネルシード、クミン、シナモン、コリアンダー、ナツメグ、オールスパイス…

…うーん、思ったよりいっぱいあるな(笑)。

ナツメグは外しときましょう。
喫食時に大量摂取すると嘔吐や頭痛や呼吸困難などの中毒症状が出ますが、喫煙ではどの程度で中毒症状が現れるのか分かりませんからね。

ガラムにはクローブが入ってるけど、クローブだけ入れてもなぁ。
ならば、と選んだのは、カルダモンとクローブの調合

料理では香りつけなどに使われるスパイスですが、魔術・まじないの中でも重要な意味を持ちます。カルダモンは古くから媚薬・精力剤として使われ、クローブは富を引き寄せ悪意を跳ね返すとされてきました。

 

クローブ

カルダモン

カルダモンの種

まずはカルダモンは緑色の鞘から種を出して、クローブと一緒にスパイスグラインダーでゴリゴリと挽きます。

【MEMO】グラインダーは電動のものもあるが、本体が発熱してスパイスの香りが飛んでしまう場合がある。手動のグラインダーを使うのがオススメ。


次にペーパーとフィルターを用意。太さは、シングル(70mm)でスリム巻き。ペーパーはSmoking Brown Singleのリコリスを使います。リコリスは甘草の一種で、サルミアッキとかにも使われています。スペインカンゾウの根で甘みのある植物ですね。

MEMO:サルミアッキ(salmiakki)は、塩化アンモニウムとリコリスを原料とするフィンランドのキャンディ。独特の風味があり、食品やお酒の味付けにも使用されるものです。

スパイスは思いっきり効かせたいので、3つまみほど入れます。シャグ全体に満遍なく行き渡るように混ぜましょう。ゴールデン・バージニアのシャグはしっとり細かいから、男性はスネ毛でアリンコ作る要領でやるとよく馴染みますよ(笑)。指がスパイシーな香りになりました。

ローラーでシャグを巻いたら完成です。

スパイス入りのタバコに火を着けて…

リコリスのペーパーの独特の甘みを唇で感じつつ、ゴールデン・バージニアのタバコ葉のしっとりとコクのある味、そしてカルダモンの爽やかさとガラムにも似たクローブの甘い香り。

たっぷり入れたスパイスの鼻に抜ける香り。アフリカはコートジボワールのザオウリ・ダンスの高速の足さばきのように何だか変に高揚する(笑)

香り高い…あ、コーヒー飲みたい…

MEMO:一緒にドリンクを楽しむなら、エスプレッソをダブルで。口内に流し込むとコーヒーの香りとタバコのフレーバーが交わり合う、最高のChillタイムに。

最後に、このコーヒーと相性抜群の巻きタバコ「Spicy Blanket」の由来について。

このシャグ・カクテルを作ったころ、クラブ通いの毎日で毎晩ベロンベロンだった私。色んな意味で楽しくなり過ぎた夜に…ふと目が覚めると見知らぬ天井でした。
…どこだ…? TRANCEのイベントだったはずだけど記憶がない…何か油粘土みたいな臭いの、ネズミ色のフェルトの出来損ないみたいな毛布に包まれてる。

はい、お察しの通りトラ箱でした(笑)。

ホンマに私の記憶どこ行ったん?
クラブの便器に流して来たん?

訳も分からずPOLICEから送り出された時には、もう日が高かった…太陽が殺しにかかってくる真夏の真昼間。
記憶喪失のままポケットを探ると、マッチと次元大介の煙草くらいグシャッてる手巻き煙草が1本。
それが、このブレンドスパイスだったと言うね…..。今思えば、タバコにブレンドしたハーブの魔力で別の世界に飛ばされてしまったのでは……。
…だから「Spicy Blanket」。もう15年も前の、エスプレッソ以上に苦い思い出。

みなさんは、これを喫ったらふわふわの毛布に包まれて眠りましょう(笑)。
歯磨きは忘れずにね。

スパイシーブランケット
【スモーキー】 ★★
【スパイシー】 ★★★★
【甘さ】    ★★★★【レシピ】
シャグ=ゴールデン・バージニア
ペーパー=Smoking リコリスペーパー70mm
フィルター=なんでも
スパイス=カルダモン4:クローブ6
スパイスはタバコ1本につき、3つまみ。
【★連載開始キャンペーン★】
自分でもシャグ・カクテルを試してみたい方へ。
「魔女が教える秘密のシャグ・カクテル」スタートを記念して、
マハさん自ら調合した「スパイシーブランケット」をプレゼントします。
「スパイシーブランケット」を再現できる、スパイス+シャグ+フィルター+ローラーのセットです。
応募期間:11/7~11/13
【プレゼントページへ→】
魔女のスパイスカクテルと手巻きタバコセット
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「スパイシーブランケット」が喫えるお店

【大阪】魔女の厨房コルドロン
マハさんがオーナーシェフを務めるジビエ・世界のローカル料理を提供するレストラン&バー。「魔女占い」連載中のマグまぐさんも占いを行っています。【東京】逸品道
世界のタバコ・シャグ・喫煙具・ライター・VAPE・電子タバコの品ぞろえ豊富なタバコショップ。店内に喫煙室完備。スタッフがシャグのブレンドを実演し、ご提供します。
文・弥冨Maha  注釈:ケムール編集部
Twitter:@cauldron_dtb
Twitter:@magna_maha
instagram:cauldron_dtb

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