そろそろ春の気配も感じる今日このごろ。
こんなに穏やかな気候なのに、ネット界には大火事から小火までなんでこんなに炎上が絶えないのでしょうか?
こんにちは炎上ウォッチャーのせこむです。
いやもうね、なんだこれという気分です。
ウクライナ情勢が少し落ち着いてきたからでしょうか?アホくさいものから深刻なものまで炎上がまさに百花繚乱。
いやそんないいものではないですね……。さっそく、近々の主な炎上事件を見てみましょう。
2月後半のSNS炎上ニュース
いつもの通り独断と偏見でつけた星は5つが満点です。
①性教育YouTuber 産婦人科の検診台を揶揄で批判殺到…製造企業も「誤解を生む」とブチギレ
【★★★・・】
②#コンビニはエロ本を売らずにオムツを売れのハッシュタグが6年ぶりに拡散、またも議論へ
【★★★・・】
③人気チャンネル「ゲームさんぽ」改編で物議 堀江貴文氏との“コラボ”に反発「誰の得にもならない」
【★★★★・】
youtuberのやらかしに製造企業だけでなく女性たち、特にママ垢の人たちがブチ切れていたのが印象的だった①。
②はわりと有名なツイフェミを中心に燃え始めたので「あぁ……」という案件でしたが、オムツがコンビニで売ってるかどうかが主題ではなく「コンビニにエロ本を置くな」という話で、しかもコンビニには既に本来の意味の「エロ本」は売っていないのですがいろいろと誤解した人が入り乱れて話をややこしくしてますね。
これ、数年後にまた燃えると予言しますよ。サイゼリヤのネタ並みに。
③はライブドアの人気チャンネル「ゲームさんぽ」がチャンネル編集者の退社&堀江貴文氏のライブドア社復帰のタイミングが相まって突然看板が降ろされるという事件。
個人的には「ゲームさんぽ」が好きだったのでめちゃくちゃイラッとしてますが、「企業と企業所属Youtuber、コンテンツの関係」として今後こういうケースは多くなって来るような気がします。
④は事件が事件だけになんと反応していいかわからないというのが正直なところですが、兼近氏がまた配信などでいろいろ発言しているのがまさに「火に油を注ぐ」状態になっている模様。
Youtuberレベルだとこういう煽り煽られはよく見ますが、テレビメディアにガッチリ出ている人では珍しいパターンだなあと。
というわけで。今回は⑤。はい、成田祐輔氏の炎上騒動です。
実は先月のこの連載でも既に取り上げていた「高齢者は集団自決を」発言。
今回の「たいへんよくもえました」
2023年1月のニュース番組での発言がきっかけで、過去の2021年12月の発言が蒸し返されて炎上、それが余波を呼び……という形です。少し時系列を整理しましょう。
ニュース番組「ABEMA Prime」における成田氏と政治経済評論家の池戸万作氏による議論が話題に。それに関連し、2021年12月の同じく「ABEMA Prime」の少子化対策や人口減少に対する過去発言、「唯一の解決策は結局高齢者の集団自決、集団切腹みたいなものではないかと」という発言が拡散。
この「高齢者は集団自決」発言がネット上で炎上へ。2022年1月にNewsPicsで配信された動画にも「「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」というスライドがあったことから、たびたび発言していたことが可視化される
YouTubeチャンネル「日経テレ東大学」と「ABEMA Prime」からの“引退”を表明
ニューヨーク・タイムズが、成田祐輔氏の発言と炎上騒ぎを記事にして配信
日経テレ東大学『Re:Hack』で中高生たちに「老人が自動でいなくなるシステムを作るとしたらどうやって作りますか?」という質問をされる過去動画が拡散
ちなみにニューヨーク・タイムズの記事はこちらです。
タイトルは「イェール大の教授が日本の高齢者に集団自殺を提案」……アメリカ社会における「イェール大」の影響力を察することができます。
参考:A Yale Professor Suggested Mass Suicide for Old People in Japan. What Did He Mean?
ニューヨーク・タイムズの記事とその後の『Re:Hack』の動画拡散をきっかけに、数々の著名人が成田氏の発言へ「否」を唱え始めます。
いわゆる「市井の人」アカウントではなく、言論人やメディアの人が中心となっているのが興味深い現象です。こちらは代表的な反応。
特に中高生たちの発言動画には大きな拒否反応を示した人が多かったようです。
このニューヨーク・タイムズ記事と中高生への対話動画をきっかけにまた過去の発言が再度検証されるという無限ループ状態に。
また上の時系列でもわかるようにたびたび同様発言をしているだけに、掘っても掘っても燃料が埋まっているという状態。
ここで、そもそも成田祐輔氏って何者?というところをおさらいしておきましょう。
こちらがプロフィールです。
出典:日本経営合理化協会WEB
前述のABEMAのニュース番組や、テレビ東京のネット番組を中心にここ1〜2年露出を増やし、ある日突然メディアに登場していた成田祐輔氏。
歯に衣着せぬ発言と本質をついたコメントで突然お茶の間のご意見番のようになっており、よく知らない人はひろゆき氏や堀江貴文氏などの「ネットでよく炎上するコメンテーター」と同じ用に思っているかもしれません。
が、彼がワイドショーのコメンテーターによくいがちな「なんちゃって学者」と一線を画すのは、「経済学者としてガチの経歴を持つ」ところ。
実は調べればわかるのですが、このプロフィールよりもさらに「ちゃんとした実績」を持つ人だったりします。
この炎上、「老人は集団自決を」という言葉があまりにも強いのでそちらに目を取られがちですが、ちょっといくつかポイントを分けて分析してみたいと思います。
炎上分析START🔥
これは個人的な分析なのですが、実はあの記事の中にあるこの記述
“He often appears with Gen X rabble-rousers like Hiroyuki Nishimura, a celebrity entrepreneur and owner of 4chan, the online message board where some of the internet’s most toxic ideas bloom, and Takafumi Horie, a trash-talking entrepreneur who once went to prison for securities fraud.”
