愛煙家ならもちろん、煙草を吸わない映画ファンにも、心に火を点けた魅力的な煙草の名場面があるはず。銀幕を彩った紫煙の名シーン・名優・名監督を紹介する「最強のスモーキング・ムービー・ガイド」です。
今回は「最強の禁煙映画ガイド」。喫煙者にとっていつも頭の片隅にある「禁煙」を映画はどう描いてきたのでしょうか。
では愛煙家も嫌煙家のあなたも仲良くお読みください。映画のスクリーンからはケムリもイヤな匂いも出ませんから…。
レンタルビデオ業界を退いた後、『キネマ旬報』等雑誌、WEBでの執筆やTwitter (@eigaoh2)で自分の好きな映画を広めるべく日夜活動している70年代型映画少年。Twitterスペースで映画討論「#コダマ会」を月1開催。第2代WOWOW映画王・フジTV「映画の達人」優勝・映画検定1級・著書『刑事映画クロニクル』(発行:マクラウド Macleod)
- 1 ケムール編集部にて
- 2 プロローグ :過激すぎる!?禁煙アニメの世界
- 3 ①禁煙初級編: くわえタバコ/リノ・ヴァンチュラ『シシリアン』
- 4 ②禁煙初級編: 禁煙パイポ/松方弘樹『修羅のみち』
- 5 ➂禁煙中級編 :ドッグフード/メル・ギブソン『リーサル・ウェポン3』
- 6 ④禁煙上級編:催眠/『晴れた日に永遠が見える』『パパ/ずれてるゥ! 』『ゲット・アウト』
- 7 ⑤禁煙上級編:電流ビリビリ/『ジェット・ローラー・コースター』
- 8 ⑥禁煙最上級編:スティーブン・キング式禁煙プログラム/『禁煙挫折者救済有限会社/ Quitters, inc.』
- 9 ⑦禁煙番外編:懸賞金/『タバコのなくなる日』
- 10 結論:喫煙でも禁煙でも映画はおもしろい
ケムール編集部にて
担当「先日、読者の方から『シガレット・バーン』宛にご意見をいただきました。毎回、映画を使って喫煙を促進するのはいかがなものか? って」
私「そういうつもりやないんやけど……」
担「まぁ、タバコ嫌いの方も読んでいただいていると思えば、嬉しいことじゃないですか。せっかくなので今回の『シガレット・バーン』のテーマは”禁煙”でいってみません? ほら『コンスタンティン』(’05)のラストシーンでタバコをガムに変えて禁煙するでしょ、ああいうやつです」
私「映画を真似て、タバコを止めよう!『心のコスプレ/禁煙奮闘篇」でんな」
担「そう、シガレット・バーン流禁煙のススメです」
私「ほな、まぁ、最初はもっともらしく、お堅くいきましょか!」
プロローグ :過激すぎる!?禁煙アニメの世界
マヤ文明の時代から始まった人類の喫煙習慣。その有害性は17世紀、イギリス国王ジェームズ一世が言ったぐらいであまり社会には知られていませんでした。
しかし、さすがに子供にまで喫わせてはいけません。1938年、『WOLLY SMOKE』という子供向けアニメが作られました。
興味本位でタバコを喫った子豚ちゃんの前にニック・O・ティーンという煙の妖怪が出てきて、シュールで奇怪な幻覚を見せます。
1951年にはディズニーが人気キャラ、グーフィーを主人公にして、さらに過激な反喫煙アニメを作ります。タイトルはずばり『NO SMOKING』。 内容は禁煙を始めたヘビースモーカーのグーフィーが禁断症状に悩まされるというもの。しかしその描写は麻薬中毒者のそれと違いはありません。
ふたつのアニメを観た子どもはタバコを喫いたいとは思わないはずです。
大人を対象にした禁煙アニメが作られたのは1964年。タイトルは『BREAKING THE HABIT』。切り絵キャラが禁煙の利点を語り合うという5分足らずの作品ですが、アカデミー賞短編アニメ賞にノミネートされ、学校での上映作品に選ばれました。
担「(これはタバコじゃなくてマリファ〇では?)禁煙メッセージの最初はアニメだったんですね」
私「1960年代後半ごろから喫煙の健康被害が言われるようになって、映画でも禁煙が描かれるようになります。余談ですけど、ニコチンガムが開発されたのは1967年。スウェーデン海軍潜水艦の航海中、ニコチンが切れた乗組員が色々問題を起こしたことがきっかけなんですって」
担「へぇ…じゃあ禁煙というよりニコチン摂取のための道具だったのかな」
私「ではいよいよ、『シガレット・バーン流禁煙ガイド』のはじまり、はじまり!」
①禁煙初級編: くわえタバコ/リノ・ヴァンチュラ『シシリアン』
