【第18回】It’s a small Kawaii world~現代根付作家・磁佑-Jiyu-さん編~

前回は現代アーティストの山田さんに、グロKawaiiライターケースを作っていただきました♪

面白&可愛いライターケースができるこの企画も連載開始からはや1年(半)。まだまだライターケースの進化はとまりません!

今回デコってくださるのは、現代根付作家の磁佑-Jiyu-さん!

磁佑 -Jiyu-

1999年 – 埼玉県生まれ
2020年 – 「伊奈学園卒業生有志展「創」」(埼玉/さいたま)
2021年
「本当に〇〇で出来てるの!?展」(東京/日本橋)
「根付の世界展」ギャラリー田中(東京/銀座)
「未来の付喪神たち 根付作家それぞれのカタチ」 Gallery花影抄(東京/根津)
2022年
多摩美術大学工芸学科金属専攻卒業
「金属工芸作家による根付と置物展」日本橋三越本店 美術工芸サロン
「第四次根付展」元气造物(中国/上海)

磁佑さんは、和服を着るときに、巾着やタバコ入れを帯から吊るして持ち歩くために使う留め具「根付(ねつけ)」をメインとして制作しているそうです。

根付って初めて見たけど、手のひらにおさまるサイズでKawaii♡

上の画像2つと下の画像2つ、別の人の作品では?と思うほどに系統が全然違って面白い!

今回のケースも、どんな風に仕上がるのか予想できない!思わず胸が躍ります♡

企画初!ギャラリーでの取材にドキドキ♪

今回は、おしゃれなギャラリー「花影抄(はなかげしょう)」で制作していただけることに!

落ち着いた空間で居心地がいいし、本や作品がたくさんあって、何時間でもこの場にいられそう♪

作業していただくのは、普段は作品の展示などをしている奥のお部屋。机の上には工具がぎっしり(画像右下)!!

このライターケースが、どう変身するのか!?

ライター「クレーターネオ」にぴったり合うサイズのABS製デコ用ライターケースを、ケムール編集部が特別にご用意♪

何の変哲もない真っ白ケースが、一体どんな変化を遂げるのか……!?

デコスタート!組み立てパーツを創り出す!!

ライターケースを直接デコるのではなく、パーツを組み立ててケースの外側に取り付けるとのこと!
鹿の角金属など、まったく違う素材のコラボレーションが実現する!!

鹿角からパーツの切り出し

まずは鹿の角である鹿角(かづの)を、電動のこぎりで大胆にカット!

パーツの形状を再現できる位置を見極めて切り出します。

先ほどのパーツとは別に、平面のパーツを切り出せる位置を探して、印を付けたらまた電動のこぎりで鹿角をスライス。

鹿角の内側には、細かい穴が空いたスポンジ状の「鬆(す)」が存在し、鬆を避けて切り出すそうです。

形が違うパーツを4つ作り、すべてを同じ厚みに削って調整!

パーツにデザインを描いた紙を貼り、デザインに合わせて穴を開け、「糸鋸(いとのこ)」でカット!

ほかのパーツともぴったり合うように、穴を開ける位置は慎重に確認。外側をやすりで削っていくと…

鹿角のパーツ、切り出し完了!
ここまでで4時間ほどが経過しました。

金属と七宝で小物パーツ制作

次に金属パーツのベースとなる板を、厚さ0.5mmの真鍮板から切り出し特殊なドリルでくぼみをつくります。

ここでIt’s a small Kawaii world第12回でもお目にかかった「七宝(しっぽう)」が登場!

円状の銅板を7つ用意し、それぞれに釉薬(ゆうやく)を盛ると800℃の窯で焼きます!

1パーツにつき数回、釉薬を盛っては焼く作業を繰り返します。

仕上がりはまるで宝石みたいでKawaii♡この工程で4時間ほど。

大きさが違う真鍮の輪っか制作

平行な溝がある「ヤンキーバイス」を台代わりにして、直径4mmの真鍮の棒材を固定。
(本来、ヤンキーバイスは加工する工作物を挟んで固定する工具ですが、棒材を載せる台としても丁度よかったのだとか。)

棒材を回しながらやすりをかけたら「スコヤ」という工具で断面が直角になっているか確認。

続けて「面取りカッター」で棒材内側のギザギザした出っ張り(バリ)を取り、「ケガキ用コンパス」を使ってカット位置に同じ幅で線を引く!

線を目安に棒材を糸鋸でカット!
切った断面はやすりで平らに削ります。

続けてサイズが違う真鍮の棒材を切っていくと、30分ほどで大きい輪っかが2つ、小さい輪っかが5つ完成!!

コイル風金属パーツ制作

線0.5mmの銅線を銅線に巻き付けて、内側の銅線をニッパーで切って引き抜くと、コイルのパーツが完成!

これを円形に曲げ、ピンセットで形を整えます。こちらの工程は15分ほど。

フラックス&銀ロウで金属たちをロウ付け!