こちらが一つのキーワードだと思います。簡単に訳すとこんな感じ。
ここで注目すべきは西村博之、要はひろゆき氏の記述ですね。
「4chan」というのは、いわばアメリカ版の「2ちゃんねる」。
「2ちゃんねる(現5ch)」を模して作られた掲示板を2015年にひろゆき氏が買収したという経緯があるのですが、この4chanは現在陰謀論等が渦巻く日本以上にやばい状態になっていて、陰謀論者が関わるアメリカでの銃乱射事件の原因の一端とも言われている場所。
つまりこの記事が言わんとしているのは「4chan所有者と一緒にテレビに出てるようなヤバい奴だよ?」ということ。
だからこそ、最初の炎上こそ「テレビの有名人が発言で燃えたんでしょ」くらいに思っていた人たちがNYタイムズの記事で空気を読み、ちょっと反応を変えたのでは?というのも感じました。
そもそもひろゆき氏をあんなふうにコメンテーターとして使っている事自体が欧米社会、特にアメリカでの彼の立ち位置を見るとびっくりな状況なのですが、「あれ、これってもしかして本当にダメなやつ?」と外から怒られて気づいたような感じでしょうか。
前述のように、ガチの経歴を持つ成田祐輔氏、その「ガチさ」が、ニューヨーク・タイムズという一流メディアにこんな記事が載ってしまう原因の一端にもなったのですが、(ただし本質的な意味での「アカデミアでの実績」がないことも記事では書かれています)それゆえ今回炎上したことではなく、「成田祐輔ともあろう人がこんなことを言うようになってしまったのか」という落胆の声が多く見られました。
実は「テレ東ニュース大学」、成田氏が卒業するだけでなく番組自体も終了する模様で、担当プロデューサーはテレビ東京を退社するという話も出ています。
この番組、若者のテレビ離れが進む中で若年層の視聴者も多く、その視聴者の世代バランスは奇跡的だったと言えるだけに(だからこそあんな中高生との対話動画企画なんかも成立したのだと思いますが)そちらを惜しむ人も多い模様。
この「高齢者は集団自決」発言、正直これまでも同じような迂闊発言で燃えた人はいたと思います。
しかしNYタイムズという追加燃料はあったとはいえ、なんで今回だけこんなに長期的に燃えたか?
それはツイッターユーザーのメイン層にこの言葉が良くも悪くも「刺さった」からだと思うんですよね。
こちらのツイートが印象的でした。
これは2022年4月の当連載でも紹介した「吉野家炎上騒動」でも散見された意見だったのですが、「生き延びることができた就職氷河期orロスジェネ世代による生存バイアス」的な現象、ちらほらSNS上では見受けられます。
「俺or私は生き延びてるんだから負け組になっている人は自己責任」的な態度ですね。
真の敵は同世代、というわけです。
吉野家の場合は当の取締役氏自体が生存できた「強者」だったことがあの発言へとつながったのではという意見で、個人的には同意です。
参考:たいへんよくもえました【2022年4月後半のSNS炎上ニュース】
まとめ
もしも成田氏がもっと若い、それこそ20代だったらこの発言は支持されていたかもしれないし、「何言ってるんだよ」と一笑に付されていたかもしれない。
しかしこの発言は、もともと成田氏の言論を支持していた彼と同世代の30〜40代層にも別の形で刺さってしまった(成田氏は1985年生まれ)。
おそらく、「上の世代を排除したい」という気持ちよりも「自分たちが排除された、もしくはいつ排除されてもおかしくない側」だという自覚がある人たちの琴線に触れてしまった、それもこの炎上が長期化している理由なのではと勝手に思っています。
とはいえ。2月19日(日)に放送されたテレビ番組『日曜日の初耳学』(MBS)では「成田祐輔特集」が組まれるなど、まだまだメディアの寵児感がある成田氏。
番組でも「度々ネットで炎上します」という発言が見られ、ご本人としては「よくあることの1つ」という認識なのでしょう。
というかおそらく、あれだけの実績を持ちいつでもアカデミアに戻れるという自覚がある氏にとって、テレビやネット番組の出演は「日本のメディアの世界にちょっと好奇心で足突っ込んでいるだけ」というつもりなのではないでしょうか?
ただ、NYタイムズの記事を例として、その火の手が日本メディアというガラパゴス社会をはみ出つつあるのが実情です。
このまま出続けるのか、さっと足を引くのか。
色んな意味で彼の動向が気になる時期に突入しているな……と思うのでした。