フロイト博士によると人間の性欲求の発達は五段階あって、その第一段階が“口唇期”。赤ん坊が生きるために母親の乳首を吸うことから、人間は口と唇から最初の快楽を経験するんですって。“口唇期”は乳離れする2歳ぐらいで治まるはずなんですが、その快楽が多すぎたり、足りなかった人は口から快楽を得ることから逃れられなくなるとのことです。
「口寂しい」からタバコを喫う人は、もしかしたら快楽享受の段階が“口唇期”で止まっているのかもしれません。必要なのは煙の香りでもニコチンでもありません。お母さんの乳首やおしゃぶりの代替品です。
そんな人にお薦めしたい禁煙法は、『シシリアン』(‘69)でリノ・ヴァンチュラ演じる警部が実践している方法。その方法はいたって簡単。喫いたくなったら、タバコをくわえるだけ。但し、絶対に火をつけてはいけません。赤ん坊の頃、お母さんの乳首を吸った時に得た安心感を唇に挟んだフィルターの感触から感じてください。そうすればきっと禁煙が続くはず。実際、ヴァンチュラは登場した時点で「13日と6時間」、タバコを断つことに成功していました。
但し、この方法には難点があります。
親切な人が火をつけようとしてくることです。悪気はないんですが、禁煙中の人にとっては迷惑千万。『シシリアン』では気を利かせてライターに火を付けた部下を、ヴァンチュラがどやしつけていました。
おまけにいつもタバコをくわえている訳ですから、何かのきっかけで火を付けたくなるのがスモーカーの性。実際、ヴァンチュラも追っていたアラン・ドロン演じる凶悪犯の行方が分かった時に、緊張の糸が切れたのか禁煙の誓いを破って、部下に火を求めてしまいます。結局、映画の中でヴァンチュラが禁煙したのはひと月ほどでした。「リノ・ヴァンチュラ式禁煙法」は、当の本人も失敗しているので難ありです。
“口唇期固着”状態のスモーカーはやはり王道のアレを使うべきかもしれません。そうです、禁煙パイポです。
②禁煙初級編: 禁煙パイポ/松方弘樹『修羅のみち』
ゴルフ用品メーカー、マルマンの関連会社が開発したのがご存じ、禁煙パイポ。喫煙者の “口唇期固着”状態に着目し、昔、縁日で売っていたお菓子のハッカパイプから着想を得た商品です。
1984年に発売されると市川準が監督したCMが大受けして大ヒット。マルマンの年商は7億から40億に跳ね上がったといいます。それから約40年。禁煙パイポは今も販売を続けています。
とは言え禁煙パイポはCMの
「私はこの禁煙パイポでタバコを止めました。私はコレ(小指を立てる)で会社を辞めました」
という有名なフレーズもあって、なんだかこっ恥ずかしさを感じる方がいるかもしれません。禁煙パイポではリノ・ヴァンチュラのくわえタバコのように様にならないとお思いでしょうか?
でもそれは間違いです。『修羅のみち』シリーズ(01~05)をご覧ください。この全12作の大河やくざ物語の中で松方弘樹が素晴らしい禁煙パイポ仕草を見せているのです。
松方のパイポ仕草の基本は「くわえる」ではなく、「噛む」です。そして「ここぞ」という時にパイポを噛む歯を剥き出しにするのです。その時の松方の表情が良いんです。松方の“心のコスプレ”をしたくなること間違いなし。例えば、常に禁煙パイポをくわえていることを冗談のネタにされた時は、松方を真似て「馬鹿にするな!」とすごめば、あなたはきっとこう思うはず。
「私は禁煙パイポで松方弘樹になれました」
松方弘樹式禁煙法の難点は、やった人のガラが悪くなることです。禁煙をしている時はただでさえイライラするんですから、出来れば周りの人から好ましく思われたいもの。
ならば、お薦めなのが『リーサル・ウェポン』禁煙法です。
➂禁煙中級編 :ドッグフード/メル・ギブソン『リーサル・ウェポン3』
シリーズ第一作『リーサル・ウェポン』(‘87)でメル・ギブソンが演じたマーティン・リッグス刑事は以前本コラムで行った『キング・オブ・ヘビースモーカー決定戦』にエントリーされるほどの喫煙者でした。
それがどんな心境の変化か『リーサル・ウェポン3』(’92)では禁煙に挑戦しています。
その方法は当初、喫いそうになると相棒のロジャー・マータフに注意してもらうといういい加減なもの。四六時中マータフと一緒にいる訳ではないので効果がありません。ある時、いくら言ってもタバコに火を点けようとするリッグスに腹を立てたマータフは偶然、「これでも食って、気を紛らわせ!」と、目に留まったビスケット型ドッグフードを渡します。
TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.