金属パーツができたのでここでパーツの接着へ!
フラックス」とは、火で金属を加熱した時に酸化膜ができるのを防止して金属同士がくっつくようにする役割をもつ補助剤のこと。

フラックスを輪っかのパーツに塗り金属パーツの溝部分に置いたら、バーナーであぶってフラックスを溶かし、仮固定!

次に「銀ロウ」を細かくカット。銀ロウはバーナーであぶると溶けるため、金属同士を接着する“”の役割を果たします。

フラックスを塗りつつ、1パーツあたり2、3個ほど銀ロウを載せたら、バーナーであぶってロウ付け!

もうひとつの金属パーツにも、同様に輪っかのパーツをロウ付けします。

すべての輪っかが、金属パーツにくっつきました!!

水にジュワッと入れて冷やしたら、「酸洗い液」にパーツをドボン!

しばらく放置して加熱時にできた表面の汚れを溶かして落とします!こちらの工程は約30分。

にょろにょろ配管を制作!

1mmの銅線を「ヤットコ」で曲げます!歪まず平らになるように、位置を調整しながら少しずつ曲げて切るというとんでもなく微細な作業。

角度が急な部分は折れないように、なまし(金属をあぶり、熱を加えて柔らかくすること)をします。

にょろにょろした配管ができていく!!
この銅線の部分は、アドリブで形を決めているのだそう。

銅線を曲げて形ができたら金属の板の上に置き、またロウ付け。パーツがくっついたら酸洗いします。

ちなみに銀ロウには「7分(しちぶ)ロウ」「早(はや)ロウ」などの種類があり、配合によって溶ける温度が変わるそう。

先に付けるパーツは高温で溶ける銀ロウ、あとで付けるパーツは比較的低温でも溶ける銀ロウにすることで、先に付けたパーツが取れないように工夫しているんですって(天才!!)

2つの金属パーツができあがるまでに、約2時間が経過しました。

鹿角をカットし、彫刻刀で模様を彫る!

ケースにパーツを合わせて、シャーペンで切るところに印つけ
糸鋸で切り、紙やすりで削って形を整えます。

デザイン画を見ながら、表面に模様を描いていきます!

先が細い彫刻刀で彫り、そのあと「左刃(ひだりば)」という彫刻刀で、ひっかくようにバリバリと、深いくぼみを彫っていく!

左刃や彫刻刀などの刃物は、磁佑さんの場合は鋼の棒や木材をもとに熱して金鎚で叩くなどして、一から作成しているそうです(すごい……!!)

線と線の繋ぎ目は有機的(ゆうきてき)に繋がるように、彫刻刀で彫り足します。

模様を彫り終えたら、やすりと紙やすりで角を落とし、磁佑さんの銘(めい。サインのようなもの)も彫ります。

鹿角のパーツは、ひんやりした石みたい!
鹿角をカットして模様を彫るまでの工程も、約2時間。

茜で鹿角をグツグツ!パーツが真っ赤に!

沸かしたお湯のなかに「茜(あかね)」という植物染料を入れて数分間待つと、お湯がザクロのような赤に!!

鹿角のパーツをすべてお湯のなかに入れて、10分ほど待機。

パーツを引き上げるとさっきまで白かった鹿角が真っ赤に!?
乾いてくると、引き上げた直後よりも落ち着いた、暗めの赤に変化しました。

色を定着させるために数分間乾かすので、その間に磁佑さんについてもっと詳しくお伺いすることに!

磁佑さんについてもっと知りたい!

─物作りをする上で、大切にしていることはありますか?

制作に関しては、材料を触ったり削ったりすることを大事にしています。

デジタルにも興味はありますが、削って出た素材の色味や木目などが好きなので、3Dモデリング等の新しい技術も取り入れつつ実材と組み合わせた制作もしていきたいです。
作品に対する想いとしては、「使うモノづくり」である工芸の考え方が好きなので、手に取って触れる美術品を作ることを大切にしています。

高校では陶芸で茶碗や急須などを作り、それらを触って使い、楽しむ感覚が好きでした。そのように、作品と人との距離感が近い方がいいと考えています。

─どんな作品を得意としているのでしょうか?

精密なものを正確に作るのが得意です。

少しのズレやブレが気になる性格のためか、他人が作ったものと比べて作品の仕上がりがきれいだと言われることが多いです。

─どういったお客様が多いですか?

価格帯が高いので、40代以上の男性のお客様が多いです。

作風にもよりますし、コレクション目的の方もいらっしゃいますが、根付は一般的には男性が使うものなので、購入してくださるのもほとんど男性です。帯留めを購入してくださるのは、40代くらいの女性が多いです。

ただ、若い方にも工芸品の面白さを知ってもらいたいので、いずれは作り方を工夫して、手に取りやすい価格帯のアイテムも作りたいと考えています。

─この企画について、どう思いましたか?

使い捨てライターという、なじみがないものにカバーを付ける、さらにそれを作るというのは考えたこともなかったので、びっくりしましたし、とても面白いと思いました。

─金属の作品を作り始めたきっかけは?

