プロジェクトK vol.1後編 村田蓮爾氏独占インタビュー「FUTURICA CHORD PRODUCTS №01 SEN」に込められた想い

「プロジェクトK」はあまり世に知られてない「商品」たちが、なぜ・どうやって作られていくのかというのを面白おかしく伝えていく連載です。普段目に止まらなかったり、気にしていなかったモノが生まれる背景に潜むドラマをぜひお楽しみください。

夏の祭典はおかげさまでなんとか乗り切りました

前回の記事ではかなりあやふやな状況報告で終わってしまいましたが、結論から言うとお伝えしていた予定は今のところ順調にスケジュール通り動いております。原稿が掲載された日(8/10)の夜には無事最終サンプルも受け取ることができ、そのまま御大のチェックも済ませて、コミックマーケット会場(8/13)でちゃんと予約を取ることができました。

こちらが正真正銘最終サンプル

コミケ会場のブース設営はこんな感じでした。ホントに暑かった…。

8/19~26にはワニマガジン社の運営されている「space caiman」というギャラリーで引き続き展示予約頒布を続け、30日には量産品が東京着。一斉検品の後、9/3のコミティアを皮切りに実物をイベント頒布、予約者様に順次発送ということで、熱い熱い季節が扇子がらみのイベントだけで終わってゆく2023夏ですが皆様いかがお過ごしでしょうか?藤岡は疲れ果てております。

イベントに合わせて何かを作って売る、というのは本当に大変なことです。コミケなんかにはそんな方がたくさんいらっしゃいますが…。とにかく色々なタイミングで結構な時間が持っていかれるので、こういうことをやろうと考えてるよいこのみんなは是非何事も余裕をもって進行するよう心がけてください。

FUTURICA CHORD PRODUCTS №01 SEN の今後の予定

ともあれ関係各位の皆様のおかげで、「作って初出し」するところまでは何とか辿りつくことができました。ここから普通のメーカーとかの商品だと、普段から付き合いのある問屋さんなんかにお願いして、パーッと小売店さんに注文書を届けてもらって一ヶ月位注文とって、発送手続きを倉庫と連携してやっていく、みたいな事になります。

が、なんせ我々同人サークルの延長でモノづくりをやっておりますので、どこかのショップで販売みたいなことは特にせず、細々と各種イベント(コミケ、コミティア)と、村田蓮爾氏本人の通販サイトを現在鋭意制作中ですのでそちらで販売を続けてまいります。あと、そもそももっと前の段階で出ているはずだった「扇子を持った女の子の絵」も御大が鋭意制作中なので、何時発表できるかわかりませんが今後もご期待くださいませ。

他にも、今回ご協力いただいているライテック社様側で海外展開などを考えているそうなので今までのところ手を出せなかった79億の村田蓮爾ファンの皆様にもお届けできるかもしれません。乞うご期待。

村田蓮爾氏独占インタビュー

と、いうことで一旦、村田蓮爾氏デザインの扇子「FUTURICA CHORD PRODUCTS №01 SEN」を本連載で追うのは今回が最後となります。ここまでは藤岡視点で話を進めてきましたが、最後はデザイナーである村田蓮爾氏本人の独占インタビューで締めたいと思います。

ーーそれでは早速始めていきたいと思います。
村田蓮爾氏(以降村田):よろしくお願いします。

ーー今回オリジナル扇子を作ろうと思ったきっかけは?
村田:扇子は昔から作りたくて構想を考えたりはしてたんですが、色々タイミングよく話が来たのでやることになりました。

ーーブランド名「FUTURICA(フューチャリカ)」の名前の由来は?
村田:僕がよく好んで使っている言葉「FUTURE」と「何か」の造語で、今回はラテン語から「〜的、〜チック」という意味の「ICA」を組み合わせました。
僕のデザインのルーツが、1920年代の工業製品から来ているんですよね。レトロフューチャーという考えがありますけども、それプラス今の感覚を足して、昔なんだけどちょっと未来っぽいデザインラインを昔からやってきたので、それに似合う言葉ということで「FUTURICA」という名前にしました。