敵には“リーサル・ウェポン/究極兵器”として凄まじい戦闘能力を発揮するリッグスですが、相棒の言うことには素直です。その日からドッグフードを携帯し、タバコが喫いたくなると食べるようになりました。するとどうでしょう。リッグスはタバコを口に運ばなくなったばかりか、獰猛な番犬とすぐにじゃれ合うという特殊能力まで身に着けたのです。その後、リッグスは、とある理由でスモーカーに戻るようなことを言って終わりますが、続く4作目には喫煙シーンは無し。もしかしてドッグフード禁煙を再開したのかもしれません。
ちなみにメル・ギブソンが映画の中でドッグフードを食べるのは『リーサル・ウェポン3』が初めてではありません。『マッドマックス2』(‘81)の時に缶詰めのドッグフードを犬と分け合ったことがあるんです。
「普通のビスケットではダメなの?」って疑問を持たれる方がいるでしょうが、ビスケット型ドッグフードは人間用と違って、砂糖や塩を使用していないからとっても健康的なのです。
但し、『リーサル・ウェポン』式禁煙法にも問題点があります。劇中、リッグスが言っていますが、「走る車を追いかけたくなる」とか「自分のタマタマを舐めたくなる」とか、犬化してしまうリスクがあるらしいのです。
担「どれもリスクが大きすぎますよ! ロクな禁煙法がないっ…!」
私「ニコチンと手を切るのは、それなりの覚悟がいるっちゅうことですわな」
担「ヤクザや犬にならなくてもいい禁煙法はないんですか? もっと簡単に効果のある…これじゃ嫌煙家の読者にフザケてると思われちゃいますよ」
私「そりゃ、星の数ほど映画はありまっさかい、なくはないですが。えげつないものばかりですよ」
④禁煙上級編:催眠/『晴れた日に永遠が見える』『パパ/ずれてるゥ! 』『ゲット・アウト』
ニコチンパッチやニコチンガムが流通する前に、アメリカで行われていたのが催眠禁煙法です。
この療法が映画に初めて登場したのは『晴れた日に永遠が見える』(’70)。施術されるのはバーブラ・ストライサンド演じるヒロイン。彼女は人差し指と中指が黄色くなるぐらいのヘビースモーカー。一日の喫煙本数は驚きの100本です。そんな彼女は催眠中に受けた暗示で見事、禁煙に成功します。
催眠療法が次に登場したのは『カッコーの巣の上で』(’75)、『アマデウス』(’84)で二度、アカデミー賞監督賞を受賞した名匠ミロス・フォアマン初のアメリカ映画『パパ/ずれてるゥ!』(’71)です。
この映画ではバック・ヘンリー演じる平凡な妻子持ちの中年男が催眠治療を受けます。催眠中に禁煙を促す音声を聞き、終わるとセラピストから次のような指示をされます。
「もしタバコが喫いたくなったら、目を閉じ、目の玉をグルリと上に廻し、右手で目を覆い、こめかみを押さえてください。そして、こう呟く。
『タバコは体に毒である。人は長生きするために、自分の体を尊重し、保護する義務がある』」
中年男は言われた通りに行い、ニコチンへの欲求を抑えることができます。
2本の映画の事例を見ると催眠療法による禁煙をやってみようかなと思う方が出てくるでしょう。しかし実は催眠術による禁煙は未だ、有効性が科学的に立証されていません。
実際『パパ/ずれてるゥ!』の中年男は家庭問題のストレスを受けて、知らず知らずの内にタバコに火をつけます。もっと大変なことになったのは『晴れた日に永遠が見える』のヒロイン。催眠療法の結果、前世の記憶が蘇ってしまうのです。
この二人以上に催眠療法で災難に見舞われたのは、『ゲット・アウト』(’17)でダニエル・カルーヤが演じた主人公でしょう。彼は恋人の母親から受けた催眠のおかげでタバコを見ただけで気分が悪くなり、見事、禁煙に成功します。しかしその催眠には恐ろしい罠が隠されていたのです…。この映画を観たら、催眠禁煙法をしたいなんて思わないはず!
