〒″〒″の映画沼 〜魔法・変身・イケおじ……本気ギャルが偏愛するスペイン映画『マジカル・ガール』〜

皆さんは「魔法少女」といったら、なにを思い浮かべますか?
セーラームーン? さくらちゃん? どれみちゃん?

初めまして!〒”〒”(デデ)と申します。

〒”〒”(デデ)
ギャルイラストレーター/YouTuber。8月12日生まれ。
イラストレーター・漫画家としての活動と並行し、ギャルスタイルとサイバーファッションを融合させた”サイバーギャル”としても活動している。YouTubeではメイクチュートリアル他、自身で施すロングギャルネイルが人気。元体重約70kgの隠キャ喪女。世間のギャルに対する「汚い」や「マナーが悪そう」などのマイナスイメージを払拭することが目標。ギャル界のHIKAKINを目指している。※文字に書く場合は、ギャル文字の『〒″〒″』表記が正しい。

普段は魔法少女…ではなく、
主にYouTuberやイラストレーターをやっている、
しがないギャルです。

先日ケムールさんのライターケースデコ企画シリーズ「It’s a small Kawaii world」にお呼ばれしまして、編集さんとお話ししているうちに、
気が付けば何故か、映画のレビューを任せていただくことになりました…!
デコでもイラストでもなく、文章のお仕事…?!
映画は確かに好きだけど、でもレビューなんてやったことないぞ…! と内心アセアセでしたが、
「きっとうまくいく」精神で二つ返事させていただきました!


出典:hulu

私は「毎月映画100本観てます!」というわけでも、
「文章を書くのが得意です!賞取った事あります!」というわけでもないのですが、
どちらに対しても知識はなくとも愛はありますし、なによりやる気があります!
どうか暖かく見守っていただけましたら嬉しいです…。ペコペコ。

と、いうことで、せっかくはじめての記事ですから、今回は私がもっとも推している映画を紹介したいと思います。

さて、話を戻しますが、
皆さんは魔法少女といったら何を思い浮かべますか?
きっと、キラキラしていて、魅力的で、子供たちの憧れ的存在なキャラクターのはず。
私も少し前まではそうでした。

けれど、今の私が思い浮かべるのは、坊主頭の少女と、額に傷を負った女性です。
彼女たちが登場するのは、スペイン映画「マジカル・ガール」

出典:ビターズ・エンド公式

あ、先ほどの問いかけに『魔法少女まどか・マギカ』を思い浮かべた、そこのあなた。
特にあなたにお勧めしたいです。
なんてったってこの作品のカルロス・ベルムト監督は、『まどマギ』に影響されて作ったと公言してますからね!


出典:hulu
この映画の良さは、分かる者同士で
「良いよね…」「良い…」と、
それだけを口にして、多くを語らない事に価値があるような、こうしてレビューを書く事自体ちょっとズレてるような気がするところです。
でも結局そういう映画が私は大大大好きでして……(一番好きな映画は「風立ちぬ」です。あれは良い…)
どうしても布教したい!でも語りたくない!でも語らないと伝わらない!
というジレンマがありましたが、「語りたくない」という感情の方が折れてくれました。
皆さんを、この作品の沼へと引きずり込みたいと思います。

【あらすじ】
白血病で余命わずかな少女アリシアは、日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の大ファン。彼女の願いは、「ユキコ」のステージコスチュームを着て踊ることだった。失業中の父ルイスは、娘の最期の願いをかなえるため、高額なコスチュームを手に入れることを決意する。お金も借りられず、ついに宝石強盗に手を染めようとしたルイスは、心に闇を抱える既婚女性バルバラと出会い、一夜をともにしたところから物語は大きく展開。ルイスは不貞をネタにしてバルバラを脅迫し、お金を手に入れようとするのだが….。

バルバラの夫の精神科医や、過去にバルバラと因縁があった元教師ダミアンを巻き込み、アリシアの無垢な願いをきっかけにして登場人物たちの運命が予想もしなかった悲劇に向けて交差していく、というサスペンスなのです。

