炎上とスピードと誠意
こんにちは。炎上ウォッチャーのせこむです。
「世の中が平和だと炎上は起きやすい」が持論ですが、先月から炎上案件が立て続いている昨今。ウクライナ情勢はむしろ悪化してますがこれはもう長期化してることによって正常化バイアスが働いているのだと勝手に思っています。
そんな中、こんな記事を見つけました。
参考▶「対応の遅さ」謝罪してもSNSで炎上した企業の半数が回答…第三者ほど拡散!? 消費者との意識のズレがあった
簡単に概要をまとめると、「謝罪しても炎上した」企業の担当者は「謝罪が遅かった」ことを原因に思っている。でも消費者の方は「謝罪のタイミングはもちろんだけど、誠意が感じられなかったことが不満に思う理由」だという認識のズレという話。
正直、これを読んだときの感想は「自分の思ってたことは正しかったんだな」と。だーーーかーーーらーーー、ずっと言ってるじゃないですかー。
「現実の火事もネット炎上も初動が大事! でもただ謝ればいいってもんじゃない」
これは企業のSNS担当の方にぜひ肝に銘じておいていただきたいというか、未だにこんな認識のずれがあるんだなというのはびっくりです。これはぜひ、「たいへんよくもえました」の過去記事を読み込んで参考にしてもらいたいですね(宣伝)。近年最大の通信障害にも関わらず、逆に会社の評判が上がった(?)感もあったKDDIの会見とか。
さて、ここ半月の炎上案件です。いつもどおり炎上度合いを示す★マークは独断と偏見で、5つが最大でございます。
①▶椎名林檎のアルバム特典グッズ、ヘルプマークに酷似で炎上。発売延期へ ★★★★
②▶花王、国際カミングアウトデーにちなんだツイートが批判され謝罪へ ★★★
③▶インスタ女子のUSJでの投稿が「露出しすぎ」と批判されUSJ側も注意喚起を出す事態に ★★★★
ちょっと補足しておきたいのが③USJ。USJで下着姿まがいのコスプレ写真をアップしてたインスタ女子たちが叩かれており、USJ側がコメント出したりとかいろいろ論争になってるんですが、押さえておきたいポイントとしてはあのコスプレ女子たちの写真を撮ったのは「USJのキャスト」なんですよね。要はUSJはその手のコスプレが治外法権状態になっており、今回話題になったことで「いやうちは許してないですよ」的なことを言わざるを得ない状態になっているという状況。
「自主規制を守らないと線引をせざるをえず結局いろいろ息苦しくなる」というのはあちこちで見る状況ですが、あーあ……と思っております。ちなみにディズニーランドはコスプレ入園のガイドラインは凄く厳しいですよ(通年は年齢制限あり、ハロウィン時期は大人も可だがキャラクターは決まっている)。
今回の「たいへんよくもえました」
というわけで、今回は…①椎名林檎です。
経緯をご説明。
ユニバーサルミュージックのオフィシャルアカウントから椎名林檎初のオフィシャル・リミックスアルバム『百薬の長』が11/30に発売とアナウンスされる。同時にオフィシャルストアのみで購入できる限定グッズ付きのアルバムが告知されたが、この限定グッズのキーホルダーが”ヘルプマーク”に酷似していること、そしてマスクケースについている赤十字が国際法に違反しているのではという指摘が相次ぐ。
■椎名林檎ファンからも苦言が
土・日・祝日の三連休ということも影響したのか…ネット上での火力がどんどん増す。ネットニュース各社も取り上げはじめる中、ユニバーサルミュージックのアカウントや椎名林檎のオフィシャルアカウントは対応なし。
ユニバーサルミュージックの椎名林檎公式サイトで
「11月30日発売の椎名林檎のオフィシャル・リミックスアルバム 「百薬の長」【UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤】に付属する特典グッズに関しまして、多くの皆さまから頂きましたご意見を踏まえ、弊社内で協議しております。改めてご案内させて頂きます。」
とのアナウンスが掲載。
グッズのデザイン改定とアルバム発売延期が上記サイトならびに椎名林檎のオフィシャルツイッターアカウントから発表される。
炎上分析START🔥
この件、さまざまな状況が追い風(?)となって炎上を加速させていた気がします。