⑤禁煙上級編:電流ビリビリ/『ジェット・ローラー・コースター』
紫煙で煙ったガラス張りの小部屋。灰皿には吸い殻が山盛り。その中でタバコを喫う男がひとり。おかしいのはタバコを口にする度に男が飛び上がること。男の手にはパッチ式の電極が張り付けられ、そのコードはガラスの向こうから男を見ている技師の手元にあるボタン付きの機械に繋がっている。ボタンを押すとタバコを喫う男に電流が流れる仕組みになっているようだ…。
これが『ジェット・ローラー・コースター』(’77)でジョージ・シーガル演じる主人公が受けていた禁煙治療。早い話が「パブロフの犬」と同じ条件反射を利用した方法です。禁煙希望者にノンストップでタバコを喫わせ、くゆらすごとに放電し、「喫煙=痛い」という条件付けがされるまで続けて、タバコと縁を切らせるのです。
気になるのはその結果。もし効果が出なければ、挑戦した人はただのマゾです。
物語はジェット・コースターの安全検査官である主人公とジェット・コースター連続爆破犯の対決。主人公は禁煙を続けながら捜査を行います。そして事件が解決した時、無性にタバコが喫いたくなって、通りすがりの人からタバコを貰うのです。『シシリアン』のリノ・ヴァンチュラのように禁煙に失敗してしまうのか?
ところがどうでしょう。彼は貰ったタバコを口にする前に捨てたのです。どうやら電流ビリビリ条件反射禁煙法は効果があったようです。
担「おめでとうございます! ってなるか!…まさかこの禁煙法も『催眠治療』みたいに実在したなんてことはないですよね」
私「それはわかりまへんけど、現在のアメリカには電流ビリビリリストバンドってのが販売されてるんです。タバコだけやのうて、間食でも何でも止めたい習慣をする度に電流を流すことが出来るそうですわ」
担「電撃だけじゃなくて罰金が銀行口座から自動引き落しされるって書いてある!どうかしてるぜ!」
私「次にご紹介するんは、ホラー小説の帝王スティーブン・キングの短編小説を原作にしたオムニバス映画『キャッツ・アイ』(’85)です。そん中の一話『禁煙挫折者救済有限会社』は電流ビリビリ条件反射禁煙法をより過激にしたものですねん」
担「もうダメだ、キングが出てきた…。絶対人が死ぬヤツだ…」
⑥禁煙最上級編:スティーブン・キング式禁煙プログラム/『禁煙挫折者救済有限会社/ Quitters, inc.』
禁煙挫折者救済有限会社/Quitters, inc. が妻や子供がいる禁煙希望者向けに用意した1年間の禁煙プログラムは以下の通りです。
- 最初の一か月間は一日24時間、禁煙しているかどうか監視される。次の二か月は一日18時間の監視。しかしどの18時間かは知らされない。四か月目は喫煙者に逆戻りする人が増えるので再び24時間体制の監視に。五か月目以降は毎日断続的に12時間の監視が行われる。
- 禁煙の誓いを破った時
一度目:契約者の妻が感電室に入れられ、床から電気が放電される。
二度目:契約者本人が感電室に入れられ、放電を受ける。
三度目:夫婦で感電室に入れられ、放電を受ける。
四度目:子供が感電室に入れられ、放電を受ける。
五度目:妻と子が殴る蹴るの暴行を加えられた後、感電室に入れられ、放電を受ける。
六、七、八度目:妻子への殴打がその度毎に激しくなり、感電室の電圧も上げられる。
九度目:子供の腕が折られる。
十度目:二度と喫煙できないように契約者は殺される。
これが数十年に渡り、タバコ、酒、薬物依存症だったスティーブン・キングの想像力が生み出した成功率98%の禁煙法です。このプログラムの恐ろしいのはタバコを止めただけで終わらないことです。もし契約者がタバコと縁が切れた後、決められた体重を超えると、愛する妻の小指がちょん切られてしまうのです。
担「この方法で三度禁煙破りをするヤツはマジで人でなしですね…」
私「そうですな~」
担「最後まで使えそうな禁煙法がなかった…。でもこうやって紹介されると、『禁煙』そのものを描いたのは『禁煙挫折者救済有限会社』だけなんですね」