どうですか? 「沼」な感じがしませんか?
この作品を推すにあたって、大好きなシーンを3つほどご紹介しようと思ったのですが、
ごめんなさい……多すぎて3つに絞るのは無理でした!!
(何が「語りたくない」んだか…。)

そこで、見どころを3つのテーマで語ってみたいと思います。


1 リアルと非日常が入り混じった謎の展開

まず1つ目に紹介したいのは、独特の演出です。
冒頭のワンシーン、物語のはじまりは、教室から。
教師が授業中、一人の生徒が手紙を回している事に気づき、前へ出るように言います。
生徒の名は「バルバラ」という少女。教師は「その手紙を読みなさい。休み時間まで待てないぐらい重要なんだろう?」と迫ります。

「本気ですか?」
「本気だ。読みなさい」
「”仏頂面で残念な顔”」

バルバラが読み上げたのは、教師の悪口でした。
教師は、手紙を取り上げようとします。でもバルバラは「無理です」と答えるだけ。
なぜなら。
イラスト:デデ

手の中から消えた手紙。ありがちな学校でのワンシーンかと思えば、突然に非日常的な演出が放り込まれます。
初めて観た時、この冒頭の演出に物凄い衝撃を受けました…。このように、一体何があったんだろう…と私たちに想像させ、そのまま放置するのがこの映画の大きな特徴です。


2 音楽と映像のミスマッチが最高
そして、音楽の使い方。
この映画、とにかく音楽が秀逸すぎるのです。「マジカル・ガール」には、一貫して激しいシーンが一切ありません。冒頭の奇妙なテンションのまま、登場人物は声を荒げることもなく、耳鳴りがするほど静かな映像で物語が綴られていきます。
でも、そこに大音量のゴキゲンな音楽や、眩暈がするような情熱的な曲が流れるのです。
「魔法少女ユキコ」のテーマソング(?)として使われる「春はSA-RA SA-RA」という曲はなんと日本のもの! 他にもスペインの歌謡曲「炎の少女」など、音楽と映像のギャップにすっかり心を奪われてしまいました…。


3「ダミアン」がツボすぎた
最後に、私がこの映画でもっとも推しなキャラクターをご紹介します。
物語の中心になるアリシアとルイスではなく…。
その男は「ダミアン」といいます。冒頭のシーンに出てきた教師です。
私にとっては、ダミアンなくして『マジカル・ガール』は語れません。

この男、見た目も性格も至って人畜無害、むしろ善人なのですが、殺人、暴行、小児愛の3ヤバを抱えて10年刑務所にいた過去があります。
服役していた理由は、元は12才の少女であり、教え子であったバルバラを守る為だったそうですが、詳細については全く語られていません。
一人の少女の為に、他人を殺めた男。これが例えば、悪さが顔に出ているイカつい見た目で、性格も卍精神強めのイケおじだったらなんとも思わずに済んだのですが、違う。
バルバラの手紙に書かれていたように、まさに”仏頂面で残念な顔”なのです。

(そこがたまらない……。)

ダミアンは服役前、おそらく50は過ぎていると思うのですが、12才の少女バルバラに強烈な恋心を抱いてしまっていました。そして、服役してからもずっと、バルバラに囚われてしまっています。「バルバラと再会するのが怖い」と、刑務所から出ることすら拒んでい他ほど、自分の危険性を意識していました。
もしバルバラに再会したら、あの娘はまた私に何かを頼るだろう。その時、自分は何もかもを犠牲にして、暴走してしまうだろう……と。
このなんともリアルでアブないところが、ダミアンの魅力。好きだ……。

そう、「マジカル・ガール」は、ルイスが娘のアリシアの夢を叶えるために悪に手を染めていく物語であると同時に、それに巻き込まれたバルバラとダミアンが、長い時を越えて再会する物語でもあるのです。

