「プロジェクトK」はあまり世に知られてない「商品」たちが、なぜ・どうやって作られていくのかというのを面白おかしく伝えていく連載です。普段目に止まらなかったり、気にしていなかったモノが生まれる背景に潜むドラマをぜひお楽しみください。
有限会社ファクタスデザイン・ご紹介
金属製のプロダクトには得も言われぬ魅力がある。
前回ご紹介したイラストレーター村田蓮爾先生デザインの扇子にも「アルミニウム」が使われていましたが、「ステンレス」や「鉄」「チタン」など金属にも様々な種類があります。
それらは身につけるアクセサリーから、移動手段となる乗り物まで、私たちの生活の至るところで見つけることができます。
今回は、そんな身の回りにあふれる金属製品の中でも一風変わったオリジナル製品を世に送り出し続けている、金属製プロダクトのプロフェッショナル「有限会社ファクタスデザイン」さんにお話を聞いてきました。
有限会社ファクタスデザイン
自社ブランド:FACTRON
有限会社ファクタスデザインは1999年設立。腕時計の企画、デザインからはじまり、2007年に自社ブランド商品を販売する「FACTRON ONLINE SHOP」を開設後、様々なオリジナルプロダクトを生産・販売。
自社工房内に並んだ工作機械が一点一点削り出す、オーダーメイドの金属製プロダクトが熱狂的なファンたちを虜にしている。
【製作実績】
・STI EJ20 ジュラルミン削り出しミニチュアエンジンモデル
・EDGEFFE カーボンアタッシュケース
・自走ロボット「Migty」(2022年 CESイノベーションアワード受賞)
・Apple製品・スマートフォン・SmartWatch向けメタルジャケット/ケース
・メタル/チタニウム削り出しアクセサリー、ジュエリー
・ジュラルミン削り出しオリジナルメカフィギュア 「FoxyRabbit」
・ジュラルミンやチタニウム削り出しカードケース(名刺入れ)
・純チタニウム削り出し ペンダントピルケース「TRUSS 」「Fish」「Egg」 etc.
自社ブランドのFACTRON(ファクトロン)製品は、一部消耗部品の交換・修理も受け付けており、半永久的に使いつづけられる逸品ばかり。
気になった方は公式オンラインショップから製品ラインナップをチェックしてみてください。
FACTRON新作メタルウォレット「Boxy」の設計・構造データを大公開!
2023年夏よりFACTRON公式オンラインショップにて販売開始された新作メタルウォレット「Boxy」は、紙幣・硬貨・カードがサイズ約85×99×22mmに収まってしまうという優れモノ。他ブランドでもなかなか見かけないコンパクト仕様で、総重量わずか104.6g(ジュラルミンver.)! 全ミニマリスト・全金属フェチ垂涎の逸品です。大変貴重な分解図・CAMデータも資料としていただきました。
普段からこういったデータを見慣れない方には「なんのこっちゃ」という感じでしょうが、設計を担当する鉢呂氏によると「最初の思い付きからこのCAMデータ(工作機械を動かすためのデータ)にたどり着くまでに数ヶ月ほどかかっている」のだそう。
例えばこれが革財布であるなら、多少の伸縮性があるので大体平均的なサイズで作っておけば、紙幣も硬貨も「財布が壊れない程度までパンパンに詰め込める」と思いますが、メタル財布ではそうはいかないので「紙幣・硬貨・カードを何枚入れられてサイズと間取りをどうするか」を繰り返し何度も調整しながら考えていく必要があるわけです。
ちなみにFACTRONブランドでは「Boxy」が開発される前にコインケースを開発・販売しています。その製品とも併用できるという形で「紙幣+カードケース」も試作案の中にあったそうですが、設計的に「紙幣を三つ折りにする必要があるのが面倒」ということになり、この「Boxy」に辿り着いたとか。
金属の塊からパーツを削り出し、最後は手作業で丁寧に仕上げる