私「実はでんな、禁煙を描いた幻の映画があるんですよ」
⑦禁煙番外編:懸賞金/『タバコのなくなる日』
私が高校生だった1980年代前半。当時は午前・午後・夜9時・深夜と、今では信じられないほど映画がテレビで放映されていました。その中には日本人向けではないという理由で未公開で終わった映画も含まれていました。
ある日、テレビをつけるととんでもなく変な映画が始まったのです。こんな物語でした。
大手のタバコ会社が「禁煙」がいかに無駄なことかを証明するためにキャンペーンを行います。それは喫煙している住民全員が30日間、禁煙した町には2500万ドル(現代の貨幣価値に換算すると約199億ドル)を進呈するという大懸賞イベント。挑戦した多くの町が次々と脱落する中、アイオワ州の田舎町イーグルロックの喫煙者たちはニコチンの禁断症状に苦しみながら、禁煙を続けます。最初から懸賞金を払うつもりがないタバコ会社は禁煙者たちにタバコを喫わせるべくあの手、この手の誘惑を始めるのでした…。
映画のタイトルは『タバコのなくなる日』(’71)。原題は“禁断症状”を意味する俗語“COLD TURKEY”です。
懸賞金付き禁煙キャンペーンなんて映画の世界だけの出来事だとお思いでしょう。とんでもありません。現実に行われたことがあるのです。
アメリカ合衆国インディアナ州。2001年から住民の喫煙率を下げようと、州政府の予算で禁煙啓蒙運動を開始し、その一環として行われたのが“Quit 2 Win”コンテスト。『タバコのなくなる日』と同じく30日間の禁煙に成功すれば2,500ドルの賞金を初めとする豪華賞品を進呈するという大盤振る舞いのイベントでした。2007年に行われた第一回には、なんと5000人以上が参加し、7人が賞品を獲得しました。
しかし、コンテストは翌年の第二回で終了してしまったようです。理由は分かりませんが、第一回の優勝者の誰かが禁煙を止めたのか、州議会の議員の誰かが正気に戻ったのかも知れません。
いずれにしろ州政府が音頭を取って、映画みたいな禁煙コンテストを開催するなんて、
「いや~、アメリカって本っ当に楽しい国ですね」。
結論:喫煙でも禁煙でも映画はおもしろい
担「禁煙で賞金稼ぎ(笑)。『タバコのなくなる日』超面白そうですね!」
私「日本ではビデオにもDVDにもなってませんねん」
担「それは残念です…(なんでそんな映画を覚えてるの?)」
私「色々、映画を挙げてきましたが、何ちゅうか、心のコスプレで禁煙したくなる映画はありまへんな」
担「かろうじて松方弘樹の禁煙パイポかな…。『ジェット・ローラー・コースター』と『禁煙挫折者救済有限会社』は普通に拷問ですし。やっぱり禁煙は自分の意志でやり切らないといけませんね」
私「今回の記事のネタを調べていて知ったんですけど、タバコと肺がんや心疾患の関連性とか、受動喫煙の研究が進んだのはヒトラー政権下のドイツやそうですわ。そいで国家ぐるみで禁煙運動をやりましてん」
担「これがホントの『禁煙ファシズム』ですね」
私「で、ふとある映画を思い出しましてん。喫煙、飲酒、婚外・婚前性交、それに赤身の肉を食べるのも禁じられた全体主義の道徳国家アメリカを舞台にした『エスケープ・フロム・L.A.』(’96)です」
担「また極端な設定の映画を…」
私「こん中でカート・ラッセル演じる名うてのアウトロー、スネーク・プリスキンはずっと、タバコを欲しますねん。映画の最後でスネークはようやっと“アメリカン・スピリット”を見つけて、火を点けてひと言」
担「なんと言ったんです?」
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「Welcome to The Human race/人間に戻れたぜ」
担「カッコいい! 言いたい! これぞ心のコスプレ!」
私「タバコを喫うのも止めるのも決めるのは個人。お上が強制したらいけまへん」
担「また色んなところから怒られそう……」