ふたりの再会は、バルバラがルイスに恐喝され、お金を用意するために過酷な売春(?)をした後。
バルバラは出所したダミアンの自宅に逃げてきます。顔はただれていて、ひどい火傷を負っていたようでしたが、ダミアンには一眼見てバルバラだと分かりました。
しかしダミアンはバルバラを避け、夫に連絡してから救急車を呼びます。病院に運び込まれる前に、バルバラは一冊の本をダミアンに預けていくのですが、その本を、思わず鼻を押し付けるようにして嗅ぐダミアン。
その後、なんとか冷静になろうとするダミアンでしたが、バルバラに病院に呼び出されてしまいます。「事件のことは、私ではなく警察や旦那に話すべきだ」ともっともらしい事を言って断ろうとするものの、すぐに戻ってきてしまう……。ダミアン…… たまりません。
バルバラは包帯の隙間からわずかに見える瞳に涙を溜めながら、ルイスにむりやり強姦され、携帯電話に録音されて恐喝されたと嘘をつきます。
その嘘を信じて、ダミアンは一線を超えてしまうのです。
街でルイスを発見すると、ダミアンはわざわざ着替えるために家へ戻ります。白いシャツに赤いネクタイ、スーツ。香水も付けて、髪を後ろに固めます。これがダミアンの戦闘服。闘う前に着替えるなんて、まるで魔法少女の変身シーンみたいじゃないですか?
ルイスを銃で撃ち殺したダミアンは、死んだルイスから家の鍵を盗み、携帯電話を探すためルイスの家に。部屋へ入ると……。
そこには、坊主頭の魔法少女が立っていました。

誰もいないと思われた部屋に、一人の少女が立っている。コスチュームを纏い、ステッキを持って……。(もちろん、バルバラから脅し取ったお金でルイスが買ってあげたものです)

ルイスの携帯電話を見つけるダミアン。
「……お父さんの携帯電話はこれかい?」
頷くアリシア。
ダミアンは携帯電話を持って一度は部屋を出ましたが、やはり、戻ってきます。
「後ろを向け」
ダミアンは銃を構えます。
しかし、アリシアはダミアンをただ見つめています。今までのすべてを知っているような目で。
「後ろを向くんだ」
もう一度言いますが、アリシアは動きません。
思わず目を背けるダミアン。そして引き金を……。
この作品の一番の名シーンでしょう。


4 そして最高のラストシーン
ですが私がもっと好きなのは、ラストシーン。
全てを片付け、携帯電話を返しにバルバラのいる病院へ戻るダミアン。
携帯電話を見せ、男が今後現れる事も、恐喝されることもないと言います。
バルバラは「守護天使だわ」と口にして、携帯電話を受け取ろうと手を出しますが、ダミアンはそれに応えません。

「くれないの?」
「無理だ」
「どうして?」

「持ってないから」

携帯電話は消えていました。
冒頭のシーンの繰り返し。なんて、なんて憎すぎる演出なんでしょう………!!
救いようがないはずなのに、救われたようなエンド。
消えた携帯電話は私のハートそのものです。


解けない魔法のような、後味が残る映画

悪い意味ではなく、いつまでも後味の残る素敵な映画です。
いろいろな方の感想を読むと、「マジカルガール(魔法少女)とは、アリシアのことだ」と考える人と、
「いや、バルバラに違いない」と考える人で分かれるみたいですが、
私は、厳密に言えばどちらも魔法少女ではないと考えています。
ですが、バルバラはかつて魔法少女だったのだと思うのです。
少女だったころ魔法で手紙を消せたバルバラは、大人になるにつれて、悲しい魔女へと変身しました。
『まどか・マギカ』もそうでしたね。
ラストで携帯電話を消したダミアンが、バルバラから「守護天使」と呼ばれていたのも納得です。

魔法少女や天使にしか、魔法は使えませんから。

マジカル・ガール
監督/脚本:カルロス・ベルムト
2014年製作/127分/スペイン
※2021/09月時点でAmazonプライムで観れます!

今回は、初回ということで私がもっとも好きな映画のひとつを紹介させていただきました。

最後までお読みいただきありがとうございました!

 

文&イラスト:デデ
youtube / twitter:@cyber_gyaru / instagram:dededooo

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