何日もかけて生み出したデータを工作機械に読み込ませてやると、迷いなく金属を加工しはじめます。
作業によって刃物を変えたりなんだりすること10時間43分!?結果出力完了したパーツがこちら。
これを見た私の第一声は「ガン⚫️ラみたいですね!」でした。最初はただの金属の塊に過ぎなかったモノが、意味のある製品パーツとして出力されて、もう興奮しないわけがない。ロマンですよロマン。この子ウチにも欲しい…。これを出力するためのデータを作り上げる人の技術と、けなげに10時間も働き続ける機械たちのハーモニーに胸がいっぱいになります。
ここからパーツごとに切り離して、バリを取ったり細かい部分を仕上げに磨いたりして組み立てていきます。丹精込められて磨かれるごとに、言葉にできない艶が生まれてます。
後半の仕上げ作業は結構人の手によるもので、コレだけ大変だとお値段が高くなっても納得です。
製品素材は航空機にも使われている「ジュラルミン」と希少金属「チタン」の選べる2種類。ジュラルミンは軽くて丈夫、チタンは金属アレルギーがほとんどなく、ジュラルミンと比べて重厚感のあるリッチな仕上がりになっています。
完成した財布には紙幣15枚、カード10枚、硬貨15枚程度が収納可能です。
硬貨はシリコンでホールドされるのでずれにくく音も気になりません。
すっきり最適化されたデザインに惚れ惚れします。
このメタルウォレットはFACTRON公式SHOPで受注販売中。
ポケットからサッと取り出せるミニマムなスマートメタルウォレットを使えば、貴方のお買い物ライフをスマートにアップデートできるかも。
Boxy 紹介動画
FACTRONブランドのこれから
今回ご紹介した「メタルウォレット Boxy」はミニマムを追求したコンパクト設計ですが、ゆとりあるスマホサイズに拡張された「Boxy ロング」も一般販売準備中です。
さらに新商品「コインケースSIX」が10月30日まで、クラウドファンディングサービス「Makuake」にて先行販売中となっております。お見逃しなく。(35%OFFで買えてしまうらしい…)
詳しくはこちら→https://factron.net/coin6.html
ファクタスデザイン社代表・鉢呂氏独占インタビュー
ーーそれではよろしくお願いします。
鉢呂文秀氏(以降鉢呂):はい。
ーーまずは、Boxy開発のきっかけを教えてください。
鉢呂:もともとの背景としては、うちでスマートフォンのカバーを作って売ってたんですが、コロナ禍で売り上げがガクンと落ちまして。それで「何かやらないとね」って話はしてたんです。
きっかけはうちのジュラルミンの名刺入れをクレジットカード入れにして使って下さるお客様がいて、「だったらクレジットカードケースを作ろう」と思っていたんです。
でもとある取引先の方が、カードケースを持ち歩いてるけどお札とかはゴムバンドに留めて小銭もポケットにジャっと入れてるって話を聞いて、じゃあ全部収まる様に作ったらどのくらいのサイズになるんだろうって作ってみたのがBoxyなんですよ。
ーーそういう経緯があったんですね。Boxyでこだわった部分はありますか?
鉢呂:クラウドファンディングで最初から売るつもりで作ったんですけど、これより前に作ったコインケースをMakuakeで購入してくれた方達に、普段持ち歩いてるお札の枚数やら小銭がどのくらいやらとアンケートをお願いしたんです。
そしたら平均値が取れたんで、それをもとに色々試作を重ねてできたのがこの形でした。
実際は小銭入れになってるパーツ自体が取り外せて、そこに鍵や薬も入れられるので、使い道が複数ある仕様になってます。
ここら辺はかなり苦労して、何種類も試作をしました。意匠登録もしています。BoxyロングはBoxyの進化版で小銭6種類が全部入って、フリースペースもあります。
ーー試作中、大変だったことはありますか?
