世の中には2種類の人間がいる……。
「持っているヤツ」と「持ってないヤツ」
それは金も、人脈も、情報も、そして経験も同じこと。
持っているヤツと持ってないヤツ、その違いはどこにあるのだろう?
答えは簡単。
全部を欲しいと思えるかどうか。
その本能に従い、行動し続けられるかどうか。
強欲?傲慢? 言いたいヤツには言わせておけ。
磨き続けた本能と直感に従い、自由な生を謳歌した先に人間の本質を探し続けるネオホームレス・SHO。
その生活は、365日ホテル暮らし。
しかも1度泊まったホテルにはもう2度と泊まらないという…。
そんなSHOの最高にクールでエキサイティングな新連載。
記念すべき初回は、「超持っているヤツ」であるネオホームレス・SHOの思考を紐解くインタビューだ。
さあ、ケムール読者諸氏、覚悟はできてるか?
本能を解き放て!!
本名、野口昌一路(のぐち・しょういちろう)。2010年、株式会社citrusを創業。飲食業界に特化したコンサルティングサービスのほか、飲食店経営、不動産、デザイン、発送代行など多くの事業を手掛ける。2021年ごろより現在のホテル暮らしを開始し、リュック1つで世界中を旅し続ける。車や現代アートを多数所有。モットーは3Sミッション「死ぬまでに知らないことを少なくする」。
ランボルギーニに乗って
7月・都内某所――。
うだる暑さのなか、われわれケムール編集部はネオホームレス・SHOさんと待ち合わせをしていた。
ドドドドドド……ッ!
突如聞こえてきた、野生の本能を否応なく刺激してくる重低なエンジン音。
音の正体を辿って振り返れば、なんとまあ黒光りする黒豹のごときランボルギーニが近づいてくるではないか。
運転席に座るのはもちろんネオホームレス・SHO。
左ハンドルの運転席から見えた笑顔は爽やかさそのもの。車のボディの深い黒とは対照的な、真っ白な歯がきらめいた。
なんとこの人、家はないのに車は10台くらい(本人も覚えていない)持っているそう。
早速ワケが分からない……。
自分が男であることに若干の申し訳なさを感じたり感じなかったりしつつ、助手席に乗せてもらうことに。
(車体が低くてとにかく乗りづらい!)
ちなみに2座席のためカメラマンはその場に置き去りに…。(後ほどカフェで現地集合しました)
いざ、インタビュースタートである!!!!
乗らない車を買う男
――(一応聞きますが)車は何台くらいお持ちなんですか?
SHO よく覚えてないけど10台くらいじゃないかな。見たことないのも結構あるからさ。
――へぇ~……え? 見たことない?
SHO そのまま放置してる。見たこともないから乗ったこともない。そりゃそうだよね(笑)
乗ったことないのが10台中5台くらい。見たことないのが2台くらい。
――どうして買ったんですか…?
SHO んーやっぱ経験? 色んなものを持つっていうのが1つの経験になるから。
SHO せっかくだからとばしてあげるよ。楽しいから。
編集部メモ:
唸るエンジン!!
凄まじい加速感!!
一瞬で置き去りになる景色!!
思わずちょっとだけ仰け反る身体…!!
――これあったらもう遊園地いらないすね…
SHO いらないねぇ。(とばすと)女の子がけっこう喜んでくれる。
――いやぁ車かっけえ…僕、ペーパードライバーなんですけどこれ乗ると車いいなってなりますね。
SHO でも車は意味ないよ。お金かかるし。
――え(笑)
SHO 駐車場代とかさ。
――維持費もかかりますもんねぇ……(遠い目)
SHO そうそう、タクシーのほうがよっぽど安い。
365日ホテル暮らしの哲学
――ところで、根本的な質問ですが、どうして365日ホテル暮らしに?
SHO 逆にどうして家に住んでるの?
――……なんで家に住んでるんでしょう?
SHO ちょっと毎日家のなかで使うもの思い浮かべてみて。何個ある?
――ベッド、歯ブラシ、タオル、トイレットペーパー……うーん、10個くらいですかね。
SHO だよね。毎日家のなかで使うものって10個くらいで、そのほとんどはホテルにある。ってことは持たなくてもいい。
――(極論!!)
SHO 家自体がそもそも固定概念。家っていらないものがたくさんあるじゃん。家から抜け出すことで、固定概念から解き放たれてリミッターを1つカットできる。
自由になりたいんですってみんな言うけど、家にいるじゃん?
すぐに家をなくすっていうのは難しいと思うけど、リミッターカットして自由になるには捨てるとか断るってことが必要だと思うんだよね。
SHO 本当に大事なものだけを取り残して、他は捨てる。
そのためにもお金を稼いだり、身体を鍛えたりしたほうがいい。自分に自信がつけば自然と断ったり捨てたりできるようになれるし、そうすることで的確に判断して、本質的に自分にとって必要なものを選べるようになる。
――ボディビルとかもされてましたもんね。
SHO 生きてく上で身体が綺麗なほうが色んなことに対処できるからね。健康でもいられるし、見た目が綺麗なほうが得もできるし、力があったら重いものとかも持てるし。
――(重いものとかも持てる…??)