パッケージに印刷されたFUTURICAロゴ

ーーアルミが好きということですが、それは「未来」というテーマと何か関係が?
村田:アルミだけじゃなくて金属は大体好きで、今回アルミを選んだのは軽いからですね。
扇子はやっぱり手に持って常時動かさないといけないものなので、見た目重そうですけどできるだけ軽くしたかったっていうのがまずあります。

ーーでは「未来」とは特に関係がない?
村田:そうですね。だからこれから何かもし作っていくのであれば、また金属のものを使うかもしれませんけど、アルミが中心というわけではないですね。

ーー見た目や使用感にあわせて素材を選びたいということですね。
村田:そうですね。プロダクトによっては小さくても、重さが欲しいっていうのがあったりするので、そういうのにはアルミは向かないですね。

ーー今回の扇子は外骨がアルミ製ですが、そのイメージは最初からあった?
村田:えっとね、なにで作るか最初はわからなかったんですよね。
いわゆる削り出しの挽物(ひきもの)って呼ばれるものにするのか、それとも鋳造で作るのかわからなかったんで、デザイン先行でとりあえず最初は形を決めて、作ってる段階で色々製造方法が変化していった感じですね。結局はアルミダイキャスト(鋳造)になりました。

ーーそのほかにこだわった部分があれば教えてください。
村田:エッジ(角)の出方と、外骨に何点かついてるディンプル(窪み)の深さとかはちょっと気をつけました。

ーー扇子の内側の黒い部分も選んだんですか?
村田:これね、多分「黒」って言っただけで僕はあまりタッチしてないんですよ。張り地も「透けた方がいいな」って言ったくらいでどんなものが出てくるのかわからなかったんですけど、結果的にいいものが出てきたのでよかったです。

ーーでは今後の製品作りでこだわりたい部分はありますか?
村田:やれること、やれないことあるとは思うけど、作るにしても余裕を持って作りたいかな笑

ーーそうですね笑 扇子は実際にできたものを使ってみてどうですか?
村田:使い心地がいいですね。あんまり他にはないモノになったなという気がしています。

ーーイベントに来ていたファンの方も驚いてましたよね。
村田:「意外と軽い」とかね。

ーーファンの方にはどういう場面で使って欲しいですか?
村田:暑い時ですよね〜、あとは自分を表現する小物アイテムとして持っててもいい気はしますね。
好きなケースとか買ってきてカバン中入れててもいいしナスカンとかで吊り下げてもいいし。

ーー私なら着物の帯に挿してタッセルを揺らしながら歩きたいですね…今までにも椅子や自転車を作っていますが、アイディアはどんな時に思いつきますか?
村田:プロダクトみたいなものはやっぱりこう、落書きで昔から書いてるような色んなメカ類とかのデザインのラインがあるので、そこに既存の「自転車」だったら自転車の形をはめ込む形で考えてますね。

ーーイベントでは新しいアクリルスタンドが頒布されましたが、そこに描かれていた車がオリジナルのデザインと知って驚きました。いつぐらいにデザインされたものなんですか?
村田:あれほんとだいぶ初期ですよ。もう30年くらい前。最初の同人誌を作る時にはもう描いてましたね。

ーーでは今ちょうど支援サイトで順番に公開されている同人誌を作る時にはもうあった?
村田:そうですね。あそこにも確かイラストを描いてると思うんだけど、テイストも…思考実験みたいなものなんですよ。ああいう形の場合あからさまに不安定で、現実ではあり得ないものではあるから、いかにそれっぽく描いていくかというか、描く度にその時の自分の考えで変わっていくんですね。だから30年前に描いたロケットスターと今描いたロケットスターは、基本のラインは2人乗りで2輪車で変わらないんだけれども、形は変わってますね。

ーー今の方がお気に入りですか?
村田:そりゃもう。だいぶ現実的な形になったと思います。

ーーたしかにこのデザインを見た時、実際に作ったらめちゃくちゃ可愛いのでは?と思いました。
村田:そうそうそう。実際に作りましょう。実物大で。

(笑い)