【追い風1】 グッズはまだ発売されていない、厳密に言えばアルバム特典であり単体で買えるものではないものの(まあだとしてもアウトですが)、単体で買えるもの&既に発売されたものだと思った人が批判に加わっていった
【追い風2】 ヘルプマークや赤十字マークという「人命に関わるもの」の扱いにも関わらず、三連休ということも相まってか、対応が遅れたことで批判がより強くなっていった
【追い風3】 椎名林檎の初期作品『本能』での看護師コスプレや、過去のアルバムジャケットで赤十字マークを使っていたことから「リミックスアルバムなので過去作品をオマージュしよう」ということでこのモチーフが使われた経緯がおそらくあったものの、特にアルバムジャケットは22年前の作品のため覚えている人が少なく(売れたんですけどね)ただ反感だけが加速していった印象。
※ちなみに過去の赤十字モチーフも、厳密に言うとアウトだと思います。
炎上ウォッチャーとしては面白がりつつ、この件は厄介だなーと思ってました。これが他のアーティストやアイドルならともかく、よりにもよって椎名林檎です。ヘルプマークのことを知った上でこれをやっていたら「オリンピックにも関わったようなアーティストなのにそんな認識だったのか」と怒られ「自分は知らなかった、レコード会社が勝手にやった」と言えば「こだわりのあるアーティストだと思っていたのにグッズの監修してないなんて!」とがっかりするファンは多い。どっちに転んでもデメリットしかないんですよ。さてどう出るか……と思っていたら、まさかの沈黙。
憶測ですが、レコード会社としてはこの炎上のほとぼりが冷めるのを待っていた気もします。ちなみに椎名林檎嬢はちらほら炎上します。特に2014年にはアルバムジャケットやステージングのグッズに旭日旗モチーフを使ったこと良くも悪くも話題となりましたが、これは結局知らないうちに鎮火していた印象。
参考▶「まるで右翼イベント!」椎名林檎のライブでファンが旭日旗を掲げ大炎上
おそらく、グッズが出来上がった経緯も内部はこのときのノリに近かったのでは……と勝手に思っていますが、いかんせん世の中にはパロディにしていいものと悪いものというのがあり、周りのスタッフが誰もそれを認識していなかったというのもびっくり案件です。しかも、冒頭で引用した記事の通り「炎上は初動が大事」。そうです、この件は完全に「初動対応を間違った」例なのです。教科書に載せたいくらい。
ほとぼりが冷めるのを、待つな!
個人的には、炎上を観測した瞬間に椎名林檎本人から「私の認識の甘さでご迷惑をおかけするようなグッズが世に出てしまうところでした、申し訳ありません」的なコメントを早々に出すのが一番良かった気がします。だって最初の告知ツイートは金曜日のお昼、早々に炎上が観測されたのでビジネスタイムの対応も間に合ったはず。「知っていた」ことにしても「知らなかった」ことにしてもダメージはあるでしょうが、沈黙していたことのダメージに比べれば正直小さい。
早めに謝ることで株が上がるケースが往々にしてあるのは前述の通りです。今回の件を機にヘルプマークを知ったという人もいるので「私と一緒に学んでいきましょう」的な対応にすればむしろそっちに活かせたんじゃないかな? と思うんですよね。そういう意味でももったいないなーと思っていました。
そうそう、「赤十字マークは使ってはいけない」というのはデザインに関わる人では常識中の常識なのですが、これを誰もスタッフが指摘しなかったのか、しかもユニバーサルミュージックという大会社が係わる案件で……というのもデザイン界隈を呆れさせていた要因の1つでした。これ、アルバムのアートワーク等でファイザーや大塚製薬などの医薬品のデザインをパロディにしている件まで延焼しているのですが(正直、ここは「パロディ」で許される範囲な気がします。これがアウトだとジョークグッズの類もアウトになってしまう)ここをどうするのかがちょっと興味があるところ。
これまで出していなかったリミックスアルバム、しかも参加アーティストはかなりいいメンツなだけに発売前に盛大にミソがつくわ発売延期だわ……というのは本当に関係者におかれましては大変な事態だとは思いますが、これを機に皆様、モチーフやデザインの重要性というのは改めてよーく考えていただきたいなと思うせこむでした。
文・せこむ
- マネー
- たいへんよくもえました, 椎名林檎, 炎上