SHO よりよく生きるためのツールとして身体を鍛えてる感じだね。
でもラクして楽しく生きるための要素は何でもやりたい。お金も身体を鍛えるのも、そのための要素の1つって感じかな。
――では、SHOさんは固定概念を捨て去るために毎日違うホテルに泊まっていると?
SHO 俺は直感力が大事だと思っている。たとえば今、水を飲もうかなーとか、コーヒーに変えようかなとか、人は意識的・無意識的に関わらず常に1秒1秒、選択と決断をしている。
でもこれって1つ1つ熟考はしてないでしょ? ほとんど直感で選んでいる。
これってもしその都度いい決断ができたら、人生ってすごく変わっていく。だから直感力を鍛えれば鍛えるほど、よりよい人生になる。直感の先には本質があるんだよ。
――直感力はどうやって鍛えるんでしょう?
SHO 直感を鍛えるためには感性を磨かないといけない。俺は美意識とも呼んでるんだけどね。
世の中にある価値観ってけっこうバラバラだけど、たとえばゴミを道端に捨てちゃダメとか、美意識って世界中でどこか共通している部分がある。直感の根底には美意識や感性があって、それを鍛えていくことは直感力を高めることにも繋がる。
――美意識を鍛えるって、いまいちイメージが湧きませんね。
SHO 感性を磨くために必要なのが経験と言語化。
Youtubeでもよく言ってるんだけど、俺はフランス人には肩こりがないって例をよく使う。フランス語には肩こりって言葉がないんだけど、これはフランス人の肩が凝らないってわけじゃない。実は肩が重いなとは思っているけど、言葉がないからそれを「肩こり」として認知できないってこと。
言語化することで認知できるようになって、経験が自分のなかに蓄積されていく。それによって感性が磨かれ、直感力が鍛えられ、最終的には本質に到達して全ての物事が見られるようになりたいと思ってる。
そのために言語化と経験を重視しながら3Sミッションを遂行していくことを、俺は大事にしているんだよね。
――3Sミッション?
SHO 死ぬまでに 知らないことを 少なくする
――(まさかの日本語!)
SHO 今、日本語なんだって思ったでしょ? でもね、こういうのは分かりやすいほうがいいんだよ。
――あくまで目的は思考の整理と言語化ってことですか。
SHO そういうこと。――そろそろ着くよ。
編集部メモ:
都内をぐるりと走り回り、取材場所のカフェへ(カメラマンも無事合流)。
担当編集人生で最初の、そしてたぶん最後のランボルギーニ、めちゃくちゃかっこよかった…。
…そしてやっぱり降りづらい!!
世界一のフッ軽の流儀
――運転、ありがとうございました。
SHO いーえ。タバコ喫う?
――え、あ、はい。でも、SHOさんって非喫煙者じゃなかったでしたっけ?
SHO やめてたんだけど、この連載が決まって、つい1週間くらい前に復活した。
――まさか、ケムールのために…?
SHO かたちから入ろうと思って。
――連載作家の鑑です!!(脱帽)
SHO お互い気分よくやりたいからね。
編集部メモ:
喫っていたのはメビウスとアイコスの二刀流!!(メビウス撮り損ねた…)
ちなみにケムール連載作家=喫煙者という縛りはありません。100%SHOさんの心遣いでした。
――ヤニもチャージできたところで、早速。SHOさんは365日違うホテルに泊まっていますが、良かったホテルとか、ホテル選びの基準にしていることはあるんでしょうか?
SHO 基本的に1回泊まったホテルは泊まらない。だから、もう東京は行き尽くしちゃって、今は東京にはほぼいない。今日もこれから仙台に行って、明日は石巻に行く。
――今日これから!?
SHO そう。石巻には、東日本大震災の津波を経験した方が語り部をしてるんだけど、その人の話を聴かせてもらいに行く。
去年までプランとかなく、とりあえず行ってたんだけどさ、現地の詳しい人や精通した人と一緒に行くことでただの旅が10倍20倍の価値になるんだよ。
――世界一のフッ軽ですね…
SHO その表現いいね(笑)
選ぶ基準は、呼ばれたら。もし今から北海道でご飯食べるよーって言われても俺は行ける。だってまだ飛行機あるじゃん?
ホテルは当日ギリギリにしかとらない。その日最後にいた場所、ご飯食べた場所、あるいは次行く場所で探す感じかな。
――高級ホテル、みたいなこだわりはないんですね。
SHO ないね。いいホテルとかそういうことを考えると経験値が減る。だから同じ理由でチェーンのホテルにはなるべく泊まらないようにしてるね。
――そうしたら、好きな街とかは…?