村田:ちなみに昔…20年前くらいにワニ(ワニマガジン社)とバイクを作ろうとしていたんだよね。
ーーへぇ!
村田:ロケットスターではないけれども、埼玉の有名なカスタムバイクショップとバイクを作ろうとしてて、それが…一台…400万。試作品が400万で、試作品は2台作らなあかん。外装を変えるだけなんやけど、外装の内側とか、走ってる時に強度が集中してそこが割れてきたりするから、内側をどう補強するかとか実証実験するために「2台以上は作らなあかん」と。それが「1台はどうしても400万以上かかる」と。
ーーなるほど。バイクはどのくらいの大きさですか?
村田:えっとね、元々は250ccのHONDAのバイクを想定してたんですよ。そのフレームを使って外装を変えるっていう話。その外装をFRPかなんかで作って。
ーーそれは…完成しなかった?
村田:結構高かったから一個人で買うのは厳しいかも、ということでお蔵入りですね。

ーーものづくりは難しいんですね…製品の設計をしている時に考えていることや、思いつくタイミングはありますか?
村田:タイミングはないですね。割と常時というか、ふとくる感じですよね。全然違う絵を描いている時とか、もしくはなんでもいい。トイレに入ってる時でもいいし料理している時でもいいんですけど、ふと「この組み合わせはどうかな」みたいな。

ーーではキャラクターのイラストを描いている時と感覚はあまり変わらない?
村田:そうですね。それこそキャラクターのイラストを描いている時に、バイクに乗せたいなとか。それはオリジナルのバイクなのか既存のバイクなのか、オリジナルのバイクだったらどういうデザインにするかとか。そういうところから出てくる可能性もありますしね。
パーツが多いプロダクトほど、考えることがどんどん複雑になってくるから、扇子は割と簡単な部類ですね。これからもそういった小物も作っていこうかなとも思いますね。

ーー楽しみにしております。制作中の心持ちはどんなもんなんでしょう。
村田:絵を描いてる時は楽しみもあるんですけれども、苦しみも結構多いんですよね。うまくいくことがそんなに多いわけではないので、そこをテクニックでどうカバーするかとか、偶然的な面白い表現ができたりとか。ていうのもあるし“進めてみないとわからない”みたいなね。新しいものが出てくる可能性もあるし、言うても絶対的に締め切りが当然あるので時間的な兼ね合いもあるし、苦しみ楽しみ半々ですかね。

ーーこの製品(たち)を通して、伝えたいことはありますか?
村田:実用品ならもちろん使い倒して、自分の一部になるまで使ってくれたら嬉しいし、オブジェとして観賞して眺めるというのも全然ありですね。

ーー今後作っていきたい製品は何かありますか?
村田:ユニセックスな小物であるとか、カバンであるとかを作っていこうと思います。

ーーカバンいいですね。
村田:今までにも「POSTMANBAG」とか、他にも少量で作ったことはあるけどね。色んなカバンがあるじゃないですか、軽い方がいいとか小さい方がいいとか。そんな感じの使いやすいカバンを作っていきたいですね。こだわったやつはかっこいいんですけど重いんですよね。20年前の僕はイキって持ってたんですけれども笑 今は重くて持てない。本体が重いから中に荷物を入れるともっと重くなる。革だから気を使うし。

ーー村田蓮爾先生の今後の活動や展望などはありますか?
村田:イラストはもちろんのこと、これからはFUTURICAブランドのプロダクトを作っていきます。今後ともよろしくお願いいたします。

ーーそういえば、新しく発売する限定画集のおすすめしたいポイントを教えてください。
村田:全ての画集に一個ずつ描き下ろしのアートグラフがつくので、そういうのは世の中にあんまりなかったものだと思いますね。値段も相応になりますけど、一点モノが画集と一緒に手元に届くって言うのは新しい試みだと思うので、楽しみにしていてください。

ーーそのアートグラフのご進捗はいかがですか?
村田:5号目です。

ーー50%!? まだまだじゃ…
村田:半分は過ぎました。

ーーポジティブ笑 いつ発売でしょうか?
村田:はっきり決まっていなくて、11月か12月なんですよね。

ーー冬コミで販売するカレンダーも作るんですよね?
村田:作る作る。藤岡が頑張ります。

ーー…笑 この記事を読んだ読者にも、何かお土産になるものがあるといいなと思うのですが…
村田:なんやろ。扇子だとあれやから、ロケットスターのアクリルスタンドプレゼントとかかね。

ーーありがとうございます!こちらでインタビューは終了とさせていただきます。
村田:はい。ありがとうございました。

ーーー
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