金属に興味を持ったのは、日本刀に惹かれたのがきっかけです。かっこいいし、あれだけ美しいものができるなら金属に触りたいなと。

金属という材料自体が鉱物で、宝石のようなものですし、素晴らしい色を持っているので面白みを感じました。

中学生の時に材料を買い、独学で金属の作品を作り始めました。その頃から金属を加工する楽しさを感じて、今に至ります。

─現在のような作風になったきっかけも教えてください!

現在のような作風になったのは2年ほど前からで、それまでは形が決まったものを作るタイプでした。

しかし、ある時「自分らしい作品とは?」という悩みが出てきたんです。

学校で「作品を制作する意味やコンセプトを考えましょう」と言われるうちに、好きなことを見失ってしまいました。

それで逆に「好きな気持ちだけで作ろう。自分の好きなものって何?」と考えて。SFアニメや漫画などに出てくるキーアイテム、手のひらにおさまるくらい小さいもの、直接触れるものを作ることなどが好きだと思いました。

キーアイテムのグッズはプラスチック製が多くて、物語に登場するもののコピーでしかない。これがもし1個限りで、実際に材料を使って作ったら本物に近くなるのではないか。

手に取った時に実在性を感じられる、本物のキーアイテムを作れたら面白そうだなと思い、自分が欲しいものを作り始めたのがきっかけです。

磁佑さん、好奇心と行動力が半端なさすぎる!!
と尊敬したところで染めたパーツが乾き、作業はラストスパートへ!

紙やすりで表面を磨くと、赤い線が出現!

紙やすりを使って鹿角の表面を磨くと、表面はまた白くなり、赤い線が出現!

目詰まりを起こしにくくするために、水で濡らしてから乾かします。

鹿角を染めて磨き終わるまでの工程は、大体1時間ほど。

パーツを組み立て、接着剤で貼り付けると……

接着剤をパーツに塗り塗り。
パーツとパーツがぴったり重なるように段差を作っておいたそうで、作業はサクサクと進みます!

パーツを組み合わせながら、一つひとつケースに貼り付け!パーツをケースに貼る工程は、約50分でした。

ツヤを出すために、表面を軽く紙でこすったら……!?

神秘Kawaii!!謎めいているライターケース完成!!!

SFのキーアイテムみたいなのに、古代文明の破片のようにも見えて神秘Kawaii〜〜〜!!!♡

新しいようで古いようにも感じるし、いつ作られたものなのか全然わからない!!(いや、今作ってもらったけどw)

これは一体何!?……あ、ライターケースだった……!!(混乱)

白いケースに彫られた赤い線や、くねくねと曲がった金属部分、宝石のような七宝のパーツ

ずっと見ていても、まるで飽きない!!
それにケースがツルスベ過ぎて、いつまでも触っていたくなる!!!

しかも一見、石のような質感で重そうなのに、実際は鹿角でできているから軽い!!
このケースをポケットに忍ばせて、博物館やプラネタリウムに持って行ったら雰囲気に合いそう♪

磁佑さん、素敵なライターケースをありがとうございます♡

ケースのイメージと、デコった感想は?

最後に磁佑さんに、ライターケースをデコった感想を聞いてみました♪

─完成したライターケースのイメージを教えてください!

タイトルは、遺跡から出土した道具のようなイメージで「発火器」です。

ちなみにこちらが、今回作っていただいたケースのデザイン画です。

描いていただいたケースは実物と同じ寸法で、いかにイメージを的確に具現化していただいたのかがわかります……!!

─作ってみてどうでしたか?大変だったところはありますか?

普段はアウトラインごとデザインしており、既製品の形に合わせて作ることはありません。

そのため、自分のやりたいことと制作物のギャップを埋めるのは大変でしたが、楽しかったです。

ライターケースは平面や直線が多かったので、材料の鹿角を形に合わせて切り出すのが大変でした。

─こだわったポイントを教えてください!

全体のデザインです。

手触りの良さにもこだわっていて、表面を丁寧に磨いたため、しっとりした触り心地になりました。

─今回の出来は何%くらいですか?

出先での作業で思い通りにいかないことが多かったので、80%です。

─デコったライターケースは、誰に使っていただきたいですか?

ものを大切にする方、物語に登場するキーアイテムにワクワクする方に使っていただきたいです。

デコったライターケースを抽選で1名さまにプレゼント♪

Kawaiiライターケースを、抽選で1名さまにプレゼント!

この機会にぜひ応募してくださいね♡

プレゼント応募方法

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期間は1週間なので、ご応募はお早めに!

↓該当ツイートはこちら!

磁佑さんの活動が気になる方は、展示やSNSもチェック!

磁佑さんは、来年の4月ギャラリー花影抄にて個展を予定しているそうです。

ほかにも、いつか最先端の技術やコンテンツと、伝統工芸を掛け合わせるような活動をしてみたいとのこと。

磁佑さんの作品ページや、SNSは以下のリンクから♪

*クレーターネオのライターケースアートをしてくださる方を大募集!*

好きなようにライターケースをデコりたい!
自分の世界観をケースにぶちまけたい!
とにかく宣伝になることをしたい!

という“熱意”ある方はぜひ、下記までご連絡ください!

【クレーターネオケースアート企画部】
電話番号:03-5577-5153
メールアドレス:info@b-rock.jp

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