SHO 福岡。好きすぎて福岡に支店つくったくらい好き。
――新卒で福岡配属になると2回泣くって、大学生のころよく話してました。僕は行ったことないけど、めっちゃいい街みたいですね。
編集部メモ:
◆SHOさんが作詞作曲もした楽曲のMVはこちら
SHO ただ去年までずっと福岡が大好きだったんだけど、今年に入って飛行機が遅延したり、会いたい人とタイミングが合わなかったりする機会が増えた。大好きなのになんでだろうって思ったね。
――(ワールド・イズ・マインを地でいく人…?)
SHO 俺は運性(うんしょう/運勢と相性を合わせた造語・英語で「luck-fit」)を大事にするようになった。
運っていうのは、人・場所・モノで構成されている。昔はこいつとすごい気が合ったけど最近はなんか合わないなってこととか経験あるでしょ?
――ありますね。学生のころめっちゃ苦手だったけど、久しぶりに会ったらこいつこんないいやつだっけ? みたいなパターンとかも。
SHO 自分にとって相性がいい人・場所・モノっていうのは常に変わるものなんだよ。
そう考えて動くと、たとえ上手くいかなくなっても、今は合わないだけかなって思うことができれば生きやすくなる。
ーーこだわらないってことなんですかね。
SHO 変化を恐れない。上手くいかないと思ったら変えていく。その手助けが普通だと四柱推命とか占いになるのかもしれないけど、俺は常に動き回ることで常に正解を探して、合うかどうかを肌で感じながら生きてる。
…大丈夫? ちょっと宗教チックになってない?(笑)
――たぶん、大丈夫です(笑) つまるところ好き嫌いはないってことですか?
SHO 好き嫌いはもたないようにしてる。今の自分に合うかどうかは変わっていくから。
極限のミニマリスト
――SHOさんがホテル暮らしして良かったことってありますか?
SHO ホテル暮らしのメリットって4つある。
1つ目はマインドフリー。固定概念を1つ捨てることでリミッターカットできるって話。
2つ目はタイムフリー。家がないことで、移動が直線的になってすぐに行きたいところに行けるようになる。
――移動が直線的…?
SHO 家があると、どこに行くにしてもいったん家を経由しないといけなくなる。服を取りに戻らないとって思ったりするでしょ?
――なるほど。言われてみればたしかに。
SHO で、3つ目はストレスフリー。掃除とかは全部ホテルの人がやってくれるから、生活のあれこれに思考を割くストレスから自由になれる。
4つ目はエッセンシャルフリー。ホテル暮らしだと荷物って持てないじゃん? だから強制的にミニマリストになり、必要なものだけを手元に残した本質的な暮らしができるようになる。
――ずっと気になってたんですが、これだけ色々と削ぎ落して、そのリュックのなかに残ったものって何なんですか?
SHO それ、読者知りたがる?(笑)
――分かんないですけど、僕はすごく気になります。
SHO ちなみに、服は入ってないよ。今着てるこれだけ。俺は基本、水着とTシャツしか持ってない。朝はこれを着たままシャワー浴びて、歩きながら乾かす。
――(なんという豪気!)
SHO 海外とか行くから、宗教とかの絡みもあるし、服はなるべくシンプルなものがいいんだけど、シンプルで乾きやすくて生地がいい服がなかったから自分で作った。
――(ないから作ったって、よく考えるとすごいパワーワードだよな…)
SHO でもさ、靴下だけは乾きが悪いから、毎日履き替えて捨ててる。
――え、使い捨て?
SHO 持っていったら荷物じゃん。あと、靴は汚れたり、気分が変わったりしたら、捨てて新しいものに換える。
――身軽にもほどがありますやん…
SHO リュックのなかはパソコン、スマホ、プロテイン、サプリメント、化粧水、パスポート、カードくらい。プロテインとかは身体鍛える用で持ち歩いてる。
――人間の生活ってここまで削ぎ落せるんですね。本と漫画で溢れた自宅を反省したくなりました…
SHO 反省しないでいいよ(笑)
俺も移動が多いから、漫画のサブスクとかNetflixとかHuluとかTverとかは、全部スマホに入ってる。たしかに漫画は紙のほうが見やすいよね。
――ようやく共通点が見つかった気がして安心しました(笑)
――盛り上がってきたところだが、今日はここまで。
2時間あまりを予定していた取材は、SHOさんの整理された思考が次から次へと言葉というかたちを得て並んでいったこともあり、とてつもない充実感と引き換えに大幅なタイムオーバーを記録した。
(仙台行の飛行機は間に合ったのだろうか…)
そんな感じで原稿にまとめていくと、ちょっと長すぎんぞこれ…となっちゃったわけで、急遽前後編に分けることに。
さあ、ここから話題は、みんな気になるビジネスと金の話へ――。
後編はこちらから!!
――ケムール読者諸氏、心して待て!!
◆ネオホームレス・SHO/野口昌一路(のぐち・しょういちろう)
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Twitter(X):@korekore_koume
ケムール編集部員。前は古着屋。潰れたソフトケースのなかにあるしわしわの煙草がすき。担当連載は「鳥居服装学院」「Talk at Fillers」「ネオホームレス-自由と稼ぎの流儀-」。
株式会社アクロスソリューションズ所属。
HP:https://www.acrossjapan.co.jp/