鉢呂:ミリ単位での設計ですね。特にカードは、規格はあるんだけれども、大きかったり小さかったりするから、それを色々考えるとほんのちょっと大きく作らなければいけなかったりして。だけどバッグとかポケットに入れて揺れたりするとカチャカチャ音が鳴るから、音も最小限になるようにしたりとか。
あとは蓋の開閉時にカチッと留まる様にしたくて。がま口を参考に、留まる部分にピン(表面はボール状)をはめ込んでて、バネで引っ込んだり出っ張らせたりっていう動きができるようになってるんですね。財布を閉じると、向かいの凹部分にはまってカチッと閉じる。そういう仕組みになってます。
ーーすごい!
鉢呂:でもこれってある程度使っていくと多少すり減っていくものなので、そうなった時は修繕できるようになってます。受け口の部分も、全部無くなっちゃうことはないと思うけど、取り替えられる様に作っています。
ーー製品づくりはこの一室(およそ94㎡)だけで行っているんですか?
鉢呂:そうですね。この部屋で研究・開発やらデザインやらして、製造をして、ホームページ作って、撮影もやって。
ーー…どのくらいの人数で?
鉢呂:基本的に私と、マネージャー(奥様)の二人で開発・デザイン・出力用データもろもろをやってます。製造には人を雇ってもいますが、梱包も、箱を外注して納品してもらった後は自分たちでやりますね。
ーー大変そうだ…
鉢呂:まあただ、人数が少ないってことは数もたくさん作れないので、出荷するのは週に10〜20くらいですね。あとはクラウドファンディングで売る時は数を作らないといけないので、そこで忙しくなったりという感じです。
ーー作られた製品はどこで販売されているんでしょうか。
鉢呂:自社のオンラインショップがほとんどですね。AmazonとかYahooでも出してますけどそれも自社で出してて。時々イベントなどで数量限定の直販もします。あとは名古屋の東急ハンズで「男の書斎」ってコーナーがあって、そこにも置いてもらってます。なので店舗ではそこまで売ってなくて。
ーーそれはなにか理由が?
鉢呂:うちが作ってるものって、多くはBtoCがメインなんですね。それで自社で作ったものを百貨店とか店舗で売ってもらうってなると、利益率も低くなるし、お客さんの声も直接聞けないしってことで、自社オンライショップで売って、MakuakeやCAMPFIREのクラウドファンディングを利用して知名度をアップさせながら商品を売っていく流れでやってます。
ーーなるほど。今後は何を作っていきたいですか?
鉢呂:そうですね、やっぱり財布が売れるので、コインケースや「Boxy」の進化版を作るかもしれません。大、中を作ったので小も作ろうかなとも。もともと腕時計を作ってたので、時計もまた作りたいですけどね。需要としては財布の方にあるのかなと思っているのでそっちをやっていくかなと。あとは全く関係ないところで革の新しい製品を開発中だったりはするんですけど。
ーーそれ(革製品)は完成したらFACTRONオンラインショップに?
鉢呂:そうですね。
ーー楽しみにしておきます。
鉢呂:でも結局、他の会社がやらないけども、需要がたくさんあるものじゃないとやっぱり売れないんですよね。趣味的なものっていうのはハマってる人はいるんだけど需要もそれだけ小さくなっちゃうので。お財布だったら100人中100人は持ってるじゃないですか。だからその中で自分たちにしかできないモノを供給をしていくのが重要だと考えています。
ーー貴重なお話ありがとうございます。この記事を読んだ読者にも、何かお土産になるものがあるといいなと思うのですが…
鉢呂:これでもいいですか?「シングル110」ってやつです。10円硬貨よりも径の小さなコイン(1,5,10,50,100)が入るコインケース。うちは基本的にあんまり在庫をもってなくて…金額は…14,000円だね。
ーー素敵なプレゼントありがとうございます!こちらでインタビューは終了とさせていただきます。
鉢呂:はい。ありがとうございました。
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ということで、FACTRONが去年の夏にMakuakeで発売したコインケースを抽選で1名様にプレゼントします!
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応募期間は一週間なのでお早めにご応募ください。
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